千葉県社会における「千葉こどもサポートネット」の役割について

― 2007年度の活動にあたって ―    元理事長 池口紀夫

 

 任意団体の「千葉こどもサポートネット」が出来たころ(19923月設立)のモチベーションは、情報交換プラス意見交換を中心に<連携>をしていこうという事でした。集まった活動団体は<不登校>問題に取り組んでいる当事者の方々が中心でした。何よりも不登校についての共通理解が深まっていくことは、お互いに力づけられていくことでした。

 そうしているうちに障害児が全ての子どもと共に学ぶことが出来るための、いわゆる<統合教育>の実現に取り組んでいる活動団体とも連携するようになっていきました。活動内容は「学習会」が中心で、情報交換から今千葉の中で起きている子どもの問題について学ぶことへと傾斜していきました。

 学習活動を重ねていくうちに不登校問題や障害児の教育問題や非行問題などの根っこには共通の背景があると言うことが分かってきました。このことはとても大きな成果でした。そのことによって活動団体同士の意見の違いが乗り超えられ活動推進のパワーともなるし、社会的な力もましていくことになりました。様々な子どもの問題の根っこにあるのは一言でまとめるならば、それは「子どもの人権が損なわれている」と言うことでした。そこでわたしたちはそういう学びの成果と力を結集して「こどもだって人間だ!―千葉県こども事情―」と言う本をまとめ、1994年出版しました。当時結構反響を呼びました。

 そのような学びの力を持ったことで当サポートネットは社会的な活動も行うようになっていきました。例えば、県の教育長の「体罰容認発言」に異議を唱えるための「2万人署名活動」を行ったり、児童施設の中で行われた人権侵害問題(恩寵園等)に取り組んだり、学校の中であった人権侵害問題に取り組んだりと千葉県社会における子どもの人権問題に直接参加するようになっていきました。

 そのような具体的な問題への取り組みから、私たちは次の課題を意識するようになりました。ひとつは、学校や施設の中で起きる人権侵害問題の解決には利害関係当事者だけではなく、人権を基盤とした解決のための第三者機関が必要であること、子どもの人権とは何であるのかその基準を明確にする必要があることでした。このことの実現には当サポートネットだけでは弱いので、他の団体と共に「千葉県子ども人権条例を実現する会」を立ち上げて、その会の活動に積極的に参加していくことになりました。

 今ひとつのことは、具体的な子どもの人権問題に取り組むためには会としてもそのための組織を作らないと、とても対応はできないと言うことでした(20042NPO法人化)。また、全県の中での点の活動体では当事者により添うことは極めて困難だと言うことでした。そこで、各地から「子ども人権擁護サポーター」を募り、講習会を開催し理念を共有しながら相談に対応するシステム作りに取り組みました。このことも発展途上です。

 このように活動を重ねながら、その時その時に気付いたことから取り組んできましたら、だんだん当団体も千葉の中で知られるようになり、子どもの人権問題で講演の依頼を受けるようになったり、虐待防止のための民間団体として千葉県のマニュアルに紹介されたり、県の人権施策立案への参加を依頼されたり、また、具体的な人権問題の取り組みのことで各地域の教育関係者とも徐々に協議が進んできました。

 つまり、千葉県社会の中で当サポートネットは、子どもの人権についての民間における拠点になりつつあると言うことです。子どもに関わる市民活動はたくさんありますが、子どもたちが苦しんでいる様々な問題に共通して、かつ根底にある「子どもの人権」をテーマにして、継続的に取り組んでいるのはこの「NPO法人千葉こどもサポートネット」ということになります。

 これからも子どもの人権を守り実現してくための拠点として、

 子どもの人権に関する民間サイドの情報の拠点であること。

 子どもの人権に関する学習の拠点であること。

 子どもの人権に関する社会的な発信の拠点であること(発言を含めて)。

 具体的な子どもの人権侵害問題が他の機関では取り上げられなかったり、解決されなかったりしたときに、相談を受け、その問題の解決に取り組む受け皿としての活動を強化していくこと。

 千葉県社会の教育活動、児童福祉活動、地域活動などすべての子どもに関わる活動が子どもの人権を基盤に据えて活動していくようになるための働きかけをしていくこと。

 子どもの人権を守り実現していくためのシステム作りに参画していくこと。

 

 小さな団体ではありますが、志だけは大きく以上のようなことを目指して活動を<継続>していきましょう!