第7回「千葉県子どもの人権懇話会」報告集
       
日時:2010年11月6日(土)・13時開場会場:千葉市生涯学習センター3階・大研修室


 

<プログラム>
1、主催者挨拶   (13時10分〜13時15分) 鎌倉淑子(当実行委員会)         
2、シンポジューム (13時15分〜15時15分)(自己紹介・基調報告・意見交換)
  休 憩     (15時15分〜15時25分)
3、討論(質疑応答) (15時25分〜16時25分)
4、まとめ     (16時25分〜16時35分)池口紀夫(当実行委員会)

《基本テーマ》“千葉県内の子どもの人権施策と実践を共有し、
子どもの人権基盤の拡大と構築をめざす。”
《シンポジスト》
○千葉県健康福祉部児童家庭課虐待防止対策室長・渡辺絹代さん
     「千葉県次世代育成支援行動計画(後期)について」
○鎌ヶ谷市健康福祉部こども課子育て総合相談室長・染谷正明さん
     「鎌ヶ谷市における子ども虐待の取り組みについて」
○家庭裁判所調査官・伊藤由紀夫さん
     「少年司法における子どもの権利擁護の取り組みについて」
○NPO法人自立援助ホーム・「人力舎」ホーム長・高橋克己さん
     「児童自立援助ホームにおける子どもの権利擁護の取り組みについて」
  ◇コーディネーター 花崎みさをさん
    (児童養護施設「野の花の家」運営の社会福祉法人一粒会・理事長)
 
主催 千葉県子どもの人権懇話会実行委員会
【事務局】〒260-0813千葉市中央区生実町2149番地の2
             043-266-8419/ fax043-266-2359
 NPO法人千葉こどもサポートネット内 千葉県子どもの人権懇話会実行委員会事務局
 
【実行委員会参加団体】
千葉県青少年団体連絡協議会、NPOちばMDエコネット、千葉「障害児・者」の高校進学を実現させる会、NPO千葉こどもサポートネット、NPO子ども劇場千葉県センター、共に育つ教育を進める千葉県連絡会、NPOネモちば不登校・ひきこもりネットワーク、ほっとすぺーす、千葉・教育を考える親と市民の会、「千葉県子ども人権条例」を実現する会

【後援団体】
<県54市町村>千葉県・千葉市・銚子市・市川市・船橋市・館山市・木更津市・松戸市・野田市・茂原市・成田市・佐倉市・東金市・旭市・習志野市・柏市・勝浦市・市原市・流山市・八千代市・我孫子市・鴨川市・君津市・富津市・浦安市・四街道市・袖ヶ浦市・八街市・印西市・白井市・富里市・南房総市・匝瑳市・香取市・山武市・いすみ市・酒々井町・栄町・神崎町・多古町・東庄町・大網白里町・九十九里町・芝山町・横芝光町・一宮町・睦沢町・長生村・白子町・長柄町・長南町・大多喜町・御宿町・鋸南町
<県51市町村教育委員会>千葉県・千葉市・銚子市・市川市・船橋市・館山市・木更津市・松戸市・野田市・茂原市・成田市・佐倉市・東金市・旭市・勝浦市・市原市・八千代市・我孫子市・鴨川市・鎌ヶ谷市・君津市・富津市・浦安市・四街道市・袖ヶ浦市・八街市・印西市・白井市・富里市・匝瑳市・香取市・山武市・いすみ市・酒々井町・栄町・神崎町・多古町・東庄町・大網白里町・九十九里町・芝山町・横芝光町・一宮町・睦沢町・長生村・白子町・長柄町・長南町・大多喜町・御宿町・鋸南町(10月25日現在) 

   
主者挨拶  鎌倉淑子(当実行委員会副代表)
 「千葉県子どもの人権懇話会」は、今回で7回目になります。1回目からを振り返ることで、たどってきた道のりが分かると思います。
 2005年1月の第1回は「子どもの人権ネットワークをどう整備していくか―子どもの人権侵害とその救済をめぐって」、第2回は「子どもへの人権侵害をどう防止するか」、第3回は「千葉県における子どもの人権はどう実現しつつあるか−進捗状況を共有し、これから展望する」、第4回は「千葉県社会において子どもの人権を守るために、今何が必要か」、第5回は「子どもたちが大切にされるまちづくり」、第6回は「進みつつある子どもの人権施策 〜県市町村・民間の協働を目指して」
(注記・第1回から第6回までの詳しい内容は、37・38頁をご覧ください)、第7回目の今回は、「千葉県内の子どもの人権施策と実践を共有し、子どもの人権基盤の拡大と構築をめざす」です。
 2000年の暮れから、子どもを人権侵害から守るということを、どうしたら仕組みとしてつくれるか、県民が行政との協働で進めてきたことが、指針として結実しました。この指針は、大いに利用することができる、人権侵害の防止・救済に役立つと思います。広めること、伝えることが大事です。条例までは、あと一歩です。本日皆様の大切なお時間をいただいて、子どもたちを守っていく千葉県をつくるために、議論を深めていただきたいと思います。

○コーディネーター 花崎みさをさん(社会福祉法人一粒会理事長)
  今、主催者からこの活動の経過とか、目的をお話ししていただきました。
今日、お集まりの皆さんも、今の子どものおかれている状況・家庭の状況・社会の状況を憂いて、そして何か手がかりがないか、どういう方向で進んだらいいか、という熱い思いを持ってここにお集まりだと思います。
 私は木更津の山の中で、児童養護施設と母子生活支援施設と児童家庭支援センターを運営していますが、この児童の福祉については、1989年に国連が子どもの権利条約を制定し、世界のほとんどの国が今ではそれを批准して、その目的に添って子どもの福祉の実現に努力しています。この条約は制定の10年くらい前から、世界各地の子どもたちの様子を見ながら案がたてられ、どの国の子も共通に守られなければいけないということで、幅広く深く子どもの権利についてまとめてあるものです。1994年に日本もこれを批准しました。児童の福祉もそれまでは終戦直後1947年に児童福祉法ができて、日本が経済成長を中心にして、突っ走っている最中に、どんどんと子どもの状況や社会・家庭の状況が変わっているにもかかわらず、児童福祉法の改正がなくて、子どもの状態に関しては放り出されていました。長いこと経済中心の日本があったと思いますが、その中の様々な歪みが今でてきているように思います。ですからこれは小手先のことでは、これから先、子どもをどうしていこうとかという問題には結びつかない気がする。やはり、日本の社会全体で考えていかなければいけないことでもあるし、行政も私たちも気持ちを変えて取り組んでいかないと、本当に日本はどうなってしまうんだろうと、憂いています。
 もちろん虐待の数が多くなっている。今、平成21年の統計で児相(児童相談所)への通報件数が44,210件と言われています。これがずっと鰻登りに登ってきているという現状があって、それに対する受け皿がない。この間ある方が、初めて私どものことを知ったということで来所したんです。その方は虐待についてたくさん報道があって頭を痛めていたけれど、そして事件の時には児相と警察が問題になるが、その後その子どもがどこへ行くのだろうとずっと思っていた。だけど情報も全くないので、心を痛めていた。 そこに新聞の記事で新しく出た「野の花の家」の本『抱きしめたい』のことがあって、それを見て「こういう施設があったんだ」というんでやってきたのだと言ってました。
 つまり一般の人たちは、子どもたちの現状について報道でされていることしかわかっていない。まだまだ、周知がなされていないということです。
 協同の前にみんなで考える・知るという、そういう作業も必要になってくるのかと思います。国連の子どもの権利条約を批准したあと、今度は次々と児童福祉法の小さな改正が重なった。方向は国連の子どもの権利条約に向いているので方向はいい、でも準備が整わないのに、法律だけがどんどんと改正されていろんな枠組みが入ってきて、それに戸惑っているという現場がある。
 一つのことを成し遂げるためには、一つの条文をきちんと実施するためには、それに対する裏付けがないとならない。それから皆さんの周知と協同作業というのがないと出来ないと思う。でも法律がバンバン先にきてしまって裏付けがない。一番裏付けとして大きいのがお金がついてこない、そして人の問題が大きい。福祉に携わる人の問題はとても大きいです。でもそれに対する配慮がない。そういうようなことがまだまだ必要になってくると思います。
 そういうことを通して、今の子どもたちの問題、これは虐待が深刻化してきているけれど、この虐待の問題もただ親が悪さをするというとらえ方では、全く違うということ。その親にも、周辺にもいろいろな原因があるということを考えていかなければいけないし、その親もどう守るか、子どももどう守るかという視点も必要だと思う。いろんな意味で私たちが考えなきゃいけない視点がたくさんあると思います。
 今日は行政からは県の室長さんが見えていますし、市からは相談室長が見えていますし、司法からこういう福祉の問題はとても司法の関わりも大きいんですが、今まではあまり司法が福祉に関わるということが視点としてなかったと思います。司法とか保健とかそういうものも今後必要になってくると思いますが、今日は家庭裁判所から調査官が見えています。それから現場でNPO法人として頑張っている人力舎のホーム長さんも見えています。
 今主旨の説明があったように、私たちはどうやって官民協同して、子どもたちを守っていくことができるか、という何か具体的なものが見えてくる一つの機会になったらいいなと思います。
 
○渡辺絹代さん(千葉県健康福祉部児童家庭課虐待防止対策室長)

 ただいまご紹介いただきました県庁児童家庭課 虐待防止対策室長の渡辺です。
 本日、ご参加の皆様には日頃から本県の児童福祉の推進にご理解・ご協力をいただいておりますことに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
 私の所属する虐待防止対策室でどのようなことをやっているのか、簡単にお話させていただくと、市町村や学校・警察など様々な関係機関と連携した児童虐待防止対策の推進ですとか、児童相談所の関係、それから児童養護施設・乳児院など社会的養護を必要とする子どもが入所する施設への支援、里親委託の推進などを行っています。
 本日は県の次世代育成支援行動計画の後期計画についてお話しさせていただくこととなっておりますが、最初に計画全体のお話しをさせていただき、その後で、子どもの人権、特に児童虐待防止関連施策について、少し詳し目にお話しさせていただきます。
 県では平成17年3月に計画の前期計画を策定し、17年度から昨年度までの5年間を計画期間とし、取り組みを推進してまいりました。後期計画は、前期計画について必要な見直しを行い、本年3月に策定したところで、平成22年度から26年度までの5年間に実施する次世代育成の総合的な取り組みを示したものです。
 計画の基本理念は、「子どもは地域の宝。全ての子どもと子育て家庭の『育ち』を地域のみんなで支える。」として、世代を越えていろいろな人たちが相互に関わり合いながら、子どもを地域の宝として、みんなで育てていく社会を目指すということです。そして、子どもの成長にとって特に大切なのが家庭です。この計画では、家庭を基本に地域が一体となって子育てを支える社会の実現に向け、子どもと若者・親・地域の3つの視点から、児童福祉や教育・保健医療・就労・男女共同参画など幅広い分野で総合的な施策を展開します。
 お手元の概要版の5・6ページの部分に計画の施策体系が載っています。非常に幅広い内容になっていますが、計画の具体的な取り組みとして主なものを3つ紹介いたしますと、
一つ目は、子育て世帯の経済的負担を軽減するために乳幼児医療費助成の対象を拡大し、子ども医療費助成事業として充実させます。
二つ目は、多様化するニーズに対応した保育サービスの充実を図るとともに待機児童の解消に向けて保育所整備を推進します。
三つ目は、児童相談所につきまして、これまでも急増する児童虐待に迅速に対応するため、児童福祉司・心理司の増員、ITシステムの導入などに取り組んでまいりましたが、後期計画でも児童相談所の体制を更に強化していきます。
 7ページから9ページに掲載してありますとおり、計画の着実な推進を図るため主要な51の項目について、26年度までの5年間で達成しようという目標を設定しています。計画の推進にあたっては、市町村や県民の皆さんとともに連携・協働して取り組み、日本の未来を担う子どもたちが健やかに生まれ、夢と希望を持ちながら元気に育つことができる「子育てサポート日本一」の千葉県を目指していきたいという計画です。以上が計画の全体像です。
 続きまして、本日のシンポジウムのテーマに特に関わる部分、子どもの人権や児童虐待防止関連施策についてです。概要版の5ページにあります、一つ目の視点、子ども・若者の中の1 「子ども声を社会に届けたい」が人権の関連になりまして、4つ目の「一人の人として大切にして欲しい」が人権、特に児童虐待防止等の関連になり、この中に様々な事業を盛り込んであり、本日は主なものを紹介します。
 「一人の人として大切にして欲しい」については、まず、児童虐待の防止です。児童虐待、まずもって止まりません。県所管の6つの児童相談所が、平成21年度に対応した児童虐待相談は2,295件でした。これは5年前の2倍、10年前の10倍という数字です。こうした中、今回、後期計画では、増加する児童虐待を防止するためには、児童虐待の発生そのものを予防することが最も大事だろうということで、6ページの(1)児童虐待の防止の右側の@未然防止、これを新規項目として掲げました。
 未然防止策の一つとして、母子保健活動との連携を盛り込んでいて、妊娠の早期から関わりを持つ保健師さんなど、母子保健従事者に児童虐待に対する理解を深め、適切な支援を行っていただけるよう県で母子保健虐待予防マニュアルを作成しており、こういったマニュアルの活用を促進するとともに、保健師さんなどに対して実践的な研修を行ってまいります。
 また児童虐待防止にむけた啓発活動として、引き続きオレンジリボンキャンペーンなどを展開していきます。平成12年に児童虐待防止法が施行されて以来、10年が経過し虐待に対する社会全体の意識が高まり、児童相談所等への通告が増加したことも、児童虐待対応件数が増加している要因の一つとも言われていますが、この間の大阪市の二人の幼い子どもが亡くなったという事件でも虐待通告があったのは一人だけで、他の何人かは気付いていても通告しなかったという報道もありました。こうしたことからも広報啓発を一層強化していく必要があると思っています。今月は児童虐待防止推進月間になります。月間中は全国各地で様々な啓発行事が行われます。
 県でも、県内に拠点を持つプロサッカーチームや市町村などと共同して、児童虐待防止のシンボルのオレンジリボンを活用したキャンペーンを実施し、児童虐待の撲滅を訴えていきます。
 次に児童虐待は早期に発見し、迅速に対応することが子どもや保護者にとって大切なことですが、Aの早期発見・早期対応は、児童相談所等の専門機関だけで解決出来る問題ではなく、市町村との協働による関係機関連携のネットワークの構築が不可欠です。
 このため、計画では、福祉・保健医療・教育・警察等の関係機関により構成される要保護児童対策地域協議会、私たちは「要対協」と呼んでいますが、要対協の全市町村への設置を目標にしています。現在県内54の市町村があって、このうち48市町村において設置されていますが、引き続き未設置の6市町村への早期設置を実現するとともに、既設の協議会の機能強化を図り、実効性を高めていくことが重要ですので、市町村に対して専門家などのアドバイザーの派遣や市町村の職員を対象とした研修の実施など必要な支援を行っていきます。
 県においても全県的な関係機関のネットワーク組織である「千葉県要保護児童対策協議会」を本年7月から発足したところで、今後はこの協議会を核として市町村や関係機関との連携をより一層図り、児童虐待死亡ゼロにむけて取り組んでいきます。
 早期発見・早期対応について、昨年の4月から施行された改正児童福祉法において「施設に入所している、或いは里親さんの家に預けられている子どもへの施設内虐待の防止のための枠組み」が規定されました。本来子どもから親と同じように慕われるはずの施設職員や里親が、虐待を行うということは絶対にあってはならず、また児童の権利擁護の視点からも許されるはずもありません。県では施設入所児童等に対し、虐待行為があったときなどに児童相談所や児童家庭課などに相談ができるということと、連絡先はここですということを書いた、料金受取人払い郵便はがきを添付したシオリを子どもたちに配布しています。今年度は、子どもからフリーダイヤルで児童家庭課に電話ができるようにするなどの取り組みをしているところです。
 次にBの虐待を受けた子どもと親への在宅支援については、児童相談所では虐待を受けた子どもの心理的ケアや家族関係支援を行っていて、社会的自立までを支援しています。また児童相談所で24時間365日いつでも通告や相談がうけられるよう、子ども家庭110番として中央児童相談所に電話相談員を配置しています。
 また民間の取り組みとしては、県内には民間児童福祉施設に附設された児童家庭支援センターが6カ所あり、子どもと家庭に関する助言や指導を行っています。
 従来から千葉市に3カ所、いすみ市に1カ所、木更津に1カ所、この木更津市の施設は本日のコーディネーターの花崎先生のところで運営していて合計5カ所ありましたが、6カ所目としてこの9月に松戸市に1カ所が設置されました。地域に密着した相談支援体制の整備が重要ということで、計画ではこの児童家庭支援センターについて、さらに県内で3カ所の設置を促進していくこととしています。
 次に(2)の要保護児童への支援について、先程、平成21年度の県所管の児童相談所における児童虐待件数が2,295件と申しましたが、その対応状況を見ると、助言指導や継続指導等のいわゆる面接指導、これが91%ともっとも多く、施設入所は7%の164名、里親委託は1%の21名で合計8%の185名が施設入所・里親委託という形で社会的養護の傘の中に入っていっています。
 児童虐待の件数が増えている中、要保護児童の数も増加している状況の中で、児童養護施設等の施設は満床の状態が続いていることから、受け皿整備が必要となっていて計画では民間児童養護施設や乳児院の整備を促進することとしています。
 また県内にはまだ情緒障害児短期治療施設がないのですが、この施設の設置も検討していきます。それと児童養護施設の施設形態については、家庭的な雰囲気の中での養護体制を導入し子どもたちの生活の質の向上を図るため、小規模グループケア・地域小規模児童養護施設の整備など施設のケア形態の小規模化を図っていきます。
 なかでも県立の児童養護施設である「富浦学園」については、今建替えの準備を進めているところで平成24年度中の供用開始に向け、今年度は実施設計を行っています。
 新しい施設は、複数のユニットからなる本園と、戸建ての借家に児童6人が生活する地域小規模児童養護施設で構成され、家庭的な小規模ケアを基本とする施設となる予定です。
 また、現在県の児童相談所6カ所のうち「東上総児童相談所」だけ一時保護所がないのですが、計画では東上総にも一時保護所を設置することとしていて、平成24年度中の開設にむけ今年度は実施設計を行っています。
 次に里親制度の推進ですが、虐待を受けた子どもの社会的自立のためには、地域の特性に応じた専門的な支援とともに、家庭的な養育が必要であり、要保護児童が、地域の中でより家庭的な生活を送るためには里親への委託が適していることから、里親制度の推進を図っているところです。千葉県における平成22年3月31日現在の里親登録数は280組、委託児童数は前年度より7人増加し169人、要保護児童の里親への委託率は17.2%となっています。この里親委託率について今回の計画では、様々な里親支援を行いながら平成26年度末までに21%まで引き上げることを目標としています。 今年度、養育里親については千葉県で新たな愛称をつけようと県民だよりなどの広報媒体を通じて、県民の皆様から公募したところ90件の応募がありました。
 選考の結果は、先月県と千葉県里親会で開催した「千葉県里親大会」で発表したところで、新たな愛称は松戸市の田中さんから応募いただいた「菜の花家族」となりました。今後この「菜の花家族」を里親制度の普及・促進とPRに活用しながら引き続き里親委託率を高めてまいりたいと考えています。
 続いて計画の概要版の6ページの一番上、子どもと若者の権利・社会参画の推進についてです。計画における基本的な考え方は、子どもが一人の人間としてその意思が最大限に尊重され、自分の意見を表明することができ、自己実現を図ることが出来るような社会の実現に取り組むということ、また、子どもを保護の客体としてのみならず、権利の主体として子どもの意思を施策に反映させるため子どもの参加・参画を図るというものです。
@の子どもと若者の権利を守るという観点からの主な事業としては、学校における人権教育や、児童福祉施設等の職員を対象として子どもの権利擁護に関する研修を実施します。
また、特に計画に新規事業として載せたものとして、「子どもの権利ノート」の作成があります。
 これは昨年度、「子どもの権利・参画のための研究会」が、「子どもが大切にされる千葉県をつくるための指針」を提言しておりますが、この指針に書かれている「子どもはひとりのかけがえのない存在として生きること・守られること・育つこと・参加することに関する権利が守られること」を子どもたち自身に伝えるため、子どもの権利ノートを作成し施設入所児童等に配布するというものです。この権利ノートについては、今年度さっそく取り組んで、施設で生活する子ども向けと里親さんの家で生活する子ども向け、さらに児童相談所の一時保護所で過ごす子ども向けの3種類を作成しているところで、権利についての記載に加え、それぞれの生活環境に合った生活概要の説明や相談先などについての案内を載せています。この権利ノートと、先ほどご紹介した被措置児童等虐待防止のためのシオリの改訂版をセットで配布いたします。
 Aの子どもと若者の参画という観点からの事業を1つ紹介すると、子ども・若者と協働して取り組むキャンペーンの実施というものを位置づけていて、その内容はオレンジリボンキャンペーンを始め、県が主催するイベントやキャンペーンの実施にあたっては子ども・若者と協働して行い、参画を推進するというものです。オレンジキャンペーンでは、高校生に虐待防止の趣旨を理解いただき、ボランティアとして県や市町村の職員と一緒に啓発物品を配布したり、中学生の吹奏楽の演奏をしてもらったり、若い力を借りて実施することとしています。以上計画の概要について、児童虐待防止関連と権利関連を中心に説明させていただきました。
 どうもありがとうございました。

○染谷正明さん(鎌ケ谷市健康福祉部こども課子育て総合相談室長)

 鎌ケ谷の染谷と申します。鎌ケ谷市をご存じない方もいると思いますが、人口10万、北は柏・西は市川・南は船橋と大都市に囲まれている市ですが予算的には厳しいところです。最近、成田のアクセス特急が開通して、新鎌ケ谷駅・北総線あたりが注目されています。10万足らずということで市域が狭い、人口が少ないということで抽象的な言い方すると小回りが効くが、予算はないから大きなことはできない。
 児童虐待防止に関して「子育て支援」と関連してやっている、こういった形で動いている市は私の知っているところでは少ないみたいですが、「子育て支援」と関連させながら児童虐待防止等を扱っているというのが特色です。
 資料の鎌ケ谷市のこども課子育て総合相談室における相談統計を見て下さい。「子育て総合相談室の中に家庭児童相談室」があります。これは家庭における児童の相談ということで30年近く動いている機関で、虐待・一人親の問題・家庭の経済的な問題・子どもの性格・不登校などの問題の相談が多い。
 平成18年度から21年度を見ると、平成20年度に18・19年度は総数が2,200から2,100で推移していますが、平成20年度に一気に2,700に上がっている。これは「子育て総合相談室」という名称を使い始めたのが、平成20年度です。その前までは「子育て支援センター」という言い方をしていました。どちらかというと子育て支援を前面に出して、その後ろに家庭児童相談をつけていたが、相談件数がどんどん増えてきたことと、子育て支援の方は、一部児童センターの方にお任せした方がいいのではないかということで、20年度にはいろんな悩みがあったら「子育て総合相談室」に相談くださいと、広報とかHPの方に掲載しました。その関係で相談が増えたということと、市民の中でも少しでも子育てに困ったら子育て総合相談室、家庭に問題があったら家庭児童相談室に相談しようという意識が出てきたのかと思います。
 20年度には増えましたが、21年度には2,500で減っています。これは子育て支援と連動してやっていますので、「子育てサロン」というのを鎌ケ谷で独自に作っています。国でいうと「集いの広場」に近いものですが、 そこで子育ての相談を受けている、現場で子育ての相談を受けているということをやっていますので、比較的現場での相談が増えたために市役所の方へ電話が入る、市役所の方に来庁されて相談をするという件数が減っていると考えています。
 実際現場では、お母さんたちと子育てサロンのスタッフがそこで話ながら相談していますので、いくら相談件数があるかというのは把握できない状況です。とりとめもない話の中で、子どもをどういうふうにあやしたらいいかわからないとか、極端にいうと「ウチの子どもちっともかわいくない」という相談もある、そういう数はカウントしてないので数字的にはわかりせんが、その関係で21年度は減っている。これが全体の相談件数の流れです。そしてカッコの中でこれが実数です。
 21年度だと2,596件ありましたが、相談者は451人。ほとんどの相談者は鎌ケ谷の場合お母さんが多い。お子さんからくる例は少ないです。相談件数は減っていますが、実数は21年度に増えているということで、相談をしてもいいという雰囲気と、21年度にはいろんな困ったことがあったら子育て総合相談室に相談くださいと、虐待を見たら通報してくださいというパンフレットを全戸配布しました。この関係もあって、相談をする方が増えたかと思います。
 次に年齢別実件数、これも年度別に見ると21年度は小中学生が増えていますが、0歳から3歳未満が大きく減っているというのは、子育てサロンというのは概ね3歳以下の親子が集まる場所なので、そこで相談をしているために実際にカウントされる数字が市のほうに入ってこなかったと。決して相談が減ったわけではない。この相談件数というのは多ければいいってもんじゃない。
 本来、お母さんたちが悩まれるのは少ないほうがいいので、必ずしも増えればいいってものではないし、また減ったら減ったで、原因を突き詰めなきゃいけない部分もあるので、非常に難しい数字だと思います。
 次に児童虐待相談件数、鎌ケ谷では21年度で42件、実数で42人です。比較的流れとしては減っている傾向なんですが、鎌ケ谷では国の補助による養育支援訪問員という制度を21年度から入れている。これはいろんな相談や、サロンでみかけて、このご家庭はお子さんの育て方が危ないという場合、養育支援訪問員を派遣します。
 例えばサロンなんかに行くと、サロンの意味を勘違いされているお母さんは、サロンに来て子どもを置いて、自分は隅っこに行って携帯をいじっている。本来はそういう場所じゃない。そこでお友だちを作ろうという場所なんですが、保育園と勘違いして、自分は子どもと離れたいので、子どもを会場に置いて自分は会場の隅に行って携帯をいじっている、そういうご家庭はちょっとクエスチョンがつきます。
 また子ども二人だけでいるが、なかなか集団に入れないお母さん方、これもクエスチョンがつきます。そういう方にサロンのスタッフが話しかけて、どうもちょっと子どもに対する考え方がおかしいとかちょっと危ないといった場合に、市の方から保健師さん・保育士さんを派遣して、週に1回・2回派遣して、3ヶ月間様子を見ます。それでいろいろな育児援助とか、家事援助を行って3ヶ月たって大丈夫だということになれば、それで取りやめるし、3ヶ月たってもう少し続けたほうがいいという場合は継続する。そういう形で児童虐待の実数が減ってきているのではないかと思います。
 次に主な虐待者の数は、毎年これは実の母ということで、やはりお母さんたちのイライラそういうものがあると考えています。70代以上の方にはお話したことある、今の状況を見ると一言「今の親が悪い」という言い方、これは子育て観とかそういうものっていうのは年代によって格差があるので、鎌ケ谷市でも前に、次世代育成支援対策地域協議会で70代の委員の方と現役の子育てやっているお母さんの委員の方とが、子育て観で対立になる。なんで子どもを預けてまで働きたいんだっていうのが、年配の方です。そういう子育てというのは年代によっても格差あるので、我々も今後は、今でいうおじいちゃん方・おばあちゃん方にも啓発していかなくてはいけないと思っています。そういう関係でどうしても、今のお母さんたちが悩んでいる・疲れているということを理解する、していただくという啓発は必要なのかなと考えています。
 被虐待児の年齢は、小学生が多い。学齢前も、0歳〜学齢前と区切ると多い。相談に繋がった経路は、学校等というのが増えています。それとわずかな数ですが、警察等も増えています。要保護児童対策地域協議会、鎌ケ谷の場合、名称を変えて「児童虐待防止対策等地域協議会」という言い方をしています。ここでの連携で各関係機関との顔なじみというのが出来てきていると思います。
 鎌ケ谷は市域が狭いといいました。例えば私は市立保育園の園長さんとか、上のほうの方のお顔を存じ上げています。たまたま前にもっと大きな市の方とお話したところ、やはり児童虐待担当の方は、自分の市立の保育園の園長の顔は知らないと。やはり大きすぎるとわからない。顔を知るということは情報をもらえる、廊下で会っても軽い話でも出てくる。市域が狭いということで警察に行っても、鎌ケ谷は警察署が1か所しかないので、そこの課長さんとも面識が出来ているので何かあるときにすぐに電話で聞けるというような、そういう市域が狭いというのが利点になっています。
 学校関係も、学校というのはあまり情報が出てこないところですが、相談室の心理発達相談員が学校の巡回を行って、学校で家庭の養育にクエスチョンがつく児童に関してもいろいろ対応できるという形をとっています。
 次に鎌ケ谷市の児童虐待防止対策ということで、鎌ケ谷でどんなことをやっているかと取りまとめてみました。
1, 児童虐待の発生・予防 2,児童虐待の小さな芽を摘む 3,子育ての孤立を防ぐ 4、児童虐待情報を早くつかむ
という4つの方法で動いています。児童虐待の発生予防というのは、まず鎌ケ谷では母子保健との連携ということで、市役所に総合福祉保健センターがあって、2階の部分に子ども関係の部署があります。1階の方に母子保健の健康増進課がある。その関係で連携しやすい。
 まず母子健康手帳の交付とあります。生まれる前に母子健康手帳の交付を全部保健師さんが行っています。市町村によっては市民課で渡すというところもあるが、妊婦さん全員に全数保育士面接による交付により、この妊婦さんは出産後ちゃんと養育出来るかどうか、若年の妊娠の発見、未婚の妊婦さん、夫婦関係が不安定な妊婦さん、養育能力が欠けていると思われる妊婦さん、そういうものをこの過程で発見し、問題がありそうな場合は我々子育て総合相談室の方に電話が入ります。我々も面談して、出産後にこの人は少し相談にのった方がいいのではないか、という形をとります。そこで面談することによって繋がっていく、母子保健と繋がっています。
 出産後、助産師さんによる新生児訪問・保健推進委員(健康増進課の制度ボランティア)による訪問で全戸訪問します。これがよく言われている「こんにちは赤ちゃん事業」になっている。
 4ヶ月児健康相談・10ヶ月・1歳6ヶ月・3歳児健康診査ということで、この過程でもちょっとおかしいなという感じの子、例えばこういう会場では子どもはうろちょろします。その子どものお母さんは順番待ちしているのがずれてしまいます。そうすると、そのお子さんに対して強くたたくという母親がおりました。私たちもその情報を保健師から聞いて、その母親の家庭訪問を繰り返して事なきを得たと言う感じでやっています。
 4ヶ月児健康相談の中ではブックスタート事業をやっているので、そちらでも我々スタッフが応援に行ってクエスチョンがつくお母さんたちいないかなとか見ていきます。そういう形で養育上問題がありそうな家庭のフィルターをかけて、大丈夫かなというお母さんを探していきます。
 また別のところに、保育園・幼稚園・学校との巡回ということで、私たち相談室の心理発達相談員や保育士による保育園・幼稚園の巡回相談をやっています。
 ここでは保育園の保育士さんとか幼稚園の先生たちが、この子についての扱い方が非常に難しいといった時に、この子の扱い方をこういうふうにした方がいいですよと相談になります。その子を見るのではなく、先生方の相談に行きます。その過程で園だけでは対応できないという場合に、我々の中で相談のケースに入っていく。こういう形で保育園・幼稚園・学校の中でも養育上問題があるかなって子を見つけていきます。その過程で健康診査を受けていない子、訪問を拒否する人などを見つけて養育上問題のある家庭を抽出していきます。
 もうひとつ、妊娠期からの「乳幼児揺さぶられ症候群予防」に向けての啓発事業で、国立医療機関の医師による協力を頂き行っています。子どもを泣きやまないから揺さぶる、そうすると脳の方に障害が起きて重大な損傷になるということで、妊娠した段階で、医師が作成したDVD見ていただいて、揺さぶることは大変なことなんだと分かってもらいます。もし子どもが泣きやまないでイライラしたら、子どもは安全なところに置いて、自分はとりあえず、別のところに行って落ち着きなさいと。いつまでも子どもと一緒にいると、ますますお母さんはイライラする。そういうDVDを見せます。そして出産後にアンケートをとって、そのDVDを見て、実際にその通りやっていますかというアンケートをとっています。
 この先生の研究の材料にもなっているので、我々も場所を提供してやっています。昨年からやって結論でるのが、来年度になると聞いています。こういう形で虐待防止の啓発事業をやっています。問題のある家庭に関しては支援の実施ということで、具体的な支援というのは継続的な相談になる。継続的な相談というのは、相談者は時間をかけないと相手を信用しません。
 やはり時間をかけて、相手の気持ちを和らげる形をとらないと、相手の方は本当に悩んでいること、例えば夫に不満があるのか、自分の養育上の問題があるのかというのは、本当に時間をかけないとわかりません。そういう意味で継続的な相談を続けていきます。
 例えば経済的な問題があれば生活保護とか、精神疾患があれば医療機関の紹介なども行っています。どこまで行うのかというのは、非常に難しい。最近の事例では、妊娠されて8ヶ月ずっと母子手帳も取らずに医療機関に行ってないお母さんがおりました。
 子どもは2・3人いて、子どもに対して特にネグレクトをやっている訳でもないですが、我々の立場からは胎児虐待と認識でいる。出産予定日はまるきりわからない。本人も経済的問題があって医者には行きたくない。我々も、費用があまりかからない医療機関を探して、そこまで連れていくということもやります。1回医療機関に繋げてあとは自分で行けるような形をとって、おそらく8・9ヶ月だからもうすぐ臨月に近いんじゃないかと思います。自宅出産すると大変危険なので、そういうくらいのことをやらないと相手も信用しない。そのような形を得ながら、養育支援訪問事業も入れて出来るだけ虐待の発生しない家庭を作っていくということで発生予防の形になる。
 続いて児童虐待の小さな芽をつまむ、一般的に虐待の通報が我々にも入ってくる。近所で親が子どもを怒鳴る声がしていると、我々もすぐ動きたいんですが、いきなりその家庭に行けば「近所の誰が言ったんだ」と当然言われます。
 我々は通報者の秘密を守らなければいけないので、0歳から3歳児ぐらいであれば、健康相談を受けているかとか受けていなければ、鎌ケ谷の場合は地区ごとに保健師が決まっていて、地区担当の保健師と一緒に健康診査の受診の勧誘とか、もしくは子ども手当等の申請をしてなければ、手当等の勧誘とか、通報とは別の形で繋がるようにしていきます。
 そういう健康診査も受けていて、母子保健の診査上でも問題はないと、お母さんも子どもに対して非常に愛情を感じているし、お父さんも愛着を感じているようなものがあると、そこでも近づけない。手当もちゃんと受給しているとなると、場合によっては民生委員さんにちょっと見守りをしていただけないかという形をとっていきます。
 ただし小中学生となれば、学校との連携もとれるのでまだいいんですが、自宅で保育園も幼稚園も通ってないという方に関しては、特に健康診査上落ち度がないと近づけないということがあって、我々も長期間時間をかける考えで、その家庭と接触をなんとか図るという形をとる。そういう事例が何例かある。なかなか家庭を訪問するうまい理由づけがつかないと、その2ヶ月後にまた同じような話が出るという場合もある。そうした場合によっては警察等の関連とも持ちながらやっていく方法などもとる。
 やはり通報者は、自分のことは知られたくないというのがあるので、そこを守らなくてはいけないので近づけない部分がある。そういう過程で虐待の可能性があるのかどうかという判断をして、虐待が高度にあるとか、中程度にある低度にあるという分け方をして、非常に虐待が高度にあるということになれば、児童相談所、中程度であれば見守り、そういう形で繋げて完全に虐待がないという判断がつかない限りは継続して見守っていったり、何らかの形で相談体制をひいていくという形をとっています。
 続いて「子育ての孤立を防ぐ」、これが鎌ケ谷の比較的特色のある部分かと思っています。この部分はたぶん他市の児童虐待担当課では行ってないと思います。
 まず今のお母さんたちはお友だちがいない。「つどいの広場」というのは常設型で県補助をいただきながらやっています。鎌ケ谷は一カ所です。「子育てサロン」、これは「つどいの広場」とどう違うかというと「つどいの広場」は専任の職員がいる、「子育てサロン」は兼任でやっている。開催日が鎌ケ谷の場合月・金でやっています。児童センターのほうでもやっているので、それも週2回くらい。「つどいの広場」では利用親子が2,490人、「子育てサロン」は11,396人が利用しています。
 サロンにおいても、ただ親子が交流するだけではなく、我々の中では若いお母さん10代のお母さん、外国人のママ、そういう方たちに対しては、支援しないと難しいということで、子育てサロンの中に部門を設けています。一般な子育てサロンには、若い10代のお母さんは来られない。ちらっと見に来ても、和気あいあいしているお母さんたちに10代のお母さんたちは、一緒になれない。だからその方たちだけのサロンを設けています。ただ10代のお母さんたちというのは、行政が用意しても行きますというふうにはいかないので、何とか勧誘してようやく何組かがこられました。最初のころは恐らく1組くらいしか来なかった。ただ継続してやるしかないだろうということでやっています。サロンも未婚のお母さんとか、若いお母さんなども入れるようなサロンを作らないと、まずいだろうと考えています。昨年から「パパサロン」というのも設けました。お父さんと子どもだけ、お父さんにも参加してもらおうと。これが児童虐待にどう結びつくのかというのもあるが、やはり父親の参加がないとお母さんは安心できない。その日はお父さんと子どもしか来ちゃいけない。
 高校生と赤ちゃんのふれあい、鎌ケ谷高校と鎌ケ谷西高校があって、これは高校生と赤ちゃんのふれあいだけではなく高校生と母親のふれあいもある。何をやるかというと、例えば、自分の妊娠時のエコー写真を見せて、「私は妊娠したときこう思った」「出産のときはこうだった」と高校生に話します。場合によっては、妊婦さんのお腹を高校生に触ってもらって子どもの命の尊さというものをわかってもらう。どちらかというと、高校生と赤ちゃんのお母さんとのふれあいという形でやっているのが特長かと思います。このような事業を行って孤立を防いでいる。
 児童虐待の情報をつかむ、地域協議会を設けて関連機関と情報共有していること、自治会を通して虐待防止のチラシやパンフレットを、2年に1回全戸配布している。「子育てサポーター」、これが市のほうで養成している子育てのボランティアです。この方たちがサロンに応援に来ているために、これだけ年間何百回という回数のサロンが開ける。このサポーターにも研修をして、「子どもがかわいくない」と言われたらこういう風に答えましょうといういろんな研修事業を行っています。ありがとうございました。

花崎さん(コーディネーター)

 何も大きなことはやってないとおっしゃいましたけど、かなり他の市と比べると細かな対策が行われているように思えます。小さい小さいと、もしかしたらきめ細かな対策をとっていくためのキーワードが小さいということかもしれないと思いました。小さいとか狭いとかっていうのはきめ細かさと繋がりがあるような、そんな思いがしました。いろいろな意味で保健師さんとの繋がりとか、高校生を取り込むとか、ボランティアを取り込むというふうなこと、そういうことを通して活動しているということで大変感銘を受けて聞きました。

○伊藤由紀夫さん(家庭裁判所調査官)
  東京の家庭裁判所から来ました。家庭裁判所調査官というのが裁判所法に定められている正式な官職名です。
 この場に来ていただいた皆さん、きっと福祉とか教育とかの分野の方が多いかと思いますが、一つだけ質問をさせてください。少年事件は、凶悪化して且つ増えているとお考えの方、手をあげてください。今見ただけで二人ですけど、おそらく10倍くらいの人はそう思っているんじゃないかと私は思います。しかし、それはありません。
 刑事事件には一般刑法犯と,道路交通法違反や薬物法犯といった特別法犯の二つがあり,成人の場合は地方裁判所で裁判し、14歳から20歳までの少年の場合は、家庭裁判所で審判を行います。統計的には成人事件も含めて刑事事件の数は決して増えていません。
 少年事件に関して言えば、昭和48年ぐらいが一つのピークで、総数80万件くらいありましたが、一昨年くらいから20万件を切っています。最大時の4分の1くらいになっています。ただ統計というのは取り締まりの仕方とか、例えば交通違反なんかは、法律で取り締まるところが増えれば検挙数は上がっちゃうといったところがあります。 昔から統計的には変わりようがない殺人事件でみると、ここ20年間、少年の殺人事件は100件を超えたことはありません。統計では殺人未遂も含めて殺人事件を数えていますので、例えば新聞で、去年1年間で少年事件の殺人は75件あった場合に、その半分は未遂です。未遂と言った場合には、傷害3日程度の未遂事件もあります。要するに殺意は持っていたけれど、実際の傷害の程度は全治3日だったってことも統計に含まれる。既遂になったものはどんなものか、半分以上は親殺しです。それから3割くらいは嬰児殺という形になる。
 だから本当に落ち度のない第三者、全く無関係な人が少年の凶行な犯罪によって死に至らしめられてしまった殺人事件数は、75件の殺人事件があったとして、一桁を超えません。年間としては5件くらい。そういう状態がここ20年続いているのが実情です。
 では、その前どうだったかというと、実は昭和30年代後半から40年代始めにかけては、少年の殺人事件というのは、実は毎年300件前後ありました。現在はそこから比べると、4分の1から5分の1になっている。この背景には当時の社会情勢がある。昭和30年代くらいは、中学校を卒業して金の卵と呼ばれて、東京なり大都市圏の中小企業の工員さんとして、地方から集団就職してくる青少年が日本の経済を支えていた。しかし、ひどい社長さんや労働条件があって、そういう中で雇用主を殺してしまうというような青少年がいた。そういう事件が、この300件前後の殺人事件の中には含まれている。今はこうした事件は滅多に起こりません。
 まず一つぜひわかっていただきたいことは、マスコミ報道的なところにあおられて、今の子どもたちには凶悪なやつが増えているんだというような認識をもつことは、間違いだということです。世界的な基準から見ると日本の青少年はむしろ、大人し過ぎると言ってもいい。そのことの方がむしろ心配が大きいと私は思っています。
 今日どうしてこういうところに来たかと言うと、本当は裁判所で、もうちょっと最高裁の家庭局とか、東京家裁の偉い人がこういうところに来てお話すればいいと思うんですけど、実際の裁判所が積極的に子どもの権利に関わって、こういう取り組みしていますということを言えるかっていうと、言える状況にはありません。言える状況になくて、私は一介の調査官でしかないんですけど、30年ほど現場の仕事をしてきました。
 その中で20年ほどは少年事件担当、10年ほどは家事事件担当、今は東京家庭裁判所の家事部にいます。例えば渡辺さんの話の中で、里親さんという話が出ました。その里親さんたちの中には、引き取った子どもさんを自分の実際の養子にして育てたいということで特別養子とか普通養子とか、そういった事件の申し立てが家庭裁判所に来て、それに対して許可を与えるかどうかという判断をする。虐待のことについていえば、虐待親の親権行使について停止するという事件を扱う。それは家事事件の扱いになります。
 少年事件の中でいえば、すごく難しい子がいる。立ち直りが出来ない、そういう子たちはかなりの多くの部分が、幼児期からの親の虐待にさらされて育ってきたという場合があります。また親御さん自身も、その親からそういう形でしつけられてきたというお母さんやお父さんがいる。ですから、一人ひとりの調査官は、個々のケースを通して、児童の福祉や教育のことについて悩んでいるし、実務の中で子どもの権利ということについて考えざるを得ない、そういう職場に居ます。
 ただ役所としてはどうしても後ろ向きで、こういう子どもの権利のことというのは、文科省であったり、厚生労働省であったり、行政機関の省でやってください、裁判所は最後の方にいますというのが、比較的裁判所がとりやすい立場かと思います。
 実は裁判所の職員で構成される職員団体・労働組合として「全司法」という組織があります。裁判所には、裁判官から庁務員のおばちゃんまで含めて、全国で2万4千人くらいの職員がいます。約4,000人は裁判官です。一般職員が2万人ほどいる。そのうち管理職が3000人ほどですから、一般職1万7千人くらい、その50%ほど,約8,000人を組織している小さな組合です。その中に書記官とか事務官とか、家庭裁判所調査官などが入っていますが、その組合の中に「少年法対策委員会」という活動がある。この活動の中で、私たちは、スイスのジュネーブにある「国連子どもの権利委員会」での審査に、レポートを提出し、審査傍聴に代表派遣をするとりくみを行いました。
 御存知の方も多いと思いますが、今年5月の最後の週に「国連子どもの権利委員会」で日本国政府に対する審査が開かれ、日本国政府への勧告が出されました。元々、国連で「子どもの権利条約」を作った際、日本国政府はなかなか批准しませんでした。正確に覚えてないんですが、世界に220カ国くらい国と地域があるなかで恐らく140番目弱くらいのところで批准したと思います。「子どもの権利」については、日本国は後進国だったといっていいと思う。
 それでも「子どもの権利条約」に加盟したため、日本国政府はどんな具体的施策を進めていますかということを、5年に一度、「国連子どもの権利委員会」から審査されることになりました。外務省や文科省、その他、多くの行政府省からの政府代表団がジュネーブへ行って、多くの場合、日本国政府は基本的には「こんなに頑張っています」といった回答を行います。それに対して、教育や福祉や食育など様々な分野のNPOや市民団体の人たちが集まって、日本の子どもの実情はこんなところがあって、まだ問題があるということをレポートにして国連に届ける。
 「国連子どもの権利委員会」は、世界中の司法行政官、それもとても優秀な人たち10名程で構成されており、その審査では政府代表団にもNPOにも鋭い質問を行います。こうして政府レポートと市民団体のレポートを両方見るなかで、日本ではこういう問題がまだあるんじゃないかということを指摘し、解決策を勧告します。
 実はここ10年ほど、私たちの実務に密接する少年法は次々変えられてきました。それはやむを得なかった部分もある。ただ一方で、少年は凶悪になったんだ、だから少年法で保護する必要はない、大人と同じように刑事裁判にかけ、死刑にすればいいんだといった乱暴な議論の中で改正が重ねられているというところがあります。こうした「改正」について「子どもの権利」から見た場合,問題はないのかということから、私たちもNPOや市民団体の人たちと一緒になって、司法現場のレポートを作り、国連に届けて、その審査の傍聴にという活動にとりくんできました。とは言っても簡単じゃない。
 具体的にどんな問題があるんだろうと、全国の裁判所で働く仲間に問いかけて統計をとる・アンケートをとる。その上で「国連子どもの権利委員会」への訴えのレポートを作る。レポートを作ると言っても日本語だけではなく、英文でも作る必要がある。調査官の中には非常に優秀な人たちがいて、日常業務をしながら,完璧な英訳作業もしてくれました。結局、A4で40ページほどの英文レポートを作り、ジュネーブの国連の審査委員会に届けました。多くのNPOの人たちもいろんなレポートを作っていますが、英訳まで自分たちの手でやることはまず出来ない。大学の先生が頑張って協力されてはいますが。レポートを作って、さらに私たちの代表がジュネーブまで行くのにお金がかかる。それは最高裁からお金をくれる訳ではないので、組合の人たちにカンパを訴えて、2年ほどかけて100万円ほどためて、全国から5人の調査官代表を募って、一週間ほどジュネーブに行ってもらいました。審査傍聴をしてきてもらって、それをまとめて、傍聴報告記も作りました。
 私たちのレポートと関係して国連の審査委員会に認められたことの一つは、少年法改正の在り方が、少年の保護・育成という基本理念の後退になっていないかどうか、慎重に見直しなさいという点があります。
 もう一つは、逮捕された少年は基本的に家庭裁判所に送致されるまで、警察の留置場にいるんですが,ここは成人と少年とが分離されてない。つまり、プロの犯罪者の人たちと、未成年者で初めて非行を起こした少年とが、同じところで寝泊まりしている。そこで悪影響を受けないわけない。そこで分離するよう常々主張してきましたが、なかなか予算措置されない。この分離について配慮するよう勧告が出ています。
 家事事件に関わっても、今、少子化が進むなか、夫婦が離婚するときに、面会交流という形で非監護親(子どもを直接引き取らない親)が子どもと会いたい、それをどうルール化するかということが、家庭裁判所の中で大変大きな問題になっています。それに関わって養育費をどう払うかということも多くの問題が起こります。経済情勢が悪くなると養育費の支払いが悪くなるので、私たちがお父さんの方に、「お父さん、こういう調停で約束したんだから養育費払ってね」という履行勧告もしなきゃならない。こうしたことに関わって、「子どもの意見表明権」に基づいた子どもの監護親の指定の仕方や、養育費の確保の方向について政府として考えなさいという勧告が出ています。
 こうした国連での勧告が少しは政府にも影響し、具体的なところ、県の皆さんや市町村の皆さんの子どもの福祉・教育に関わるいろんなきめ細かい活動に繋がるとよいと思います。
 僕は30年前から思っていますが、当時も「最近の親はダメになった」とか「最近のガキは悪い」とか言われていました。ただ私はすごく反発を感じていました。何故かというと、核家族化なんていうのは、100年前の大正時代から都市部では進んでいました。そこで何が起こっていたかというと、普通は子どもの周りに親がいて、親の周りに地域社会があったり、学校制度があったり、親族がいたり、そして最後の一番外側のところに社会があって、つまり裁判所とか警察といった存在と小さな家族とが直接ぶつかる前に、間にいっぱい緩衝帯があったはずなのに、それがだんだん失われてしまったという事態です。社会の問題と親と子どもがいきなりぶつかる、対面せざるを得ない、そういう事態が生まれたんだと思う。それはものすごく若い親の人たちには、しんどいことだったはずです。やめたいって、だから子どもも作りたくないという形になるんだと思います。実はそのしんどさ、今,親が子どもを産み育てるしんどさと、そう親が感じる中で育つ子どものしんどさの二つがあって、昔あった緩衝帯がなくなってしまったことで、様々な問題を親だけではクリア出来ない、十分解決できない、そういうところに追い込まれているんじゃないかと思います。
 だとすれば、地域だとか福祉だとかそういうところでは、家族や子どもと社会というものの間に入る緩衝帯の部分をどうネットワークで作っていくか、そういう必要がある。追い込まれているしんどい親たちに向かって「お前たちはバカか」とか「力がないのか」とか、そういう言い方・姿勢っていうのはとっちゃいけないというのが、私がずっと30年間仕事をしてくる中で続けて思ってきたことです。ここ10年、本当にきめ細かい形で市町村の親支援のネットワークができているってことは、とても有り難いことだなと思っています。
 
花崎さん(コーディネーター)
 国連の子どもの権利条約の報告書に政府以外にNGOが作る会を作ってやっていることについては知っていましたが、司法がこんなに力をもってやってくださっているということについては今日認識を新たにしました。最後におっしゃられたことも、ここの今回のテーマにも関わってくることかと思います。

○高橋克己さん(NPO法人自立援助ホーム「人力舎」ホーム長 )
 初めまして。NPO法人「人力舎」自立援助ホームと言います。聞き慣れない児童福祉施設の名称だと思いますが、未だ全国にも70カ所弱しかありません。
 今日は、子どもの権利擁護・人権ということのテーマで参加させていただいていますが、私はお話できるのは自立援助ホームってどんなところで、どんな子どもたちがいるのということしか、お話出来ませんが、よろしくお願いします。
 私は千葉県職として児童養護施設で10年、子どもたちと関わってきました。そのあと公務員だったので転勤しろということで、児童相談所に行って2年間児童相談員として勤務しました。安定した生活をしていましたが、何を血迷ったかやめました。平成16年に公務員を退職して、こちらの自立援助ホームを立ち上げました。
 自立援助ホーム、一言でいうと家庭で生活をすることができなくなった(虐待・要保護問題・貧困等々)子どもたち(勤労少年)の暮らすグループホームです。
 家庭で生活出来なくなれば、養護施設や児童福祉施設に入所するが、15歳を超えた子たちで「俺は高校行きたくない」もしくは高校を中退しちゃった、高校を卒業したと、いわゆる学生という肩書きがなくなった子どもたちっていうのは、基本的に義務教育を終えているので、社会で自立して生きて行きなさいというのが日本の制度なので、養護施設等々児童福祉施設のお世話になることは基本的にはできない。
 法律が変わって来た。20歳まで養護施設で暮らせるってことにはなっていますが、やはり働く子どもと高校や中学に通う子どもが、一緒に暮らすというところで、生活スタイルなんかも変わってきているのでなかなか難しい。ほとんどの子どもは、中退すると養護施設から出て一人で働くことになります。ただ施設で暮らしていた子どもたちだから、帰るところはない。だからオール住み込み就職をします。住み込み就職といっても、今住み込み就職はほとんどない。だから子どもたちは住み込み就職を探すのに四苦八苦。
 職業選択の自由っていいますけど、子どもたちが仕事を探すときには、職安とか学校の求人の先生のところへ行って、住み込みできる仕事を見つけてください。要するにやりたくない仕事でも何の仕事か全くわからない仕事でも住み込みだから行く。そうすると一番若くて15歳、3年前まではランドセル背負っていたという子どもが住み込み就職。施設を離れて大都会に出て、知らない大人の人たちと初めての仕事を一緒にして、自分の生活を自分で切り盛りしていく。15歳、とても無理。そうすると多くの子どもたちは失敗をしてしまう。失敗というのは何かというと、仕事が続かない。仕事が続かないってことは仕事がない=住み処をなくすということ。そうするとその子たちはどうするか。もう施設には戻れない。ほとんどの子どもたちは路頭に迷う。路頭に迷っても寝るところ、食べるところないと死んじゃう。そうするとどうなるか。
 女の子であれば、今千葉の栄町にでも行って、ピピッピと携帯鳴らせば、30分で自分のことを泊めてくれる男の人がやってくる。そこが入り口になって抜け出せない方向に行ってしまう。
 男の子も同じ、夜・夜中フラフラやっていれば、必ず声がかかる。そういう子どもたちっていうのは、家庭で生活できなくなったのは、その子たちのせいじゃないんだけども、そのような顛末をたどらざるを得ない。これはおかしい、この子たちをなんとかしなきゃいけないということで、養護施設・教護院・児童自立支援施設等々の児童福祉施設で生活したことがある子どもたちのアフターケアをしようではないかということで始まったのが、自立援助ホームです。
 昭和30年代に日本で初めて自立援助ホームが出来たんですが、その時は施設の子どものアフターケアが中心だったんですが、私は平成16年度に千葉の君津で始めたんですが、今は半分以上が施設経験を持たない子どもたちが入ってきている。要は家庭で生活していたけれど、15を超えてホームにやってくる子どもたちが増えている。
 まず児童養護施設対象児童についてのアフターケアや、児童養護施設内での子どもたちのケアというものが、かなりいいものになってきたという側面があると思いますが、やはり虐待の問題ということが高齢児の子どもたちも施設に入所する必要性も出てくる。短くて15歳、長くて18歳となるが、そこはかとない虐待がず〜っとあったお子さん。市町村であり、近隣であり、学校であり、児相でありがおかしいな?でもどうかな?ということで見過ごされて来ていた。
 その中でも非常な不幸な状況で、見過ごされてきた子どもたちが中学を卒業して、やっと自分の力でそこから抜け出そうという気持ちがふっと沸く。虐待を受けている家から逃げたい、このままじゃ殺されると。ウチで来た子どもでいうと、ついに母親が包丁を出してきた。これはやばいということで飛び出して、野宿生活をして野宿生活をしてれば、おまわりさんに声をかけてもらえる。もしくは腹が減ってパンを盗んで捕まるとおまわりさんのところへ行く。そうするとおまわりさんと話をして、実はってことになれば警察から児童相談所に通報してくるというようなパターンでやってくる子がほとんどです。
 その虐待の種類は本当に様々。男の子であれば、ネグレクト+環境+身体的虐待がそこはかとなくある。そこはかとなくあったと言っても、入ってきた子どもに状況を聞いてみるとこれは確実な虐待。「足の傷どうしたの?」、「お父さんにハサミで切られた」、「頭の傷どうしたの?」、「お母さんに殴られて血が出た」とか自然に出てくる。
 女の子の中では、非常にここ数年で増えているのが、性被害の子どもたち。中学を卒業するまでは恥ずかしいし、隠したいし、自分の身に起きていることだとは信じたくないし、ということで僕は乖離と言いますが、そうやって何とか生きしのいできた。だけど高校生になり、やっぱりこれは変だということで逃げ出してくる。もしくは性被害+身体的虐待があって、殺されるという状況まで追いつめられて、やっと逃げ出して警察に保護されてくる。
 いわゆる家庭で育った15歳を超えても、まだそこに虐待があるようなお子さんたちが今入ってきています。そういった子どもたちの多くが、自立支援ホームとはどういうところかというと、そこから働きに行く。私のホームから仕事を見つけて、アルバイトだったり正職員だったりを見つけて、働きに行きます。お金をためて、心の安全が図れた時点でホームを出て、アパートを借りたりして生活をしていく。傷ついた子どもたちがやってきて、ただ働いてお金ためて出ていく。 
 いわば勤労少年の寮ですかって言われるんだけど、ここはそうは簡単になかなかいかない。
 抜毛とか頭の打ち付けとかありますが、あとはPTSD、フラッシュバック。非常にひどい虐待を長い間かけて家庭で受けてきた18歳の女の子が入所した時なんかは、自立援助ホームに来ると基本的には当たり前の生活なので、だんだん安心してくる。私、もういじめられないって。そうすると、初めてそこで自分の傷を見る。あんまり自分が辛いと痛いのはイヤだから見ない。でも安心してくると「あれ、私どっかに傷あるな」って見る。そうすると見た途端にものすごく深い「あれ、私こんなに傷ついていた。うわ〜〜」ってパニックになる。
 わりと出やすいのが過呼吸、過呼吸症候群から歩いていて突然バタッと倒れちゃうとか、わ〜〜っとなってその辺に頭ガンガンとぶつけだすとか、様々な精神的な行動を起こします。そういった子どもたちとなんとか仕事を見つけて、僕らが出来ることは安心して暮らしを提供することしかないので。僕が養護施設に勤めていたころと変わってきたなというのは、愛情だけでは育たないとか、救えない子どもたちが非常に増えている。本当に精神医療・心理カウンセリングというのが必須になってきています。僕らができることは当たり前の暮らしと。彼ら彼女が失ってきた当たり前の暮らし、要するに家に帰ると何が起きるかわからない暮らし、そこから当たり前の暮らしを提供することを心がけてやっている。
 働かなきゃいけなくなった子どもたちは、いろんな意味でハンデを背負います。養護施設で育っている子どもたちっていうのは、国や県のお金で賄ってもらう。ただ自立援助ホームに来る子どもたちは、自分で働いていますので自分のお金で全部やります。
 例えば受診券というのがあって、養護施設の子どもたちが医療にかかると公的負担で全部やってもらえる。だけど自立援助ホームに来る子どもはそれがない。風邪引いたら自分のお金で国民健康保険に入って、自分のお金で受診する。そして自立支度金といって、子どもたちが社会に出る前には養護施設等々であれば、10何万円以上の支度金が出て、洗濯機・冷蔵庫・スーツ等が買える。
 これも自立援助ホームの子どもたちは自分でやらなきゃいけない。ホームにはホーム料というのがあって、子どもたちはホームでの生活費を月3万払います。15〜18歳で家に月3万円入れるってすごいですよね。それで自転車を買ったり、洋服を買ったり、CDを買ったり、全て自分のお金でやる。頑張って稼ぐ子で17歳・18歳で、13〜16万円を稼いできます。そうしないと自立が出来ない。
 もう一つのハンデというのは、自立援助ホームに来る子どもたちは保証人がいない。これは社会のシステムが保証人ありきで出来上がっているからどうしようもない。10代の三種の神器の携帯が買えない。親権者同意が必要で「僕じゃダメですか?」って、「高橋さんは親権者じゃないでしょ」って言われて、なんとか見つけ出して頼み込んで、某携帯会社だけは私が親権者でOKだということでそこでのみやっと買えることになった。
 ただ援助ホームを出ちゃえば、私の名前も使えないので買えない。最も苦労するのはアパートの契約。月16万稼いだ。16歳・17歳が頑張って100万ためました。だけどその辺で遊んで悪いことやって、高校中退になって、それでもチャラチャラしている子どもは、親がアパート借りてくれて適当に入れるんだけど、自立支援ホームの子は保証人がいないということで借りられない。まして20歳未満は、契約者にはなれませんって言われたり。私が保証人でもダメですかといっても、ほとんどがダメ。子どもたちは言います「他の子はいいよな。何で俺こんな稼いでいるのにアパートすら借りられない」なんとか不動産屋に頼み込んで、私が保証人で借りられたりする。
 その時いつも判子を押すたびに、親には人の保証人には絶対になるなって言われて育ってきたのに、これ何人目だろうとか。でも一昨年あたりから社会福祉協議会が「ホーム長さん、それでは負担があまりにも大きすぎる」ということで、全社協でバックアップしましょうと。
 「ホーム長さんが保障人になるときには、私たちが保険をやりますよ。何かあったら300万まで保障します」と言ってくれたので、今は安心してぽんぽんと押しています。あとはローンが組めない。働くと通勤用のバイクとか、免許取れば車が欲しい。でもローンが組めません、保証人がいないから。だからいつも現金一括払いです。とはいえ、バイクや車を未成年に売る時に今業者の方は親の確認をとります。だから「僕じゃダメですか」ってまた言って、なんとか売ってくれるところで買う。非常に生きづらい状況があります。
 そういったハンデを持ちながら、でも彼はなんとか社会に出ていこうとするが、自立援助ホームで、1年から1年半暮らしてアパートを借りて出ていく子が大半なんですが、そのままうまくいく子はほとんどいません。一人でやる方がよっぽど問題が大きい。自立援助ホームにいる間はなんとか私たちがすぐ気付いて、手を出してあげることが出来るんだけど、社会に出れば全部一人で立ち向かわなきゃいけないから課題はそっちのほうが大きい。だから私たちの自立援助ホームのモットーといえば、自立援助ホームを出た子とも関係を切らずに行こうと。彼らがいつでも相談出来る体制を作っていこうというふうにしている。そんな自立援助ホームを出た子どもたちを見ていると、この子たちの持っている幸せのレベルってすごく低いなって思います。
 例えば、生活保護を受けて暮らすことであったり、食べるものがなくて三日に一回くらいしか白いご飯が食べれないとか、財布の中を見てもあと50円しか入ってないとか、そういうことが彼らにとってあまり不幸じゃない。だから頑張って働かなきゃとか、働いてお金稼がなきゃ暮らしていけないんだとか、そういう気持ちがなかなか宿らない。僕らから見たら何で働かないの、働いたら焼き肉食い放題行けるじゃないとか思うけれど、働かない。やばいと思わないの?って、なんとかなるって。だからすごく荒んだ生活です。それは何かっていうと、家庭がそうだった。養護施設で育った子はまだいい。養護施設の暮らしっていうのが、こういうのが暮らしなんだって学ぶことができる。 15年以上、家で暮らしてきた子っていうのは、その家を学んで来てる。父ちゃんと母ちゃんはこうやって育ててくれたって。虐待はされているけど彼らには父ちゃん・母ちゃんだから、「オレんちはこうだったから、こうでも生きて来れた。」というのがある。
 例えば、アル中の母ちゃんと二人暮らしで、毎日朝から晩まで酒を飲んでいる母ちゃんのところに知らない男が入れ替わり立ち替わりきて、学校にもほとんど行かずに貧しさ極まりない悪臭漂ううちの中で暮らしてきていると、それが彼らにとってはまあまあ普通となる。なかなかそこからグレードアップさせていくことが非常に難しい。親(の仕業)はなかなか超えられないなと実感しています。そんな中でも、彼らのそういった姿を見ていると、この子が30・40歳になったときどうなるんだろう。60歳で死ぬときってどうなんだろうっていろいろ思う。ただもう願うしかないという状況なんですが、今彼らには非常に厳しい時代が訪れてきて、施設を出た子どもたちや未成年の中卒の労働者たちを受け入れてくれる会社っていうのは、前はボチボチあった。だけど例えば、看護婦さんなんかも准看制度があって、中卒で学校に入れたという時代があった。今は完全高卒です。高卒の世の中になっているので、中卒の子どもたちが非常に生きづらい。
 職場も外国人労働者か少年しかいなかったような、いわゆる3K・5Kと言われている職場が今は職安に行っても「こちらの会社は今13人受けられていますね」というような、要するにリストラ組みだとか、20歳を超えた高卒・大卒組みが流れている。全く仕事がない。
 本当に社会の現状も、彼らが持っている社会的ハンデも、幸せの希求のレベルも低い。その中で彼らの幸せを願うことっていうのは、非常に切ない思いがあるんだけど、私たちが信じて止まないところっていうのは、彼らは孤独なんだと。その孤独さ加減が、彼らが死ぬまで生きることをさせない。孤独でないように、それは何かといったら僕らがただ会って「元気か」ってやることではなくて、彼らが上手に人に頼れること。上手に人に頼れるようになることが自立なんだと。 
 それから自立援助ホームにいるときは、別に非行や働くことができないことの自立矯正・更生指導することではなくて、彼らが一生生きていくための心の問題としての誰かに適切に信頼感を持って相談が出来る、頼りにすることが出来るという力を身につけて欲しいと思いながら日々の生活をしていますが、口で言うときれいに聞こえますが、なんてったって15歳以上の修羅場くぐってきた子どもたちなのでなかなか手強いです。男の子は最近弱いです。男の子に「こらっ」って言うと「すんません」って。女の子、「てめぇ、親でもないのにガタガタ言うな〜」って大抵女の子。いろいろあります。
 共に一緒に暮らしていくって中でぶつかり合い、少年期特有の反抗期もあり、それプラス満たされなかった愛情欲求がプラスされていくので、それは大きなうねりとなって僕らの前に出てきている毎日を過ごしています。
 
花崎さん(コーディネーター)
 ご自分でおっしゃっていなかったので、私からいいます。このレジメの裏にチャリティーCD販売とあります。人力舎ホーム長と千葉の児童福祉で働く仲間たち5人によるメッセージバンドです。運営が大変なんだということがありますので、是非皆さんお買いあげいただくと有り難いので宣伝させていただきます。
 今、私ども、里親と児童養護施設が子どもたちの受け皿としてあると申し上げましたけど、今の話でもわかるように、その子どもたちはまだ守られている部分というのがある。それと親から離れて社会に出るまでの間に、なかなか十分ではないけど愛情をかけられたり保護されたり、優しい言葉をかけられたりして、今までの傷を治めていく時間的余裕も少しはある。中学校で入ってきてすぐ出なきゃいけないとか、高校近くで入ってきて高校中退してしまったということで、なかなかそういうのが出来ない子どももいますが、それでもなんとかそういう緩衝地帯がある。でも今の話のように、地域の中から児相を通して自立援助ホームに来るということ、それを受けるということは、とても大
変なことだと思います。私もいつも思うんですが、この子どもたちの受け皿は施設と里親、そして今、自立援助ホームが立ち上がって4・5年くらい。それしかないのです。
 元々、自立援助ホームというのは、東京で施設の職員だった先生が一生懸命立ち上げて、本当に自分たちの力だけで頑張ってきたという、経緯があります。法内施設として認められたということはいいことだと思いますが、まだまだ地域社会で必要としている子どもたちがたくさんいるということを、改めて今日わかっていただくといいなと思います。ですからもっとたくさんの自立援助ホームが必要だし、またホームと名を打たなくても地域の中で、彼らを守るシステムが出来たらいいなと思っています。
 皆さんの中で言っておきたかったなとか、視点を変えていっておきたいということがあったら補足していただきたいと思います。

渡辺さん(県 虐待防止対策室長)

  今パネリストの皆様から、それぞれのお立場で日々努力されていることを具体的にお聞かせいただいて大変勉強になりました。
 先程、次世代の計画について説明しましたが、この計画を推進するためには、県だけでなく、今日おいでいただいている市町村さん、施設の方、裁判所さん、会場にいる皆さん、本当に県を挙げて、ごいっしょに取り組んでいただき、特に、児童虐待の防止や、子どもの人権が大切にされる街づくりを進めていかなければいけないと改めて思っています。皆様、よろしくお願いします。
 私はこの虐待防止対策の仕事はまだ1年目でして、本当に児童虐待の問題は、子どもの人権を著しく侵害するもので、子どもの体と心に大きな傷を残し、将来に大きく影響し、ときにはかけがえのない命を奪うことになりかねず、絶対にあってはならないというふうに、この7ヶ月間その思いをとても強くしています。

染谷さん(鎌ケ谷市 子育て総合相談室長)
 鎌ケ谷だと18歳以下の世帯は約二万世帯あるだろうと思っています。我々はそのうちの本当に一握りの家庭しか追っかけていませんので、前にも新聞に出た児童相談所の方々がいつ自分のケースが新聞に載るか不安だと書いています。我々も正直言って今やっていることがベストだとは思っていません。いつ何があるかっていう不安感はいつもあります。ただ、やれるところからやっていこうという気持ちでいます。

伊藤さん(家庭裁判所 調査官

 いろんなことがあるかもしれませんが、少年事件数は約20万件弱だと言いました。調査官、実は全国に1,400人くらいいます。200人くらいは偉い人なので、仕事をほとんどやらないので外していただいて、1,200人のうち700人くらいは家事事件の担当で、500人が少年事件をやっています。19万件、それを500人の調査官で、全国でやっている。一人当たり何件やっているかを考えていただければと思います。この状態は県でも市町村でもみんな一緒なんじゃないか。
 特に裁判所は、ここ10年、司法制度改革ということで、裁判員裁判も去年5月から始まっていますが、極めて多数の法律・制度が導入されてきました。ただ法律・制度が変わる、いろんなことをやれって言われても、お金と人が来なくてどうやってやるんだという問題があります。問題を抱えた当事者や少年をサポートする側もエネルギーがいるのです。だからそのことは、僕は大事なことじゃないかなと思っています。

高橋さん(「人力舎」ホーム長)
 お金と人って話が出たけど、一年目ひどかった。一応国の補助金事業なんです。児童福祉法に位置づけられていますが、一年間の補助金が翌年の3月にならないと出ないと。
 だから一年間は子どもたちのホーム料と、CDを押し売りして、あとは段ボール箱でカンパ箱作って、なんか集まりがあると行ってちょっとここに入れてくださいと。あとはそれこそ市民の方々の寄付、まだ人力舎始まって7年、米を一回も買ったことがない。定期便で乾物を送ってくれたりとか、近くの人が魚持ってきてくれたり、花崎先生がお世話になっているところから缶詰・パンなど。
 ある人が言っていたんですが、日本は世知がらくなってきたけど、福祉は必ずそこにあると。助けなきゃいけないところは、必ず助けてくれる国民性が必ずあると言ってくれて、それを肌で感じながら日々います。決してCD買ってくれってことではありません。

【会場との質疑応答】

花崎さん( コーディネーター)
 4人の方々から大変詳しくお話をいただきました。場合によると、そういうことなのか、ということで今日はとても勉強になったという方いらっしゃると思いますし、いやそういうことじゃないんだよと、思われている方も、もっともっとこういうところを聞きたかったのに、これについての発言がないという方もいると思います。これから質問を受けます。

岡田泰子さん(子ども劇場千葉県センター )
 今日はたくさんの資料の基に、今まで知らなかった情報をたくさん得ることが出来て勉強になりました。私の質問は、子ども自身が自分の権利を知り、その守ることについて、具体的なことをわかる方に答えていただきたいと思うんですが、「子どもの権利ノート」が要保護児童の施設入所・里親の家に配布されるというふうなこと。
 それと「施設内の虐待防止のシオリ」が子どもたちに配布され、子どもからフリーダイヤルで電話相談が出来るという情報を得ました。それで最近、私どものチャイルドラインを開設しているんですが、電話が携帯からの電話が増えている。中学校2年生くらいで7割が携帯を保持しているし、高校生になると、もう9割以上が携帯で、家電話からかけてくるってことがだんだん減っています。こういう状況において、施設にいらっしゃる子どもさんたちは、携帯の保持や使用についてどの程度の自由度や権利があるのかというようなこと。
 もう一点別のことですが、これは新聞で一回だけ読んだことなんですが、子ども手当の1万3千円というのが支給されるようになりました。それが施設の子どもたちのために支給される時に、将来に対して、その人名義の貯金をしてあげたいと職員の方たちが思っていても、やぱり制度上難しいことで出来ないと。本当に困難を抱えたひとたちにこそ必要なものが、どうしてそういうふうに行き届かないのかなと、素朴な疑問を感じました。その2点についてお願いします。

花崎さん(コーディネーター)
 子ども自身が自分の権利を知るというところで、「権利ノート」について、これは以前から子どもの生活ノートとか、いろいろな名前で各都道府県で配ってはいたんですが、実際に施設でそれを子ども達が周知するってことはほとんどなかったように思う。ただもらってそのまま持っていたという。 
 職員もそれに対して現場の動きとしては、そんなにあなたの権利はどうだとかっていうことは、今まであまりなかったように思います。
 そこで、県の方で「新たに権利ノート」を作って、施設内虐待防止の一環ということになって、改めて先程の説明のようなものが配られるということで、これは児童相談所の方が見えて直接子どもに「権利ノート」を渡しながら権利は、こうですよということを話してくれるシステムになっています。

渡辺さん(県 虐待防止対策室長)
 権利ノートについては、先程お話しました通り、昨年度、研究会の方からいただいた「指針(子どもが大切にされる千葉県をつくるための指針)」の提言にある権利の部分などを盛り込みながら作成して、今新しい権利ノートを施設入所児童や里親さんに預かっていただいている子どもに配っているところです。このノートで自らの権利について、子どもたちに直接確認をしていただければと考えています。

花崎さん(コーディネーター)
 当然それは、子どもの知る権利なのであっていいと思う。ただ難しいのは、中での小さなトラブルについてどうそれを扱うかというところでは、それが子どもの権利が施設内で侵害されているものなのか、それとも一つの問題を解決する時のプロセスとしてのものなのかという判断が難しいということ。とりあえず知ることが大事だと思うので、今そのように徹底されているということです。
 それと携帯のことですが、今全国に児童養護施設は約570の施設があり、それぞれ対応が違いますが、私のところでは中学生までは持たないと、必要ないという認識です。高校に入ると友だちのからみだとか、遠く離れるので連絡のこともあるので、持ってもいいけれども、ただ本来的な学業が疎かにならないという点で赤点を取らないとか、バイトでお金を払えるだけのお金、最初20万って言ったんですが、20万はちょっと多すぎるかなと思って、10万くらいのお金がたまっているということを条件として、使い方によっては話をして最初は10時以降取り上げようかと、先生たちもいろいろ考えました。夜中によからぬ電話されたら困るとか、そんなようなこともあったんですが、ここは子どもを信じて、とりあえずそういう条件を満たせばトラブルはありますが、その場で先生たちとよく話をするということで持たせています。一つはいきなり社会に出て持たせるよりも、これだけかければ、これだけかかるという経験をした方がいいということもあるので持たせています。
 それから子ども手当の件ですが、子ども手当はほとんどが施設には来ません。親のところに行くようになっていて、これは県とも話をしているんですが、市にも私言いに言ったんですが、これは国の決まりだからどうしようもないと言われて、子どもは施設に暮らしていて市町村にいる親のところに子ども手当が入ります。
 28条(児童福祉法)で来ている、つまり親の許可がなしに虐待などのケースで施設に入って来ている子どもについては、あげるところがないから一応施設の方にあげてもいいとなっています。
 
渡辺さん(県 虐待防止対策室長)
 父母のいない子ども等子ども手当の対象にならないお子さんについては、特別支援事業というものがあります。今年度の県の9月補正予算で通ったものです。特別支援事業というのは、児童福祉施設に入所している中学校修了までの父母のいない子ども等について、平成22年度の措置として、子ども手当相当額月1万3千円が行き渡るように施設等に対して補助を実施するものです。先程貯金が出来ないという話がありましたが、特別支援事業については、施設等に対する補助金は子どもの日用品とか学用品、旅行等の消費的な経費として使用することになっています。というのは、この特別支援事業は、国の事業である「安心こども基金」の地域子育て創成事業を活用するもので、国の方で児童への現金給付や貯蓄については、対象にならないというふうになっており、補助金は消費的な経費として使うことになっているからです。
 ただ施設側からも、子どもの自立にむけた貯金に充てることについての要望は出されているところです。国では平成23年度以降の取扱いについては、子ども手当制度の在り方の検討の中で施設入所中の児童への対応も検討しているということなので、県としても今後の国の検討を注視していきたいと思っています。

浦島佐登志さん(児童虐待防止ネットワーク)
 今、児童虐待防止ネットワークというところで、児童福祉法の改正と児童虐待防止の改正で10年間ずっと東京の方で政府相手に交渉してきました。先程花崎先生に言われましたが、なかなか実行力のない法律ばっかり作って申し訳ありませんが、この活動などについていろいろ質問していきたいと思います。
 先程、伊藤さんの方から、国連の子どもの権利委員会のお話が出ましたが、我々は児童養護の方で政府の方にレポートを提出しています。そこで勧告が出て、日本について言えば、家族を基盤とした代替的養護に関する政策が存在しない。それから小集団の家庭型養護を提供しようとする努力にもかかわらず、多くの施設の水準が不十分である。また代替的養護施設において子どもの虐待がひどく行われているという報告について留意をしたい。
 一応この三点が骨子で、政府に対して勧告が出たんですが、一応県の方にはここらへんは、今後国の施策の中で必ず何らかの形で政策化して出てくるものだとご理解をしていただきたいと思います。まず県の方の施策についてですが、一点非常に気になるのが、地域小規模施設の設置数があまりにも足りないんではないかな。2年前厚労省の方で、大規模施設はそのこと自体が虐待であると、審議会の方針として出している訳だから。兎に角やっと富浦学園が小規模化する、とってもいいことだなと思うんですが、千葉県では未だにそういった意味では大規模施設がある。特に一宮学園の150人、恩寵園の70人、やっぱりそういう大規模施設は県の方からお金が大変だっていうのはわかりますが、意欲的に小さな単位に変えていくような方向性。ユニットは出来ているから、あとはどういうふうに変えるか。
 一宮なんかは、もう学校に行って学校に帰ってくるっていう感覚なんで、職員のレベルはいいんですが、あれでは子どもが休まらないんじゃないかなという感じがします。そこらへんについて是非とも児童養護の問題については、なんとかしてあげたいと思っています。
 我々この間、いろんな法制度をやってきて、このあと何をやるのかということについて、我々の中では児童養護に特化したいわゆる「青少年福祉法」みたいなものを作りたいということで今厚労省と話をしている。大体今、東京では大学・専門学校への進学率90%を超えている。一都三県では大体80%を超えている現状の中で、去年初めて厚労省が貧困度調査というのがあって、社会的養護の出身者の大体40%がだいたい最低生活レベルに張り付いていると。これはちょっとひどいんじゃないか。今力を入れて欲しいなと厚労省の方にお願いしているのは、施設出身者の大学進学率を上げてくれと。
 今年の高卒の子どもは未だに20%近くが、まだ就職先が決まらないというなかで、施設出身者は仕事を探すのが大変。高卒で就職先探すというのは、それだけでもハンディキャップ。そういった意味で、例えば何とか施設から大学に通える環境を作って欲しいとか。
 あと今なんとかならないかなというのは、未成年者後見人という制度があって、ほとんどみんな知らないんですが、例えば子どもの財産を守るために、僕、3人くらい未成年後見人をやったことあるんですが、その辺の民法の縛りがきついので、それを弾力化する形で社会的養護が必要な子どもたちには、未成年者後見が誰か出来ないかね〜ということを今国と話しているんですが。
 兎に角まず、弁護士がやれみたいな話をしているんですが、これも恐らく4・5年くらいのレベルで、何らかの形で法制化したいと今思っています。
 それから特に社会的養護について、今進学の話をしたんですが、里親さんの場合にも、実子として育てた上で、進学させることには社会的に生きていくスキルをつけさせるという意味がある。そこで、 社会的養護は子どもだけじゃなくて、里親さんに育てられた子どもの18歳以降の問題点について、社会福祉でカバーしていかなきゃいけない領域だと。私の今の立場でいうと、厚労省と制度・政策問題でお話をする立場でやりとりをしていますが、是非とも県の方でいろんな関係諸団体と協議をした上で、そこら辺のことを考えて欲しいと思います。
 あと地域小規模について現状なんですが、東京では今地域小規模いらないってところもある。だいたい一つの施設で2カ所くらい地域小規模施設を持っています。葛飾の代々木にある共生会希望の家は、金町と新小岩に2カ所地域小規模持っています。40人規模の施設ですから本体28人しかいない。東京はもうそれが普遍的な状態なので、千葉にそこまでやれとはなかなか言えませんが、今経営コンサルタントみたいな形で、あちこちの施設の施設基準が詳しくなっちゃったので、どういう運営をすると一番施設にお金が入ってくるのかみたいな研究をやっているので。だいたい今40人で地域小規模2つ、中をグループホーム化する、これが一番お金が入ってくるという話をしています。
 今関わっているところで、茨城でも2カ所の施設が地域小規模の施設持っていて、栃木でも1施設が2カ所開設しているし、そこら辺のスピードと比べると千葉は遅いのかな。それとも花崎さんたちの方が、私たちがやるっていう声を出さないからなかなか広がらないのかわからないけど、そこら辺を厚労省が、大規模な施設で施設運営をやっていること自体が虐待だってことを明確にしているので、一宮とか100人近い定数の施設のことに関しては、本当に施設を分割するくらいの気持ちで環境の改善をしていってあげたいと思います。
 高橋さんみたいなところには、僕は「恩寵園の子どもたちを支える会」の代表でもあって、自立援助ホームさんがいなかったら、あの子たちも助からなかったと思いますので、これからもそういった子どもたちのためによろしくお願いします。
 この会場にいる皆さんにちょっとご報告とお礼なんですが、「恩寵園の子どもたちを支える会」のちょうど10年になります。廃園騒動から。まだ最高裁で継続して裁判は争っているんですが、一応この間、関わってきた子どもたちは全て原告も含めて全部自立して、最近また一人赤ちゃんを産まれたという報告も受けました。先程高橋さんのお話に出て来たような状態の子たちだったんですが、皆さんたちに愛されて大人になることが出来て、やっと20何人全員が自立して生活ができるようになりました。いろいろご支援ありがとうございました。

花崎さん(コーディネーター)
 ちなみに私のところ小規模2つです。
 
渡辺さん(県 虐待防止対策室長)
 現時点で地域小規模をやっていただいている施設が花崎先生のところと、民間施設ではもう一カ所あります。もう一カ所の施設も2つの地域小規模を持っています。あと県立施設の富浦学園は昨年度までは1施設だったんですが、今年度もう一つ加わって2施設、以上県所管の児童養護施設では、3施設に6つの地域小規模施設があります。
 今後の方向なんですが、次世代の計画の中でも家庭的な雰囲気の中での養護体制を導入して子どもの生活の質の向上を図るためには、大舎・中舎制から小舎制・小規模グループケア、あるいは地域小規模児童養護施設の整備などの施設のケア形態の小規模化を図るという方向性を掲げています。こういった方向性で今後5カ年の計画ですが、進めていきたいと考えています。

浦島さん(児童虐待防止ネットワーク)
 そこはもう国の施策にも書かれてあるからそういうふうになっていると思うんですが、僕らが今虐待問題を抱えているずっとやってきたメンバーの中で一番重要視しているのが、卒後対策なんです。18歳以降。施設にいたあと、結局彼らは法的な手だてもなく、一人で生きていけよと放り出されちゃう。そういう形の中で、彼らは社会的最底辺を形成するもっとも大きな升として存在する。我々はそこを制度として変えてほしいと。社会的養護を受けてきた子どもについてっていうふうに、本当は不登校とかそういったものも含めてカバーしていければいいかなと思っている。
 そこらへんに対して22・23歳まで、大学を出る年齢くらいまでのスパンの中で公的支援をするべきではないか。これは厚労省自体も乗り気なんです。
 今年、東京都の主幹と話したんですが、正直今すぐ5割とはいかないけれど、遠くない将来の目標として、児童養護に関わった子どもの5割を大学とか、専門学校に行かせたいという話をしてました。千葉県の財政状況を見るとそこまで言えとは言えないんですが、同じ地方自治体として東京都がそう考えているということを含めて、今ここで回答しろとは言いませんから、一応そういうことだけを頭の中に入れといていただければ、有り難いなと思っています。
大野博美さん(佐倉市)
 高橋さんにお聞きしたいんですが、この全国自立援助ホーム一覧というのをいただいて千葉県以外にも神奈川県・東京が特に多いんですが、この中で国庫補助だけでなく県単で財政的援助をしているところがあるのかどうか。一番進んでいるのはどこなのか。また千葉県はどのあたりにいるのか。 そして千葉県が、今後どんな援助をしていくべきなのかを教えてください。
 
高橋さん(「人力舎」ホーム長)
 平成16年、私が人力舎を立ち上げた時が全国で28カ所目でした。それから7年経って、10月の全国大会で確認したら全国で70か所なっています。東京、神奈川はやはり補助金の額はかなり十分な額が出されていると思います。
 平成16年千葉県で人力舎始めましたって言った時には、全国で一番貧しいホームが立ち上がったと言われました。というのは東京が中心となって自立援助ホームの実践の歴史が作られてきていることもあって、東京都自体がまず都単を付けたのがスタートなんです公的補助って。国は後付なんです。最初東京都が都単を付けて援助ホームを援助したというのがあるので、その歴史に国が後追いでくっついているので、東京都の公的援助はすごいです。国の倍とかっていうような時代がずっと続いていました。ただ千葉県の県庁の方がいらっしゃっている訳でなんですが、年を重ねるにつれて、自立援助ホームの現状を理解していただいて、徐々に県単の方を増やしつつ付けてもらってきましたが、実は去年法改正がありました。
 今までの補助金体制、一つのホームに対して年間いくらですよ、という補助金の体制・法律が変わって、措置費体制に変わりました。養護施設と同じように、自立援助ホームに何人子どもがいるかによって、補助金の額が変わると。例えば自立援助ホーム、僕のところ6人が定員なんです。
毎月6人フルで定員が充足してれば、一年間ぼちぼちの職員二人くらいは雇えるくらいにはなる。ただ自立援助ホームの性格って、社会に出していくことを目的にやっていますので、いっぱいいたら変なんです逆に。だからどんどん回転していくので、常時6人なんてことあり得ない。
 そうすると国のほうで言っていたのが、基本的に平均的に6名定員の援助ホームに対して4人子どもがいるだろうということを想定して措置費を作った。ただその額では職員1.5人雇うので精一杯という状況があります。実はそれにともなって、県単も補助金時代には全国で5番以内に入る県単を出してくれていました。ただトップの東京があまりにもでかすぎるので、その下はどんぐり。それこそ200万から400万の間をうろちょろしている。法改正に伴って、措置費制度になったとことをうけてほとんどの都道府県が県単を切りました。措置費でやってくださいと。東京はもちろん今まで通りのだいたいの額がついています。
 各県も今まであった県単が全て切られるというのはきついということで、交渉して県の方でなんぼか出しましょう、でも今まで通りにはいきませんよというところで、若干ながら県単を出しているところもあります。千葉県については、私の方から兎に角、福祉というのは人と場所なんだと。人と場所がなかったらやれない。だから場所と人を確保するだけの県単を出してくれと、なんとかお願いをして、家賃補助という形で法律が変わってからも出していただいています。
 年間の家賃分総額の半額ということで、全部出してって言っていたんですが、半額になったので来年は3分の2出してって言おうと思っています。それが全国でどのくらいかっていうと、全国の中では県単まるまるなしというところで、やっているところもあります。ある意味、県単が出ているということだけでも、全国でいえば県単出ているんだね〜と言われるような。
 要は、自立援助ホームは兎に角どこも貧しいもので、求めているレベルが低い。だから100万でも出るとやった〜みたいな騒ぎになるから、ただ東京都の制度を全国に浸透して欲しいっていうのはあります。その中にはいろんな細目があって、自立援助ホームって要はホームにいる間だけが子どもたちの関わりの機関ではないということ。どちらかというと、出てからの繋がりのほうがかなり精神的にも大変だという部分を担っている。そういう意味ではインケアの子どもたちに対しての措置費だけではなく、アフターケアに関するものが欲しいと。それからもちろん、人と場所という意味では正職員一人が生きていくのが精一杯。二人目の職員は掛け持ちでもしてないと食えない状況がある。せめて6人の子どもを見るのに3人は絶対必要、3.5は必要。少なくとも3人の正職員が継続的に、昇給アップ15万で頭打ちではなくて、ウチのホームの職員は子どもたちより稼ぎ悪いよねって言いながらやっている職員もいる。せめて職員3人が生きていけるだけのお金が欲しい。
 それから切望するのは、就職が非常に厳しい状況の中で資格取得に関する補助が欲しい。資格取得っていっても難しいことはできない、ホームにくる子たちは。字を見るだけで熱出る子たちなので。だいたい「平仮名」しか読めないって子がほとんどですから、漫画も読めないって子もいて「漫画の何見ているの」って聞いたら、「絵です」って言う子もいるのでそんなに難しい資格はとれない。ただ車の免許くらいはとらしてやりたい。車の免許っておもしろいですよ。
 認められたことがない子どもたちにとって車の免許って行動療法みたいなところがあって、頑張って行って授業受けて1回実車すると判子もらえるんですよ。だから出来たっていうのが、ちゃんと目にわかるものとしてもらえて、最後は免許がやってくる。ものすごい成功体験になるんだけど、35万円かかる。35万円の金をどうやってためて出すんだっていうところがあるので、みんな頑張ってほとんどとっていますけど、そこに対する援助は全額ってなっちゃうと、子どもたち自身がそこにすごく甘えを持ってしまう部分もあるので、補助という形で出して欲しいなというのはあります。
 あとは、就職支度金というアパートを借りるためについての援助も若干あったらいいなというところはあります。アパート借りるのに最低20万円かかるので、1ヶ月生活するのに10万円必要なわけで30万円絶対必要なんです。30万円と車の免許で65万円なんです。
 
桑田尚子さん(市原市)
 鎌ケ谷市の児童虐待防止対策で子育ての孤立を防ぐというところで、未然に防ぐというところでかなりきめ細やかに活動しているなってことでとても感心しました。子育てサロンについてお聞かせください。ここで移動型で単独事業ってありますが、移動型っていうのは場所をみると第二中学校とか、総合福祉保健センターと書いてあるので、中学校の体育館を週2回開放してやっているのか、どのようになさっているのか。この事業として年間どれくらい予算を組んでおられるのか。
 これは市単独ってありますが、今子育て支援センターとかいろいろあるが、この単独でやるには、他から何が違うのかといったときに、どういうふうに応えられていたのか、お聞かせください。
染谷さん(鎌ケ谷市 子育て総合相談室長)
 サロンの方ですが、移動型というのは当初我々の方で、第二中学校の体育館の下にコミュニティールームという、地域開放型の施設があってそちらを利用していました。そこだけでは場所を固定してしまうために、児童センターにスタッフが動いてやっている。それは児童センターでも、こういうことをやりましょうという一つの啓発事業としてやっています。
 児童センターでは、子育てサロンの良いところは、お子さんをお持ちの不特定の親子が自由に出入り出来ると。それまでは児童センターは、特定の親子に毎週1回とか、親子クラブを開催してやっていたので、自由に出入りできない。今のお母さんたちは、あまり拘束されたくない。2時間の間に自由に出たり入ったりできるようなのが欲しいというのがサロン。
 そういうのを児童センターでやりましょうということで、児童センターに啓発として出向いて移動型でやりました。費用等は職員の賃金で、専任ではないのでほとんどかかっていません。
 子育てサポーターさんもボランティアですので、1回出ると1,000円の謝礼を差し上げています。年間で700回くらいあるので、70万円くらいかかっています。それと市単独事業というのは、つどいの広場がこれはたまたま中央児童センターに場所があって、週3回火・水・木と9時半から3時まで開いています。そこにパートさんですが、専任の保育士さんが二人入っています。
 そういう常設型を国庫事業でやっています。それに対して場所がないので、第二中学校のコミュニティールームを借りているんです。子育てサロンは場所が固定してなく、子育て総合相談室の保健師が兼務でやっているという形で国庫事業もらえないので、市単独事業となっています。

桑田さん(市原市)
 それで全部で、何カ所でやっているのか。そして、またここの中には障害をお持ちのお子さんもおられたんじゃないかなと思う。育てにくいとか育ちにくいお子さんの場合には、どうしてもお母さんが受容出来ないというか、かわいくないと思って、そういう虐待になりやすいってことを聞いているんですが、そのような事例があったのかも聞かせてください。

染谷さん(鎌ケ谷市 子育て総合相談室長)
 現在は日中、月・金で我々がやっているのと、児童センターが5カ所あります。そこでもやっています。7カ所ということです。
 それから親子の接触がおかしいとなれば、保健師・保育士・サポーターさんが近づいてお話をする。場合によっては、そこから相談に繋げていく。場合によっては、幼児療育指導室とかに繋げていくやり方もあります。母子保健の方で健診の方で、ちょっと様子がおかしいという子がいると、逆にサロンに来てください。サロンに来たらどうと誘いかけます。サロンの場でそういう繋がりを持つ、市のスタッフと繋がりを持つ場面にも使っています。いろんな意味で、ママ友を作るという以外にもいろいろ利用できている。

佐野優さん(「こもれび」代表)
 私は今、松戸の社会的養護の当事者参加民間グループ「こもれび」の代表をしている「優」こと佐野です。私は、実は前にいる「野の花の家」の花崎園長ママのところで暮らしていました。今日の感想は、非常に難しかったです。全然わからなかったし、たまに聞きにいく高橋さんの話は、すごく共感出来る部分はたくさんあるなって思っていて、そんなふうに聞いていました。
 さっき児童養護施設が大舎制とか、中舎制から小さくなった方がいいという話が出たりしていたけど、「こもれび」を立ち上げていろんな児童養護施設を見に行って、私は「野の花の家」で生活をしていたから、「野の花の家」の生活っていうのが、当たり前って部分があったけど、他の施設は他のやり方があって、男女のフロアが違ったりとか、本当に全然違う。
 それこそ、みんなで学校みたいに生活しているところもあれば、小さくして小分けになって生活しているところもあって、すごいなと思って、こんなに違うんだなって見てきて思ってて。
 でも東京都のとある偉い方と話をしたときにも、大舎制が悪いとか小規模にしなきゃいけないとか、小さくするからいいとかあると思う。だけど個人的な意見なんですが、大舎がイヤだとか、小規模がイイとか、そこで暮らす子どもたちにしかわからないと思う。
 それを大人が勝手に決めることではないと思うし、大舎が全部なくなって小規模がいいとか。だからといって、大舎のままでいいのかって言ったら、そうでないこともたくさんあるのかもしれないけど、統一する必要はないのかなと、個人的に勝手な意見として思ってる。
 ここは千葉県だから、千葉県とかの人権懇話会とかの講話の意味さへもわからない私が言うのもなんなんだけれど、千葉は千葉のペースでやればいいんじゃないのかなと。東京がどうとか、ここがこうだよとか、それはそれぞれの県でやっていることなんだから。じゃなくて、これは千葉県の話でしょ。千葉県が今できることとか、今ここまでのお金が出せるとか、そういった中で出来ることをやっていけば、いいんじゃないのかなと私は思う。
 あとは人権懇話会が大人しか集めないでやってるところなのか、そこら辺はよくわからないけど、子どもと一緒になって話せる場とか、内容的にもっとわかりやすい内容だとか、高橋さんみたいなのがいっぱいいればいいな。
 そんな感じで、子どもたちも入れて話が出来たりとかするような場があったら、おもしろいんじゃないかなって思うのと、鎌ケ谷のいろんな話が出てて、すごいいいな〜って思うこともあるんですが、若ママ支援とかいろいろ出たけど、私は「野の花の家」を15歳で退所して生活をしてきた人で、悪いところにもちょいちょいあったし、実際話を聞いてても「そうだろうね」って共感する部分もあり。
 私は、今日ここにも連れてきてるけど、10代で出産していて、散々周りの人たちにも虐待をされてたから、虐待をするんじゃないかとか、なかなかママ友が作れなかったりとか、子育てってこともわからなかったし、不安っていうのもあったけど、完璧にならなきゃって思った部分があって。それは、まわりの大人の人たちから「若いからだよね」とかいう言葉もそうだったし、相づちじゃないけど「若くても頑張ってるよね」って言っておきながら、近い場所で見られてたりしてたとき、「この人信じてないじゃん」って。「若ママだって頑張ってるんだぜ〜」みたいなことを思いました。
 だから私は施設にいたのが、施設に行ったのがいやだとも思ってないし、私は3年間しか施設にいなかったけど、園長ママを含め、3年間ずっと担当だった先生「さっちゃんママ」っていう人のことをすごい好きだし、すごい感謝してる部分はあるから、皆さんに大人だけど子どもの立場として、それはわかってもらえたらいいなっていうふうに思っています。

花崎さん(コーディネーター)
 今の「佐野優」ですが、この子が中学3年の時に、こういう会合で施設の話をして欲しいと依頼された時に、彼女ともう一人の男の子連れて行って、私が話すよりあなたたちが自分で話なさいといいました。そしたら「優」がおもしろおかしく生活について話をして、そのあとでちょっと一呼吸おいて、「だけど何でこういう施設が必要なんですか」って言ったんです。
 それでみんながシ〜〜ンとなってしまった。だって今おもしろおかしく話していたし、その前には「野の花の家」に来て、私は自分が学ぶこともあったし、良かったみたいな話をしたのに、いきなりそういう話でした。
 会場はシ〜〜ンとなったんですが、その後「優」が言ったことは「私には友だちもいたし、親戚もいたし、なんでその人たちが私を見てくれなかったの」。やっぱり遠くに来て、全く知らないところに来て、ずいぶん辛かったと思う。なんで周りの人が、私を見てくれなかったのか、というところを彼女が訴えた。私はよく言ってくれたと思いました。
 今回のテーマでもある地域でいろんな事があったときに、それをどう支えていくかっていうことをみんなが細かく考えていくことが、大事な今後の方向性だと思うんですが、それを「優」がバシッと言ってくれた。そういうことを言える子であるということを、一つ話をすることと同時に、中学で「野の花の家」を出ましたけど、これは自分の選択でした。
 「野の花の家」にいたくないっていうのがあったのかもしれないけど、そして出ていく時に、私たちは15歳で出ていく子どもをそのままにしておけなかったので、周りにいろいろお願いをしました。今お話に出た担当だった「さっちゃんママ」が一生懸命、民生委員の方だとか、前にお世話になった学校の先生とか、そういう方たちに「優」のことをよろしくお願いしますねって言って、そして何かあれば、いつでも私たちが応援しますと。今でもずっとつながっていますけど、そういうようなことをやってきました。
 やっぱりこの子が提案した「みんなで子育て」ということ、これは大事な視点ではないのかなと思いましたので、今の「優」の発言にプラスして発言させていただきました。

市川まり子さん(千葉こどもサポートネット )
 私も地域で子どもの居場所を開いたり、主任児童委員とか保護司とかやって、地域の子どもたちと関わってきたんですが、本当に親が育てられなかったら、地域で代わりにその子たちが生活できる場が作れるのがベストだと思うし、でもそれがなかなか難しい中で、でもそっちに向けてやっていこうということが必要なのだけれど、虐待されている子どもがいれば、まず保護しなきゃっていうのがある。
 今日、ここに若い方が来てくださっているのが、すばらしいことで本当に嬉しいんですね。ですから「子どもの人権フォーラム」といって、子どもをパネリストとして引き連れてきて、子どもの声を聞きましょうっていうんではなくて、子どもから高齢者まで一緒になって、子どもの権利ってなに、人権ってなにって、話せる会が自然に開かれるようになれば、そのときは地域もかなり大丈夫かなって。やっぱり理想はそこだと思います。
 今日いろんな角度からお話を伺ったんですが、ここに今日抜けていたのは教育だなと思います。次世代の前期計画の作業部会で、研究会にも参加して指針作りに関わったんですが、次世代の計画の中には、県教育委員会も関わっているはず。だから後期計画の中に、この指針の言葉も入れていただいて、「子どもの権利ノート」というのも渡すっていうのを書き入れていただいたっていうのが大変大きいことなんですが、今施設に保護しなければ救えないっていう、とても残念な状況の中で保護されない子が圧倒的に多い。一時保護されても地域に戻される、家庭に戻される。
 その地域の中で虐待環境・DVなど厳しい環境の中で育つ子の方が、圧倒的に多い。その子たちに関わるのが、地域の保健師さんとか民生委員さんとか、そういう福祉的な関わりと同時に、学校の教育の関わりってとっても大きいと思います。
 「子どもの権利ノート」自体も施設入所の子どもたちだけじゃなくて、施設に入らない小・中・高の子どもたち、学校とは縁が切れちゃう全ての子に手渡して、学校も地域社会も一緒に「子どもの権利を大切にする社会を作ろう」ということを、児童家庭課から教育委員会へ働きかけ、後期の計画を推進していく時に、教育ぐるみで進めていただきたいなと思います。
 私たちも地域の中で若い人たちとも高齢者とも一緒に出来ることをやっていけば、きっと子どもたちにとってもいい社会になるんじゃないかと思う。ぜひ県にも頑張っていただきたいし、皆さんそれぞれの立場で今後ともよろしくお願いしたいと思います。

【シンポジストから最後の一言】

渡辺さん(県 虐待防止対策室長)
 今日は皆様方からいろいろなお話を聞けて大変参考になりました。新しい情報もたくさんいただきましたので、私もこれから勉強していきたいと思います。先程「こもれび」の優さんからは、全く別の視点で、元気なお話聞かせていただいて本当にどうもありがとうございました。そういう若い世代の声も聞きながらやっていきたいと思います。
 最後に教育委員会の話が出ましたが、私ども、教育委員会とも相当連携してやっております中で、今後とも教育委員会を含め、様々な関係機関と連携を強化しながら、施策を推進していきたいと考えています。
 そして、皆様、行政と県民の皆様との連携・協働は、とても大事と考えていますので、今後とも、よろしくお願いします。

染谷さん(鎌ケ谷市 子育て総合相談室長)
 今のお母さんたちは、どれだけ子育てにストレスを感じているかという事例なんですが、子育てサロンというのが、いろんなやり方を使ってある化粧品関連の会社の方がいて、会社のCMを行わないということで、「子育てサロンメークアップ教室」という形にしました。子どもたちはサポーターさんが見て、お母さんたちがメークアップ教室をやるんですが、その中で出た一言が「子どもが産まれてからはじめて眉を引く、それが出来てうれしい」と言った。子どもを産んでから眉に線を引いたことがないという。そういう部分が子育ての中でストレスを感じていると、本当にそうなんだなっていうふうに思います。

伊藤さん(家庭裁判所 調査官)
 私が通常の業務の中ではわからない、いろんなことを教えていただいて、ありがとうございました。立場が違うので訳わからないって若い人に発言されて、痛いなって思うんですが、「子どもの意見表明権」っていうものをどう取り入れていくのかという問題があります。
 ある種、日本の中では世界的基準から見たら日本の子どもは幸せすぎて、「これ以上なんの権利がいるんだ」みたいな意見も出やすいところもあって、そういうものに抗しながら本当に子どもの権利というものを大切に考えていけるかにも関わります。
 例えば、施設の中の子どもの虐待ってことで、司法に関わっている少年院の職員による虐待というのがマスコミで出たことがあります。これは犯罪行為になる。公務員暴行陵虐罪。こうした問題をどう防ぐかってことで、今、法制審議会の中に特別委員会を立ち上げて、「家裁の人」の原作者の毛利甚八さんとかいろんな人が入って,議論しています。少年院というのは閉じた世界なので、そこに民間のオンブズマンの方々が、定期的に参加して、どんな教育がなされているか、子どもたちがそれを受けながらどんな意見を持っているか聞く、そういうようなシステムを作るべきではないかというような検討がされています。
 おそらく少年院法の改正という形の中で、そういうのが取り上げられると、養護施設などについても同じような考え方も当然入ってくるんじゃないかと思いました。
 もう一つ今進んでいることとしては、家事審判法の改正というものがあって、家事事件をどう扱うかという手続き法の改正が進められていますが、この中では「子どもの意見」について、現在の「家庭裁判所は15歳以上の子どもの意見は聞く」というところから、「10歳以上の子どもの意見を聞く」への転換が図られています。常識的にも10歳くらいからなら、どういう選択をしたいかとか聞いてもいいんじゃないってありますよね。今回の家事審判法改正作業では「子どもの意見表明権」に関わって、10歳以上の子どもたちはどんなふうにするか、それよりも小さい子たちにはどう考えるかっていうことが、検討の俎上に乗ってきています。
 また、被疑者国選弁護人選任制度が始まっているんですが、未成年者については十分適応されない欠点があって、法制度拡充が求められています。他にも民法の改正作業が進められる中で、成年年齢を20歳から18歳に引き下げるべきだというような形の議論も起きています。
ここでも少し乱暴な議論の進め方がなされていると思います。こうした様々な問題について、広くいろいろな方のご意見をお聞きしたいなと思いました。今日はありがとうございました。

高橋さん(「人力舎」ホーム長)
 施設から来る子どもたちと、家庭から来る子どもたちって、傷の深さが大きく違います。養護施設って孤児院からスタートして、当時も子どもたちの命の危機だったと思う。
 でも今は、これは僕の個人的な見方だけれど、命の危機にさらされている子どもたちが養護施設に入っている。僕自身は養護施設に入れたというだけでも、この子は半分救われたなと、子どもたちを見ていて思います。施設から来る子どもたちはもちろんいろんな課題もあるが、人を信じようとか人と関わろうとか大人と関わろうという力はついています。ただ家庭から来る子どもたちには全くといっていいほどない。
 言葉の獲得って僕らは言うんですが、養護施設からくる子どもたちはまあまあしゃべれます。でも家庭から来る子どもたちはほとんどしゃべれません。言葉を持ってない。僕らは快・不快って言うんですが、「こころよいってこと」と「イヤだっていうこと」を言葉で表現しません。
 それだけで大きな違いがあるなっていうことを感じて、虐待問題っていうのは「予防と発見と保護」、これにつきるなって15歳以上の子たちを見ていて思っています。

花崎さん(コーディネーター)のまとめ
 今日は、子どもの権利擁護について具体的に取り組んでいらっしゃるいろいろな分野からお話をいただきました。それぞれの行政・司法・民間という形で、お話をしていただきましたが、ここに一つ教育の分野が加わるとよかったかなというふうには思います。
 そういう中で私たちはそれぞれの取り組みについて、知らないことが多いと思いました。もう少しいろんなところで、情報を入手して知ることによって、自分たちの活動の方向性も見えてきたり、具体性が獲得されたりということがあると思うので、こういう会が開けているというのは大変素晴らしいことだと思います。
 そしてこの知ることを通して、私たちは行政や民間が協働して子どもの人権を守り、それをどんなふうに推進したり、具体的に自分たちの地域の中、あるいは自分が属しているグループの中で、どんなふうにそれを取り込んでいったらいいのか、ということに結びつけていかないと、全ての研修会やお話が無になってしまうということをいつも私は感じています。
 今日のお話の中ではそういうことがたくさんあったと思います。取り入れて、こういうところはいいなというふうに思えるところだとか、県の施策についても、私たちは割合と近くにいるのでいろいろとわかるところが多いんですが、今こう取り組んでいるんだなってことがわかるし、市のことについても一生懸命取り組んでくださった議員の先生は、たぶんこれを持って改革に取り組んで具体的な施策を進めていただけるであろうというふうに思います。
 司法の面についても、私個人としてはとてもいい情報をいただけたと思っています。なかなか情報が入りにくい分野だと思いますが、大事な分野だし、取り組んでいかなきゃいけない分野であると思うので、今日の会を皆さん一人一人が自分の中で活かしていただければ、大変よかったかなと思います。
 
【主催者のまとめの挨拶】

池口紀夫(当実行委員会代表)
 国連の子どもの権利委員会が日本政府に勧告をしていますが、そのなかで再三登場してくる言葉があります。それは、「権利基盤型アプローチをしなさい」という言葉です。つまり子どもの人権を基盤とした法律、制度や事業を整備しなさいと言うことを勧告しています。例えば、文科省のマニュアルの中に「子どもの人権を尊重した生徒指導をしなければならない」と言うことを書いてあるわけです。千葉県の児童家庭課が作成した「市町村虐待対応マニュアル」の冒頭に「虐待は人権侵害である」と書いてあります。この規定が書かれたことは画期的なことだと思います。虐待の加害者の中にはこれはしつけだと言う人もいるし、ときには鉄拳も必要だと言う人もいるなかで、それは人権侵害であると規定されたことは本当に社会の基盤となるアプローチだと思います。 
 しかし、それならば侵害されてはいけない子どもの人権は何であるかと言うことを国として、千葉県として明確に示さなければ空っぽの器になってしまいます。ここを明確に示さないと千葉県は表面的な地域社会になってしまいます。
 子どもの人権の基準を示す役割使命を担っているのは国と県、市町村だと思います。
 先ほど渡辺室長さんが次世代育成支援計画の後期の様々な施策について説明されました。県としてのご努力と施策の方向が理解できました。そのなかに子どもの人権や参画を推進することが計画されていました。この県全体を先導する次世代の育成の理念が「絵に描いた餅」にならないことが大切です。その計画を作成するための作業部会のなかに「子どもの権利・参画のための研究会」が設置され、長期間議論、調査して「子どもが大切にされる千葉県をつくるための指針」を作りました。この指針を県はどう評価されているのかとても気になるところです。子どもの人権に関する指針が千葉県の基準として、県の条例になることを願っています。千葉県の子ども社会の100年の基礎となると思います。先ほど、児童福祉施設の小規模化のことが議論されていました。この10年間ほどの間に老朽化した施設が建て替えられています。小規模化への努力が足りないと思います。入所した子どもたちは育てられた自分の家にいることを許されないでつれてこられたのです。家庭に代わる家としての住まいの場であるべきです。ある千葉県にある障害児施設は集団施設を解体して、全部普通の家庭に作り変えました。そこは全国から見学に来るようになりました。子どもの福祉を人権を基盤として考えるならばそれは当然の方向だと思います。大規模集団施設はそれ自体が人権侵害であると思います。県はもう少しそのことに対して指導性を発揮して欲しいと思います。

 鎌ケ谷市の染谷室長が報告された取り組みは、染谷さんは特別なことはしていないと話されましたが、とてもすばらしい取り組みだと思います。結果も出ています。今、虐待対応件数は右肩上がりの状況の中で、鎌ケ谷市では減少しています。ちゃんと取り組んでいなければそういう結果は出ません。大事な点がいくつかあります。一点目は家族支援がなされていること。二点目は訪問中心の支援がなされていること。三点目は虐待が起きてからの対症療法的な取り組みだけではなく、起きないための予防的な取り組みをされていること。これらのことを確実にやっておられるということは真に子どもの人権を守り、実現する活動をされており、県内のモデルになる取り組みであると思います。

 家庭裁判所調査官の伊藤さんの報告はそういう立場の方がここで報告をされること自体がとても大事なことだと思います。この報告のなかで大事なことは少年の非行問題が本人責任や最近の傾向である親責任として語られる声が大きくなってきているが、少年の非行防止と立ち直りは社会の責任であると言うことです。少年の非行に対して社会を防衛すると言う目的で施策が実施されるのか、少年や子育てをしっかりと支援することによって非行の防止や立ち直りを組み立てていくのかは社会そのもののよしあしを左右する問題です。伊藤さんのリポートはそのことに重要な示唆を与えるものであると思います。
 資料の「子どもが大切にされる千葉県を作るための指針」の5〜6ページ目に「失敗したとしても何度でもやり直せるようにチャンスや支援が受けられること、これは子どもの権利です」とあります。また、「身体や心が傷ついたとき、回復するまで手当てが受けられること」とあります。非行少年のほとんどは被虐待少年です。この子どもたちに寄り添って、その人としての権利を守り実現しようとされているのだと思います。
 自立援助ホーム長の高橋さん、本当に有難うございました。公務員から転進され、NPOとして自立援助ホームを立ち上げられたこと自体に敬意を表したいと思います。このことで高卒以降の思春期の子どもたちが支援の手が入らないまま、社会の荒波にもがき苦しんでいる現状に一条の光がさしたのではないでしょうか。住む所もなく、頼るところもなく、傷つき果てている子どもたちの育ち直しをされている。この営みは「指針」の第一章の権利の実現の営みであると思います。まさに、こどもの人権を守る最前線に立って、一生懸命頑張っているこの自立援助ホームを県や地域が応援をしていただきたいと思います。

 全体を通して大事なことを確認したいと思います。
1、千葉県の社会においてはどのような子どもの人権が守られて、実現していこうとするのか、が明確にされる必要があること。
 そして、子どもに関する全ての事業及び子育てのガイダンスとして子どもの人権の指針が据えられること。
2、子どもの人権を基盤としたネットワークが形成されることによって、千葉県社会が真に「子どもが大切にされる」社会になることを願って共に進みましょう