第10回「千葉県子どもの人権懇話会」   報告
 
   日 時:2013年11月8日(金)13:00〜16:30
   会 場:千葉市中央保健福祉センター大会議室
   
主 催:千葉県子どもの人権懇話会・実行委員会(代表・池口紀夫)
事務局:NPО法人 千葉こどもサポートネット(担当・米田)
〒260-0803 千葉市中央区花輪町74-6
Tel:043‐266‐8419 Fax:043‐266‐2359
e-mail chiba-saponet@lake.ocn.ne.jp

後 援:千葉県・千葉市・船橋市・成田市・旭市・勝浦市・八千代市・浦安市・銚子市・館山市・野田市・佐倉市・習志野市・市原市・我孫子市・君津市・四街道市・市川市・大網白里市・木更津市・茂原市・東金市・柏市・流山市・鴨川市・富津市・袖ヶ浦市・八街市・富里市・香取市・印西市・南房総市・山武市・白井市・匝瑳市・いすみ市(36団体)
千葉県教育委員会(以下市町村教育委員会)・千葉市・船橋市・松戸市・成田市・旭市・勝浦市・八千代市・鎌ヶ谷市・浦安市・銚子市・館山市・野田市・佐倉市・市原市・我孫子市・君津市・四街道市・市川市・
木更津市・茂原市・東金市・鴨川市・富津市・袖ヶ浦市・八街市・富里市・香取市・印西市・山武市・大網白里市・白井市・匝瑳市・いすみ市(35団体)
発行日 2014年6月26日

基本テーマ
いじめ防止法・条例(子どもの人権を守る国と地方の挑戦)を知り、新たな法律を“子どもたちの安心の杖”としよう!


シンポジスト
◎ 藤崎 英明さん(柏市教育委員会・指導課・指導主事)
 「いじめをなくす取り組みと課題について」
  〜柏市児童虐待及びいじめ防止条例の施行に当たって〜
 
◎ 小西ひろゆきさん(参議院議員)
 「いじめ防止対策推進法の取り組みと課題について」 
  〜いじめ防止対策推進法の施行に当たって〜

コーディネーター
◎ 山田由紀子さん(千葉県弁護士会所属 弁護士)

◇当日の発言内容を要約して報告します。
 小西ひろゆきさんの発言内容は、当日の発言に加筆・修正してあります。

「いじめをなくす取り組みと課題について」
              柏市教育委員会・指導主事 藤崎英明さん


いじめの現状

 9月28日に国の「いじめ防止対策推進法」と同時に「柏市児童虐待およびいじめ防止条例」が施行された。
 柏市では文部科学省が実施している「児童生徒の問題行動と生徒指導上の諸問題に関する調査」を元にして,年間3回のいじめ調査を実施している。
 柏市のいじめの現状は,昨年1年間で568件のいじめが認知され,一定の解消も含め542件の解消が図られた。今年度はすでに609件が認知されて,470件が解消という報告を受けている。いじめの認知は,被害を受けた児童生徒からの申告をベースにしているので,報道の過熱で子どもからの申告が増え,今年度は昨年度の認知件数を1学期で超えている。
 柏市では件数の増減というのにはとらわれずに,担当の指導主事と生徒指導アドバイザーとがチームを組んですべての学校を回って現状を確認し,早期解決に向けた指導・支援を行うという取り組みをしている。

いじめ発見のきっかけ

 発見のきっかけは,先生による発見が一番多い。本人からの訴えとアンケート,これが大部分を占めている。定期的なアンケート調査と,児童生徒一人一人からじっくり話を聞く教育相談の重要性を示すデータである。現在柏市すべての学校で,学期ごとのアンケート調査の実施と,年間複数回の教育相談期間を設定して,子どもたちと担任の先生とが直接話をするよう指導している。教育相談には学級担任だけではなく,スクールカウンセラーや養護教諭の先生も参加してもらって取り組むようにお願いしている。
 若い教職員が増えてきているので,カウンセリングについての研修も必要である。しかし学校現場からは,授業時間の確保(学力向上も重用な課題であることから安易に授業を切って面談の時間を確保するのは難しい),行事等で時間がとれないという声も聞いている。

いじめの態様
 ひやかし・からかい・仲間外れといういじめが圧倒的に多くなっている。暴力的な行為,金品をたかられたりというものもあるが,今もっとも問題視しているのが無料通話アプリ「LINE」を介してのトラブルである。写真や動画が簡単にやりとりできるので,今後,深刻な事件が起こることが予想される。中学校と小学校では数も内容も全然違うし,例えば暴力といっても,ちょっと突き飛ばした程度のものから,病院に行かなければいけないようなもの,警察に相談すべきものまで幅がある。アンケートや教育相談をやったからと言って全てを把握することは不可能であり,まして先生と人間関係ができていない子は絶対に言わない。特に思春期の中学生は大人に対して不信感を持っている。ネット上のいじめなど新たないじめも起こっており,問題を簡単には数値化することはできない。


柏市の取り組み
 柏市教育委員会としては,担当の指導主事と生徒指導アドバイザーが市内すべての学校を訪問し,取り組みや現状を聞いて,案件によっては教育委員会が直接かかわって学校を支援する対応をしている。学校だけで問題を抱え込むことがないということが最重要であり,関係機関とどうつなげていくのかが教育委員会の一番の仕事ではないかと考える。
 昨年7月の大津市いじめ自殺の報道以来,いじめ問題が非常に大きくクローズアップされて,いじめという言葉がどんどん独り歩きしている感がある。教育委員会には苦情の電話・おしかりの電話・相談の電話を多数いただいている。いじめとは認知できない案件もあり,対応に苦慮している。

「いじめ」をはじめ,生徒指導上の問題が起こらない学校はない
 いじめもそうだが,生徒指導の問題が一切起こらない学校はない。今いじめを含めて生徒指導問題は多様化・複雑化している。これは社会背景・家庭環境・親の価値観・経済状況・情報機器の発達など,子どもたちの外側からの影響によるものもあるし,発達障害など子どもが内面で持っているような原因からも起こるものもあり、複雑になっている。
 問題が起こっても適切な対応がなされれば,学校の秩序は保たれて,問題は解決するのが普通である。しかし荒れた学校でいじめ等の問題が発生すると非常に深刻化する。解決困難な事例が発生して,教職員の指導体制では乗り越えられないケースもある。教師の指導が全く及ばない状況になったまま放置しておくと,とんでもない事件に発展していく可能性もある。

生徒指導困難校とは?
 いじめ問題が解決困難に陥るケースは,学校の生徒指導が立ち行かないいわゆる生徒指導困難校で起こると考えられる。学校内の様子が少しずつ変化し,対応を誤ると取り返しのつかない状況になる。スイッチボックスのいたずらのような些細な兆候から,テラス・ベランダの破損,トイレの排水管のいたずら,清掃用具の破損とエスカレートしていく。天井の穴や蛍光灯,非常灯の破壊と歯止めが利かなくなる。授業を抜け出した生徒がテラスや屋上に侵入する。ひどいケースでは爆発物を作ったりする。ペットボトルの中にドライアイス入れるとか,カップラーメンの容器と線香を使った時限発火装置などのいたずらもあった。作り方はネットで簡単に手に入る。
 さらに,机を投げ落としたり,職員室のガラスが割られたり,倉庫の上にゴミが投げられたり,こうなるともう末期症状だ。破壊行動がどんどんエスカレートして,教師の指導力を超えてしまった状況のことを荒れた学校という。指導が入らない状況では生徒は自分たちの非を認めない。「やってねえよ,ふざけんなよ」というのが彼らの言い分だ。秩序が保てない状況のなか「先生たちは何をやってるんだ」という保護者の批判が学校に寄せられ,教師たちは閉塞感に包まれていく。

普通の生徒の意識の低下
 こういった行為を行うのは一部の突出した生徒ではあるが,その対応で教職員間に温度差ができてしまうと普通の生徒の意識の低下を招く。暴れる生徒を取り押さえられない問題行動を止められない教師への不信,これが一般生徒の間で募っていく。また破壊行為が自分の身に及ぶことを恐れて自分の身を守るために問題行動の生徒を支持する生徒が出てくる。いじめ問題が抱える病理というのはここにあるのではないか。止めたくても止められない。

教室で起こる連鎖反応
 教師の指導を超えてしまった段階で起こる生徒指導上の問題は非常に複雑化していく。一般生徒の意識の低下はなだれのように広がっていく。罪悪感に対するハードルはどんどん下がっていき問題が続発する。そういった子どもたちを指導できない教員に不信感を募らせた他の生徒も注意を受け止められなくなり,授業や集会等が成立しなくなる。

破壊・暴力の焼け太り効果とパワーバランスの崩壊

 こういう状況下では,被害が拡大し,子どもたちと衝突するのを恐れて,子どもの要求を安易に鵜呑みにしてしまう教師が増えてくる。子どもとの衝突を避けて教員がハードルを下げたことで,今度は教職員間でズレが生じる。そうすると厳しいことを言った方が損をするので,職員の足並みがそろわなくなる。子どもは要求が満たされないと不満を爆発させ,自分たちが暴れれば教師や親は言うこと聞くものだと学習していく。ピアスや茶髪,変形の制服が増加する。思春期の心理発達から考えれば当たり前の部分もあるが,指導の枠を超えられるとどうにもならなくなってしまう。本来は衝突を恐れず,対応すべきなのだが,大人の中にも,安易に子どもの主張を支持してしまう方もいる。厳しく枠組みを設定しようとした時「人を見かけで判断しちゃいけない」という大人の存在が彼らを後押ししてしまう。教師と生徒・親と子ども,警察と生徒,つまり大人と子どものパワーバランスの崩壊が起こるのである。
 1986年に東京中野の富士見中学校というところでいじめ自殺事件が起こった。その中で担任が葬式ごっこに関わっていた。普通だったら考えられないが,おそらく生徒との間でパワーバランスの崩壊が起こっていたのだと思う。
 生徒の状況はどうか。これは1960年代のアメリカの社会学者のマッツァという人が中和のストラテジーという非行のメカニズムを書いたものである。責任の回避,被害の否定,被害者への非難,簡単にいうと責任転嫁・自己の正当化。これに対して大人がダメだと線を引かなければならないが,残念ながら保護者がこの理屈を持ち出してくることがある。万引きをした生徒の指導をしようとしたときに,取られるような置き方してる店が悪いと言うような…。
 こうなってくるとこのメカニズムは周りにも広がり,問題行動の生徒が加速していく。こういった感覚を多くの生徒が持つと問題生徒がさらに増長していく。周辺生徒が彼らの行為に価値を与えているのだから当然である。逆にいうとエスカレートしているということは,止めてくれという合図にも考えられる。最近ある学校で,女性の先生が大人しい生徒の服装について「あなたボタンを閉めなさい」と言ったら,隣にいた短ランの生徒が,「てめえ俺に注意できないくせにえらそうなこと言ってんじゃねえよ」と発言したという。裏を返せば俺も注意してくれということだと思う。本当はそこで生徒との衝突を恐れずに,服装の注意を徹底しなければならないのだ。

生徒個別の状況

 この段階になってくると一般の生徒も大人への不信を全面に出す。一般生徒の不満が非行グループを支えてしまうという悪循環に陥る。思春期の生徒が自分の知らない世界を知っている仲間や先輩に憧れをもつのは,ある意味当たり前のことだが,やはり枠組みは必要だ。問題生徒は大人や学校を敵視するようになって,大人の側につく優等生も敵とみなす。マスコミが作り上げてきた幻想というのもあるかもしれない。
 また最近は,何か体制に反抗するとか,大人に反抗するとかそういうことでなく,単に愉快犯的に悪いことをすればおもしろいという発想が出てきて,より問題が複雑化している。

社会状況は
 社会の状況はマスコミにゆがめられ,彼らを後押ししている。例えばテレビ番組では,絶対いじめにつながるような行為を,面白おかしく放送する番組がたくさんある。さらに子どもたちは小さい頃からどっぷりと市場経済の中で育ってきて,お客さんとして振る舞うことに慣れている。お金を払っている方が上だという考えが知らず知らずのうちに身についている。学校もサービスする側だというような考えの保護者も増えている。
 例えばスマートフォンの無料のアプリで,犯罪行為の映像や,卑猥な映像等が小学生でも簡単にやりとりできる,そういう段階になってきている。そこに大人が子どもを後押しするような状況が起こると,生徒指導困難校というものが完成していく。

柏市児童虐待及びいじめ防止条例

 昨年度から条例制定に向けて準備をしてきた。柏市では平成23年,2歳の女の子が虐待で死亡する事件が起きて,まず児童虐待をなんとかしなければいけないというところから始まって,市議会議員の先生方が中心となって議員発議の条例を作った。中心になって条例を作った議員が,本当に現場の役に立つものにしたいと,たくさんのヒアリングを実施した。学校の先生や中学生の生徒からのヒアリングも行った。この法律とか条例が,子どもたちに守るきっかけになればと考える。
 柏市の条例の基本の部分だけお知らせしたい。市の責務,小中高校の責務,関係機関の責務が述べられているが,まず連携しなさいということが言われている。学校だけで抱えるのではなくてみんなで連携して取り組みましょう,学校を支えますよと言うことだと理解している。
 学校には基本方針を策定することが義務付けられた。柏市も基本方針を策定する準備を進めている。これはいじめが起こったときのフロー図である。関係機関との関係者会議ということで,昨年から徐々に動き始めたが,法律・条例ができたのでさらにこれを推進できればと考えている。相談体制は,今までは電話による相談がメインだったが,来年度4月からはメールでの相談もできるように準備を整えている。12月はいじめ防止推進月間としている。今年度はNHKの「いじめのノックアウト」という番組に,市内全小中学生から行動宣伝を書こうという取り組みを行った。
 また,いじめ防止のための組織を作ろうということで,現在「いじめ等生徒指導問題対策連絡協議会」の設置に向けて準備をしている。この会議で関係機関との連携を強化する。教育委員会には問題解決チームを作り,学校を直接支援する体制を作ろうということで今準備を進めている。生徒指導は問題に対する取り組みと問題を未然に防ぐ取り組みと二つに分けられる。今までは消火も防火も全部学校がやりなさいということだったが,みんなでやりましょうと言うのが今回の大きな進歩だと思う。更に弁護士・お医者さん・臨床心理士,学識経験者,さまざまな専門家からアドバイスをもらいながら連携して学校支援ができたらと思っている。

いじめを許さない学校文化(学校風土)の構築のために
 とはいえ,一番頑張らなければいけないのは学校だと思う。学校が子どもとのぶつかりを恐れず,真摯に子どもと向き合うことが必要だ。先生方がまず頑張るぞという気持ちを出せるように学校を支援する体制を作りたい。地域の小中学校で連携を進めることも重要だ。新しい事象に対応するためにも研修を充実させたい。柏市では道徳教育にも力を入れている。千葉県教育委員会が作った豊かな人間関係作りプログラムも実施していきたい。

「いじめ防止対策推進法の取り組みと課題」
                   参議院議員 小西洋之さん

「いじめ防止対策推進法」成立の経緯

 私は、総務省・経済産業省において課長補佐職を務め、2010年の参議院選挙で千葉県より出馬し、現在3年目である。国会議員になってからは、東日本大震災復興特別区域法、原子力損害賠償支援機構法、総合特別区域法(国際戦略特区・地域活性化特区)、障害者総合支援法、医療法医療計画など、様々な法制度を作ってきた。
 2011年10月に滋賀県大津市で中学生のいじめ自死事件が起き、学校及び教育委員会の不適切な対応が社会的に大きな問題になった。いじめという問題は、悲惨な事件が起きて、社会問題化して、いつか風化してまた事件が起こってしまうことの繰り返し。しかし、本当は抜本的に防いでいくことができるのではないかと考えた。
 いじめはどこの学校のどの児童生徒にも起こりうるものであり、全ての児童生徒が被害者にも加害者にもなり得るもの。文科省の統計によれば、小学校の4年生から中学校の3年生まで、9割の子どもがいじめの被害者にも加害者になっている。いじめは被害者にとって自分の存在を否定される悲痛な苦しみを与えるものであり、子どもの生命や尊厳に関わること。社会の大人が執念を持って、総力をあげて立ち向かっていかなければいけない。
 これまで悲惨な事件が起きる度に、文科省が何度と通知を出し、様々な対策をしてきたが、何故いじめ問題は解決されなかったのか。立法の検討を進める中で、いじめ問題の解決には、いじめの「未然防止、早期発見、事案対処」の実行を妨げてきた構造的問題(ボトルネック)の解決が不可避であり、学校や地域におけるこれらの構造的な問題が解決される仕組みが存在しなかったことが、いじめを最大限に防止し、何より悲惨な自殺事件の繰り返しを防ぐことができなかった原因であると認識した。
 こうした構造的問題を解決する立法措置を講じるという目的のもと、民主党の中で2012年秋より、いじめでお子さんを亡くされた方々のNPO団体(ジェントルハートプロジェクト)や大津市のいじめ自死事件のご遺族にも意見を聴きながら、問題を解決するための法律を作っていった。2012年の冬には尾木直樹先生にお会いし、ご指導をお願いした。尾木先生からは、私が作った法案について「歴史的な立法です」と評価の言葉をいただいた。
 2012年の内に条文まで作り終え、翌年2月に党内で機関決定をして、4月上旬には民主・生活・社民の3党の共同提案で「いじめ対策推進基本法案」を参議院に提出した。
 自民党と公明党の方は、先に国会に提出した民主党案を参考にして、5月に自公案を衆議院に提出し、その後、8回にわたる6与野党実務者協議が行われ、「いじめ防止対策推進法」が2013年6月に成立した。10月にはこの法律に基づき、国の基本方針として「いじめの防止等のための基本的な方針」が決定された。
 批判のためではなく客観的な事実として、自公案はこれまでの文科省の行政通知を単に条文化したような内容で、しかも、厳罰化など独特の政策傾向を有するもので、民主党案とは内容的にも思想的にもかけ離れたものだった。そのため、元々の民主党案が100点だとすると、与野党協議の結果できたものは70点くらいだった。100から70に落ちてしまったものを、衆参の委員会における質疑と附帯決議によって補いつつ、最終的には、国の基本方針を作る協議会で取り返していただいた。従って、法律の条文だけを読んでもわからないことも多く、制度全体の適正な理解のためには、国会での審議や衆参の附帯決議、国の基本方針、さらには、可能ならば制度全体のバックボーンとなっている民主党案の考え方などの理解が不可欠である。
立法者の責務として、こうした法制度の正しい解釈の詳細と学校や教育委員会が求められる具体的な対策についてご説明するための逐条解説を執筆中である。(注:2014年3月に「いじめ防止対策推進法の解説と具体策(WAVE出版)」として出版)

いじめの構造的な問題(ボトルネック)
 いじめというのは子どもたちの尊厳を深く傷付けるものなので、まずは徹底的な「予防」が大事である。ただ残念ながらいじめは起こるので、出来る限り「早期発見」して、いじめで傷ついた子を「直ちに救出し、適切にケアし、支援し」、また、加害者の子どもにも適切な指導や支援を行い「いじめを中止し、反省し、適切に立ち直ってもらって元のクラスに戻ってもらう」必要がある。あるいはいじめが起きている周辺にいた子どもたちについても「適切な支援やケアを行う」必要がある。つまり、いじめというのは「予防」と「早期発見」と「事案の解決」、この3つをやり切らないと子どもたちを救うことにはならない。
 「予防」「早期発見」「事案解決」それぞれについて学校や地域に存在していたいじめの構造的な問題とは、次のように考えている。
 【予防】子どもが自分の尊厳・自分の存在の大切さを知り、それと同時に他人を思いやる気持ちを養う機会というものがなかなかない。また、残念ながらいじめは起こり得るものであるという問題の本質を踏まえると、こうした児童生徒の情操等の育みと同時に、「いじめが起きにくい、いじめを起こしにくい」クラスや学校を環境として作らなければ予防にはならない。
 【早期発見】まず、ここに相談すれば必ずこのいじめは解決されるというような安心・信頼した相談・通報できる体制が学校の中になかった。
 また、あるいじめに対して、起きている情報、あれはいじめではないかと思った情報を集積して被害児童生徒に降りかかっている全体状況を判断し、適切にいじめを認定する仕組みがなかった。また、担任の先生はそのクラスの王様であり、他の教職員は口出ししにくいということがあった。学校の教職員は本来全ての子どもたちを守る存在だから、その学校で働いている先生方が担当クラスの垣根を越えて豊かな「同僚性」を持って子どもたちを守っていく、そういう仕組みができていない。(大津の自死事件では、担任は最後までいじめだと思ってなかったが、同僚の中にはいじめではないかと思っていた先生がいた。)
 【事案対処(解決)】元々学校の担任の先生にいじめ問題についての適切な認識や対処のための能力が十分にないことが指摘されている。さらに、こうした個々の教員の対応を補う為の学校の組織的な対応の仕組み、これがない。いじめを解決できないのは自分の指導能力のせいとされてしまうので、いじめを放置し,隠してしまうということも起きていた。また、いじめが起きて保護者の方が学校の先生に相談した時に適切な対応をできない、そういう保護者との連携の問題もある。
 いじめは「複合問題」であり、そもそも学校や教育委員会だけで、被害児童生徒に対しても加害児童生徒に対しても抜本的な解決が困難なケースがあり、学校の先生以外の専門家との連携の問題もある。例えばいじめをしてしまっている子どもの背景には家庭の問題や家庭の経済的な事情、医療を必要とする問題など、いろんな問題がある。
こうした「予防、早期発見、事案対処」それぞれにおける構造的問題を解決するために、全ての学校において「学校いじめ防止基本方針(=いじめ防止プログラム&いじめ早期発見・事案対処マニュアル)」を策定し、また全ての学校に、複数の教職員といじめについてのいろんな外部専門家がチームとなった「いじめ対策委員会」を作ってもらう仕組みを作った。これが「いじめ防止対策推進法」の肝である。

すべての学校で学校いじめ防止基本方針を策定
−いじめ防止プログラムと早期発見・事案対処マニュアル−
 全ての学校で「学校いじめ防止基本方針」を策定していただく。この学校いじめ防止基本方針というのは、いじめを予防していくために子どもたちに参加してやってもらういろんなプログラム、つまり、情操や道徳心などを育むとともにいじめが起こしにくい環境をどうやって作っていくかという「いじめの防止プログラム」と、さらに、いじめが起きてしまったときの「早期発見と事案対処の対応マニュアル」、この二つの役割を有するもの。
 いじめを起こさせないためには、@いじめは絶対にしてはいけないという意識を子どもたちの間で育成し、教職員には豊かな同僚性のもとに子どもたちをいじめから徹底的に守り抜くという意識の改革、そして、A教室全体にいじめを許容しない雰囲気を形成することや傍観者の中からいじめを止める児童が現れることができるような、「いじめが起きにくい、いじめを起こさせない」学校づくりを行っていく必要がある。
 そのためには、学校長が率先していじめ防止の方針を打ち出し、「いじめ根絶宣言」などとして学校全体の方針とすることや、これまで道徳の授業などで単発的に行われてきたいじめの予防教育を、科目横断的に、学校教育活動全体を通じた様々なプログラムを体系的かつ計画的に措置した「年間計画」として策定することが不可欠。この、年間を通じた体系的・計画的な防止プログラムは、イギリス等の諸外国においても採用されており、我が国でも、高崎市などにおいて実行されている。参考資料で、群馬県高崎市の学校におけるいじめ防止プログラムというものを配布させていただいている(群馬県高崎市教育委員会 「学校におけるいじめ防止プログラム」 飯野眞幸教育長作成)。この高崎市の取り組みは、文部科学省の国の基本方針の策定の過程でも非常に参考にされたものである。各学期や夏期・冬期休暇等も含めていじめに対してどういう取り組みをやっていくのか。子ども達が、自分自身の大切さ、他人の尊厳の大切さを感じ、そして、それを実行するために必要な自分自身の肯定感・自尊心、生まれてきたことの幸せ、こうしたことを子どもたちが感じ理解を深めることが出来るようなプログラムを実施するとともに、そうした価値観や雰囲気をクラスや学校全体で共有して、子どもたちがいじめを起こしにくい、起こさない環境を醸成し形成していくために必要なプログラムを全ての学校で大いなる創意工夫のもとに行っていただきたい。
 さらに、学校いじめ防止基本方針は、学校の実情に合わせて機能しているのか、学校いじめ対策委員会(第22条組織)を中心に点検し、見直すというPDCAサイクルの仕組みが学校基本方針の中に盛り込まれている必要がある。
 また、学校いじめ防止基本方針の策定及び運用そして評価、見直しに当たっては、その取組の主体となる子どもたちの主体的かつ積極的な参画を確保することが重要であり、保護者、地域の方にも参画していただき、地域を巻き込んだものにすることが重要。また、保護者などがその取り組みを子ども達のために確認でき、また、自らの主体的な参画のために共有できるように、学校のHPを通じてインターネットなどで公表することが国の基本方針にもはっきりと求められている。

すべての学校に「いじめ対策委員会」を設置
 いじめ対策委員会とは
 全ての学校において、「学校いじめ対策委員会」(第22条)を設置しなければならない。学校いじめ対策委員会は、いじめの防止・早期発見・起きてしまったときの解決、この3つの全てについて総合的かつ適切な対応を「実効的に行う」ためのチームである。キーワードは、「実効的に行う」という明文の規定であり、実効的な対策を実現し確保することができるような組織、取り組みでなければ法律違反を構成するというのが立法者意思。
 全国で約4万校ある小中高全てに対し、常設の委員会組織の設置を法律でお願いしたのは、全てのチームが予防・早期発見・事案対処の取り組みを「実効的に行う」、つまりは、適切かつ確実に子どもたちを守れるようにその組織や活動を措置して頂く必要があるから。
 従って、児童生徒に一番身近な存在であるため「予防」、「早期発見」の対策を「実効的に行う」ためには不可欠の構成要素である学級担任や教科担任が適切に参加することがない、従来からある「生徒指導部会」や「学校管理部会」などの組織による代用は明確な法律違反であり、以下に述べるような「予防」、「早期発見」、「事案対処」の全てについて求められる取組と機能を実現し確保できるものでなければならない。
 【予防の取組】いじめの予防のためには、いじめの起きにくい、許さない環境づくりを学校現場で行うことが必要であり、教職員を中心とした大人がいじめの防止に真剣に取り組む姿を子どもたちに触れさせることが重要。また、子どもと大人が共にいじめの防止等の対策に取り組むことによって、学校全体をいじめの起きにくい、許さない環境へと変え、これがいじめの最大の未然防止となる。
 このためには、学校いじめ対策委員会には、全ての学級担任や教科担任が、何年かに一度、あるいは、何学期かに一度、必ず参画していくものでなければならない。そうでなければ、子ども達に、学校の教職員が一丸となっていじめの防止に取り組んでいるというメッセージにも実感にもならない。
 【早期発見の取組】学校に全ての教職員がいずれかのタイミングで必ず参画する学校総掛かりのいじめを解決するためのチームを必ず置いて活動してもらい、子どもたちにとっての安心信頼の相談窓口とし、全ての学校及び地域の関係者の相談・通報窓口として、早期発見の機能を担う。
 さらに、こうしたチームは、あるいじめについての情報を集約し、被害児童生徒に降りかかっているいじめの状況について適切な判断を確保する仕組みとなる。
 なお、こうした学校の教職員が、学級担任の垣根を越えて全ての子ども達を守るための豊かな同僚性を培っていくことを確保することも、この学校いじめ対策委員会の重要な立法趣旨である。これを実現確保するためにも、このチームは一部の管理職的な立場の教職員だけの参画では法律違反であり、全ての学級担任や教科担任が、何年かに一度、あるいは、何学期かに一度、必ず参画していくものでなければならない。
 【事案対処の取組】いじめ防止対策推進法では、学校のいじめについて一人の担任が対応するのではなく、複数の教職員や外部の専門家の協働による対応を求めている。なお、こうした専門家との連携は、事案対処のみならず予防や早期発見においても必要不可欠であり、そうした立法趣旨であることに留意して頂きたい。
  
 学級担任・教科担任、すべての教員がいずれかの機会に参加
 これまで述べたように、チームには学級担任・学科担任の方に必ず入ってもらう。そのことによって、子どもたちにとって身近な「いじめ対策チーム」になると同時に、教職員のいじめ対策の能力向上にもなるし、同僚性(信頼感及び一体感)を培うことになる。
 なお、国の基本方針には、「生徒指導部会」や「学校管理部会」を活用する場合にも「いじめの防止等の措置を実効的に行うべく機能させる限りにおいて」という厳しい条件が課せられているが、特に、予防と早期発見の措置を実効的に行うためには学級担任や教科担任が十分な数の参画がない組織ではこれは実体的に考えて不可能である(つまり、既存の組織の改組が必要)という立法意思を反映したものであることに十分注意をして頂きたい。
現在、インターネットで公表されている学校いじめ防止基本方針を見ると、法律や国の基本方針で求めているはずの学級担任や教科担任の参加が記載されていないものが散見される。これは、法律違反の状態である。なお、こうした組織のままでいじめが生じた際には、それは場合によっては学校の安全配慮義務違反を構成する(当然、法的責任の判断基準となる裁判規範にもなる)ことに注意をしていただきたい。
 
 外部専門家の参画
また、学校いじめ対策委員会では法律の条文で専門家を入れることになっている。「複合問題」であるいじめに適切に予防、早期発見、事案の対処の全てに適切な対策を講じるための専門性の確保や隠ぺいなどの不適切な対応を防止することが立法者意思。例えば、弁護士の方々はぜひ事件発生後の事案対処だけではなく、なぜいじめをしてはいけないのかという予防の柱である人権教育についても担当してもらいたい。なお、外部の専門家は、人権擁護委員や、警察OB、あるいは、元々学校に参画している学校評議委員の方々などでもその役割に応じて認められるし、その態様も常時のみならず登録といったものでも構わないので、ぜひ、必ず何名かの参画を確保していただきたい。
 
 学校のいじめ防止基本方針の策定・実行・評価

 「学校いじめ防止の基本方針」と、全ての学校においてもらう「学校いじめ対策委員会」は協働関係にある。対策委員会が、学校のいじめの予防のプログラムや、起きてしまったときのマニュアルを作って、それらを実行し、その評価・変更についても中心的な役割を担う。それぞれの効果が最大限に発揮されるように、どういう基本方針を作ればこのチームがよく活動できるかを考えてやっていただきたい。
 大切なことは、どうすればいじめが起きにくいような環境づくりや対策に取り組んでもらえるか、かつそれを学校の先生だけではなくて、子どもたちが主体的に積極的に参加する取り組みでやることであり、いじめ防止基本方針も、子どもたちの主体的積極的参画のもとでやっていただきたいということ。
 例えば、足立区のある学校に視察に行った時に校長先生が言ったことが、いじめというのは起きてしまったあとはどうしてもその子は救われない。いじめを止めてもその子が受けた苦しみ傷つけられた心というのは回復できない。であればいじめというのは大人が、社会が、執念を持ってそれについて対策をしていかなければならない。その校長先生は、まさに子どもが主体的に参加するプログラムを作って、その中で、いじめをやめようという「パトロール隊」を子どもたちが主体となってみんなで実行していた。
 ただし、今日この瞬間にもいじめに苦しんでいる子ども達のために一刻も早い対策の実施として、基本方針の策定の前に、まずは、学校いじめ対策委員会の設置を先行させることは一向に構わないし、そもそも、学校いじめ対策委員会は学校いじめ防止基本方針の策定主体とも位置付けられていることからも、まずは、対策委員会の早急な設置と活動開始を御願いしたい。
 地域と保護者と学校の健全かつ創意工夫ある協働のもと解決できるように、インターネットの公表を通じた適切な情報の共有のもとに、ぜひ地域・現場で取り組みを推進していっていただきたい。
 
 教育委員会・地域の取組み
 いじめは子どもの命・尊厳に関わる問題だから各学校で取り組みに格差がないよう、各学校が作るいじめ防止プログラムや早期発見・事案対処のマニュアルのひな形を、教育委員会に作っていただきたいのと同時に、地域における取り組みが体系的かつ計画的なものとなるように、地域レベルでのいじめの防止の基本方針と早期発見・事案対処の基本方針を作っていただきたい。
 そして、こうした取り組みを可能とするために、教育委員会の中にも弁護士等の専門家が参画するいじめ対策のチームを作ってください(14条3項)。教育委員会というのは学校をサポート・指導する立場にあるから、しっかりそういう取り組みができるように各分野の専門家の方々と連携しながらチームを作っておいていただく。かつこのチームが各地域の予防プログラムとか、各地域の早期発見・事案対処のマニュアルを一緒に作っていただく、そのことをお願いしたい。このチームは、これまで、いじめ事案に対し、教育委員会や学校で隠ぺいや被害者遺族らへの不適切な対応がなされてきたという問題や、複合問題であるいじめに対し専門的な観点からの適切な対処ができていないという問題を解決するための非常に重要な仕組みでもある。この点、各地域の日本弁護士連合会は「子どもの権利委員会」を中心にこうした教育委員会の附属機関に専門家を参画させるための体制の整備に積極的に取り組んでおり、ぜひ、各教育委員会は各地域の弁護士会に相談を行っていただきたい。
 また、学校の先生や教育委員会と各専門家の方々の連携のため、都道府県や市町村単位でいじめ対策の関係者との連絡協議会を作っておく(14条1項)。この協議会には、民間の方々・保護者もぜひ入っていただければと思う。

新しい学校評価と教職員評価
これまでは、いじめが起きたこと自体が批判され、学校、教職員、教育委員会はマイナスの評価を受けることを恐れ、保身的な対応をしてきた。この重大なボトルネックを解決するため、いじめが起きてしまったことそれ自体によって、学校や教職員がマイナスの評価を受けてしまうことを禁止する条文を置いた(第34条)。つまり、学校や教職員は、予防、早期発見、事案対処の取り組みを適切に行っているかで評価される。

重大事態がおこってしまったら
 重大事態とは、「生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」、「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認められるとき」をいう。
 この重大事態の認定に際しては、被害児童生徒の尊厳を保持し回復することを終局の目的としつつ、事案の事実関係を調査し及びそれに基づき再発防止措置を講じるという制度の趣旨を十分に踏まえて頂く必要がある。
 つまり、重大事態の定義には、子どもが自殺を意図した場合とか心身に大きな障害があった場合は当然含まれるが、身体に重い傷害を受けなくても、精神性疾患に至るような状況にならなくとも、その子どもが長期間にわたり執拗ないじめを繰り返し受け、また、それが学校で他のクラスの子どもも含めてみんなで行われているということになれば、その子どもが受けた尊厳の侵害は大変深刻なものであり、そうしたいじめが起きた学校は、学校全体で抜本的な再発防止の対策が必要となる。例えば、私の小学生時代、障がい児のお子さんが1年生から6年生までいじめにあっていた。なぜ彼女がずっといじめを受けなければいけなかったのか。それは学校全体のいじめ対策に課題があったということだと考える。重大事態の判断においては、こうした事態も積極的に受け止めていく必要がある。つまりは、起きた結果の形式的な重大性ばかりではなくて、その子どもが受けているいじめの深刻さ、学校全体における対策上の事態の深刻さについても考えなければいけない。
 法律では、重大実態が起きた場合、教育委員会又は学校は重大事態に対処し、被害児童等の尊厳を保持・回復するため、また、同種の事態の発生の防止に資するために、それぞれに特別の組織を設け、当該事案の事実関係を明確にするための調査を行うことを定めている。この組織は、独立性・中立性・公平性及び公正性が確保され、弁護士等、適切な能力を有する外部の専門家により構成された第三者委員会であることが原則。そして、特に、被害者から見て公平性・中立性が疑われないような組織と運営が確保されることが重要。
 また、これは重大事態に限らず全てのいじめ事案の対処について共通することであるが、被害者の「知る権利」及びその保護者の「親の知る権利」を念頭に、被害者等に対し、調査により明らかになった重大事態の事実関係その他必要な情報を適切に提供する、法的な説明責任を負うことが定められたことが重要。
 法律の運用の基本理念として「被害者に寄り添った対策を確保する」ということが附帯決議でも定められており、学校や教育委員会は、被害を受けた子ども・保護者の申し出というのを尊重して頂く必要がある。
 なお、法律ができても、法の趣旨に適切に則った対応がなされないために被害者や遺族の方々は学校や教育委員会の不誠実な対応に苦しんでいる。ぜひ、法の趣旨を踏まえた取り組みを各教育委員会などにはお願いしたい。また、今後は、重大事態に関する組織の構成や運用、調査の在り方、被害者等への説明責任(それを踏まえた個人情報の取扱い)については、国でガイドラインを策定することが必要である。

最後に
 法律の目的は、いじめから子どもの生命と尊厳を守ること、そのために、長年にわたるいじめの構造的な問題を解決し、適正な対策を実現するための学校いじめ対策委員会などの仕組みを学校や地域に確保することにある。それは教職員や学校や教育委員会を応援する仕組みであって、子どもたちやその保護者が主体的かつ積極的に参加しながら、そして取り組みとしては被害者にしっかり寄り添いながらやっていただきたい。
 また、施行前に起きた事件についても、立法前の事件について敢えて排除する規定は置いておらず、立法目的からも当然に、新しい法律に基づいた対応を必ず講じていただきたい。
 最後に、これはいじめ対策の法律だが、いじめ対策を行うことで豊かな人権社会を作っていくことが立法意思としてある。
 各地域と学校で、教職員の皆様、保護者、専門家の方々がどういう取り組みをやっていただけるかによって子どもたちを守れるかどうか決まる。もう二度と、かけがえのない存在の未来ある子ども達にいじめによる自殺が起きないように、そして、いじめで苦しむ子どもたちを一人でも減らしていけるように、この法律の取り組みをよろしくお願いします。

≪シンポジスト間の意見交換≫
山田 与野党協議の中で、与党と野党の一番の違いってどんなものがあるでしょうか?
小西 与野党協議では我々はいじめの構造的問題を解決する仕組みを作らなければならないことを強く主張した。これに対し、与党は理念法をつくることを主張。
 与党とのそもそもの違いは、与党は厳罰化をしようとしていたこと。新法では、学校教育法にある懲戒処分で、出席停止についてもう一度書いてある。これについては、厳罰化ではないということを私が与野党協議で確認させていただいた。また、与党は、家庭教育への介入もしようとしていた。新法には全ての親御さんに子どもがいじめをしないように子どもに規範意識を養うための指導をしなさいというような変な条文がある。これについて、実は、法律で国民の家庭教育の内容について介入するようなそういうものではないと、与野党協議で確認した(第9条第4項に「第1項の規定は、家庭教育の自主性が尊重されるべきであることに変更を加えるものと解してはならず」を加えた)。むしろ重要なことは、いじめを行っている子どもにもいろんな課題があるのでそれにしっかり寄り添うかということと、場合によっては出席停止あるいは出席停止の前にこういうことをやったら出席停止になるんだよということを教えておく。こういうことをやったら懲戒や出席停止になるんですよってことを各学校で保護者の方と一緒に共有しておくこと。これに関しては、参議院文教科学委員会での附帯決議では、「八、いじめには様々な要因があることに鑑み、第25条の運用に当たっては、懲戒を加える際にはこれまでどおり教育的配慮に十分に留意すること。」とされている。これは、これまでどおりというのは、なぜ子どもがそういういじめをしてしまっているんだろうか、それを解決するために懲戒という手続きしかないのか、それが最善のものなのかというのを考えてくださいということ。
山田 私も実は日本弁護士連合会の「いじめ対策推進法案」に対する意見書の起草に関わっていた。その与野党協議が終わる時とその前とでは、法律案がどんどん我々子どもの権利の側に立つ弁護士から見て良くなっていったので、意見書としてはだんだんここまで言わなくてもみたいに変わっていったということをリアルに覚えている。それでも厳罰化という部分、法律だけを読んだ場合にはそちら側から読むことも可能な条文も残っている。基本方針のほうも合わせて読んでいただくことによって、法律の子どもの最善の利益から見た時にやや問題がある部分が、基本方針で補えているというところを理解いただければと思う。そしてまた国会審議の中では、その他法律にやや問題がある部分に関しては附帯決議という形で実行されたと聞いている。附帯決議のどういう点にポイントがあるのかをお話しいただいていいでしょうか。
小西 附帯決議は法律を施行したときに衆議院・参議院それぞれ、その法律を運用するに当たってこういう考え方でやってくださいということで決議するもの。法的な拘束力はないが、国会の意思を伝えるものであり、制度的に重要な規範性があり、また、政治的にも重要な意義があるもの。いじめ防止対策推進法においても、全て私が原案を起草した、衆議院で7項目、参議院で8項目附帯決議がつけられた。法律の運用にあたって、守らなければならないことが書かれている。
山田 そういう附帯決議や基本方針に補足される法律ですが、学校現場あるいは各地の教育委員会はこれをどう受け止めているのか、すごく気になるところです。
藤崎 柏市として今回の法律・条例の施行はチャンスだと思っている。学校も変わらなければいけないし、地域・教育委員会も変わらなければいけない。これまでは、すべてを学校が抱え込んで、学校も教育委員会も困っていた部分がある。いじめには被害者がいれば加害者もいて、被害者にも加害者にも保護者がいる。どちらも守っていくのが教育である。だから難しい。法律ができたことで、きちんと筋道をたて、規定どおりにやらざるを得ないという状況ができたので、教育委員会は学校と協力しながら進んでいかなければいけない。学校のいじめ防止についての組織だが、専門家を入れるということで、今学校現場から質問を受けているのは、予算をどうするのかいうこと。例えば弁護士さんやお医者さんを年間でお願いするときに学校にはそんな予算はないということが一つ。その部分も市で補わなければいけないと考えている。柏市の予算で大学の先生・弁護士さん・臨床心理士さん・お医者さん、さまざまな専門家のアドバイスをいただける仕組みを作りたい。
 もう一点は、学校の組織に学級担任や教科担任を必ず入れるという部分は重要だと考える。実は学校個々にある生徒指導部会にはそういう形で一般の教員が関わっているケースもある。養護教諭や若い先生もどんどん意見が言えればより有効だろう。先生たちが仲いいと学校はうまく機能する。仲良くするためにどうするか、例えば挨拶が大事だと思う。先輩の先生に言われて今でも大切に思っていることがある。学校という場所は規律に厳しく、生徒が職員室に入るときにノックをして「失礼します。2年1組の○○です。○○先生に用があって入ります」と言わせるんです。これは社会に出てからも役立つ大切なことだと思うが、私が若いころ、生徒がそうやって挨拶をして職員室に入ってきた時に、私が下向いて仕事したままでいたら、あとから隣の先輩の先生にバーンって頭をたたかれて「なんで返事しないんだ」って叱られて、「あ、しまった、その通りだなって思ったことがある。だから、子どもに厳しく規律を要求するなら、私たち大人もそれにこたえないといけない。子どもが「失礼します」って言ったら職員室の先生方が「はい」とみんなで答えられるような関係を作ることが大切だと思う。
山田 藤崎先生が、文部科学省の「いじめ防止基本方針策定協議会」の協力者だったらよかった。私が同協議会で協力者として一生懸命、学級担任が教科担任がと強調しても他の協力者がほとんど教育委員会・校長先生で、担任の先生って方が少なかったせいか、学校というところはまず管理職なんだと。担任というのは学年主任さえ出ていれば担任が入っているのと同じことなんだから山田の言うことはおかしいと一蹴されるところだった。でもなんとか学級担任が入って、小西先生が強調させたいことの中で、学級担任・教科担任が入ることが持ち回ってみんなが経験することによっていじめ対策への力量が高まる、ということが非常に大事なんだというイメージが基本方針の方にも入りこんでるなと思っています。
 お二人にお伺いしたいのですが、法律では、いじめられた子やその保護者には支援をする。いじめた子や保護者に対しては指導をすると、言葉が使い分けられていますよね。私たち弁護士会がこれを検討するときに、いじめられた側はしっかり守ってあげるんだと。いじめた側は悪いことなんだから厳しく措置をするというような感じで、教育してもらったり、どうしてそういうことしちゃったのって聞いてもらえるようなイメージじゃないなと。その両者に対する際立った対立的な対処、非常に気になった。一番目は、いじめというのはどちらかを支援したり指導すればいいだけのことではなくて、集団の構造的な問題なんだと。だからその集団の雰囲気を変えることとか、いじめの四層構造など言われるが、いじめられる子・いじめた子だけではなくて、傍観してしまう・見て見ぬふりをする子や、自分は手を出さないけれど観衆として見てはやしたてたりして喜んでしまう悲しい子たちというのがいる。その状況が変わらないとダメなんじゃないかという問題提起を意見書ではした。藤崎先生にお聴きしますが、もし自分のクラスにいじめが起きたとしたら真っ先に教師がやるべきことっていうのはどんなことでしょうか。
藤崎 自分自身が23年間現場で心がけてきたことは、できるだけ子どもたちのそばにいてこちらのアンテナを張っておくってこと。兆候というのは絶対わかる。いじめだったら例えばニヤッとするとか、給食を配るときに絶対その子のとこには置かない・受け取らないとか。大切なのは気になったらそのままにしないこと。すぐに声をかけることが大切だと思う。見過ごさずにその時に声をかけようと、そう先輩から言われてきたし、若い先生たちには伝えてきた。ただそれを強く言ったところですぐ終わるわけではないし、特に中学校2年生くらいは、「大人は気に入らねえ」と思っている、その時期の子たちにはアプローチは難しい。気になって声をかけると「うるせえな〜」ぶつかられるケースがある。そういうときには職員室に戻って、周りの先生に「今こういうことがあったから悪いけど次の時間にうちのクラスのあそこ子の様子見ておいてくれる?」って声をかける。その子と関係の良い先生なら、その子に「なんかあったの」って声かけてくれて、その子と話をしてくれたときに「こういうことで○○先生心配してたぞ」なんて言ってくれて、あとで「こう言っときました」っていう連携がとれるとうまくいったりする。そうするとそのうちに、「うるせーなあ」って言ってた子が3年生くらいになると、大人の会話ができるようになったりして、今度はその子が学級のことを考えて相談に来てくれたりする。その成長が見られるのが中学校のおもしろいところだと思う。
山田
 なかなかいじめられた子が「いじめられている」と訴えられないとか、周りの子もいやだな〜って思っている子もいると思うが、いやだとかNOという言葉が出ないというのは、クラス担任だったらどんなふうにクラス運営していくといいんでしょうか。
藤崎 特効薬というものはないと思う。ずっとこだわってやってきたのは、どの子にも居場所を作ってあげるのが、学級担任の仕事だということ。たとえばクラスで合唱をやる。毎日朝の会に歌うのだけれど、やっぱり波がある。「ぐで〜」ってなる時がある。「ぐで〜」ってなったときに若い頃はすぐに「こらっ」って叱っていた。でもある程度年齢がいってからは「あら、今日はぐで〜ってしてるね」ってその時の子どもたちを受け入れることができるようになった。「まあそういう日もあるよね」って。生徒指導の機能という言い方をしているが、『共感的な人間関係・自己存在感・自己決定』が授業や学級活動や部活動や、学校生活の様々な場面で保障されているか。一人ひとりの子どもたちが居場所を持てているのかが見えている学級担任になりたいと考えてきた。よくありがちなのが、若い頃自分もそうだったのですが、子どもと自分(担任)の関係ばかりを気にしてしまうこと。でも大切なのは、教師と生徒の関係よりも子どもたち同士の関係であるはず。担任は遠くから見ていて、子どもたち同士の関係がうまくいくのをプロデュースできてればいい。そのためには子どもの中に入っていって声をかけられることが大切。
山田 小西先生はイギリスの例を出されたが、教育プログラムを年間計画を持って体系的に行っていくことの重要性という指摘があった。小西先生のイメージする教育プログラムというのは例えばどんなことでしょうか。
小西 子どもが自分の存在のかけがえなさについて気づけるようなこと、学校の先生とは別の立場で、なぜいじめがいけないのかなどを子どもたちに伝えていただけるものがよい。あるいは体験学習、そうしたような取り組みを年間しっかり、単発的にやるのではなくて計画を立ててやっていただきたい。
(※法律と国の基本方針の逐条解説「いじめ防止対策推進法の解説と具体策(WAVE出版)」においては、具体的なプログラム例を紹介している)

≪会場との質疑応答≫  参加者は仮名(A〜H)にさせていただきました。
  子ども同士ではなく、教師による子どもへのいじめについては?
小西 教師から不適切な対応があるということですが、法律の理念としては、附帯決議(衆議院文科委員会における附帯決議第2項)に、教職員はいじめを受けた児童等を徹底して守る責任を有すると、当たり前のことですが子どもたちを徹底して守ることを定めている。いじめっていうのは子どもたちにとって悲痛で決してあってはならないものだということを教師の方に気づいていただく。その為の対策が22条ですべての学校が設置を義務付けられているいじめチームで、そこに全ての学校の先生が必ず参加をすることによって気づいていただく。
B うちは自閉症で、学校では小さいいじめがあった。それでもうまくいって、6年間終わるなって思っていたところに他校の生徒を含めたいじめにあって、骨折して医者に行って、骨折・硬膜外血腫というのがわかった。それ以後の対応で「けんかですから」って。相談できるところは電話相談で教育委員会。議員さんにも警察にも相談して、警察が動いてくれて「子どもさんの方にお話を聴きますよ」ってことで話を聴いていただいた。相談するところはできれば学校関係ではないところに一か所はほしい。人権委員会にも相談し、大阪の団体に相談して山田先生を紹介されて訴訟という形になった。障害を持った子どもたちのケアを、機敏に。人権というものがあるので考えていただきたい。
藤崎 まったくその通りだと思う。まず障害を持つ子どもたちに対する理解、障害もいろいろな種類がある。我々がしっかり研修して、よりよい対応を考え、常に組織的な対応をすることが重要だと思う。以前受け持った生徒に、自閉症の生徒がいた。コミュニケーションはほとんど取ることができない子だった。親御さんの判断で、小学校からずっと通常学級にいた。特別支援を進めても固辞されて、私のクラスで受け持つことになった。もちろんサポートとして教員を一人つける形にした。その時に最初は、周りの子からもいろいろ言われたり、ちょっかいを出されてパニックになったり、体もすごく大きかったので大変だった。でも学年が上がっていくなかで、周りの子たちがその子を理解するようになった。特別支援教育の本質を子どもたちから教えられた気がする。特別支援教育は、我々がしっかり受け止めて取り組んでいく課題であると思っている。大切なことはお互いに歩み寄ること。批判し合っても前に進まないと思うので、どうやったら子どもたちにとってよい形になるのかをお互いに考えていくことが大切。
山田 教育相談というのが、教育委員会がやっている相談が多いということ、法律の中でも教育相談体制という問題があるが、このご指摘についてはどうですか。
小西 教育委員会の相談体制を強化するための措置として、いじめの問題についてのいろんな専門家の方でできた委員会、これは法律(第14条3項)で必ず設置してくださいとなっていないが、それを求めている。
 この制度の目的は、教育委員会自身に、専門家との連携を確保して、いじめの相談や早期発見、あるいはいじめが起きてしまった時の適切な対応ができるように、また、いじめの予防・早期発見の適切な取り組みについて教育委員会が学校に適切な指導をできるようにするための重要な仕組み。
 子どもや保護者からの相談はもちろん、この教育委員会に設置する専門から成る委員会の目的は学校から相談を受け、それに対し対策を助言し指導することも大切な仕事。
 なお、先ほどの説明の補足として、どんなに学校・教育委員会が頑張っても、いじめは起こりうる。起きた時に起きたことだけで学校や教育委員会が責任をとらされるというが、第34条によりそうしたかたちの責任は一切問われないこととした。その代わりにしっかりとした専門家との連携を教育委員会が確保しつつ、自ら及び学校に対して適切な助言等を行っていく。子どもが傷ついた時にちゃんとした安全配慮・管理責任を教育委員会や学校が果たしたのかどうかを評価する制度となったが、それについても、教育委員会や学校だけで対応するのでなくて、専門家との連携の中で教育側を応援する仕組みを講じている。
山田 課題によっては、地方自治体で犯罪被害者の相談窓口の一覧表なんかを作っていたりするところもある。例えば子ども相談だと弁護士会も行っているし、警察もあるし、それぞれ立場が違っていて。相談したい人のニーズに応じて選べるようなもの、一覧表になっているようなものが配布されるといいなと思う。
 うちの子が小学校1年の夏休み前に八千代に越してきて、遊び時間がない。1年生から遊び時間がないってことは、友だちと仲良くなるっていうのは授業だけじゃなくて遊びっていうのが一番で、友だちが好きだとか、そういう感情が付きにくいんじゃないか、それがいじめの背景にあるのではないかって考える。転校してすぐいじめが始まった。
子どもはその時言わなかったが、前の学校でまだ習ってないところを聞かれて「わかりません」って言ったら、担任の先生に「こんなこともわからないのか、あんたバカじゃない」って言われてそれからいじめがひどくなった。靴を隠された、上履きがなくなったのではだしで行こうと、そしたら通りかかった先生が「この子は、はだしでぺたぺた平気で歩いてる」って言う。一言「上履きどうしたの」って聞けばいいのにと思う。
 一斉テストも成績の取れない子は欠席にして報告するという話もきいた。テストは、先生たちの首を絞めているのでは?と思う。
山田 教師の不適切な発言がいじめを助長することがあるということは基本方針の中でもしっかりとうたっている。教師は自分の発言がいじめの誘因となったり、助長したり、黙認したりしないよう気をつけなければいけないとなっている。遊びが少なくなっているということについては、子どもの権利条約を審査している国連の子ども権利委員会が日本に対して競争的な・たきつけるような教育が子どもの最善の利益を害しているという指摘もある。友だち関係が希薄になっているというあたりで、いじめの新しい分野としてネットいじめという問題もあるのでそのへんのこともお二人に意見を聴きたい。
藤崎 柏市生涯学習部の少年補導センターと教育委員会指導課で学校を回りながら、保護者会・児童生徒に向けてメディアリテラシー・ネットモラルの講演をしている。今無料通話アプリLINEを介してのトラブルが非常に多くなっている。LINEでは100人・200人っていうグループができて、そこには実は明らかに悪意を持って入ってくる大人がいる。ネット上にはLINEは最強の出会い系マシーンだという声もある。IDを盗み出すための無料アプリもたくさんある。LINEができる前はmixiやグリーもそうだった。会社が大きくなると社会的信頼を得るために規制を始め、規制を始めると悪い人たちは規制がかかってない所に移動していく。だからLINEもユーザーが増えて規制を始めた。IDが勝手にやりとりできないような設定とか18歳未満はやりとりできないという設定にしている。そうするとまた新しいところに行く。結局はいたちごっこ。対応には苦慮しているが、頭ごなしの規制は逆効果。やはり子どもたちを早く大人にして、自分で気づくしかない。
山田 スマホも使えない私としては聞いてもちんぷんかんぷんで、親たちもそうですよね。
子どもたちの方が上いっちゃってて保護者としてのしつけとかが十二分にできない分野になってしまっている、そこが怖いなと思う。小西先生は今回の法律作りの中でもネットいじめについてかなり意識を配られての対応をされたが、どのへんでその思いがあったのか、どういう対策が法律からできるのかを教えてください。
小西 法律では、いじめの定義で、インターネットで行う行為もいじめであると定義をしており、インターネットで行われるいじめの対策についても定めている。皆様には、ネットを利用することがどれだけ恐ろしいことかを子どもたちに知ってもらうような取り組みをやっていただきたい。あとネットパトロール、ネットの子どもたちに対する情報にどんな情報があるか調査する。一方で、インターネットに書かれてしまった情報は、被害を受けた子どもや親御さんが消すことは難しい。プロバイダー責任で書き込まれた情報を消す手続きがあるが、これをいきなり被害を受けている親御さんにやってくださいと言ってもなかなか難しい。そのため、全国にある法務局が、被害者や学校から申し出があればその手続きをお手伝いするということを法律では定めてある。ネット事例の対策条文を書くためにいろいろネットいじめの実態を見たが、痛ましい状況であり、そうしたものを救うための対策を盛り込んだ。
山田 いじめについてっていうよりネット社会そのものにいかにセイフティネットを作っていくかってことが課題だと思う。
D 八千代市で障害児専門の放課後デイサービスをやっている。初期の発見・防止から、すごく良い条文ができてありがたいなと思っている。ちょうどいじめを受けている真っ最中の方たちで、すぐに解決できるわけではなく時間がかかって、上手に解決できない場合のほうが多いが、解決するまでの間にご本人と家族を支えるシステムの中での連携という問題が簡単な言葉で書かれているが、そこをいかに真っ最中のお子さんたち、保健室にも行けない、家の中で親子で引きこもって、どうしようもない状態のご家庭などをどうやって支えていくかというシステムを、出来たら入れていただくことで、解決の方法の有りようが違ってくる気がする。どうやって真っ最中のことを、どういう機関が、どういう形で支えていくか、努力とか関係機関との連携とか抽象的な言葉になっているが、とても大切で、そこをいかに支えるかで解決できなくて訴訟裁判になる。そのシステムの中で、真っ最中の部分も踏み込んで議論していただけるといいと思う。
山田 会場の中で、私の地域はこんなこと工夫しているわという意見を聴きたい。
E うちは最初どういうことがあったの?って聴いてくれたのが、ここで一番最初に質問された放課後デイサービス・ハーモニーさん。今もそこの人たちに相談したり、愚痴を聴いてもらったりしながらやっている。
山田 特にシステムのなんのとかってことじゃなくても、大事な言葉だと思うのが「自助」自ら助けるという言葉かなと思う。自助グループだとお互いが同じ悩みを持つもの同士ってことで話しやすいと思う。他にどうですか?
F うちは今20歳の息子が小学校2年のときにいじめにあって定時制高校を経て、今は家の仕事を手伝ってくれる。実は小学校に行けなくなってから、中学に入って普通の格好の方が声をかけてくれて「何が好きなの?」「ゲームが好き」って、本人の好きなことを聴いてくれて、そのことで関係ができて、週1が週2になって最終的には毎日行くようになって、ところが中学卒業と同時に行けなくなってしまった。その間のことをふっと思い出して、女の子がいて今どうしたのかな〜って。本人は学校行けなかったけどそこがあったっていうのは支えられたのかなって今思った。その時たくさんの方が来てくれたが、いかにも先生みたいな方っていうのはダメでした。自分も行けなくて不登校してたから気持ちはわかるところでも、息子が反応したのはその人だけでした。同じ経験がある人、携えてくれるっていうのは一番のポイントではないのかと思った。
山田 出会いっていうこと、子どもにとってはとりあえず居場所があるって大事ですよね。
最終的には学校に戻れるにこしたことないっていうケースであっても、今とりあえず人と出会えて安心できる場所、そこがあれば少し心の回復の時間稼ぎができたり、今みたいな出会いがあればいいですよね。他に、弁護士会の子どもの権利委員会もいじめの問題に取り組んでいると聞いてますが、そのへんの活動も聴かせていただきたい。
G 弁護士という立場でいじめに関わるというのは、加害者・被害者双方の立場で悩むこともある。これまではいじめの問題が起きた後にどう解決するのかという関わりが多かった。今年の2月に子どもの問題に関わる弁護士が集まる集会があって、東京でいじめ予防の授業を弁護士がやっていると聞いて、ぜひ千葉でもやってみたいと今年始めようとプロジェクトを動かしてやってきた。一昨日授業をやってきたところ。この授業の内容は東京でやっているものを借りて、アドバイスをいただくスクールカウンセラーの先生に文部科学省でもまだいじめの授業って考えあぐねていて、よくやったという評価だったが、外部からやってきて学校の先生では言えないことを言うという意義がある、まず人権という視点からいじめの話をした。人権侵害なんですよと、実際にあったいじめの自殺の話を紹介した。2回くらいに分けて自殺の紹介とその後どうしたらいいかを聴けたらいいと思う。その後どうしていったらいいかを学校のいじめ対策の計画の中でやる、いじめの指導計画でも連携ができるようになるといいのかなと思う。いじめ対策組織というのを聞いて、作らなければいけないという法律なので、そういった取り組みをしている弁護士もいるので頭の片隅に置いていただいてご活用いただければと思う。
山田 いじめの相談については、弁護士会に「いじめの相談です」と電話すると少年問題法律相談という窓口があり、子どもに精通した弁護士が担当することになっているのでPRしておきます。私はNPO活動で被害者と加害者の対話を取り結ぶ「被害者加害者対話の会」という活動をしている。いじめの問題はただ単にいじめた子を処罰すればいいという問題ではなく、いじめられた子の気持ちに立ってみるとか、どんな心の痛みを与えてしまったのかを十二分に知ることによって本当の意味での自分の行為のいけなかった部分・責任というのをわかるというのがその子自身の成長・発達ということで、いじめた子もいじめられた子も同じく健全に成長・発達してくれなければいけないから、そういう修復的ないじめ対応というものもあるんだというのを知っていただけたらと思う。
H  千葉市で、子どもへの暴力防止のCAPという人権教育プログラムを幼稚園・小学校等でしている。ある新聞で藤原新也さんが、いじめは子どもの集団での自傷行為だと。今子どもたちってのびのびできない、子ども時代を奪われている子どもたちってかなりいると思う。やはり子どもがのびのび暮らせる社会が生まれたらいいなと思って聴いていた。私は今日ここにきてうれしく思った。小西さんも、基本方針の協力者の山田さんも千葉の方で、いち早く柏でこの条例ができたっていう藤崎さんがいらっしゃる。もし藤崎さんがいたら千葉市にもできたんじゃないかって思った。今日は本当にありがとうございました。子どもの活動をしているものとしてこのような法律や条例ができたっていうことは、階段を大股に跳べた感じがある。

山田 シンポジストのお二人に最後にご発言いただきたい。
小西 いじめの法律ができて、今後、子どもたちを最大限に救える。今日いただいたお話を元に、各地域で、いじめがなくなるように一生懸命取り組んでていただきたい。
(※「小西ひろゆき」ブログ「いじめは必ず発見される。必ず救われる。〜いじめを受けている皆さんへ〜」を紹介)
今日この瞬間にもいじめで苦しんでいる子どもがいて、かつその中の何人かが死に向かう状況にある。残念なのは、こうした新しい制度を作って、私が知る限り、米国の幾つかの州法にはあるものの、世界でも国中の全ての学校に対策委員会を作る制度の国はない。世界中から見ても皆さんでいいものを作っていただくような仕組みを作ったと思うが、それが知られていない。特に今現にいじめを受けている子どもたちが知らない。大手の新聞に何回も伝えてくれと言っても、与野党の主張の違いなど面白おかしく報道できるものばかり報道している。しょうがないので私のブログにあれば子どもたちも見てくれるかもしれないと思って先ほど紹介した子どもたちへのメッセージを載せたので、ぜひ皆様の力で広めていただいて、今現にいじめで苦しんでる子どもたちが必ず救われるようにして頂きたい。今後は各教育委員会、学校で仕組みを作って、また、地域の皆様はじめ社会の色々な方々でいじめ対策の取組みを最大限に行っていただくようお願いします。
(※このブログの文章は「いじめ防止対策推進法の解説と具体策(WAVE出版)」の「あとがきに代えて」にも記載)
藤崎 平成元年に産休補助という形で教壇に立ってちょうど25年。最初に出会った子どもたちがもう39歳になっているわけで、今思うことは、教育の結果はすぐに出るものではないということ。このことはいつも心にとめている。全国学力学習状況調査のスコアを発表して比較してなんていうことがいかにナンセンスか。25年間やってきて痛感している。もうすぐ40歳になる教え子たちが、未だに連絡をしてくれる。柏に来て10年になるが、柏で出した卒業生たちも、今成人をして教員を目指してくれている子もいる。いろいろな先生がいて、批判を受けることもある。だけど教師こそチームで、みんなで問題に取り組むべきだと思う。「おまえダメだから」みたいな話になると、それこそいじめになってしまう。やっぱりチームで取り組んで、今うまくいかなくても、今失敗してしまっている子どもたちも10年後20年後、頑張って成功してくれるかもしれない。そのためにどれだけの手立てができるのかなと考えて、これからも仕事をしていきたいと。
山田 私自身もそうですが、今日ここに見えられた方は国会議員さんで教育委員会のお役人でこんな方がいるんだってとっても目の前が明るくなったと思う。コーディネーターとしては、いじめの話ということで暗い方へ行ってしまうのかという懸念を持っていたが、すばらしいパネリストを迎えたお陰で非常に前向きな意見をいただくことができた。まだまだこの法律や基本方針は私たち市民一人一人がこれから生かしていくかどうかにかかっているわけで、作っただけでは絵に描いた餅になってしまうかも知れない。そういう意味では、どんなにすばらしい議員さん・教育委員会さんがおられても私たち一人一人がその意識を持って、あるときはダメ、すばらしいときにはほめる、もっともっとよくしてってちょうだいねって発言をしていく。そういうことこそが大事かと思うので、これからも法律や基本方針を応援して、より一層の磨きをかけていただきたい。

主催者まとめ  実行委員長 池口紀夫
 本日の中心テーマは、この新しいいじめ対応の法律ができて、その中心的役割を果たされた小西議員、そして積極的に協力された山田さんが命を削って作られたと思う。これは児童虐待防止法よりもすぐれた部分がある。例えばもっとも重要な基本方針に3項目明記されている。第一が予防プログラムから始まるが、この3項目を明記したっていうのは児童虐待法よりも進歩している部分の一つ。きわめて基本理念から方針から対応の全体構造までトータルに記載されているのは、大変最後に当たってご苦労さまだったと思う。また柏市がこの条例を全国に先駆けて作られたというのは今日の状況を見たときにすばらしい。 
 最低限のことだけ何点か確認をさせていただきたい。第一に子どもたちが困った時にすぐ相談ができる場所・関係というものを絶対に作らなきゃいけない。学校の中で担任の先生だったらすぐに相談できるのか、養護教員の先生だったら相談しやすいのか、子どもによってはすぐ校長のとこ行こうってことになるかもしれない。すぐ相談に行ける関係っていうのは、どういう関係なのか、どういう場所なのか検証しなければいけない。                                            
 法律の条文で「守り通す」という表現法で書かれたというのは大変注目した。小西さんが書かれたか? こういう表現は法律には余りない。守ると言えばいいものを、守り通すと書いたところに非常に心が表れていた。完全に実行しましょう。子どもたちが家を出で校門に着くまで、状況によっては家全体を守らなければならないケースもある。これを完全に実行できなければ絵に書いた餅で美辞麗句。学校だけでなく、保護者・地域社会もこれを実現できるように取り組みましょうということ。
 三番目は、加害者もいじめから解放されるべきだということ。いじめは集団による自傷行為だという発言も極めて重要。加害者も苦しんでいることの表現。児童虐待防止法でも高齢者虐待防止法でも加害者支援というのは、努力項目だが、ちゃんと盛り込まれている。加害者を連れて被害者の家に行って、親同士が会って、子どもに謝まらせて問題を終わりにするというのは根本的に違う。いじめ問題の解決にならない。いじめ問題は子ども同士の取り組みが重要。私の経験では、直ちに学校の授業を停止して緊急職員会議を行い、担当クラスに行って子どもたちのホームルームにして徹底して子どもたちの議論を行った。イギリスには、いじめの子ども委員会というのがあって、有効な取り組みをしているが、子ども自身が乗り越えるべきで、それを大人が支援していく構造が必要。
 いじめが起きにくい地域、起きにくい学校とはどういう学校なのか、これは極めて重要。対症療法的な対応では取り組みにならないし、予防・防止にはならない。虐待防止法は言葉のまやかしで、虐待防止法ではなく再発防止法。虐待は起きてからでは遅い。起きないようにする取り組みが必要。そのために学校も人権教育をしていると思うが、人権教育の基本は違いを認め合うこと。そういう関係の社会を創ること。残念ながらまだまだできていない。違いを認めるということにもっと真剣に取り組まなければならない。互いを認め合うことで子どもにとって安心な社会が生まれ、その安心が子どもの成長の土台になる。
 問題行動という表現がある。問題行動をどう見るかということが非常に重要。問題行動は子どもの成長のチャンス、大人に向けたSOS、大人に対する問題提起。そうした子どもに対する見方ができるかどうかが、教員が教員になれるかどうかの大きな分かれ目。保護者会でも学級懇談会でも、この見方を勉強してほしいと思う。
 議論の中で、指導か支援なのかの使い分けがあった。その使い分けをするのかしないのかは重要な問題で、国はどう見ているのか。私が教護院で仕事をしている時、国のマニュアルは指導という言葉で統一されていた。現在では、児童福祉分野では支援という言葉になっている。完全に指導という言葉は払拭されている。これを間違うと仲間に怒られる。この意味の違いをしっかり整理していきましょう。これがわが国の子どもの人権基準の変容。学校だから指導でいいということはない。わが国全体の人権基準の変化。こういうことを明確にしていただきたい。
 最後に、学校を通さないで相談できる・迂回できるシステムが必要ではないかということ。福祉分野ではすでにオンブズパーソンシステムが制度として整っている。学校だからいらないというのはもはや違う。県の教育委員会に子どもサポートセンターというのがあり、一時運営に関わっていた時、その運営委員会で全会一致で県の教育委員会にオンブズパーソン制度を設置するよう意見を出した。残念ながらその時点では通らなかったが、数年経ってこのような法律ができ、第三者委員会・オンブズパーソンは必要だという認識は進んだと思う。こういうことを千葉県の中でも実現していきましょう。
 
       アンケート 回答    参加者:63名 アンケート回収:29名


1.これまでこの会に参加したことがありますか。 @はい17名 Aいいえ 13名

2.本会を何で知りましたか。@新聞・広報紙 3名A実行委員会参加団体 10名 
Bその他  16名(知人・子ども劇場千葉県センター・CAP・子どもサポートネット)

3.「子どもの人権」についてのご意見があればお書きください。
・ブログ(小西ひろゆきさんのブログ)でだしているような子どもへのアピールを当事者に届けることが大切だと思いました。さっそく活用したいと思います。力強く希望が見える会でした。もっと勉強して市民の意識を高めて組織内でも広めていきたいと思いました。
・まずは大人が学ぶ→公の機関できけるようになるとよい。そして、子どもたちにも伝えてきくことが大切だと感じます。
・障害児をおいていかない法にしてほしい。弱者に寄り添ってほしいです。
・子どもだけでなく、回りの大人や地域社会が一緒にとり組んでいくべきです。
・各分野でとりくみがされていると思います。ただ、やはりまだ分野毎にたて割である点が多いと感じます。その点で、本当に連携し、機能していくことが望まれますし、務めていきたいと思います。
・「子どもの人権」問題は日本社会の人権問題でもある。日本政府は、国連から度々日本の人権(子どもの人権しかり)について改善勧告されているが、ほとんど何もしていないか、根本的改善をしていない。大人社会の縮図(人権についても)は、子ども社会を反映している。例えば、子どもの「いじめ」防止対策推進法をつくって改善しようとしても、根本的解決にはならない。日本の基本的人権をふまえて抜本的対策を講じなければならない。
・この法律が絵に書いた餅で終わることのないように子どもの権利条約のように、教育関係者の中にも理解されていないような現実にならないように切に願います。効果はすぐにでない!と言って時間が過ぎないでほしい。今の現実に苦しんでいる子たちがいるのだから・・・被害者だけでなく、加害者の救済も支援が必要です。(指導ではなく)
・きめ細かい見守り体制が必要だと感じました。子どもたちをとりまく関係者、資質をあげていく必要が絶対にある。小学校、中学校それぞれのステージで、気合をいれて、民間出身の先生や教職員を(原文のママ)学校という現場を体験してもらえると良い。価値が多様化している中、それぞれ正答がなく、困ったり闘ったりしている。教職員の資質は、子どもを守るために本当に高めるべき。
・すばらしい法律が、厳罰化の方向に走ることのないよう、子どもの権利が守られる方向で、活用されることを望みます。
・個有の一人の人間としての人権があることは自明のことである。
・子ども自身のしあわせを基本に、子どもの暮らしを考えていかなければいけないと思います。どうしても先を観て成績など利益を守るような方にばかり行ってしまいがちだと思います。それでは子ども自身のしあわせな状態は望めないかなと。
・日頃、見聞きする子どもをとりまく問題には、さまざまなものがありますが、ひと言でいうと、大人の世界の問題がそのまま投影されている縮図だと感じます。“いじめ”についても、大人の世界にもあり、そして残念ながら、完全になくすことはできないでしょう。しかし、だからと言ってあきらめることなく、社会全体で、健全な社会をつくるよう努力をつづけていくことがひいては子どもの人権問題の解決につながるのではないでしょうか?
・法律をつくって全て解決するわけではありません。行政などの努力が必要でしょう。
・現場の先生たちの苦労を想像することがあります。それは、経験をしていたり、子どもの行動の理由が見えていたら、少しは軽くなるのだと思います。教師という職業は、勉強を子どもに教えることと、両方を大切にしてくれる人がなってくれるといい、と信じたいのですが、人間なので、疲れることもあると本当に思うので、先生の相談窓口もしっかり設置してほしいと考えます。
・いじめの問題は、その時で終わらないので、本当につらいことです。何年も何十年もひきずることがあるからです。親もせつないです。本当になくすことを本気でやらないと!
・子供→子ども  障害→障がい という言葉を使うようになることが人権の第一歩かなぁと思っています。
・なかなか子どもの人権は教育の場では尊重されていない。ただただ今が子供だけなのにときいていました。現場で実行してはじめて子供のそばにいれることになる(原文のママ)
・いじめにかかわらず、子どもは大人の所有物のように扱われ、人権を奪われていることが多いと感じています。今は社会人の母となった子の母ですが、自分の半生も込めて、今では子どもの話を聴かせてもらっている立場です。難しいことですが、子どもの人権を守れるよう自らも行動、実践していきたいと思います。(特に加害者の子が加害したと自覚できるシステムを構築、実践したいと思います)
・いじめ・・・一人一人の経験から、それはいじめか、いじめではないのか、わかれるところです。いじめ防止対策推進法では、それを具体的に書かずに、身体的、心理的としている。本人の人権尊重であることが重要である。
・まず子どもたちの声に、家庭はいうまでもありませんが、社会(行政、学校、地域社会全体)で耳を傾ける。気持ちに寄り添う。尊重する・・大人側が意識を持ち取り組むことが必要だと思います。
・子どもをめぐる環境は、人権の視点からしても複雑になっている。絵にかいた餅にならない。
・このような会を開いていただいてありがとうございます。相談機関は第三者機関、例えばこの会の主催者、こどもサポートネットのようなところがシステムとして組み込まれ、してくださるといいと思います。「子どもは大切だ」と言われる。でも、その中で、「対等だ」と思っている人はどのくらいいるだろう。
・講師の藤崎さんも小西さんもとてもエネルギッシュに当事者に会われて現場のリアルな現状をつかみながら総力をあげて、執念をもって“いじめ”に立ち向かわれておられることに、改めて法律、条例ができてよかった!是非子どもたちの味方になるものにしたいと思いました。山田さんの“いじめる子、いじめられる子、傍観する子、観衆になる子”がいれかわる現実と、子どもたちへの対応については知りたいことでした。先生がたのアンテナの張り方はとても求められている。それは、保護者や地域の者にも求められているかな?

4.本懇話会に参加してのご意見。ご感想をお書きください。

・子どもの現状と法律の内容がよくわかりました。これから実際に!学校におけるいじめ防止プログラムが作成されると思います。おとなからの押し付け(?!)だけでなく、子どもたちの意見をよく聞いて欲しいと思っています。 レールの上に子どもをのせることも時には必要でしょうが、レールをしくところに子どもの力を借りる、ということも大切にしてほしいです。
・同じように苦しんでいる人がたくさんいるんだと思いました。新しい法律のことが分かりました。柏で千葉の見本になってせめて千葉市もまねてほしい。
・同じおもいの人がたくさんいるのを実感できました。被害、加害両方のケアが重要です。
・大変勉強になりました。(毎度のことながら)本日のテーマ、個人的には福祉教育とリンクしてきく部分が非常にあると思っています。
・大事な運動である思う。残念ながら当会に、他の件とバッティングしていてやっと今日参加できた。ただ今日も仕事の呼び出しを受けているので、残念ながら途中退席するかもしれない。その節はお赦しください。
・リアルなところがうかがえて勉強になった。柏市では中2男子の自殺が今年あって、話題になったと記憶しているが、その後、保護者は真実を知ることができたのか!親としていじめはなくしたいし、あった後のフォローを共に支えたい。
・立法の立場(小西氏)、学校現場の経験者(藤崎氏)から立法に専門の立場から深く関わられた山田市のコーディネート、バランスがとれてよかったです。
・ききたい話題であるので、大変わかりやすく丁寧な説明で、有意義な時間だった。具体的な実行及び連携について、人材養成について更に深めておききしたい。加害者側への支援のシステム(気づきと再発防止)も。
・子どもたちにどのように提示していくのか。親、関係機関にどのように提起していくのか。身近に相談できる場所を関係機関の中にいれてもらった方がいいと思いました。
・教育委員会がひな型を創って各学校でいじめ対策の組織をつくっていくのかと思いますが、その具体化がとても大変だと思います、先生方が時間の余裕を持てるのが前提かな、と。それも併行してやってほしい。
・初めて参加しましたが、熱心なたくさんの参加者がいらっしゃることに驚きました。内輪のみでがんばるだけでなく、外にも目を向けていかねば、と思いました。
・いじめ防止対策新法の立法者のひとりである小西議員から制定過程の生のはなしをうかがえたこと。また、藤崎さんから現場での取り組みをお聴きすることができ、とても充実したシンポジウムでした。
・「いじめ」の実態、教師による「いじめ」の話がきかれて大変参考になりました。人権も指導だけでは守れません。
・とてもよい勉強になりました。小西さん、山田さん、ますますがんばってください。
・○「いじめ対策」に人権問題が組み込まれて、厳罰化が緩和に変えられた点を高く評価します。○柏市のとりくみを知ることができてよかったです。市川市の状況を確認していきたいと思います。
○学校の状況を多くの人に知ってもらいたいです。学校だけに負わせるべきではない。○学校以外の相談先、オンブズマン制度は必要です。
・質疑応答の時手をあげる勇気がなく、伝えられませんでしたが、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)の活動をしています。県内の君津市では、8年間CAPを授業に取り入れています。(市内全小学校4年生)子どもの人権を知ることは、いじめの予防につながることだと実感しています。いじめられた子が「いやだ」とも言えずじっと耐えているだけでなく、「いやだ」と言ってよいことを知り、回りでみている子はいじめられている子を助けてあげたい、と言ってきますし、実際に実行します。更にいじめている子が「自分は人の権利を奪っていたみたいだ」と先生に伝えていくことがあるそうです。(今年はこれが多いです)県内にもいじめにとりくんでいる市があることを知っていただければよかったです。
・このようなとりくみをしていることを主体である子どもたちに届けられるような機会があってほしい。フェイスブックにのせるとか、もっと子どもたちに身近に真剣に考えている大人がいることを知ってほしい。知ることによって子どもは支えになっているかも・・・
・大変おもしろい興味深い懇話会でした。
・大変勉強になりました。自分にもできることがあると思いました。
・○今日はおもしろかった ○12/1の記念集会に他のグループの仲間たちを誘ってみるつもりです。
○子どもは子どもなりの倫理観、正義感を持っているはず。その倫理観と正義感をくみとり、育てていくのは大人の責任である。大人の責任をどう果たすか、大人の問題であると思う。
・柏市の条例は、保育園や児童福祉施設も含まれており、いいなぁと思った。いじめ防止対策推進法は、教育関係(小中になっているので!!)のみに限られているのがちょっと気になった。
・いじめ防止法についてよくわからないところがありましたが、得るものがありました。ありがとうございます。
・予防が何より大事ですね。
・毎回の企画ありがとうございます。
・この法律が絵にかいた餅にならないよう、市民の私たちも「よし、頑張らねば!」という気持ちが強くなりました。ありがとうございます。
・「共感的な人間関係、自己決定が子どもたちにできているかが大切。子どもたち同士の関係がうまくできているかが大切で、自分(教師)と子どもの一対一の関係ではどうでもよい」という目線に、安心し、自分もそうありたいと思いました。 ○チームみんなでとりくむ大切さ。子どもたち、先生方、地域、すべてで。

5.当懇話会の活動について、ご意見があればお書きください。
・体験したことが子どもの成長を助けると思うので、子どもがワクワク楽しくなるようなプログラムになりますように!
・大変参考になりました。
・いつも企画、お誘いありがとうございます。
・今後とも(若い方もおり)発展に期待したい。次回以降も催しなどを連絡ください。
・プリントの印刷濃度が薄いので、濃くしてほしい。\700~1,000になってもいいので。
・子どもに関わる施策というと、子育て支援策ばかり花ざかりという感じがしており、子どもでなく、子どもの親に目が向いてことが残念だが、このような視点での会は大変貴重だと思います。ありがとうございます。
・児童の人権について更に学びたい。「子どもの権利条約」について、要保護や対象となる事業について更にききたい。
・今後とも精力的活動をよろしくお願いします。
・具体的な問題をとりあげるとよいのではないですか。
・もっともっとたくさんの団体や市民に知ってほしいいと思います。行政の人たちにも聴いてほしかった。今日はすばらしいパネリストの話をきけてよかった。現場で活動するにしても法律を知ることがもっと大事と改めて思っています。
・失礼ながら今回の懇話会に参加するまで存じ上げませんでしたが、大変為になるお話を伺えてありがたく思います。
・自分の市では、学校ではどんな基本方針ができるだろう。早速調べてみたいと思った。
・代表のごあいさつがとてもいいです。いつも楽しみにしています。
・池口さんの「・・・守り通す・・・」フムフムです。「子ども同士がいじめを乗り越える?それを支える大人たちがいる」そんなすてきな街を創っていきたい。
以上