第6回「千葉県子どもの人権懇話会」報告集

    
日時:2009年11月6日(金)・13時開場
    会場:千葉県文化会館・別館「聖賢堂」1階・第1・2会議室

<プログラム>

1、主催者挨拶   (13時10分〜13時15分) 鎌倉淑子(当実行委員会)         
2、シンポジウム (13時15分〜15時15分)(自己紹介・基調報告・意見交換)
《基本テーマ》“進みつつある子どもの人権施策”
         〜県市町村・民間の協働を目指して〜
シンポジスト
○石野高弘さん(千葉市教育委員会学校教育部指導課指導主事)
 「千葉市立の学校における人権教育の推進について」

○布施博明さん(市原市子育て支援部子ども福祉課家庭児童相談室副主幹)
 「市原市における要保護児童対策協議会の取り組みについて」

○西網覚雄さん(児童養護施設ひかりの子学園施設長)
「児童養護施設における子どもの権利擁護の取り組みについて」

○池口紀夫さん(千葉県次世代育成支援行動計画評価・策定作業部会
       「子どもの権利・参画のための研究会」代表)
「子どもが大切にされる千葉県をつくるための指針について」

○コーディネーター 朝比奈ミカさん
       (中核地域生活支援センター「がじゅまる」センター長)
  休 憩     (15時15分〜15時25分)
3、討論(質疑応答) (15時25分〜16時25分)
4、まとめ     (16時25分〜16時35分)米田修(当実行委員会)
2010年3月13日発行

【後援団体】
<県55市町村>千葉県・千葉市・銚子市・市川市・船橋市・館山市・木更津市・松戸市・野田市・茂原市・成田市・佐倉市・東金市・旭市・習志野市・柏市・勝浦市・市原市・流山市・八千代市・我孫子市・鴨川市・君津市・富津市・浦安市・四街道市・袖ヶ浦市・八街市・印西市・白井市・富里市・南房総市・匝瑳市・香取市・山武市・いすみ市・酒々井町・印旛村・本埜村・栄町・神崎町・多古町・東庄町・大網白里町・九十九里町・芝山町・横芝光町・一宮町・睦沢町・長生村・白子町・長柄町・長南町・大多喜町・御宿町・鋸南町
<県52市町村教育委員会>千葉県・千葉市・銚子市・市川市・船橋市・館山市・木更津市・松戸市・野田市・茂原市・成田市・佐倉市・東金市・旭市・勝浦市・市原市・八千代市・我孫子市・鴨川市・鎌ヶ谷市・君津市・富津市・浦安市・四街道市・袖ヶ浦市・八街市・印西市・白井市・富里市・匝瑳市・香取市・山武市・いすみ市・酒々井町・印旛村・本埜村・栄町・神崎町・多古町・東庄町・大網白里町・九十九里町・芝山町・横芝光町・一宮町・睦沢町・長生村・白子町・長柄町・長南町・大多喜町・御宿町・鋸南町(10月24日現在) 
                
【主催】千葉県子どもの人権懇話会実行委員会
(同実行委員会参加団体)千葉県青少年団体連絡協議会、NPOちばMDエコネット、千葉「障害児・者」の高校進学を実現させる会、NPO千葉こどもサポートネット、NPO子ども劇場千葉県センター、共に育つ教育を進める千葉県連絡会、NPOネモちば不登校・ひきこもりネットワーク、ほっとすぺーす、千葉・教育を考える親と市民の会、「千葉県子ども人権条例」を実現する会

     担当事務局:NPO法人千葉こどもサポートネット内
 〒260-0813千葉市中央区生実町2149番地の2・043-266-8419・fax043-266-2359

実行委員会副代表挨拶 鎌倉淑子

 このような地味な会にようこそおいでくださいました。千葉県での子どもの人権に関して考え始めて10年が経ちます。1989年国連で子どもの権利条約ができ、日本は1994年に批准しました。「子ども権利条約」はなかなか日本社会に定着して、実効あるものになりませんでした。千葉県で実効あるものにし、行政と共に進めていこうという趣旨で懇話会を開いてきました。第6回の今回の懇話会のテーマは「進みつつある子どもの人権施策」です。シンポジストの方々、お忙しい中ありがとうございます。
 私、今年は「子どもの人権」と「平和のこと」を考えた年でした。そこで気づいたことがあります。子どもと大人は子どもが弱者、女と男では女が弱者、正規で働いている人に比べれば非正規は弱者、健常者に比べれば障がいを持たれている方が弱者ということです。  
 こうした弱者の権利を守るのは生半可ではできない、簡単ではないということに直面させられます。障害者の権利や子どもの人権を認める社会をつくるのは当たり前のことと思うですが、すんなりと、深く深く理解することはとても大変なことなのです。現在のシステムの中では、権力やお金を持っている人は、弱者の権利を100%認めるということはやりたくないのだと、今年、気づきました。日本国憲法の前文には、「全国民が恐怖と欠乏から免れ平和に生きる権利がある」とあります。子どもが恐怖と欠乏にさらされるのは、戦時下は無論ですが、今現在、千葉県下でもいくらでもあります。この憲法の前文と私たちが実現しようとしている子どもの人権を守り育てていく千葉県にしようという思いが、私の中で一致しました。弱者の人権を守るということを、心底分ってくれる人を増やし、広げて、行政の皆様とも、議員の皆様とも、党派を超えて人間的な問題として理解の上に立って、人権が尊重される平和な社会をつくることが必要だと考えております。
 
【シンポジウム】

千葉市教育委員会学校教育部指導課指導主事・石野高弘さんの発言
 「千葉市の学校における人権教育の推進について」

 市立の学校における人権教育についてお話します。
1.人権および人権教育をめぐる内外の状況
  人権教育の指導方法等に関する調査研究会議資料から
2.子どもの人権を守るために(学校関係)
@千葉市では子どもの人権を守るためにまず相談窓口を開設し、様々な子どもの悩みを聞いています。
   いじめなど学校生活に関する悩み相談 千葉市教育委員会指導課電話相談
   学校に行けない等の悩み相談     千葉市教育センター教育相談
   障害についての悩みなどの相談    千葉市養護教育センター教育相談
   非行などに関する相談        千葉市青少年補導センター
   教育相談ダイヤル24         専門の電話相談員による電話相談
   その他子どもに関するあらゆる相談  千葉市児童相談所電話相談

A全57の中学校にスクールカウンセラー(臨床心理士など)を配置し、中学生の教育相談はもちろんのこと、学区の小学生の相談も受けています
B日本語指導の必要な帰国・外国人児童生徒が在籍している学校へ、その子どもの母語が話せる外国人児童生徒指導協力員(中国語、韓国語、フィリピン語、スペイン語)を派遣しています。
C特別支援教育サポート体制
    通常の学級に在籍するADHD等の児童を対象に特別支援教育指導員を配置しています。
   通常の学級に在籍する肢体不自由児難聴児などに、実態に応じた生活面でのサポートを目的としたボランティアを派遣しています。また、障害のある子どものために階段昇降機・車椅子・拡大読書器・単眼鏡などを整備し学校からの要請に応じて貸し出しをしています。
D不登校の子どもを対象とした、学校復帰へのサポート支援をしています。
3.千葉市の学校職員の研修
   国の人権教育指導者研修、県の学校人権教育指導者養成研修、市の管理職特別研修があります。市で実施した研修会の主な内容として、インターネットによる人権侵害の現状とその対応、子どもたちの心に人権の種をまこう、児童虐待の現状と学校におけるその対応等です。
また千葉市教育委員会主催の研修会としては人権教育担当者研究協議会があり、これまでの主な研修会の内容として、学校における様々な人権問題や指導方法について、自校における取り組み(あっていい違い、あってはならない違いなど)さらに人権啓発ビディオ視聴と活用、人権教育の推進について等が扱われ、協議が行われました。
4.人権教育関係各機関との連携
   「子どもの人権をはぐくむ会」の活動として人権の花運動や、人権教室、はぐくむ会総会・研修会が行われています。また、法務局の全国中学生人権作文コンテストや千葉県子どもの人権ポスター原画コンテストに応募したり、人権啓発ビデオを活用し「人権教室」を行ったりしています。また、県の人権問題講演会への参加、法務局の子どもの人権SOSミニレター事業への協力、千葉茂原人権啓発活動地域ネットワーク協議会への参加、各種人権資料の学校への配布協力など人権関係機関と様々な連携をとっています。
 千葉市では、人権啓発・人権教育について、別紙のような実施体制組織図及び所掌事務等があり、組織的に取り組んでいます。
 人権教育の目標として「自分の大切さとともに他の人の大切さを認めることができるようになり、それが様々な場面等で具体的な態度や行動に現れるようにすること。」と考えています。最近の子どもたちが、「自分に自信が持てない」、「あるいは将来に対して不安がある」、「生きる意欲が出ない」、また「学習意欲がもてない」などの声に対してどうしてそのようなことになるのか、どうしたら生きる意欲につながるのだろうか、そんな事を更に考えて取り組んでいきたいと思います。

市原市子育て支援部子ども福祉課副主幹・布施博明さんの発言
「市原市要保護児童対策地域協議会の取り組みについて」

 
私は、今年から家庭児童相談室に勤務することになり、長年の教師生活で得た視点と違った角度から子どもや家庭を見る事が出来るようになりました。現在の家庭児童相談室に勤務し、恵まれない家庭環境にある児童、生徒、青年の多さに驚いております。
 「市原の子どもは市原で守り育てます」このスローガンのもとに、教育の力、地域コミュニティーの形成が整うよう願っています。
 事件や事故が起こらないかと緊張の日々を過ごしておりますが、その様な日ごろの取り組みを紹介したいと思います。
1.市原市要保護児童対策地域協議会について
 家庭児童相談室では家庭における児童の養育、その他家庭児童の福祉向上のため県児童相談所や関係機関と連携しながら、相談業務を行っています。近年の様々な問題の中、児童虐待の複雑化する要因や背景などに適切に対応する為、関係機関の連携が必要となり、市原市要保護児童対策地域協議会を設置しました。総合的視点からの児童虐待、要保護児童の早期発見、未然防止に的確にかつ迅速に努めています。
2.市原市要保護児童対策地域協議会関係機関一覧
3.市原市要保護児童対策地域協議会の活動
 市原市要保護児童対策地域協議会の活動として、まず代表者会議を実施し、実務者会議では各機関からの情報の共有化を図ります。その他、個別のケースについては取り組み状況の確認と、その後の対応などを検討します。さらに実務者会議(母子保健部会)などがあり特別な配慮が必要な幼児や家庭の発見と、連携した取り組みをしています。実務者会議(児童部会)では、小学校入学後の児童、生徒、若者を対象に、千葉県中央児童相談所・教育委員会と定期的に情報交換をしています。
4.市原市における相談受付状況
 相談受付総件数は増加傾向にあり、虐待相談件数の割合が増えています。
 虐待種別として、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトなどがあり、心理的虐待が特に増加傾向にあります。
5.市原市要保護児童対策地域協議会の成果と課題
 市原市要保護児童対策地域協議会が組織され3年目となり、乳幼児は市保健センター、県保健センター(保健所)、保育所、幼稚園などから、学齢児童に関しては学校から情報の提供が増え、早期発見、早期支援が可能となりました。
 家庭児童相談室からのリーフレットやチラシの配布によりPRができ、市民の意識の向上もあり、周辺の住民や家族親戚からの情報も増えています。その結果多様な支援活動が出来るようになりました。
 相談内容(虐待等)の要因や背景が複雑化する中で、関係機関の連携で様々な角度の支援が可能となりました。
 例えば経済的な支援に関しては生活福祉課や社会福祉協議会、養育者の精神的な病気などは保健所、医療機関、児童の障害に関しては発達支援センターや特別支援学校、児童相談所などと連携しています。
 課題としては関係機関のさらなる連携を深め早期発見、早期対応に努め、要保護児童に対する各機関の役割を更に明確にし、専門性を生かした支援を展開できるようにする事です。
学校教育機関においては発達段階に応じて豊かな心、共生の心をはぐくむ様に、また地域では町会・自治会・学校を中心とした地域福祉ネットワークの構築が必要になってきます。
6.家庭児童相談室(要対協調性機関)の役割と活動内容
 相談員は児童相談所の指導、援助を受けながら生活改善を図り適切な養育環境を整備します。統計処理・管理・各種定例報告・要保護児童対策地域協議会の企画・運営・実務者会議・個別支援会議などの通知、児童相談員の勤務管理、家庭訪問の同行など職務内容は多岐にわたります。
 全国の虐待件数、千葉県の虐待件数の増加と同様に、市原市においても増加傾向にあります。現在の大きな問題点として相談内容の多重化、複雑化があります。経済的な基盤が貧弱な中で、親の精神的な疾患や犯罪、離婚や不倫、ドメスティックバイオレンス、子どもの低体重出産や発達障害、虐待など、支援すべき要因や背景が重複化・多様化しています。
 外国籍の家庭の相談も多く、不法滞在や児童の国籍の問題などに対応する為、相談員には社会資源や法的な知識が求められてきています。そのため1機関だけでの解決は難しいのが現状です。
 庁内の各課(生活福祉課や障害者支援課・子ども福祉課・住宅課・市民相談室やDV相談員など)、また病院や保健センター・保健所などの医療福祉機関、学校や幼稚園・保育園、警察や児童相談所など様々な機関の協力が必要となります。市原市では平成19年2月2日に要保護児童対策地域協議会を立ち上げ、問題に対応する為の取り組みをしています。
 虐待は世代間に亘って繰り返されている場合が多く、この様な負の連鎖をどのようにして断ち切るか、大きな課題です。支援が必要な家庭は社会から孤立し身近に支援者がいない場合があります。周辺の人々との人間関係があまり良いほうではなく、社会的に孤立した状態です。
 全国の虐待死亡統計(H19,1〜H20,3)によれば、78人死亡中、7割が0・1・2歳児という事です。さらに0歳死亡者37人中17人が出産直後という事です。関係する保健師や家庭相談員は危機感を持って取り組んでいます。若年出産は、望まぬ場合が多く、その上、母親の育児に対する知識や経験不足、経済基盤の無さ、育児による就労不可、交際相手との不仲や失踪など様々な問題を抱えています。祖父母に預けっぱなしのケースや出産後、乳児院入所となるケースもあります。生まれてきた子どもの将来を考えるとやり切れない思いで一杯です。
 平成17年より市町村が虐待の窓口になり急速に相談件数が増加しています。要因として考えられるのは、格差社会の拡大による貧困家庭の増加(市原市では生活保護家庭が約2500世帯余り)や地域社会の人間関係が希薄化、核家族化や育児不安などによる生活上の様々なストレスの増大が虐待の背景にあるものと考えています。
 一方で、虐待に関する市民の関心が高まり、要保護児童対策地域協議会などの立ち上げにより、早期発見、早期対応が図られるようになった事も事実です。
 今後早期発見、早期対応の体制作りをさらに強化する為、教育の力、地域コミュニティーの形成が重要となってきます。教育においては児童・生徒・青年に物事の善し悪し・社会的ルールやマナー、命の教育(性教育も含めて)など、家庭との連携ですすめていただきたく思います。地域の触れ合いが減少していく中で、日頃からの人間的結びつきを大切に、地域社会を守る事が大きな力になるかもしれません。

児童養護施設ひかりの子学園施設長・西網覚雄さんの発言
「児童養護施設における子どもの権利擁護の取り組みについて」


 私は館山で30年前にこの仕事に就きました。親と一緒に暮らせない子どもたちと生活しています。まず、ひかりの子学園初代の近松良之園長が、「施設の子だから」と題して20年前の状況を書いた文章をご紹介します。
「施設の子だから」ひかりの子学園便り第36・37合併号・・平成元年9月20日以下まとめ
 高校進学率95%の状況下で、能力と関係なく中卒就職と決められていれば、生活に張りをなくしたり、投げやりになったり、極端な場合やけくそになったりします。その様な状況に負けない強さをと願いながらも、中卒就職組の多くは、世の中の沈没組になって、時には触法行為に走る事もあります。学校でも世の中でも、施設の子だからいじめられて当然だ。非進学組みで当然だ、そんな考えがあると思います。
 「施設の子だから」「施設の子のくせに」は、大変な「差別意識」が感じられます。施設の子が軽視され蔑視される事を施設側が当然とでも言うのであれば、「負けるものか」という子どもを育てるしかないのです。しかしその様に育てられた子どもは歪な大人になる事があります。施設の子は普通の子として普通の子の中で普通に育てられるべきなのです。
 施設への蔑視・軽視を絶対に許す事が出来ないと同時に、「施設の子だから」「施設の子のくせに」がどんなに許せない「差別」であるかを、少しでも多くの方に理解していただきたいと思います。
 当施設では30人定員のところ、緊急という事で32人になる事があります。施設の子どもたちの生活を保障する為に、「措置制度と児童福祉施設最低基準」が決められております。子どもたちの生活に関するお金が全て決まっています。職員の配置基準や人件費など、あらゆる経費が決まっています。
 その中で週2回以上体をきれいにする事(今はない)、いうなれば週2回しかお風呂に入れないという事です。子ども達の最低の利益保障として決められているが、この最低基準で子どもの人権が守られるのか非常に疑問です。普通の子どもとして暮らしたいその事がいかに難しいかを物語っています。
 ところがこの様な状況の中でも、子どもたちのために使うべきお金をあまらせている施設があるのです。
 10年前恩寵園の件を契機に「施設生活等評価委員会」が組織され、「千葉県児童福祉施設協議会」で、「倫理綱領」を作りました。組織として恩寵園問題をどうして行こうかという事で議論を重ねました。
 日本国憲法の理念に基づき、前文、1権利擁護と支援の社会的責任、2自由意志と自己決定の尊重、3平等と公平、4専門知識の習得と信頼に基づく支援関係、5社会資源の活用と開拓、6後継者の育成となっています。さらに現場において、質の高い生活を保障するには、どうしても欠かせない施設職員の施設生活点検の為の、基本的に了解できる共通枠組みを設定しました。
1人間的成長を促す事は可能か     
2安全かつ快適に生きる事の条件は保障しているか
  31人1人の個性を育む生き方を促す条件を保障しているか。
また施設において「質の高い生活」を保障するための共通項(ガイドライン)として
  1制限の少ない、愛情を感じさせる生活環境
  2プライバシーへの配慮
  3人格の尊重(呼称、コミュニケーション、服装、等)への配慮
  4生活の支援と「自己選択、自己管理、自己決定、」を促す取り組みへの配慮
  5「説明と同意(選択)と意見表明」による施設生活への参加及び自治の尊重
  6苦情、不服申し立ての保障
 2001年の第1回評価報告書で提示されました。これが10年経った今どうなっているのか。集団生活からのストレスで不安と恐怖の時期にどのような暮らしが出来るか、またこの状態の子どもが何か起こしたとしても、それは問題行動ではなく、周りの大人に問題を提起しているのです。日々の暮らしの中で、子どもたちと一緒に泣いたり、怒ったり、喜んだりしながらこの雰囲気を大切にしていこうと思います。
 未来に生きる子どもたち一人一人の成長と発達を保障し、社会の一員として成長するための質の高い生活を保障する事が出来るよう常に心がけています。
 すこしでも、社会で理解を広げ、支援の場を広げて生きたいと思っています。

千葉県次世代育成支援行動計画評価・策定作業部会
「子どもの権利・参画のための研究会」代表・池口紀夫さんの発言
   「子どもが大切にされる千葉県をつくるための指針」について

             
先輩の近松先生のお話にあらためて感動しました。
「施設の子だから」というのは、許せない差別だと、またこれぞまさしくこの会が目指す声であると思います。恩寵園の問題や最低基準の据え置きなど、施設の子は最初から人権差別を受けているようなものです。世界では、子どもの権利条約として子どもの権利を守ろうという動きの中で、日本ではどうか、千葉県ではどうかを検証していかなければと思います。
 10年前と今日ではどうか、残念ながら余り変化がありません。そのなかで学校教育ではどうかと言うと、教育庁は少し変化してきている部分があります。子どもの相談事業がそれです。しかし、相談だけでは充分といえず、さらに問題を解決するようにサポートするオンブズパーソンシステムが必要なのです。
 「子どもが大切にされる千葉県をつくるための指針」を作成するために、次世代育成支援行動計画推進作業部会」の研究会の1つとして、「子どもの権利・参画のための研究会」が設置されました。そこでの検討が重ねられ、まず千葉県内における子どもの人権状況(人権という視点から見た子どもたちの状況)と、参画の状況について調査しその実態を分析しました。
 アンケート調査は若者の意見を聞きながら行われました。さらに県内の子どもの人権に関わる活動をしている公的機関に、聞き取り調査をしました。
 これにより10年で10倍に増えた児童虐待や、10代の妊娠出産の問題、社会的養護を必要としている子どもたちの増加にたいする受け入れ態勢の不備、少年非行・犯罪の現状。インターネット関連の犯罪や児童買春など、子どもたちの現状と課題が分りました。また学校でのいじめ、部活などの問題も多く、寄せられました。
 子どもの相談に対応し解決するときの一定の基準が必要であり相談、調査、調整、解決、アフターケアまで行うシステムが必要な事など関係者全員一致で決議し提案しました。

「子どもが大切にされる千葉県をつくるための指針」の中から
1、自分を肯定的に意識することを妨げている大人の暴力
 調査の結果から子どもの自己肯定感や自尊感情を損ねている要因が明らかになりました。一つは大人からの暴力です。
2、「言いたいことを我慢している」子どもたち
 自己肯定感や自尊感情を損ねている要因として、「言いたい事を我慢する事が」がよくあると答えた子どもは「自分のことが好き」でなくなる傾向があり、「大切にされている」と感じる事が少なくなっています。同じ質問に対する大人の回答は「子どもの意見を聞いている」との回答がこどもより多く、子どもの意識とのズレがありました。              
 また「自分の意見や考えを発表して先生や友だちに認められたとき」「クラスや学校行事・活動などで自分の意見が生かされたとき」「委員会活動などで一緒に活動するとき」などに楽しいと感じる子どもが、年齢が上がると共に少なくなっている事は懸念されます。
3、いじめに苦しむ子どもたち
 子どもの自己肯定感を損ねている3つめの要因は、「いじめ」です。いじめを体験している子どもは「自分が大切にされている」という意識が低下し「自分の事が好きではない」という子どもが増えています。いじめられている時、「相談できて、助けてくれる人がいる」ことです。多くの子どもは友達が助けになったといっています。一方で年齢が上がるにつれて助けてくれる人が「誰もいない」という回答が増えています。また「つらい気持ちになったとき」に「相談しても仕方ないから相談しなかった」との回答も、1割を超えました。
子どもたちへ伝えたいこと
 子どもたちが「子ども市民」として、千葉県で健やかに育つには「子供たちが大切にされる千葉県をつくるための指針」を理解する事が必要です。
1、生きること(生存)
生まれたらすぐに届けられ名前と国籍を持ち、親に大切に育てられる事。
安全な環境において衣食が保障され、安心して暮らせる事等。
2、守られること(保護)
 いつでも、どこでも、どんな状況でもあらゆる暴力・虐待・いじめ・偏見・差別などから守られ、必要な支援が受けられる事など。
3、育つこと(発達・成長) 
 子どもが、一人の人間として社会の一員として成長するために必要で充分な教育を受けられる事など。
4、参加すること(参画)
大人へのメッセージ
 「子どもが大切にされる千葉県をつくるための施策」を考えるにあたって、大人はどのように考え、どのような責任と役割を担っているのか、「子どもが大切にされる千葉県」を実現するために大人に出来る事は何か、という事についての基本的な考え方を示しています。
1、子どもの自己肯定感を育む
2、子どもはかけがえのない存在である事
3、子どもたちの保護・養育
4、お互いが話し合う場を持つ事
5、大人も学ぶことができる
 子どもを育てることで大人自身も成長します。
6、困難に直面したときには助けを求めることが出来る
「子どものためのオンブズパーソン委員会」の設置
 これまでに示した内容を実際に行動する機関として、「子どものためのオンブズパーソン委員会」を設置したいと考えます。宣言だけでなく、子どもの意見を受けて解決するまで関わることが出来るようにしなければ、子どもの権利を守る事が出来ません。そこで本指針をふまえた上で、実際に行動する機関として、「子どものためのオンブズパーソン委員会」の設置を考えました。少しでも多くの人にこの「子どもが大切にされる千葉県をつくるための指針」を伝え、広めて、理解されるには、これを条例にすることが大切だと考えます。これが現在の千葉県の子どもの人権に関する基準であると考えます。


会場との意見交換 討論

@指針の成り立ち、位置づけ A県と市町村との関係について 
岡田泰子:千葉県次世代育成支援行動計画づくりは、6年前にスタートした。健康福祉千葉方式のもとに、県民と県行政が共にゼロからつくってきた。ワークショップを何回も行い、行動計画千葉県版をつくった。その中で千葉県ならではの行動計画がたくさん生まれた。例えば、菜の花子育て応援事業で全ての保育園に子育て支援の場を、真っ白いひろば事業としてプレイパークをつくること、国を上回る学童保育のガイドラインづくりが生まれた。私は所属していた「子ども人権条例を実現する会」の意見をバックに、落とさないように落とさないように、意見を上げた結果、「子どもの権利・参画の条例をつくるべきかどうかについて慎重に検討する」という文面が次世代行動計画の冊子に載った。その後、推進作業部会に引き継がれ、作業部会の「子どもの権利参画研究会」のもとで、23回の会議を重ね、具体的な文面ができた。共通のベースづくりのために、子どもの実態調査や関係機関のヒアリングを行った。この指針は、県民の生の声がベースにあって文面化されたものになっている。
池口:オンブズパーソンですが、この基盤になっているものは「子どもの権利条約」です。国連は権利基盤型アプローチを推奨している。その重要な柱は、条例をつくることと、そのシステムをつくることである。今後は、県や市町村行政だけにあればいいというものではなく、学校教育・分野別に細分化されたオンブズパーソンがつくられ、ネットワーク化されていく事が必要だと議論されているが、まだそこまでいっていない。福祉施設については第3者委員会を設置することが義務付けられている。これはオンブズパーソンに近いものである。どの子どもでも受け入れられるオンブズパーソン制度が必要である。

会場から
  @Q大野: 指針はたいへんすばらしい。今、知事が替わり肝いりで「千葉県の教育を元気にする有識者会議」の議事録が県のHPにアップされている。戦前の世界かと思われるような、道徳・愛国心・修身(教育勅語にもとづく)を本気で復活しようなどが、大真面目に議論されている。心配なのは、この指針がカタチのまま終わってしまわないか? その対処は?
 A池口: 非常に悩ましい。「天の声」で「研究会を今後はやらない」と通達された。私たちは県から委嘱されて委員になった。派遣切りのようなもの。指針は県に報告したが、条例はやらないということであり、今後県としてどう位置づけるか・活かし普及していくかについての言及が何もない。教育委員会 児童家庭課 健康福祉指導課等、各課が参加してつくったはずなのにどこからも音沙汰も言及もない。
 委員はこれで終わるわけにはいかない。ヨコの関係で普及活動はしていこうということになっている。四街道市子どもネットワ−クや南房総教育事務所の研修会でも話しをしている。各分野、各地域に指針を配布し、説明にも出かけようと思っている。そうやりながら時期がきたら、条例化に再度提案していこうと思っている
AQ大野: 富浦学園の定員が106名から76名に減らされる。県は30名は里親などへと考えているようだ。また県は、30名定員の情緒障害児短期治療施設を考えている。そのこともお聞きしたい。
 A西網: 情緒障害児短期治療施設について千葉の県行政は説明をしてくれない。
 国の施策の通達だけで、県としてのビジョンがない。減らされる30人の子どもは行くところはない。発達障害を含め、集団で暮らすことが出来ない子どもの受け皿をどうするの?という議論が足りない。現場のことを自分たちも聴いてほしいし、伝わっていない。もっと語らなければいけない。
  A池口: 情緒障害児(これは行政用語)施設をつくるのは私自身は反対。情緒障害児をどうするのかという議論が足りない。本来地域でやるべきことなのに、お手上げということで施設につれてくる。その理由や根拠は全くなっていない。
  A朝比奈:今、情緒障害児短期治療施設という枠組みが、政策として議論されていることに驚いている。この子どもたちをどうするのかという議論が大切だと思っている。中核支援センターにもたくさん相談がくる。何とか地域でふんばってみていきたいが頼りない現状がある。
 B市川: 県の条例化をあきらめていない。この指針を市町村で活かしていただきたい。(意見)
 C荒木: CAPの紹介。今日たくさん感じたことがある。シンポジストの方々人間味あふれていてステキでした。乳幼児の命のリスクの大きさはもちろんのこと、中学生でもどんな年齢でも命のリスクが高いという認識をしている。人権教育は、子ども自身が大切にされている実感のあることが土台にあって、その上で、人権教育をされることが大切であると感じた。通告を受ける側のご苦労は並大抵ではないことを感じた。CAPでも地域で自然に声をかけ合うことが大事と伝えています。通告は親をとっちめるためにあるのではない、告発ではなく支援が必要だから通告の必要がある。地域のコミュニケーションづくりの弱さを憂いても何も始まらないので、勇気を持って通告することでの掘り起こしが大切だと思う。
      また、児童養護施設の職員も疲弊している。余りにも集団で暮らすことができない思春期子どもたちの受け皿が少ない。その現状に関心を持っていただきたい。
 D高橋: 障がいのない子への人権侵害もかなりされ、権利を奪われている。
道路も公園も校庭でも遊べない。谷津田も荒れ放題で立ち入り禁止。子どもからのアンケートをとった。子どもは思いっきり遊びたいとおもっている。子どもからあそび場を奪っている。子どもの権利を奪っている。市には子どもの参加条例がある。が、子どもを市民として認めていない。50名を束ねて意見を持ってこないと要望書も出せない。子どもも市民という扱いを行政はしないといけない。このことも突破口として提案したい。(年金生活者)

 Q朝比奈:子どもが聴いてもらえた実感をもてないということでしたが、意見をどう吸い上げているか
 A石野: 文部科学省は、学校では「言語活動の充実」が挙げられており、読んで考えて自分の意見を述べることを、各教科でつけていこうと考えている。現場では、子どもは言葉だけではない。その日の子どもの表情などもあって、担任の力量にかかっている。子どもの意見を否定せず吸い上げるということを学校現場で心がけている。
 Q朝比奈:通告のその後、地域で孤立しないようにどうつなげていくのか
 A布施 :通告という言葉は強くてイヤですね。通告があれば家庭訪問をします。第一回目の入り方が難しい。まずパイプをつくるために、ドアを閉められように「困っていることはありませんか?」というように、慎重にしている。パイプができれば、次への支援がスタートする。お母さんが産後うつにかかっておられ、子どもの泣き声で通告され、後日、お父さんが事情を説明して廻ったケースもある。年配の方が子どもの泣き声がうるさいという通告もある。そんな場合も行く。ご近所づきあいがあれば、実態や状況がわかりますし、子どもは泣くのが仕事というおおらかな気持ちでつきあうことができればいいと思うのです。
  A西網:施設のこどもの最善の利益を保障するという意識性が施設長にあるのかどうかが問われる。周りの方々に自分たちの施設の子どもがどう映っているのかということに対して、どう説明責任を果たせるのか。
子ども会や地域社会で子ども達をどう育てていくのか、また、施設職員も、施設の子どももその一市民として地域でどう生きていくのかを話し、語り合っていくことが大事です。館山市で子ども条例をつくるよう言います。
Q朝比奈:子どもがあそび場を奪われているということについて
A池口:2003年からいすみ地区でタウンミーティングをしてきた。その後、地域福祉ネットワークをつくり、3つくらいの部会を作った。「真っ白いひろば」づくりを幼稚園から高校生子ども達と話し合ってイメージしてきた。そのイメージでやってみたら、参加が増え、100人くらいになった。「真っ白いひろば」づくり事業が県の事業になり、いすみ市が手を上げ、プレイパークをつくった。地域福祉ネットワークが手伝った、一宮町も、いすみ市内の自治体の方々にもそのノウハウを伝えてすばらしいプレーパークづくりが広がった。子ども主体の場を、草の根でつくったことが重要。
      虐待に関してですが、多くのワーカーが、虐待がどうしてまずいのかという説明力が足りない。虐待が人権侵害であって、将来的にも子どもにダメージを及ぼすことを親に説明しなければいけない。虐待の背景には必ず家庭生活の困難さをかかえている。生活上の支援をすることで、虐待はかなりなくなる。
  
朝比奈:市川圏域の中核支援センターは、子どもの相談に応じているが、乳幼児よりも中高生年代の人たちからの相談が多い。ひきこもり状態にある人の相談もあり(全体の25%)、また年齢などからどの相談窓口にも受け皿が見つけられない人がいる。(19歳など)育ってきたなかで、その子どもさんに、向きあってくれた人、背中をしっかり見せてくれた大人がいたかどうかが、そこから回復につながることが多い。地域のなかでの人のつながりがいかに大事かを感じている。いまの地域社会の状況のなかで、向き合うべき大人に余裕と自信がないのかもしれないと思っています。コーディネーターのまとめとして 意見を出させていただきました。


まとめ 米田修
   本日は63名の参加をいただき、ありがとうございます。この懇話会の役割について話すことで、まとめにかえます。
 この懇話会は2005年から年1回開催し、行政として千葉県は、中央児童相談所・教育委員会人権教育室・健康福祉部の児童家庭課・人権室・障害福祉課そして、市川市子育て支援課、八千代市児童支援課・母子保健課、我孫子市こども課、白井市教育委員会、佐倉市児童家庭課、四街道市教育委員会、木更津市教育委員会、埼玉県子どもの権利擁護委員会、日本ユニセフ協会千葉県支部等々と私たち実行委員会に参加している民間団体が話し合っています。
   子どもの人権をともにがんばっている行政・市民等が、それぞれの実践を発表してもらい共通の理解としながら、地域を創ることを一緒に考えていこうということです。まさに地方自治の実践です。行政に意見を言うだけの住民ではなく、住民自身が責任を持って地域で子どもを育てることの役割を果たしていこうということです。この輪をこれからも広げていきたいと思っています。
   近隣の他県ではこうした取り組みをしていることを余り聞いたことがありません。
  今後は、発表のあった千葉県の「子どもが大切にされる千葉県をつくるための指針」を材料にしていただきながら、千葉県の「子どもの人権のあり方」をどうするのか、今まで以上に地域住民が行政と一緒になって、このことを考えて行きたいと思っています。 
  以上