5回「千葉県子どもの人権懇話会」報告集

 

主催 「千葉県子どもの人権懇話会」実行委員会

<実行委員会参加団体>

千葉県青少年団体連絡協議会、NPOちばMDエコネット、千葉「障害児・者」の高校進学を実現させる会、NPO千葉こどもサポートネットNPO子ども劇場千葉県センター、共に育つ教育を進める千葉県連絡会、NPOネモちば不登校・ひきこもりネットワーク、ほっとすぺーす、千葉・教育を考える親と市民の会、「千葉県子ども人権条例」を実現する会

事務局260-0813千葉市中央区生実町2149番地の2 043-266-8419fax043-266-2359

NPO法人千葉こどもサポートネット内 千葉県子どもの人権懇話会実行委員会事務局

                                 2009216日発行

第5回「千葉県子どもの人権懇話会」

子どもたちが大切にされるまちづくり

 

    日時 2008116日(木) 13開場 

1310分開会 1630分閉会予定

会場 千葉市民会館4階 第1・2会議室

(千葉市中央区要町11号・0432242431

定員 60名 (資料代300円)

 

シンポジスト

○財団法人日本ユニセフ協会千葉県支部事務局長・福本朋子さん

「守られているの?子どもの権利」〜子どもの権利条約カードによるワークショップ体験〜

○千葉県健康福祉部障害福祉課障害者計画推進室長・横山正博さん

「訴訟手続きによらない権利救済制度の今日的な意義について」〜障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例の相談活動から見えてくるもの〜

○長生夷隅地域福祉ネットワーク・柴田敬道さん(こやま家庭支援センター長)

「子どもの自由と参加による遊び活動の支援」〜“真っ白な広場”(遊び場)を中心として〜

    CAPぽけっと代表・荒木秀子さん

10年のCAP活動において感じること」〜子どもと学校と家庭〜

 

子どもたちの命が日々輝き、家庭で、学校で、地域で、人々とともに暮らし・学び・遊ぶ喜びを、目いっぱい感じて生きられるような千葉県を創っていくために何が必要か、一緒に考えましょう。

この懇話会では、第1回から第3回まで、千葉県、市町村、学校、児童福祉機関、民間団体など様々な分野から、実践の発表を受け、共有してきました。その中から、千葉県社会における「子どもの人権」の考え方(基準)や人権の啓発方法、実現の方法、人権侵害の防止解決のあり方などの成果が浮かび上がってきました。そして、昨年の第4回では、<共有>から<協働>へとステップアップしていくために、協働による現段階における「実行課題」を確認しました。

今年の第5回では、この実行課題を踏まえ、当事者の「権利基盤型アプローチ」に具体的に取り組んでいる方々からの実践報告を受け、基本テーマである「子どもたちが大切にされるまちづくり」について参加者と話し合います。どなたでも、ご参加ください。

 

《主催者》千葉県子どもの人権懇話会実行委員会

 

担当事務局:NPO法人千葉こどもサポートネット内 千葉県子どもの人権懇話会実行委員会

 〒260-0813千葉市中央区生実町2149番地の2043-266-8419fax043-266-2359

 

実行委員会代表挨拶 池口紀夫

 

こんにちは、池口です。よろしくお願いします。

 実行委員会の代表を務めております。千葉こどもサポートネットというNPO法人から参加しています。本日はコーディネーターを務めさせていただきます。

 私は子どもの人権という課題に関わるようになってから非常に気になりだしたのは、世論ということ、或いは常識ということです。こういう常識とか世論というのは、ものすごく大きな影響力を持っているなって思っています。子どもの事に向き合った時に、子どもにどういう事を期待するか、どういう事を要求するか、子どもの問題行動等にどういうスタンスで向き合っていくかということで、いわゆる常識・世論が相当支配しているなと思います。

 先日県の教育委員会で開かれました「家庭教育フォーラム」という会に行きましたけど、そこで元校長さんが発表されていましたが、すごく強い口調で、会場にいる若いお父さん・お母さんを叱りつけるようにお話しされていました。

 「今の親は、子どもにきちんとした挨拶等を教えてない」「服装をちゃんと教えてない」「礼儀を教えてない」、その後で「ちゃんと朝ご飯を食べさせてない」。健全育成と言われる内容でしょうか。

 私の町内会に配られてくる子どもの育成広報の冒頭に毎回言葉が書かれてくるんですけど、校長さんですけど大体今の事ですね、書かれている事を見ると。こういうのが子どもに向き合った時の社会の言ってみれば世論なのかな。そういう感じがしました。髪がまっ黄黄になったりしてたむろしているような姿を見ると、そういうのはきちんとしなさいだとか言われそうな感じはしますけど。

 そういう世論ともう一つ。私は43年くらい福祉の仕事をしていまして、そのうちの3分の2は子どもと付き合っていましたので、子どもの側の世論というのは、一緒じゃないっていうのを知っています。子どもが信頼する大人ってどういう人なのかっていうのはちょっと違いますね。今言ったのは大人側の世論。子どもが本当に信頼する教師・親というのはどういう人なのかっていうのは、今の事と大きくズレています。

 私は長い間子どもの施設におりましたので、どういう職員が子どもにとって最も頼りになって、信頼出来て、話し合いたい、会いたくて、一緒に勉強したくて、一緒に運動したくてという人はどういう人なのかっていうのは、それなりに知っているつもりです。

 この辺のところがとても大事なことで、ご存じのように国連の子どもの権利委員会が、子どもの権利条約に対して日本政府がどう改善したかという事について、勧告をしているんですけど、それを読みましたが、再三にわたって国連子どもの権利委員会が言っているのは、「権利基盤型の子ども社会を作りなさい」と言ってる。

 だから今言った大人の世論が今子どもに求めている事と、子どもの権利を基盤として世の中を作っていきなさいという事とは、一体どういうふうに整理されるのか、そういう事が、教育の世界・児童福祉の世界・地域の子どもの世界・家庭の中の子どもの世界にとってものすごく重大なところで、この辺をこの日本の10年で整理していく事が出来ないと、子ども達は危ない限界ラインに来ていると。とっくに来ているんですけど、より危なくなると思います。

 今日は大人しか来てないですけど、その辺の所を訴え、子どもの人権を基盤とした千葉県社会というのはどういうものなのかを、きちんと整理していく必要があると思います。

 今日は、まさに人権を基盤とした活動をされたり、県としてそういうシステムを作られたり、民間の団体で実践をされたり、国際的な規模で人権擁護活動をされている方々に集まって来ていただいて発表していただきますので、それを聞きながら今のテーマをみんなで考えて、これからの子どもにとって人権を基盤とした千葉県社会をどうやって作るかという事を、一緒に考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは本日のシンポジストを、まずご紹介させていただきます。

 財団法人日本ユニセフ協会千葉県支部事務局長の福本朋子さん。千葉県庁から毎年来て頂いているんですが、今回は千葉県健康福祉部障害福祉課障害者計画推進室長の横山正博さん。昨年出来た障害者の差別をなくす為の県条例の中心になって推進されていた方です。長生夷隅地域福祉ネットワーク代表であり、こやま家庭支援センターのセンター長・柴田敬道さん。CAPぽけっと代表の荒木秀子さんです。

 それぞれどういう活動をされているかについては、発表の中で若干触れていただければと思います。それではまず最初に福本さんのほうから「守られているの?子どもの権利〜子どもの権利条約カードによるワークショップ体験」というテーマで発表していただきます。よろしくお願いします。

 

【シンポジウム】

 

財団法人日本ユニセフ協会千葉県支部事務局長・福本朋子さんの発言

「守られているの?子どもの権利」〜子どもの権利条約カードによるワークショップ体験〜

 

改めまして皆さんこんにちは。

 ご紹介いただきました、日本ユニセフ協会千葉県支部事務局長をしております福本と申します。

 約20分程度お時間をちょうだいいたしましてユニセフの活動・子どもの権利条約に則ったワークショップの紹介などもさせていただきたいと思います。

 まず最初に、この「第5回千葉県子どもの人権懇話会 子どもたちが大切にされるまちづくり」の開催、実行委員会の皆様、すばらしい事だなと思い、私参加させていただくのが初めてにも関わらず、一番最初のシンポジストとして登場するのは、紅白歌合戦の新人歌手の気分でドキドキしております。

 本当にたくさんの方々が、県内でいろんな形でこの人権について考えてらっしゃるのだなという事を改めてひしひしと、皆さんの視線を感じております。私の話の出来る内容が非常に力不足な部分があるかと思いますが、日頃の福本をアピールしながら、日頃の雰囲気でやっていきたいと思いますので、ご協力のほうをよろしくお願いします。

 まず資料ですが、ユニセフの封筒が皆様のところにあるかと思います。その中に入っている資料ですが、ホッチキスで留めてあるA4の紙、この紙に沿って今日私がお話させていただく予定です。あとこの青いユニセフの基礎リーフレット、こちら、私、子どもたちの学習会・小学校・中学校・大人の一般の方に向けても、学習会の資料としても配付している物ですが、これも今日のお話の中で使わせていただきます。

 それ以外はユニセフの宣伝も兼ねておりまして、カードギフトカタログ、買っていただくと半分が募金になるよというこういうカタログを入れさせていただきました。あとはユニセフニュースということで、これは千葉県支部が作っている物ではなく東京の品川にあります日本ユニセフ協会の本部がグローバルな部分でユニセフの活動などを紹介させていただいている冊子を入れさせていただいています。

 そしてもう1冊「ともだち」という機関誌が入っていると思いますが、この「ともだち」という機関誌が、私共日本ユニセフ協会千葉県支部のボランティアさんが中心となって作っている機関誌です。先月出たばかりの機関誌ですが、私共日本ユニセフ協会千葉県支部は、県内の活動になります。県内でのユニセフ、国際協力・国際交流という部分で、募金活動も一つですが、やっぱりユニセフであるとか世界の子ども達の様子を知らせる相手というのが、世界の子どもにではなくて、県内の皆様のところに、県内の子どもたち・大人、広い形で県内の方々にユニセフの話をするというのが千葉県支部の活動です。

 その中で学習会というのをいくつかさせていただいておりますが、年間でも40カ所くらい県内のいろいろなところに、小中学校に呼んでいただいたり、一般の親子のグループであったり、いろんな方々にお話をさせていただいています。

 簡単に千葉県支部のご紹介をさせていただきましたが、それではユニセフ自体について、ユニセフの基礎リーフレットこちらを出していただいていいですか。

 世界地図があると思いますが、世界地図じゃないほうを開けてください。左上のところからユニセフとは、というのがあります。ちょうど真ん中のところに「子どもの権利」というのが大きく書かれております。まさにこの子どもの権利条約これに則って、私共のユニセフの活動は進んでおります。これが基盤になっております。

 生きる権利・守られる権利・育つ権利・参加する権利、この4つを柱にしまして、ユニセフの活動、世界150以上の国と地域で、守られているんだろうか?子どもの権利ということで、子どもの権利条約のもとにやっております。

 今パネルを10枚窓のところに置かせていただきました。こちら10枚セットで、題名は「守られているの?子どもの権利」というパネルですが、ちょっと読ませていただきます。

 子どもの権利条約が1990年に発効しました。この条約は子どもの生きる権利・育つ権利・守られる権利・参加する権利を定めています。しかしこの権利は守られているのでしょうか。ユニセフは皆様と協力して子どもの権利が実現する世界を目指して活動しています。

 こちらパネルのナンバー1になるんですが、こちらは一つのユニセフのツールとなっています。こういったパネルを県内の皆さんから依頼を受けて貸出をしています。これは学校であったり、行政の方からの依頼を受けて、パネル展という事で多くの方にいろんな状況を知っていただきたい、そういう思いでこのパネル、本日も10枚セットなんですけど展示させていただきました。

 

県内の皆様のところで子どもの権利に則って活動しているんだよという話をしているという事は、今お話しているとおりです。それでは自分たちが子どもの権利というのを果たして私がわかっているのかなといいますと、子どもの権利条約っていっても何なんだろうというのが自分の中ではまだ落とし切れていないというのが正直たくさんあるんですね。

 そんな中、うちはボランティア組織なので、ボランティア研修会というのを年1回やるということで、今年の4月に行ったボランティア研修会の様子をご紹介させていただきます。

 ユニセフのボランティアさんは100名ほどいるんですが、その100名くらいの方の中、この今年の4月26日に参加出来たのが20名ちょっとくらいでしたが、この研修会をするにあたって改めて子どもの権利条約っていうけれども私達それちゃんとわかってないかも、という事になり改めてこのカードブックをみんなでワークショップやってみようよという事で研修会を行いました。その様子がこちらの資料に書かしていただいています。

 真ん中あたりから、平成20年度ボランティア研修会プログラム。4月26日に行いました。時間的には2時40分から3時半までの時間帯で「ワークショップ子どもの権利条約」、各グループで分散会。

ちょうど皆さんの机に1セットずつカードブックの見本がありますので広げていただいて。こちらのカードを全部一人が今短時間で目を通す事は時間的には無理かと思うんですね。一番手元にあるカード2・3枚を読んでいただくだけでも大丈夫なんですけど、このカードブックというのは、イラストも入っているんですが、非常にわかりやすい言葉に変えてあります。皆さんがそれぞれ遊び感覚も含めてやれるような、そういったワークショップとして作られています。

 これを実際にどのような形で使う事が出来るかっていうのは、いろいろなやり方があるんですけど、この4月26日の研修会の中では「課題の話を読んでムギシャや明子さんのそれぞれに関係があるかなと思う条文カードを全部選び出してみましょう」「選び出した際に選んだ理由も書き出しておきましょう」「子どもたちの周りにはどのような問題があるのか、この問題を解決する方法を考えてみましょう」。この2つの例というのがその下にあります。

 一番の例、ムギシャは6歳の女の子です。ムギシャの国では戦争をしています。ムギシャのお父さん・お母さんはムギシャの見ている前で殺されました。ムギシャは命からがら隣の国の難民キャンプにたどり着きました。一人ぼっちになったムギシャを助けてくれたのは同じ村に住んでいた12歳のお兄さんでしたが、お兄さんは逃げる途中で兵士に「お前も兵士として働け」と言われ連れていかれてしまいます。

 2番の例です。明子さん一家は仲良しでよく話をします。明子さんのお母さんは大変優しく親切です。明子さんに来た手紙や葉書などもきれいに整理していつも机の上に置いてくれます。今日明子さんに来たばかりの葉書の内容についてお母さんから夕食の時に話が出ました。でも明子さんにはその事がちょっぴり不満でした。

 これが2つの例なんですけど、例えば、6個の分散会があったら、A・B・Cのグループは1について考えてみてください、D・E・Fのグループに関しては2の事例について考えてみてください、という事で一つのグループで両方考えるのは時間的にかなり大変ですので、それぞれ分かれて、ただたくさん事例がありすぎるといろんな意見が出るよっというのを確認できないので、2つの事例に絞って話をしていただいて、グループに発表して頂きました。

 今は時間がないので実際にやっていただいて、この第3条は、1は合ってないよねとかって、皆さんで話し合う時間はないんですけど、今1グループお一人ずつで構わないので、1についてこれは合ってないよという事を一言ずつ言っていただいて。

 35条【誘拐・売買から保護】これが事例の1、子どもが守られていないというのが出ました。

 38条【戦争からの保護】これも事例の1ですね。

 事例の2について何かありますか?

 16条【プライバシー・名誉は守られる】これが事例2のほう。

 12条【意見を表す権利】

 実際はもっともっと時間をかけてこの事例について、これはそれぞれ発表していただくといろんな意見がでるんですね。その答えに算数のような答えはありません。ただ大事なことはこの短時間で発表しなきゃいけないってあせって読んでいただいたように、子ども権利条約というものは実際にどういうこと?これってすごく大事なことだと思うんです。

 ただ読むことによって自分のところに落とし込む。これは実際に落とし込むことによって、じゃ守られているんだろうか?この事例ってどうなんだろうか?自分の子どものこととか周りの子どものこととかも考えるきっかけとしてこのワークショップは使われております。改めてこういったワークショップをやっていただければと思います。

 

ちょっとめくっていただいて、最後にユニセフのボランティアスタッフがこのワークショップを30分くらいかけてやってみて感想が届いていますのでこれを読みます。

☆ユニセフの活動の柱になっている“子どもの権利条約”についても、改めて読み込むことができました。初心に返るために読む必要があると思います。

多くの方と活動していることを再確認でき、本当にうれしく思いました。

☆子どもの権利条約のワークショップでは、みんなで議論しながら楽しく条文を学ぶことが出来、大変いい経験となりました。

☆条文をよくかみくだいて読まないと、難しい所があり、簡単そうではあるけれど、様々な考えがあることが分かりました。

☆ワークショップは勉強になりました。子育てが終わった現在、我が家の子どもたちの権利はどうであったか?少し反省しています。でも、世界ではまだまだ本当に命を生活をおびやかされている子ども、母親が多くいるのが現実。そういう方たちが少しでも早くなくなるように。

という感想を皆さんからもらいました。

 短い時間で申し訳無かったんですけど、このような形で子どもの権利条約を実際に読み、そして考えること、そして自分たちが考えたことを発表しあうことでいろんな意見を共有しあったり、自分のまた新たな考えるヒントになる、そういったことはこれからもすごく必要なことだし、自分の活動・皆さんの中で参考になる部分がありましたらぜひ活用していただきたいなというふうに思っております。どうも今日はありがとうございました。

 

千葉県健康福祉部障害福祉課障害者計画推進室長 ・ 横山正博さんの発言

「訴訟手続きによらない権利救済制度の今日的な意義について」

〜障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例の相談活動から見えてくるもの〜

 

ご紹介いただきました県庁障害福祉課の横山です。行政の取り組みとしまして多少堅苦しい話になってしまうかと思いますがよろしくお願いします。

 千葉県では障害者差別を禁止する条例が昨年19年7月から施行されています。この条例は概略を申しますと、まず、県民共通のルールとして、障害のある方に対する差別について具体的に何が差別になるのかを定めています。その上で差別があった時の救済措置ですとか、県民皆さんの力で差別をなくしていく仕組みを定めた条例です。

 本日、私からは、千葉県の障害者条例による人権救済の仕組みに関連して少しお話をさせて頂きたいと思っています。

■裁判外紛争処理制度の意義 

今回の発表に当たって、私も子どもの人権に関する他の自治体の取り組みについて調べてみました。そうしますと、子どもの人権条例を定めている自治体がいくつか見受けられました。その中には条例で紛争解決の手続を定めている自治体もあることに気がつきました。

千葉県の障害者条例は、他の自治体の条例同様、人権救済のシステムとして罰金をとったりするのではなく、相談員が第三者として紛争当事者の間に入って事案の救済をしていく仕組みをとっています。

 一般的に紛争の解決といいますと、皆さん最初に思い浮かべるのは民事訴訟ではないかと思います。しかし、裁判というと時間もお金もかかるし、相手とのいい関係というのは期待できないわけですね。例えば損害賠償でもそうだと思いますが、気持ちよく和解するのはなかなか難しいと思います。実際に和解が成立しても心の中にわだかまりが残ったりするようなことってたくさんあるのではないかと思います。そんな中で今、裁判外の紛争処理制度が注目されています。

皆さんのお手元の資料ですと3番になります。ADRと言われていますが、裁判外の紛争処理解決手続きを定める法律が平成19年の4月から施行されています。ちなみに、この制度では、訴訟によらない紛争解決をする機関を認証するというやり方をしますが、地方自治体はADRの対象外になっています。

 ADRは、今申し上げたとおり、訴訟によらず司法以外の第三者が関与してその解決を図る仕組みですが、斡旋や調停、裁定が救済手段の中身になっています。民事訴訟とADRを比較すると、裁判は時間もかかるしお金もかかる、それから被告になる人は、その意志に関わらず訴訟に応じなければいけません。また、裁判官は必ずしもすべての判事が障害者の特性を良く知っているわけではありませんが、ADRであれば専門知識を持っている方が紛争の解決に関わっていただくことができる。訴訟は法律の枠組みの中でしか解決は出来ませんけど、ADRであれば、裁判以外の方法で互いの折り合いをつけ解決を図っていくことができる。また、訴訟では関係者双方が合意していくのは難しいですが、ADRであれば、お互いの気持ちのわだかまりも双方が理解しあうことで解消を図ることができるといったメリットが上げられます。一言で言えば、解決に長い期間を要しない敷居の低い問題解決のシステムとして選択することができる仕組みです。

 障害者条例もADRの一類型とありますが、行政が担うADRは、今までですと公害審査会とか建設工事審査会といった、法令の規律密度の高い分野、つまり、こと細かに法律等で定められている事項を中心に行政が紛争解決をしていくシステムとして予定されていました。ところが、近年では、子どもの人権を巡る紛争解決を定めた自治体の条例など、今までなかったような分野まで行政が間に入って解決を図るシステムが現れてきたことが分かります。

 行政以外にも、民間の皆様が例えば弁護士会さんとか業界団体でこうした紛争解決の仕組みを設けているものもあります。

 今、申し上げましたように地方自治との関係で申し上げますと、行政型のADRは公害紛争や建築紛争から、住民の権利救済に主眼をおくようなもの、(例えば千葉県の障害者条例でいえば、障害者差別を受けたという申立に対して、双方の言い分を聞きながら救済を図るといった仕組みです。)へと流れが少しずつ変わってきたということができると思います。

こうした中で、行政型のADRの代表的なものとしていわゆるオンブズパーソン制度があります。オンブズパーソン制度は、「公正で中立的な立場から、行政に関する市民の皆様からの苦情を処理し、自らの職権で行政を評価・監視する公的機関」といわれていますが、大きく分けて市民の権利を救済・苦情処理する機能と行政自体をチェック・監督していく機能の2つの機能があります。

 千葉県の条例、あるいは子ども人権条例などの人権救済をしていくシステムは、このアンダーラインをした市民の権利を救済していく機能に主眼をおいた条例のシステムとご理解いただけると思います。また、その対象領域ですが、一般領域、つまり市民オンブズマンの皆さんがやっているような領域と、特殊領域、特別な分野の苦情の解決をする2つの領域に活動を分類できると思います。

このように行政と民間がそれぞれ取り組む解決のシステムがある中で、行政事件訴訟以外の領域で、公的オンブズパーソン制度、行政一般に関わるものと、特定領域、この場合でいうと子どもの人権とか障害者の人権など特定の領域での権利の救済をするオンブズパーソン制度が、近年、徐々に確立されつつあるということができると思います。

■兵庫県川西市の取組みから

 今日こちらに来る前に兵庫県の川西市の取り組みを調べてきました。川西市の人権オンブズパーソン条例は、子どもの人権について大括りで「子どもの人権の尊重」という形で規定をしています。千葉県の障害者条例の場合は、具体的な生活場面の中で、例えば障害のある方が公共交通機関を利用する際に、他の人と違う不利な取扱をすることを差別と定めていますが、川西市の条例は、「全ての子どもは権利行使の主体として尊重され子どもの権利条約に基づく権利・自由を保障する」というように、子どもの権利条約を条例の規定として引き込んでいる。その上でオンブズパーソンの設置を定め、オンブズパーソンに調査専門相談員という非常勤職員、専門職の方を予定しています。専門職の4名は公募による相談員です。その他に専門員・学識経験者などを市長が専任するという形になっています。

 

川西市において、どのような流れで子どもの人権問題・救済手続きを定めているかといいますと、中心となるのは相談機能なんですね。この点は、私も非常に関心を持ったところですが、罰金や罰則という強制的なシステムではなくて、具体的には電話で相談があった場合に権利救済の申し立てをしていただきます。その上で、調査をするかしないかを判断し、必要に応じ調査を実施して具体的な措置を講じていく。例えば勧告や是正措置を講じたり、意見表明や制度改善等をしていく。それから是正等の要望・結果通知、相手側が、市の機関ではない民間・個人の場合はこのような措置をとっています。 注目したいのは右側で、市内の匿名の人からの相談やマスコミの報道、独自に相談員が情報を入手した時に、自分の発意で調査をすることができる、このような形で調査が始まって一定の措置が講じられています。

 このシステムの中心となっているのが、真ん中の相談継続や、相談者による解決。ここに相談活動のウェイトがあると見てとれます。

 資料にこの条例の意義と書いてありますが、(これは千葉県の条例の意義ではなくて、川西市が条例を作った時の検討委員会のコメントです。)重要なのは、公正中立な立場から問題を専門的に調査して救済を行うためには、第三者的な調停者・擁護者としての権限と社会的信用が必要だという点が検討委員会の中で表明されています。2番目に、人権問題は、違法か適法か、賠償を金銭で償ってもらうという司法的な判断を下すだけでは実質的な救済にはならないという点が明らかにされています。それから3番目ですけど、渦中にある当事者間では困難な場合であっても、第三者的観点から事実関係について問題を整理していくという点が重要だということが述べられています。

これは私達が障害者条例を運用していく中でも強く感じていることで、お互いに面と向かって「差別した・差別していない」というような状況では話し合いはなかなか成立しない。ところが第三者が間に入ることで「障害のある方はこういった障害があるからこんなように差別と感じたんですよ」「あぁそうだったんですか、それは気付かなかった、そんな暮らしにくさをこの方は抱えていたんですね」というように話が展開していく。

 これは障害のある方だけの問題ではなくて子どもの人権に関する事案に関しても、具体的な事案について相手方に子どもの人権について考えていただく、その為のきっかけになっていくという視点からもとても重要ではないかと川西市の条例の取組みを読んでいて思いました。

 それからもう一つ、この条例を通じて、川西市の相談活動をされている皆さんが日常的に感じている、お子さんを取り囲む環境的な問題、制度の問題、こういう問題を感じた時にそれを制度として反映させていくことができるようにシステムが設計されている。このことはとても大事なことだと思います。白黒はっきりさせて罰金とっておしまいではなくて、何がそうした権利侵害の背景にあるのかを明らかにし改善に繋げていく。これが紛争解決のその先にあるものでなければならないと思っています。市長に報告というところや、勧告したことを公表するだけではなく、制度として改善していくことも人権問題を解決する仕組みにおいてはとても重要だと思います。

 川西市の相談活動の特徴に書いてありますけど、まず、相談調査活動をどのように行なっているのかを見てみますと、相談者の気持ちを傾聴する、相談者と一緒になって問題の課題や解決に向けた選択肢を整理して、相談者自身が解決方法を自分で選択していくという方法で相談活動を行なっていきます。それから大事なことは子どもと相手方との関係を調整すること。ソーシャルアクションなどと言われますが、子どもの権利を守るというだけではなくて社会に働きかけていく活動がとても大事だと思います。お子さんに寄り添って子どもの最善の利益を図ることを前提に、その子どもの関係者以外の人々にオンブズパーソンが直接出会って子どもの代弁をする。そして子どもと社会の関係の作り直しを支援したり、関係機関をコーディネートしたりするといった活動です。例えば子どもの立場にたって寄り添いながら子どもの気持ち・意見を代弁して、子どもが自分自身を取り戻して成長していく関係作りを調節することにほかならないと書いてありましたが、まさにこうした活動が求められているのではないかと思います。見ての通り、申し立て件数は少ないかもしれないけど、相談件数は大変な数に上がっているということでそのことが良くわかります。

■千葉県の障害者条例の救済システム

 ここまで、他の自治体の条例の話をさせていただきましたが、こうした条例と非常に千葉県の障害者条例は近い、ほとんど同じようなシステムということができます。だた、千葉県の条例が異なるのは、差別の定義をしていることです。子どもの権利条約と違って、日本政府は、まだ障害者の権利条約を批准してない。条約を批准してないので国内法が整備されていないんですね。ですから千葉県の条例では、障害者の権利を、誰もが持っている権利を前提として、定義規定の中でその内容明らかにしています。その上で、話し合いにより個別事案の救済・解決の仕組み、制度や習慣などを変えていく仕組み、頑張ってる人を応援する仕組の3つの仕組みを条例の中に規定しています。

 図が細かいので見づらいかもしれませんが、一言でいうと、地域の中で差別を受けたという相談があった時に、地域の相談員さんと相談活動をコーディネートする広域専門指導員が関係者の間に入って、互いの意思疎通を図りながら合意形成をしていく。その中で相手の方に障害がある方の暮らしにくさや、生きづらさを理解していただきながら相手方の共感を得て、具体的な行動を促していくという活動です。これが障害者条例の基本となる相談活動です。

中には、もしかしたら悪質なものがあるかもしれません。虐待と思われる事例があるかもしれません。残念なことに、子どもの場合は児童虐待防止法がありますけれども、障害者の場合は障害者虐待防止法はないんですね。だから千葉県の障害者条例ではこうした悪質なものについては県の中央に調整委員会と言いますが、知事の付属機関として委員会を作って、ここで助言や斡旋をし、悪質なものについては知事から是正の勧告をするというシステムをとっています。

地域相談員は、身体・知的障害の相談員の他に精神障害のある方の家族会の皆様のご協力を受けたり、学校の先生のOBの方とか、企業で働いてる方々など様々な方々にご協力いただいて、現在約650人の方々に相談員になっていただいています。650人の方々が県内の16人の広域専門指導員という専門職のもとで相談活動にあたっています。

調整委員会では20名の委員の方々、内訳としては障害のある当事者8名、県議会の議員の方が3人、有識者の方が9人で審議いただいています。

条例が施行されたのが19年の7月ですので、現時点で、ちょうど1年4ヶ月が経過したところです。施行後1年で統計をとっていて、6月の末までで370件の相談を取扱ました。370件というと件数的には少ないと思われるかもしれませんが、相談回数の頻度でいうと約3,850回の相談活動をしていますので1件あたり10回ちょっとの相談活動の回数になっています。

福祉サービスの提供や商品・サービスの提供、建物・公共交通機関の利用の場面で障害を理由として不利な取扱を受けたなど、資料にあるような件数となっています。

全体としては身体障害のある方のケースが多くなっていて、その中でも知的障害のお子さんをお持ちの保護者の方や発達障害のお子さんをお持ちの保護者の方からの相談や、精神障害の当事者・ご家族の相談が多いのが特徴です。

■相談活動を通じ見えてきたこと

相談活動を通じて見えてきたこととして、一つには当事者間の関係性の維持・修復が非常に大きなカギを握っています。例えば、車いす利用の団体さんのお客さんがホテルに宿泊の申込をした際に、和室の宴会場の利用を拒否されてしまったとの相談に対し、相談員等が第三者として間に入って、双方の良好な関係を壊さないように繰り返し調整したことで、結果的にカラオケルームを空けてもらって、そこを宴会場にしていただいき解決したといったケースがありました。

また、資料に秘密の保持とエンパワーの課題とありますけど、特に障害がある方々への差別の問題についての相談の特徴として、「あなただけにしておいてください。」あるいは、「聴いていただけただけでもういいんです」という相談が結構多いんですね。そんな中で、「この問題は社会的にも問題があるのではないでしょうか、なんとか相手方に話をして解決していきましょう」というところまで持っていくのに、とても時間がかかっている。相談者をエンパワーをして問題解決へつなげていくのも、とても重要な課題だと思っています。

それから家族支援の重要性です。条例の相談の中には、発達障害のお子さんを育てている保護者から、学校・学童保育・保育園で障害を理解してもらえないといった相談も寄せられています。その背景には、学校側や保育園・学童の支援者、学校の先生方にも、なかなか発達障害の障害特性がわからないという問題が背景にあるんだと思います。そうした中で、子ども達の間に排除の気持ちが生まれいじめにつながっているようなケースも多いんです。 一方、保護者の方達も大変苦しんでいる。例えばアスペルガー症候群とか難しい障害を抱えていらっしゃると保護者もお子さんに対する関わり方自体が難しい。更に、母親がご両親に「お前の育て方が悪いからだ」と言われてしまって、家庭のなかで本当に大変苦しんでいらっしゃる。それがまた、障害のあるお子さんの状況を悪化させてしまっているケースも私共の相談活動の中にはありました。また、「学校で、先生に差別的な言葉を投げかけられて引きこもりになってしまった」とい相談があり、相談者にお話を伺うと、学校の問題だけではなくて、お子さんの障害への対応が家庭内でも大きな課題となっていて家庭内で子どもへの虐待が疑われるケースもあるなど、障害のあるお子さんの関係する相談については、単に障害のある人だけでなく、保護者も含め家族全体を支援する必要がある場合も多くなっています。

■今後に向けて

こうしたケースへの対応を通じて、相談活動を展開するには、地域相談員や広域専門指導員だけの活動では十分ではなくて、地域の様々な関係者が課題を抱えた障害のある人やご家族を支えていく。そうした関係性を地域の中で作っていく。つまり権利擁護の地域のネットワークを作っていくということ、このことが重要な行政課題としてクローズアップされてきています。

それからもう一つ指摘しておきたいのは、資料にシティズンアドボカシーという難しい言葉で書きましたけど、市民の皆さんが地域の権利擁護活動に参加していくことの重要性です。神奈川県の茅ヶ崎市には「湘南福祉ネットワークオンブズマン」があります。こちらでオンブズマン活動に関わっている皆さんは、市民の方が次から次へと手をあげて活動に参加いただくシステムが確立しています。こうしたネットワークによって、多くの市民の皆さんが人権問題に関わり、自分たちの地域の問題として子どもの人権について考えていくということが、これからの人権問題を考えていく際にとても大切ではないかと思っています。

その他にも、障害がある方の権利擁護について、障害者虐待防止法の必要性も感じているところです。それから恒常的に繰り返される差別については、社会的な問題として多くの市民が共有していく。そのようなシステムを作っていくってことが重要だと思っています。

千葉県の障害者条例では市民への課題共有システムとして「推進会議」という会議を立ち上げています。この会議は、個別の相談活動の中から見えてくる課題を、幅広い県民の方々、障害のある方の生活と密接な関連がありながらもこれまであまり関わりのなかった人たち、例えば経済界の代表の方々とか、医師会の会長さんだとか、交通事業者、バス・タクシー業界とかこういった様々な団体の皆様に参加いただいて問題を共有し、自らどんなことができるかを提案していくという円卓会議です。

子どもの人権を考えていく際にも、多くの市民の皆様が問題を共有する、そして子どもの権利を救済する活動を通じ、一人一人の市民が子どもの人権について立ち返って一緒に考えていく。このようなシステムをつくるのが、これからのアプローチの方法の一つとして考えられることなのではないかと思っています。

以上で私の方からは簡単ではございますがお話をさせていただきました。ご静聴ありがとうございました。

 

長生・夷隅地域福祉ネットワーク 柴田敬道さん(こやま・家庭支援センター長)の発言

「子どもの自由と参加による遊び活動の支援」〜“まっ白い広場”(冒険遊び場)の活動から〜

 

私は長生・夷隅地域福祉ネットワークの代表・柴田と申します。

私はずっと子どもに関わる仕事をしてきました。虐待を受けたりして親元を離れて生活せざるを得なくなった子ども達の生活の場である児童養護施設に長年勤務し、この4月から児童養護施設に併設された地域の子育て相談機関である「児童家庭支援センター」・・・まだ県内に5カ所しかなくまだ認知度が低いのですが、いすみ市大原にあります「こやま・家庭支援センター」という児童家庭支援センターにおります。先程池口さんから、子どもの育ちの危機というものには限界ラインを超えている部分がある、といったお話がありましたが、まさに児童虐待という部分は既に限界を超えてしまっていると思います。児童相談所の一時保護所に子どもが溢れ、児童養護施設も満杯状態で、子ども達は長期間の待機を余儀なくされている状況です。これをなんとかしなければ、という思いで相談活動を続けていますが、そうした児童福祉に対する思いも含めて今日はお話しさせていただければと思います。

 “まっ白い広場”の活動の主体は「長生・夷隅地域福祉ネットワーク」という市民団体です。平成15年に県で地域福祉計画が作られました。策定に当たり、健康福祉千葉方式の下でタウンミーティングが各地で開催されましたが、その際に結成された団体です。今日は、私達が携わっているこの“まっ白い広場”という活動について、「子どもの権利」という視点から報告をさせていただきたいと思います。

皆さんのお手元に昨年度の報告書をご用意させていただいたのですが、この“まっ白い広場”は千葉県の次世代育成支援行動計画の中では、目玉事業として位置づけられているものです。一般的に知られている名前でいうと“プレーパーク”とか“冒険遊び場”とか、東京は世田谷の羽根木プレーパークが有名ですが、そんな活動と同じものと考えていただいて良いと思います。子どもの自由な遊び活動の場です。長生・夷隅地域では、長生では睦沢、夷隅ではいすみ市の2カ所でこの運営に携わっています。どちらも毎月1回ずつ開催しているのですが、その日は私も子ども達と一緒になって遊んでいます。

この活動について、子どもの権利に関わる2つの視点で、考えていきたいと思います。まず一つは「広場を作るまでの過程」です。広く捉えると、県計画に反映されるまでの過程も含めて、そこに込められた思いというものを語り継いでいかなければ、と思っています。もう一つは「まっ白い広場における子どもの遊び活動」そのものについて、報告したいと思います。

 まず1点目の広場作りについてですが、平成16年の12月に千葉県次世代育成支援行動計画が策定された際に、私達も地域住民の声を反映させるべくタウンミーティング開催に向けて動いていきました。子どもの未来を考える計画に当事者である子どもの声を反映させなければ意味がないし、千葉県らしい計画にならないだろう、という事で、多くの子ども達や若者を巻き込んでタウンミーティングやろうと決心したのです。名称も「子どもタウンミーティング」として、準備段階から若者や子ども達を中心に話し合いを重ねていきました。どんなタウンミーティングにしようかという事から始まり、結構その作業は大変だったのですが、最終的に本番当日の参加者約450名のうち3分の1は子どもというこれまでにない集まりになりました。本番では子ども・若者が主体となってプレゼンテーションを行ったり、会場の多くの子ども達も意見発表を行いました。

 その中で提案されたのが“まっ白い広場”でした。これは名称も含めて子ども達・若者達の提案とでした。既存の公園ではない、何もないまっ白なところから、子ども達自身が主役となって知恵を出しあって色をつけていく、そういう広場が欲しいな、というところから“まっ白い広場”という名前を付けたのです。知事も「こういうスペースが出来たらいいね」ということで、県計画の中に位置付けられていったという経緯があります。

 その後ネットワークの仲間達で、子ども達の思いをなんとか形にしていこうと、実際に地域に広場を作る計画を進めていきました。まず場所を確保するところからのスタートです。土地の所有者との折衝であったり、予算の確保であったり・・・。そして試験期間を経て平成18年8月から一般公開に踏み切ったのです。

 私達の広場は睦沢町立土睦小学校のすぐ側にあります。学校の脇に鎮守川という小さな川が流れているのですが(・・・パンフレットには写真が載っているのですが)そのほとりにあります。木立が生い茂り、川のせせらぎが心地良い、とってもすてきな場所です。毎月1回定期的に開催し、町内の保育所や小学校にチラシを配って参加者を募っています。昨年度の実績だと9回開催で延べ700名くらいの参加者がありました。もう1カ所、いすみ市でもやっていますので、合わせるとその倍くらいの参加があることになります。また口コミで、今どんどん参加者が増えているという状況です。こうした活動は全国的にも県内にも広がりを見せていて、全国組織や、県内にもネットワークが出来ています。市町村で事業化されているところはまだ少ないのですが、県内各地に多くの市民活動が展開されていて、多くの子ども達がそこで遊んでいます。

県次世代計画の事業化の裏に、このようなプロセスがあったという事を、まずお伝えしたかったのです。

 

 次に2点目です。子どもの遊び活動そのものについてです。子どもが公園や、空き地や、自然の中で群れて遊ぶ機会が消えつつあります。私達が活動する睦沢町は農村地帯です。自然が豊富です。しかし、地域のおじいちゃんが、「ガキの頃はこの辺で遊びまわったんだけど、今じゃ子どもの姿を見なくなったねえ」と言ってました。こうした状況は都市部だけではなくて、農村部でも同様です。それには犯罪の問題であったり、遊びの変化であったり、少子化であったり、子ども達が忙しくなっていたりなど、いろいろな要因が絡み合ってる事は皆さんご存じかと思います。しかし、この自由な遊び活動の中に、子ども達が人間的に成長する多くの要素が含まれている、というのもまた事実ではないかと思っています。池口さんがよく、「遊びは子どもの生命活動そのものだ」というお話をされるのですが、まさにその通りだと思います。わくわくした冒険心を経験した大人達にとっては、人生の中で一際輝いている時代として思い返されることでもあると思います。

 この広場のコンセプトは、子ども達の創造的で自由な遊び活動を保障するということから、禁止事項は極力なし、です。また内容も、大人が与えたプログラムということではなくて、子どもを主体として、大人はなるべく見守り役に徹しようというようにしています。とにかく何をやってもOK。火遊びやってもいい。泥んこ遊びをやってもいい。しかし、実際に始めてみると子ども達は自分で遊べないという状況がありました。何やって良いのかわからなくてスタッフの後について「一緒に何かやってよと」というような事が多かったと思います。「自由に遊んでもいいよといっても今の子達難しいのかな?」「なかなか遊びが広がっていかないね」といったようなスタッフの声もありましたが、そんな心配もよそに、だんだん遊びは創造的でワイルドになっていったのです。

ここでは、遊びの引き出し役(プレイリーダーと呼ばれる)が重要な役割を担っています。例えばナイフの使い方だったり、火の使い方だったり・・・。指導という形ではなくて、むしろガキ大将的な役割を、若者中心に担ってもらいました。

「たき火」一つ取ってみても、実際にやってみると簡単には燃えない。五感と知恵を働かせなければいけない。そうした活動を、子ども達四苦八苦し、最初は大人に頼んだりするのですが、だんだんコツをつかんで最終的には自分たちで火をおこして料理をする事が出来るまでになる。

 あと良くいるのがミミズを掴めない子ども達。広場では釣りも出来るのですが、餌を付けられないんですね。「きもい!」とか言って・・・。高学年の男の子達が「えさ付けて」と言うんです。最初1回は付けてあげるのですが、そのうち面倒くさくなって放ったらかしにしておくとあきらめて自分たちで頑張って付ける。そのうち自分たちで釣った魚を焼いて食べてみたりする子も出てくるようになる。

 子ども達同士の関わりも深まって、花いちもんめや鬼ごっこが始まったりします。時にはケンカなどの小競り合いがあったりもします。もちろん小さなケガはしょっちゅうあります。たまに大きなケガもありますが、自己責任ということを理解していただいた上で参加してもらっています。

 あと鼻たれ小僧が出現してきました。要は遊びに夢中になっていると、鼻をかむのも忘れてしまう、そういう子が出てきた事を嬉しく思っています。

 とにかくそういう時って子ども達の目がキラキラ輝いているんですね。遊びは生命活動そのものという話もありましたが、子どもが本能的な欲求を満たしているんじゃないかとさえ感じ取ることが出来るのです。この活動に携わっている中で、このような姿に出会うたびに、やって良かったなあ、と思うのです。 

また遊びの中では世間一般とは違った価値観が存在すると思っています。貧富の差であるとか学力とかを超越したものがあります。さらに、様々な課題や困難を自分たちで乗り越える力を、自然や仲間関係の中から学ぶ。相手の表情を読み取ったり、気持ちを推測したり・・・生身の人間同士、そして自然を共有する事によって育まれるものが、たくさん備わっていると思っています。

 最近では、こうしたことが「発達」の部分にも影響する、ということも言われています。ここで、「生きる力」ということを考えた時に、「大人の先回り」「〜してあげる」という事がその芽を摘んでしまっているということはないのだろうか、という事を考えます。

 人間というのは社会の中で生きていくものですから、社会化ということはもちろん使命ではあるのですが、それが大人の管理の下でしか為し得ない、ということでは決してないのではないでしょうか。子ども社会の中、子どもの主体的な活動の中で培われていく、育まれていく事が非常に重要なものではないか、と考えています。原点に返って、遊びの重要性とか、遊びの復権とか・・・、「子どもらしく遊ぶ権利」というものがあるとすれば、それを保障する社会もあってしかるべきだと考えます。

 このことは遊びの世界だけではなく、様々な子ども活動の場面の中で、子ども達に主体性を持たせていくという工夫が必要だと思っています。これはごく当たり前の事であって、自己の人生を主体的に生きるという事は、もちろんそれが大人だとしても求められる事であり、そのことが、子どもでいえば「キラキラした目」に繋がっていったのではないかと思います。

 

 最後に、私の思いを・・・。虐待を受け家庭を離れて生活を余儀なくされてしまった子ども達は非常に理不尽な思いをしてきています。先に紹介した「子どもタウンミーティング」では、その理不尽の最たる「虐待」を受けた子どもが自らの虐待体験を明かし、参加者そして知事に向かって「虐待のない社会にしてほしい」と訴えたのです。やはり子どもって、自分の思いを受け止められると回復するものなのです。虐待を受けたからといって、将来が真っ暗になるというわけでもなく、その思いがきちんと受け止められると回復していく。そういう発言につながるくらい、立派な社会の一員として育っていくこともできるのです。

 そういった意味では、子どもの思い・権利を重視して、思いを受け止めていくということが、これからの地域作りであるとか国作りに繋がるのではないかと思っています。

以上、自分の思いも含めて発表とさせていただきます。ありがとうございました。

 

CAP(キャップ)ぽけっと代表・荒木秀子さんの発言

10年のCAP活動において感じること」〜子どもと学校と家庭〜

 

 CAPぽけっとの荒木と申します。始める前に二つお許しをいただきたいんです。一つは、私は今日咳を時々します。聞き苦しいかと思いますがお許しください。もう一つは自分を律する為に今日はタイマーをかけました。この二つをお許しいただきながら始めたいと思います。

 お手元の資料を確認したいと思います。「子どもたちが大切にされるまちづくり」という資料、黄色いリーフレット、児童養護施設の子どもの為のワークショップのお知らせ、四街道のワークショップのご案内。

それではCAPというものをご存じない方、ちょっと手を挙げてください。ほとんどの方がご存じだということですが、少し始めに時間をとりましてCAPって何だろうという事を説明させていただこうかなと思います。資料の1ページを見ていただくか、リーフレットなどもご覧になっていただければわかりやすいと思います。

 CAPというのは子どもへの暴力防止プログラムです。私たちが学校や保育園・幼稚園などに伺って、授業の時間を使って暴力に遭いそうになったら何が出来るのか。自分を守る為のプログラムを子どもたちに提供しています。

 暴力というものは大変怖いテーマです。その怖いテーマを怖くならないように楽しく子どもたちに伝えるという事を一番大切に、ポイントとして重要に考えて提供しています。

 その為には「劇」というものを使ったり、年齢によっては人形劇をしたり、身振り手振り、歌や写真なども使って、グループの中で話し合いなど、そういうやり方をとったりします。子どもの年齢と発達に合わせた形で子どもたちに行っています。

 それから児童養護施設の子どもたちへのプログラムもここ近年行っています。また今年になって、障害がある子どもへのプログラムも完成しましたので、いよいよ障害がある子どもへのプログラムもスタートするんだというところに、今CAPはいるところです。

 CAPというのは暴力防止を子どもと一緒に考えるプログラムですけど、子どもが自分を守る為には、実はやっぱり大人からの手助けが必要です。CAPは大人ワークショップというのが欠かせません。保護者ワークショップ、教職員ワークショップ、地域の大人の方を集めてワークショップをしたり、それから専門職の方にむけたワークショップなども行っています。

 子どもの問題が起きたりすると、とかく親の責任というのをバッシングのようにされます。それから学校の責任ということで、マスコミをはじめ世間は騒ぎ立てるという事がよくおきてきます。

私たちCAPはそうではないんじゃないかな、もちろん親や学校にも責任はありますが、地域の私たちにも責任はあるんじゃないかなという事を考えています。

CAPの私たちはまさに地域の大人なんですね。その地域の大人である私たちが学校という場所をお借りしまして、学校の中で子どもの問題の事・子どもの暴力の事・子どもの人権の話などをしていく。学校・親と一緒に地域の大人の私たちが一緒に考えるよというスタンスというものを、CAPでは大事に考えています。

 子どもたちは、実際に子どもの権利の話とか、暴力の問題に対して率直に話してくれる大人が現れるという事で、大変喜んでいただけるんですね。とても子どもたちからエネルギーを、私たちはもらっています。

 このCAPを提供するグループというのは今日本に160以上のグループが立ち上がっています。千葉県では5つのグループが活動しています。CAPぽけっとというのはそのうちの一つのグループなんですね。どのグループも一生懸命、プログラムを子どもの視点に立って伝えています。

 私たちのCAPぽけっとというグループは、今年で10周年を迎える事が出来ました。10年を迎えるに当たって、経験してきたことを、今日は私の主観になりますけど、今日のテーマであることを考えながら、親・学校・子どもという枠を3つの枠で話をしてみたいなって思っています。

 まず親という枠の中からちょっと話をしていきたいと思います。私が感じている10年間の中での保護者というものの変化みたいなものが実はあります。最近主体的に活動する保護者の方が減ってきたんじゃないかなと実感しています。

 例えばCAPを一つ例に取ってみれば、CAPというものを学校で取り入れてもらう為にはPTAの役員の方であるとか、役員さんじゃなくてもPTAの一保護者の方が学校にかけあったり、賛同者を一人でも多く募って予算をとったり、いろいろな事が必要なんですね。そういうエネルギーというのは本当に大変なものだと思います。これらの活動は実際に提供するCAPの私達には出来ない事なんですね。それは保護者の皆さんにお願いしなければならない事です。

 長くかかる学校などは2・3年をかけて情熱の火を消さないように私と電話で話ながらやっていくんですね。それで実現していく例が今まではあったんです。ところが最近はそういう方がちょっと減ってきたなというのが実感として感じています。

 ワークショップをすると、自分の子どもには受けさせたいという声はすごくよく聞くんですね。

でも「どこに行ったら受けさせられますか」というように、自分の学校で自分が取り入れる為の何かをしようという事は、なかなかそこまでは出来ないという親が大変多くなってきたなという感覚を持っています。

 それから、いろんな学校におじゃまして思う事は、最近いじめの問題について子どもの問題ではなくて親のトラブルに移ってしまっているというケースがまま見受けられます。とても泥沼化してしまって、学校ともあまりうまくいかないような感じです。「CAPの人、先生に言ってください」「CAPの人、子どもに言ってください」、という感じで私達に託されるというような事が多くなってきたという感触を持っています。

 とはいってもこういった事を乗り越えてCAPの保護者ワークショップにご参加いただいた皆さんは、大抵の方はいい感想を寄せてくれます。今日は寄せてくださった声をくくりに分けて載せてきました。その2ページの保護者ワークショップの皆さんの感想なども今日の帰り道なんかに読んでいただくといいかななんて思っています。

 

 では学校についての視点でちょっと考えてみたいと思います。

 CAPプログラムを提供した後に、30分程度子どもたちとトークタイムという時間をとります。

これはお話をしたい子どもたちだけが私たちとお話する時間です。1対1で、CAPスペシャリストと子どもと1対1で話をする時間です。子どもが話したい話を自分で決めて話してくれるんですね。ですから趣味の話であるとか、感想、質問ですとかいろんな話が飛び出してきます。

 そんな中で虐待が疑われる子どもというのもあるわけですね。そんな時には私たちは学校側に通告のお願いをします。CAP活動を始めた当初は、そういうお願いをした時に学校側の反応として、虐待自体が認められない・受け止めにくいという反応がありました。

 ところが最近の学校はそういう事はまずありません。ちゃんと良く聞いてくださるんですね。

子どもの痛みもよく感じてくださる。すごく嬉しいなというふうに思っています。虐待に対しての理解が深まってきたのかなというふうな感想を持っています。ただ、通告という行動に移すというところになると、まだ壁が厚いようで、なかなかそこのところは頭では理解しているんですが、心のレベルでは動いていかないというところはある。そんな事は今感じています。

 それから教職員ワークショップというものは、なかなか皆さん忙しいですので、取り入れていただけないという現状がある。逆に教職員ワークショップを計画してくださる学校というのは、元々CAPに対してウエルカム状態ですので、大変皆さん積極的に参加して勉強してくださるんですが。

 出会った先生の中で印象深い、私が今でも思い返すと、『どうされてるかな』なんて思う先生の事を少し紹介します。いじめ問題で大変悩まれていて、親御さんからやいのやいのと騒がれてものすごく悩んで、私にA4の紙にびっしりと悩みを書いて送ってくれた若い男性の先生。それから、CAPワークショップが終わった後に「私が(先生)お話したいんです」と言われたこともありました。先生のトークタイムというのはありませんが、「子どもが帰ったら、あなた来てくれる?」って感じで頼まれて、リポビタンDを買って学校に戻って先生の話を聞くと、涙ながらに先生が悩みを話された。これも若い先生でした。

 若い先生方の悩み振り・孤独振り・忙しさ振り、ものすごく大変だなという思いがあります。それから重篤なネグレクトを抱えて先生が一人で奮闘している。もう職以上の事をおこなっていますね。先生がものすごく子どもの事を大事にして寄り添って活動していました。でも一人じゃ抱えきれない。「もうこれ以上この先どうなってしまうのでしょう?」ともう先生は不安で不安でCAPを心待ちにしていて、廊下で私たちが歩いてると「来てください」という事で、はき出すようにそのお話をされました。

 私たちはすぐに行って動き始めます。そのままじゃダメだよねということで動き始めました。本当にそういう先生方というのは頭が下がる思いがします。

 残念ながら学校いろいろ廻りますと体罰をしている教師であるとか、スクールセクハラをしている教師に出会う事があるんですね。すごく難しいです。学校はなかなか認めたくない。もしくは認めてくださるんですけど、それをじゃどうするかというところまではなかなかいかない。残念な出会いもありますけど、でも先程言った通り一生懸命やってくださってる先生方のほうが圧倒的に多い。ですから私たちは学校の理解者でありたいというふうにすごく感じています。

 ただ子どもの視点にしっかり立つということだけは忘れないようにしないと、教師の側に「大変だね」というところで解け合ってしまうと、得てして子どもの視点というのを忘れがちになってしまうので、時としてはやっぱり学校側と相反する事を言わなければならないという事もあるかもしれない。

 

 あと子どもという枠の中からちょっと話をしたいと思います。トークタイムという話をしましたが、トークタイムの中で前はこんな事聞かなかったなというトークタイムがこのところポツポツあります。何かというと「荒木さん、自由が僕にはないんだ」。安心・自信・自由の権利という事で私たちは教えます。その自由がないんだよと言うんですね。「何、何?」って聴くと、一週間で習い事が4日も5日もある。ひどい子だと6日ある。それが幼稚園・保育園でもあります。やっぱり先程もおっしゃられましたけど、子どもには遊びというものは非常に重要です。遊ぶ権利というものは生きる為に必要な子どもの権利です。ところがそれを奪われてしまっている子どもが多くなってきたなというのを、すごく感じています。

 これはコミュニケーション力の低下につながりますし、そのストレスはいじめという問題に表れてくるんではないかなというのも感じています。

 でも子どもたちというのは本当にすばらしくて、大人と違って柔軟性があるんですね。ですからプログラムを受けた後、そのプログラムをすぐに獲得してそれを応用する力があるなというのは、いつも日々感じて、それが私たちの支えになって活動しているところがあります。

 

 最後に5ページのところ見ていただいきたい。私は子どもの人権無くして豊かな社会はないと考えております。ところが本当に子どもの人権というのが認められてないなというのを実感するんですね。ちょうどオバマさんが大統領になりましたが、黒人差別、黒人の人種的な人権問題もあります。障害者の人権、在日外国人の方の人権の問題などもあると思います。問題は山積みですが、私は子どもの人権ほど本当に認められてないものはないと思います。というのはいくら問題解決が出来ていない黒人問題であっても、今や個人の中で心の中で『自分は黒人は認められない・偏見がある』と思ってる人でも公の場で言えないですよね。黒人には人権がないという事は言えない。社会の中で言えないというのはわかってる。でも子どもの人権だけは堂々と公の場で口にします。

私は口にされます。「子どもに人権なんかないよ、あげてどうするの。それは大きくなってから渡す物でしょ」そういう事を堂々と言うんですね。それはまさに、まだまだ障害者の人権なども本当にスタートラインかもしれませんが、子どもの人権はスタートラインにも立ってないと、マイナスのところにいるんではないかというふうに私は思えてなりません。

 ここにいらっしゃる皆さんはそうかもしれませんが、こういう活動をしていますと時々無力感に苛まれる事があります。自分の無力さに「あ〜ぁ」と、「こんな活動をどうしてしているんだろう」というように思う時もあるんですが、そういう時に、「あきらめない」。ここにでっかく書いたんですね。これを私は思い起こす事にしています。こういうふうに自分を勇気づけるしかない。

 私は3%の人間だと、この3%の私はあきらめずに伝えていく事で少しずつ社会は変えられるんだ。そういう思いを馳せながら活動をしていかないとなかなか。児童相談所の職員もそうでしょ。児童養護施設の職員もそうです、皆さんもそうだと思いますが、第一戦で活動していらっしゃる方々というのは、大変な思いでやっていますので、何か自分を奮い立たせる何かがないといけないかなと思ってここに最後に載せてみました。ぜひ皆さんも心の支えにして頑張っていただきたいなと思います。

 最後にアンケートいろいろここに載せたんですが、こういうアンケートはかなり古いアンケートを載せています。公開OKというのをなるたけ選んで載せていますので安心して読んでいただきたい。それからここに載せてませんが、ぜひこのアンケート、私は声に出して述べたいと思って持ってきました。1枚はとても短いです。

私はあまり大人が好きではないけれど、私の相談にのってくれた荒木さんはいやな気がしませんでした。』

 これは私、自分の自慢したいからじゃないんですね。CAPスペシャリストは、みんな子どもの話を価値判断なく聴きます。大人への信頼のし直しをして欲しいからですね。ですから今日のテーマなんですけど、「子どもたちが大切にされるまちづくり」というのは大人の自己満足であってはならないんですね。こんなに大切にしているじゃないか、こんな事もやってあげてるよ、だから君は良い子になんなくちゃねって言われてもアッタマきますよね。だから子どもが自分を大切にされてるなって子ども自身が思ってくれないとならない。じゃそれはどういう事なんだろうという視点で考えた時に、やっぱり子どもの話を価値判断なく聞いてくれる大人が町中にあふれているということが子どもにとって本当に大事なことなんじゃないかな。これはお金はかからないですよね。アッでもお金かけてください、CAPを呼んでください。

 それからもう一つ読みたいと思います。これは長いし言葉使いが悪いです。最近の子どもは言葉使い悪くてという教育的な考え方は、今日は横に置いて聞いてください。

 『このごろ大人の人の精神が不安定だと思う。趣味とかそういうのとかSMビデオを買ってウへウへ言っている人たちの気持ちもわからない、きもいし。何が楽しいんだ、嬉しいんだ。そういうのが今の子どもに悪影響なのに、てか、世界の人間からそんなの取ってしまえ。そんなモノいらん。エロ本もビデオも何もかも。

虐待なんか見て見ぬふりしている大人とかいるけど、何で助けてあげないんだ。子どもはいつでも助けてという紙飛行機を飛ばしているのに。

 私はそんな大人になりたくない、むしろ絶対いや。きたねえしそんな大人。子どもに愛の手をなんてそんなこと言ってたCMとかあるけど、お前らが虐待してんじゃねえの。

 虐待している大人に言いたい。お前ら何の為にやってるんだ。命はひとつひとつ大切にしなきゃすぐに消えるんだ。お前がやってる事自分で見てみろ、ひどいもんだ。子どもを殺してるもんだ、自分の都合で。』

これを肝に命じてやっていきたいと思っています。ありがとうございました。

 

池口

それぞれ心に響く発表をありがとうございました。ちょっとだけなんですけど、4人の方で言い忘れたとかありますか。

福本

新人なので最初何だったかなって思ってる方がいるかと思って、最後の皆さんにお配りしたカードブック、これ言っていただければ1冊60円でありますので、逆にこれはユニセフが行ってやるってわけではなく、皆さんの活動の中で何かの活動の時に使っていただいて構いませんので、それを私か千葉県支部のほうにお申し出ください。

池口 

もうひとつだけ、あえて私のほうから横山さんに。非常に難しい仕事をしているという事をよくわかっているものですから難しいからあえてお伺いしたいんですけど。広域専門員が地域で相談を受けて活動してらっしゃるわけですけど、その人たち、こんな困難なテーマに直面してですよね、いつも。そうそう簡単に解決できるとは思えない。そういう困難に直面したら県庁に持ってきて調整委員会ですか、これは基本的にどうしたらいいか、解釈はどう解釈したらいいのかとか、どういう方向で活動していったらいいのか、中心部で調整する委員会があると思うんですけど、そういうところに持ち込まれる困難な課題っていうのは、傾向としては重い課題というのはどういう課題があるか。

横山

はい、ありがとうございます。本当に皆様からいただいた相談に、現場の広域専門指導員や地域相談員の皆さんは、活動の中で日々困難に直面している現状はあります。

相談活動を実施するにあたって、各地域の広域専門指導員と私共県庁の本庁の職員とか毎日ケースカンファレンスをしているんです。県庁のコンピューターのネットワークを使って広域専門指導員と障害福祉課で情報共有しながら、私達毎日5時から6時、時々8時くらいになっちゃうんですけど。次のアクションはどうしようかとか、もちろん相談者のご了解いただいた中で検討していくわけです。

検討といっても私達行政職員なのでなかなかわからないこともある。あるいは障害特性自体もなかなか理解が難しいこともあります。制度などは、調整委員会の委員の皆様にご助言をいただきながらやっていくような形で、手探りで相談活動を進めているのが実情です。

調整委員会自体は、個別事案の審議をするところですから、委員会に申し立てがないと具体的な審議に入らない。実際370件のうち調整委員会の審議のうちにまだ図られている件はまだ一件もないんです。裏返していうと、毎日の調整活動の中でなんらかの決着をつけている活動をやってきたということです。

特に難しいのは、障害特性自体の難しさ。精神障害の方、様々な課題を抱えている方もいらっしゃいますので特性を踏まえた相談の難しさがあります。それと、法律の枠組みの中でどうやって相談活動をしていくかということにも戸惑うことがあります。例えば就労等でいえば労働基準法、男女の差別など異なる取扱をしてはいけないという規定を盛り込んでいますけど、障害の有無については規定がない。企業が障害のある方を解雇した場合に、障害を理由としていても労働基準法の仕組みの中で解雇をしていれば法的には問題はないということになってしまったりする。

こうした問題にどうやってアプローチしていくかが我々の活動の中でも課題になっています。県条例の限界というものを感じてることもあります。そういう意味でも障害者の権利条約が早く採択されて、個別の法律の中で、あるいは障害者差別を具体的に禁止する実効的な法律ができて、人権保障という形で担保されてほしいと思っています。

池口

今の事を聞きたかったんです。それでは一旦休憩に入りたいと思います。

 

【会場参加者との質疑応答・意見交換】

 

◆(四街道でのCAPワークショップは)ありがたいことにライオンズクラブの助成金で実現したんですね。学校は場を提供して、教職員の方々もワークショップをやるって言ってましたよね。(大人がCAPワークショップ開催に向けて活動しなくなったというのは)、それは忙しいから出来ないって言っているのか、それとも親たちが、(本当に子どもから手が離れたら働き始めるんですね)、大人側だと、こんな面倒くさいものはやりたくない、でも子どもには受けさせて欲しいというのはあるけど、ワークショップは、子ども・親・教職員3本コースでないとダメですよね。ちょっとまだ真相を地元に帰っていろいろ調べてみようと思うんですけど。何か学校ではやれるって事を聞いたんですね。

荒木

やれるんですが、まず学校の方がやりたいんだとご依頼をいただいたら、ライオンズさんを紹介しています。四街道市は中央ライオンズクラブさんが支援をしてくださっていて、一学年の子どもワークショップの全ての料金とそれから保護者ワークショップの料金を全て持っていただいています。チャリティーゴルフをやったりして資金を貯めて四街道市内の子ども達の為にという事でやっていただいています。

それなのにも関わらず、やりたいという学校がすごく少ない。本年度も去年も毎年数校はご依頼いただいていますが、もう少し広くわかっていただけたらなという思いがあります。

 

◆四街道の戸田です。このこどもサポートネットの理事も長くさせていただいています。

今のCAPの話なんですけど、一応中央ライオンズの方に昨日会ってお話聞きましたら「いやー四街道やりますよ」って事だったんですね。ただどこの学校がいつやるとかっていう計画は、昨日聞かなかったんですが、もう少し事情を聞いて、ちゃんと予算をとってありますので、例年通り、あるいは例年以上に学校で出来るようにしていただきたいなって思ってます。

今人権のお話が出たんですけど、四街道市は平成19年の3月に北総地区の人権ネットワークっていうところでかなり大きな事業をやったんですね。その事業に実行委員会方式で町と教育委員会との共催で人権の集いというのをやりました。それに関わった実行委員会の人たちが、また人権についてみんなで気付き合う場を持っていこうねという事で、実行委員会を引き続き持っています。

去年は障害者の方の権利についてって事で高梨所長さん、視覚障害者センターの所長さんに障害者の差別などについてのお話を聞く機会を設けました。

今年は若者達の「働くって何だろうね」っていう事をテーマに、また12月にやるんですけど、今日いろいろお話を聞いてて来年はぜひ子どもをテーマにやりたいなと思いました。

子どもの人権というとまず返ってくるのが、子どもに人権なんかやったら大変だよって、義務も果たしてないのにっていう事が必ず返ってくるのは、今の四街道でも一緒です。

ですからそういう方達をお呼びしてお話を聞いていただくというようなところで、ぜひ子どもの権利というところについてみんなで考えてみようという機会を、来年持ちたいなという思いを今日お話を聞いてて改めて持ちました。

またその時、四街道の実行委員会の中でいろいろ話し合っていくんですけど、今日シンポジストでいらした方々に四街道のほうでもお話していただけたらなと、そういう事になりましたらぜひまたいらしていただきたいなと思います。

これまたちょっと恥ずかしい話なんですけど、行政のほうの予算が今年はつかなくて大変な思いをしてやっています。だから大きなイベントがある時は、市はお金を出すんですが、特にこう人権問題などを継続してやっていこうって時には、なかなか予算を要求してもつけてもらえないという実情があります。今度四街道市長が変わりました。また新しい展開になるんじゃないかと思っておりますのでまたいろんな事の報告出来るようにしたいと思っています。

◆浦安からまいりました。新しい学校作りを、頂上が学校作りとしたら今一合目・二合目あたりでウロウロしている?という団体なんですけど。今日皆さんのお話、とても充実していて本当に贅沢なお話でした。今日ここに座っていてとても居心地が良くて、言葉が通じ合えるというのは。

でもこれに甘えていてはいけないと思って、このごろ他流試合を、もう1年以上前から浦安市民会議というのがありまして、そこの分科会で、私は教育の学校の方でいるんですけど、本当に座っていて辛い。例えば権利というと、先程3%って私あれ1%じゃないかと思っていたんですけど、私達3月までは、子どもの為のフリースクールをやってたんですが、もう借りる家賃も高くて手放しちゃったんです。

ここにきて市民大学という浦安市の場合出てきたもんですから、とにかくこういった物を利用しなきゃいけないと思って、最初は18歳以降っていうのを、とにかく15歳から、義務教育終わってからにしてくれってしつこく、やっと動いた。

中退の子ども増えてますよね、高校でも。とにかく15歳以上であれば誰でも参加出来る、そういう大学。もう団塊世代の為の市民大学ではありませんから子どもの為の。

浦安の場合は子育て支援は結構充実しているんですけど、子どもの支援は本当にないんです。今一つ提案しているのは浦安独自のチャイルドライン。そのラインが出現するかはともかくとしても聞き手のカウンセラーとまではいかなくても、子どもの声を聞いてもらうだけでも、これで49%のほう。とにかく関心のない人たちに今の子どもの姿を知ってもらう為にはどうしたらいいか。

しかも、その市民大学を利用出来ないかと思って、今いろいろ考えているんですが、皆さんはこれだったら市民大学の講座になるよとか、何かそういうふうになりそうなものがあればアドバイスいただけたら、それを持って帰ってなんとかやってみようかと思うんですけど。

福本

まずユニセフというわけではなく話をさせていただくと、浦安さんって豊かな行政の中であって蔵書もたくさんあるっていうので、私の中では羨ましい都市だなってあこがれがあるんですね。

子どもへの教育っていうのは県内どこであっても、そこで格差があるっていう事は許されない事だと思っていて。もちろん教育というのは、子どもへの教育もあれば今生涯学習ということで大人向けのいろんな生涯学習で、熟年大学というのもあれば、いろんな年代向けの学習っていうのも予算のかけ方があるんだけど、やっぱり子どもっていう教育、子どもは与えられた部分からのスタートになるので、大人が選ぶという状況が出来ると思うんですけど、学校教育も含めて子どもへのお金のかけかたっていうのは大事だなっていう部分は、私個人のところでも毎日思っている事なんですけど。

その中で、先程ここの場所は非常に居心地がいいというお話がありました。私何度も申し上げているように、本当に池口さんを始め皆さんとお会いするのは初めてで、熱い熱い心でやられている方々の集まりだというのを、本当に感じるんですけども、やはり一歩外に出ると毎日働かなければいけない。

先程のお話あったように、CAPの活動にしてもあればいいんだけど、自分からエネルギッシュに動いてやるお母さん達がなかなか減ってきてるんじゃないか。それもすごくわかる。

ただどうなんだろうって思いながら、それもあるんだけど、切り口を気軽にやるって部分、難しくないよって事、楽しいんだよって部分を大事にしながら、よりハードルを低くする事で参加者って増やすって、一つ大事な事だって思うんですね。

自分の中では、例えばユニセフっていうのも、世界への子どもへの支援だ、国際交流だ、国際協力だっていう思いで講座があるよ、学習会があるよっていうとなかなか入り込めないところがあるんじゃないかなって思うんですけど、例えばユネスコさんなんかもやってらっしゃるんですけど、何か海外の料理を食べながら+海外の現状を知りましょう・活動を知りましょうというのが一つの、何か食べたいから来たらすごく自分やれる事があるかもしれないって事を気付いたっていうきっかけ作り。ハードルを低くする事、人をたくさん巻き込めるような形を作るっていうのは、伝える側の3%の中にはすごく大事な事だと思うんですね。

この場のような熱い方々っていうのは、本当にパッと外に出ると少なくなってしまうっていうのが現状だと思うので、そこの中で切り口は多く、いろんな形で好きな事って皆さん楽しんで趣味でいろいろあるじゃないですか。

スポーツもそうなんだけど、音楽を聴くとか、そういった形でプラスアルファをした市民大学という事で、何かこの目的の為に来たらこういう事が勉強になって自分がこんな事が出来るかもしれないっていう部分をしっていただければいいですね。子どもの権利っていうのも確かに権利なんていらないよって言う方いるかもしれないけど、実際に関わってみるとそうではないんだって、気づきって皆さんいっぱい持つと思うんです。、そこの気付かせる為のツールっていうのは、優しく・ハードルを低く・楽しいという要素を加えた物であとチラシなんかを作る時も気軽においでくださいって、楽しいイメージのチラシ作りとか、あと口コミで「ねえ、なんか誘われちゃったんだけど行こうよ」みたいな、やっぱり最初はイヤでも行ってみたら楽しかったっていう事って人生の中であると思うので。

そういった声掛けって大事だと思うんですけども、やっぱりハードル低くというのが一つ、楽しみの要素を加えてっていうのが、自分の中で、ごめんなさい回答になってるかわかりませんけど思ってる事です。

 

◆千葉で命の電話という24時間電話相談を受け付けています。そこは基本的に全部ボランティアで運用されています。電話相談員のボランティアは1年の研修を受けないとなれないんですね、自費で。その研修は専門の方が関わって、電話相談を受ける。

実際に命の電話のところの研修に出るのは、終わって命の電話の相談員になる方もいらっしゃいますし、いくつかの電話相談のところに関わっていらっしゃる方が命の電話の研修に出られてご自分のところで活動している事もあります。ですから命の電話の事も話をさせていただければ、研修があります。ちょうど今来年度の募集を始めたところだと思います。

それから、通信体制の高校のサポート校を始めました。これ私共の、軽度発達障害の子ども達の支援を十数年やってきて、そういう子達が普通の高校行ってみんなドロップアウトしてきてしまうんですね。その支援をしていく、子ども達を含めてという事で、軽度発達障害の子ども達だけではなくて不登校の子もいます。

学校という雰囲気ではなくて、火曜日から金曜日、毎日10時から3時にみんな来るんですね。ほとんど休まないです。学校の雰囲気とは違った授業をしてますので、もしそういう方がいればそういうところもありますという。他の通信制の高校だとレポートだけ渡してあとスクーリングだけっていう、こちらの場合はそうではなくて、そういうコミュニケーション能力のいろんなトレーニングも含めたプログラムを週4日間実施をしながらやっていく。

 

◆八千代市の子ども部元気子ども課というところで、まさしくこの「子どもが大切にされるまちづくり」の子ども人権ネットワークの担当者で、毎回毎回かなり苦しんでおります。しかもプレイパークの担当者でもあって、ただ八千代市の場合は、今日ここに出席出来るかどうかもかなり課内のほうで課長を口説いてきたという。

荒木さんもいらっしゃるし、人権ネットワークに関わっている佐藤さんも来ているという事で、私達も後援したという事もあって、ぜひ職員として見届ける必要があるのではないかと。実は、柴田さんのまっ白い広場の発表があるというのが一番大きなきっかけで、いろいろ引っかけてやってまいりました。

本当に「子どもが大切にされるまちづくり」という中で、この子どもの権利条約を基盤にして、県内全部次世代育成支援行動計画というのを立てていて、後期見直しに今入っている段階なんですが。この条約を基盤にしてという事で、皆さんいろんなまちづくりの部分を作ってらっしゃるんですけど、なかなかこの基盤になってる部分が千葉県の中では理解されず、基盤に基づいて他の施策が進んでしまっているような状況かなと思っています。

八千代市としましては、平成14年からずっと子ども人権ネットワークをたちあげて、地域の中でまずは虐待の未然防止・更正というところに着眼しましてこれが、子ども部に移ってまいりましたので、ようやっと子どもの総合的な人権の検討というところに入りかけたんですが、ここで共通理解するのはものすごい難しい壁にぶち当たってます。

そこで今年度10月から、東洋大の森田先生を中心としております子ども福祉研究所の方にご協力いただきまして、子ども支援者養成実践講座というのを5回に分けて行っております。

前回10月9日に行ったんですが、弁護士の一場さんという方で、カリヨンの取り組みをどういうふうになさってるかという形で、児童福祉法も児童相談所もなかなか安心して泊める場所もないということから落ちてしまう子ども達を、安心してあたたかい家庭環境に、それは都内のどこかになってる事は秘密になってるんですが、そういう居場所も必要だということで、今日まさしく朝日新聞のほうでこちら基金のほうを受けたという事で、新聞のほうに載ってるんですが、そういう取り組みをされている方の実践講座の勉強のほうを行っているんですが。

次回12月の14日になりますが、八千代市の総合生涯学習プラザのほうでこちら川崎市の夢パークの所長さんの西野さんという方と、あと弁護士さんの方と河西の元オンブズパーソンをなさっていた田中先生という方の三者での、子どもの人権に関する大人の役割とはっきり打ち出しまして、それのパネルディスカッションがございますので、ぜひ元気子ども課のほうへ047−483−1151で内線2262にかけると直接私が出ますので、不安がある方はそれで言っていただければなと思います。

そのような講座もございますので、ぜひその場で子どもの遊び場・子どもの権利をどんなふうに尊重していくかというような形で、地域でネットワークを作っていったらいいかなというふうに取り組んでいけたらなと思います。

柴田さんのほうの取り組みですが、子どもの人権というとなかなか地域の中では取り組むのに抵抗がたくさんあるんですが、実はもう子どもがわがままになって困るっていう人も、遊べない子どもって心配だよねっていうところは絡むんですね。なんとか大人と一緒にしてあげたい。子どもの体力とか生活力なんですね。

八千代市は、浦安さんもそうなんですが、高層マンションがたくさんある地域性がありまして、火を見た子がいないんです。磁気の電化製品で家庭内に火がないです。お父さんも禁煙しているので、まさしくプレイパークで焚き火を見て、初めて火を見た子がこの間いらっしゃってました。いる間中4時間近く火を見てました。子どもに火って大事なんだなってところですが。

生活体験そういうのも変わってますので、切り口として先程たくさんあるといいねって言ったんですが、子どもの遊びとか、今現状で何が問題かという切り口から、子どもの遊ぶ権利の保障っていうところに、少し踏み込んでいけるといいかなと思いますので、ぜひ12月14日市内に住んでなくても大丈夫ですのでいらしていただけたらなと。

 

◆千葉子どもサポートネットの市川と申します。私いろんな事やってまして、実は紙芝居屋さんもやってまして、ちば・戦争体験を伝える会といって40代から80代の方が一緒になって、どんなに戦争が悲惨だったかを伝える手作り紙芝居を作ってあちこちでやってるんですね。

そうしましたら、一昨日市川の幼稚園から、こんな小さい新聞記事を見て依頼が来まして、それが家庭教育学級だということで、幼稚園生とお父さん・お母さん一緒に、30分は一緒であと50分はお父さんとお母さんだけ。紙芝居は小さい子用のもあるんですね、実は。お母さんに負ぶわれて空襲の中を逃げたとか、それが2つあって、あと何しましょうねって言ったら、始めは戦争体験なんですけど、子どもの権利とか憲法とかそういう話に持っていっていいですか?って言ったら「どうぞ、どうぞ」という感じで。

だから切り口は戦争体験だったんですけど、その紙芝居の中に昔の修身の教科書とか、憲法が出来たいきさつとかそういうのから入って、日本国憲法には多くの人の願いや決意が込められてますって紙芝居があるんですね。それから日本国憲法の話に持って行って、憲法というのは私達の味方で私達の権利を守ってくれるものなんですよって権利の話に行って。次に「子どもの権利って何?」っていう紙芝居がありまして。お母さん方が計画して、家庭教育学級の連続講座をやっている中の一つであって、私もいきなりの依頼だったんですけど2人で行ってなんとかやってしまった。

明日は千葉市の小学校で、ユニセフさんが少年兵士のワークショップをやってその次の授業。総合学習で戦争をテーマにした学習の一つで、戦争体験紙芝居をやってくださいって事で。憲法の話につながりますけどいいですかって言ったら「どうぞ」って。憲法っていうと基本的人権ですから子どもの権利にもつながる。だからいろんな切り口でやると、私達も思いがけない展開で、人権、子どもの権利につながったっていう思いがあるので、いろんな可能性があるかなと思います。

福本

補足なんですけど、ユニセフの子ども兵士の問題からユニセフが呼ばれまして、学習で講師として行かせていただいたんですけど。2月に最終的に全国の先生達を集めた研究会があるって事で、何段階かに分けていろんな方を呼んで子ども達に話をするって事で、その先生も結構若い先生で何をやったらいいんだろうっていう事で、とにかく4回くらい来てくださいって話があったりしました。基本的にユニセフに頼まれる、それではいはいって行くのではなくて、先生自体が考えるって事がすごく大事だと思うので、1回は行かせていただきましたが、次は自分で考えていってくださいという話をさせていただきました。

学校の先生にお話する機会も結構あるんですけど、先生方の理解っていうのは、例えばユニセフとか国際交流とか国際協力というのでも、世界の子ども達ってかわいそうなんだよっていうふうにおっしゃる方だとか、そのあたり先生方のう〜んといった部分が私もあったりします。

さっきのこのワークショップを先生方に向けてやった事があるんですけど、県内で実際に日本の子ども達を見ている先生達は、自分の教えている子どもの現状を考えて、どれが子どもの権利に当てはまっていないかなって事を、熱心に分散会で話をしてくださったんですね。大人向けのわりと優しい形の人権について考えるって部分では、非常に先生方考えてくれたな、良かったなというふうに思った事がありました。

 

◆NPO佐倉子どもステーションの黒木です。一つだけ、子どもの遊び場の他にもう一つ必要な場所かなって思うのが、やっぱり居場所だと思うんですね。特に中学生・高校生、思春期になってきた時に、安心して仲間がいて自由に話せる場というのがとっても必要で、これはやっぱりどこでも欠けてるなっていうふうに思うんです。

佐倉にもヤングプラザなるものがありまして、本当は中高生の居場所になるべき場所なんですけど、行政との絡みでなかなかうまくいかなくて、開放時間が9時までとか出来ない状態で、夜に自由に集まれる場とかあるといいなと思うんですけど。そういうふうな居場所がないと、私のところでは出来てるけど他は出来てないというか、ウチでは細々ですけど、お茶会という中学生・高校生の集まる場がありまして。小さい場なんですけど、そこに来ると例えば1年生の子が3年生に相談をしていたり、そこから大人達に向けてしゃべり場やろうよって、子どもと大人の違いは何?っていうテーマでやってみようよとかいろんな話が提案されてくるんですね。

話し合いをしていくと、何か私達が大人が気付かなかった事を、子ども達から聞いたりもしますし、本当に子ども達が集まれる自由な場が足りないなと思う事と、ここも今大人の方々皆さんで話しているんですけど、子どもも含めて、子ども達の声を聴くって事から始めたいなっていうふうに思いますね。子ども達と一緒に何回か話し合ってみたいと今すごく思います。

 

◆ならしの子ども劇場の今青年をやっています、一応二十歳なので子どもではないんですけど。

子どもの話を聴くという事なんですけど、僕が今までならしの子ども劇場のほうで活動してきた中で思う事は、「聴く」っていう姿勢をとってもらう事も大事だと思うんですよ。じゃなくて出来れば待って欲しい。いくつかのところに書いてあったと思うんですけど、子どもは別にいろんな人に話をしたいとか主張はしたいわけですから、たぶんほっといても話に来るんです。

特に自分が今二十歳の立場で小学生とかと絡んでいると、やっぱり話しかけてくるんですね。これこれこういう事があってねって。それは内容はたいした事ないかもしれない。本当にくだらない事かもしれないけど、ただこっちがいつでもどうぞっていうスタンスさえとっていれば、寄ってくると思うんですよ。だけどそういう場っていうのが少ないっていうのが現実としてあるんですけど、聴いてあげようとか、あくまでもこちらから提供しているっていうスタンスをとってしまうと、子どもはたぶん引いちゃうと思うんですね。そういうところは敏感に感じて、勝手にどうぞ・来たきゃおいでっていうスタンスをとっている事が、一番大事かなとは思っています。

 

◆私は1歳年上の21歳なんですが、千葉の不登校・引きこもりネットワークの理事をしております武田と申します。

私も思う事って、居場所っていうのはすごく大事だなっていうのは感じていて、不登校の子の居場所っていうのもいろいろ全国各地にあるんですが、なかなか経営が大変という状況があって、これってどういう事かっていうと、学校に行かなくなった子どもが他に行く場所があるって事はすごくい事だと思うんですけど、これがいろんなところから支援っていうのが全然なくて、民間でやるしかなくて、実際やってる人々の生活が大変っていう状況になっているので、いろんな子どもの支援の行政からのいろんなバックアップがあったら、もっと子どもが休める権利が持てたりとか・遊ぶ権利が持てたりとか、そういうふうになるんじゃないのかなと思うので、千葉県の子ども人権条例を今回また通したいなという気持ちもあって今日参加していました。

 

◆今日皆さんリーダーとしてやってらっしゃる方がたくさんいらして、私八千代市からまいりました。当事者としては、子どもの保護者としてちょっと話を聞いてて、苦しくて苦しくて最後にちょっとお話をさせていただきたかった。

子どもは学童保育に通っています。市の職員の方もいらっしゃってるのに申し訳ないんですけど、八千代市の学童保育は3年生までしか入れないんですね。県のガイドラインも6年生までとなった事を受けて、八千代市のほうでも会を設けまして対象児童について話をしたんです。

作業部会というのを開きまして学童保育のガイドラインを開くという事で、私も作業部会に参加して当事者として、とにかく6年生まで保育の必要な子は入れて欲しいなっていう話を再三させていただいて、八千代市のお子さんは普通のお子さんは3年生までだけども、障害のあるお子さん・虐待を受けているお子さんに関しては6年生まで入れるんだっていう、そのあたりの方針を打ち出してくださっているんですけど。その会議の中でも、実際相手は物ではなく子どもですので、障害のある子や虐待を受けている子しか入れないというところに、実際子どもが4年生以上で行けるはずがないと。私の子どもも来年4年生になります。けれどやっぱり行けないですよね、そんなところに、という話を随分させていただいて。

本部会の方で作業部会の案が通りましたけども、本委員会の方では議論もなかったですね。傍聴させていただきましたけど、何の議論もなく、委員の方から本当に理由もほとんど提示もなく議論もなく、(障害や虐待があれば)6年生までお願いしたいといったところであっさり決まってしまったという委員会でした。結論として今3年生まで、4年生から6年生までの子どもは障害のある子や虐待を受けた子どものみが入れるんだという方向で今決まりつつあると思います。

けれど本当に子どもの事を考える時に担当者が本当に子どもの気持ちを考えて、そこの視点でさえ考えてくれれば、何らかの理由で保育の必要な子っていうのは6年生まで。どうしてそういうふうな視点に立っていただけないのか、本当に市民として今日は当事者として子どもを抱える親として苦しい思いで、先程の八千代市の施策ですが、そういう方向性でやっていくんだっていう話をとても辛い思いで聞いていました。

子どもの気持ちを考えていない施策。障害のある子と虐待を受けた子どもだけ入れるっていったら、子どもからすると、何で自分はここにいるの?みんながいないよって、そこを考えてくださらなかった。対象児童を全体を広げていく、そうしていかないとまずいですよという中で、いろんな子が入っていくんだったら、自分の存在もわかりますけども、子どもの気持ちを変えてしまったというその苦しさを、子どもが感じてしまった。それは本当に辛い。

 

◆だから基盤が大事なんですよね。子どもの権利条約を考えていく中では、対立する前に、いろんな条例に関しても、本当に差別してはいけないという気持ちは、きれいな気持ちとして持っているんですが、具体的に施策の中でどうしていくかって部分では、基盤をしっかり理解して、その上で次世代育成支援行動計画だとか子ども施策を作っていくっていう事が大事だと思っています。

八千代市の中でも、そういう部分を職員としては大事だと思っていて、人権ネットワークの中でも、これをどう考えていくか、というのが一つの大きな課題だという事で、水面下で支援している部分はありますが、なかなか大きくはまとまっていかないところがあります。これから次世代育成支援行動計画後期が入ってきますので、ぜひ皆さんこういう運動をしていきながら、行政のそういう部分の動きがどうであるかって事はしっかり受け止めて、市民の声を活かしていきながら子どもの声を、今の子ども会議を作ってさあどうぞって言われたら、絶対子どもは来ないだろうなと、自分の中でも、今の20代の皆さんの声をいつ来ても声を聴けるよっていう事も、必要なんじゃないかなって事もありますし。うちもお兄さん・お姉さん子ども電話相談って形をしてるんですが、「かけてきてくれていいんだよ」ってスタンスではきっとかけずらいだろうなっていうのが、「いつかけてきてもいいんだよ、待ってるからね」ていうメッセージも大事だなということで、あえてここでも学びましたが、皆さんもぜひそういう基盤がきちんと理解されているか・理解されるような方向性を、市民からも行政からも一緒になれるような体制が作れるといいなと思います。

なかなか今苦しいだろうなというのが本当に思っていますので、職員一同重い気持ちで受け止めておりますが、なかなか難しいところがあるんですけど、それは必ず忘れないように、今それしか出来ないんですが、一緒にその問題には耳を傾けていきたいなと思っています。ぜひそういう部分も視野に入れて作っていただきたいなというふうに思います。

 

◇ありがとうございました。子どもの人権を基盤とした施策という大きな事に突き当たってしまったと思うんですけど、池口さんのほうから何か。

池口

私は県の子どもの権利・参画のための研究会の座長なんかしているものですから、どうしようかと日夜考えているところです。ただ実際に、普段の日常生活や日常の仕事の中でその問題を超えられていくプロセスっていうのは個別に必ずあるし、日々あるんで、それにのっとって考えればいいなとは思っているんですけど。

先程浦安の方もおっしゃってましたように、例えば第12条意見表明権が常時保障されていないんじゃないかと、これをちゃんとやりましょうよという。それが通用するところでは通用するけれども、何それってなったら全然通用しないという現状の中で、現状のこんなみすぼらしい実践報告をされている方もいるわけですけど、必ずしも通用しない中で、どうやってこの事を普及し、あるいは啓発し、理解を共有して、社会の中のさっき私冒頭で世論と言ったんですけど、世論にしていくかっていう課題は本当に大きいな。

その事に絡んでなんですけど、最近よく私みたいな者でも教育委員会や学校に呼ばれて話しに行く事が結構あるんですけど。人権というのはこういうものだけど、人権を守ると飯食えるようになるんです、学力も伸びますよとか、体も丈夫になるとか、病気になった人なんかには怒られそうですけど、そんな事をあえて言うんですけど。赤ちゃんのオギャーって言うのと付き合ったほうがいいと思います。何言ってるの?意見表明しているかもしれない。あえて人権と言わなくても。

もっと理屈っぽく言えば、実は人権というのは人類が積み重ねてきたもので、神様からの天の啓示ではないわけです。人類が長い間積み重ねて考えて、DNAに放り込んだ生きる為の手だてなんですね。人権を守る事やらないと、子どもは育たないし自立も出来ないし、一生全う出来ない。これはもう十分わかる事なんですが、その事を日常用語の中で日常体験の中で、例えばお母さんが「何やってるのあんた」ピシッっと3歳の子にやったと、これはどうなのかな。人権侵害なのかそうではないのかという議論ではなくて、これはどうなのか、時には必要であるとか。

私の子ども中学の時やっぱり学校に行ってバーッとやられまして、先生にバンバンとしっかりやられて、今ほど目覚めてなかったんですけど、一応聞きにいくわけですよ先生に。「何でやったんですか?」って聞くと、「私の信念だから」って言うわけです。ちょっとさすがに私もボーッとしている人間ですけど、信念で殴るというのもな?この信念は学校の信念ですかって、そしたら答えに詰まるんです。でも先生は偉いんだから学校の信念でやってるわけだから、何々中学校のこれは教育の信念だろう。これは代表者に聞いたほうがいいですねって言って、校長のところに聞きに行きますって言ったら「ちょっと待ってください」ってなりましたけど。

そういうこと日常的にいっぱいあるじゃないですか。虐待の場合でも、虐待ケースいつもやってますけど、家に行って親御さんのところに行ったら「これはウチのしつけですからあなた方にとやかく言われる筋合いはない」。その時に虐待防止法であんたのやってる事は禁止されていますからっていうのは簡単ですけど、そんなんじゃダメなわけです。言葉のレベルでも、そういう事をやったら子どもはどうなるの。やらない方がどれだけしっかり育つのかっていう話し合いに入らなきゃいけない。親父さんだけではなくてお母さんとも話したほうがいいし、一番いいのは本人からも話しを聞く。そういうのも交えて親父さんとどうやったら育つかっていう事を一緒に考えながら、本当にこうやった事が育つ事になるのか。

ウチの虐待ケース半分は障害児なんです。障害児はそれで育たない状況があります。具体的にする事について、遊びについて、歯磨き・排便・ご飯の摂食について一つ一つ教えてあげたほうがいいよ。あるいはヘルプしてあげたほうがいいよ。「てめぇ何やってるんだ」ってそれでうまくいくのか。そういう話が一番私は今大事だと思います。

学校に行って話しする場合でも人権なんて一言も言わないんですけど、どうやったら子どもは育つかっていう、先生方はどう思いますか。保育園の時は何が一番?学童期に入ったら何が一番必要なのか。これが学童期に獲得出来ないと、はっきり言って思春期に入れません。それを何だと思いますかって、ここの辺になるとはっきり言うんです、それは群れ遊びですよ。こういう事をちゃんとあげないと子どもは育たないよっていう事を知ってもらわないと。

そういう具体的な必要な事を市民講座で考えていけば、別に人権講座じゃなくても全然かまわないと思います。群れ遊びについては柴田さんが発表されましたけど、群れ遊びが失われている。群れ遊びが失われているって事はDNAが変化している。変化しても変化したなりに今の社会に自立して生きていけるかって言ったら私は絶対に違うっていう証明出来るつもりです。もし群れ遊びをしてなかったら思春期になったらどうなるかというのは、私の仕事相談活動を通じて証明出来ます。

まずうまくいかないよ。就職したらうまくいかない。群れ遊びで人と共に活動する喜びを体験出来るわけです。これやらなかったら人は困る。人と一緒に活動するのは大変だ・苦労する・しんどい、そういうほうが優先してくるんです。でも仕事だから付き合わなきゃいけない。だから適応しなきゃいけないっていう適応論なんです。適応しなきゃいけない人生ほど辛いものはないです。喜びは一緒にやるんだと、会社に行って一緒に仕事するんだと、だからこれほど嬉しい幸せはない。これが人権の正体。

毎日三度三度の飯が食えない若者いっぱいいますよね。まして世界中にはいっぱいいます。けれども子ども達が日本に来て4・5年前にリポートしてくれましたけど。人権は俺たちの生活のかてだって言ったんです。本当にそうだと思います。人権は飯なんです。人権を守るっていうのは飯なんです。そういうレベルでの話し合いが今必要だと思います。

親御さんともPTAでも、市民でも先生でも、児童福祉のワーカーでも、そういう話が明確にしたほうがいい。3歳の子にはこれがないとダメ、新生児はこれがないと死ぬとか、はっきりしてるんですよ。親ならば振り返ってみればわかると思う。子どもの専門家はわかってないとダメですよ。

思春期は思春期で絶対に必要な事があります。そういう子どもが育つ世界はそれが情報過多の中でものすごくボヤーっとしてる。そういう話を共有すればいいんじゃないですか。今教育委員会の地域ネットワークのなんとか会とか家庭教育どうのこうの、そういうところで話をすると、聞いてない先生方はいないです。必死になって聞いてくれています。質問も必ず出ます。

横山

お話を聞いていて、施策・基盤というお話が出ましたけど、施策の考え方だと思うんですね。人権自体のとらえ方とも関連していると思うんですけど、日本の福祉施策は、対象者別の「支援」という枠組みで括ってしまっているように思うんですね。

諸外国の取り組みを見ると、一般化したルールの中でいかにそれを実現するかっていう施策の在り方が考えられていて、今ちょうど第四次障害者計画を作っている中でも、例えば障害のあるお子さんの支援はいかにあるべきかっていう議論の中で、やはり子育て支援の中で障害を持ったお子さんの支援も考えるべきなんじゃないかという意見が非常に強く出ているんですね。それは、とりも直さず、対象に応じて細分化(縦割りに)していくっていう施策の流れではなくて、一般化した施策の中で支援を考えていくのが重要な時代になってきているのではないかと思っているんです。

それから県の障害者条例の関係で、全国でお話する機会も多いんですけど、昨年大阪にある高槻市とお隣にある箕面市で連日お話をする機会があって、隣り合う市の市民の皆さんの感覚が違うことに気がついたんです。

箕面市では、人権フォーラムという大きなフォーラムがあって、市民の皆さんの意識が非常に多様で高いんです。フォーラムでお話をさせていただきましたけど、障害当事者の方がむしろ少なくて一般市民の方々・行政の職員さんとかが結構たくさん参加されているんです。

参加している皆さんの意識として「人権問題」といった固定的な問題意識・考え方ではなくて、よりよい市民生活、より良い人生・より良い地域での暮らし、それを獲得するにはどのようにあるべきかというテーマでの学びの場となっていると感じました。そういう意味でも、今までいろんなご意見も出て、池口さんのほうからも人権という視点よりも子どもの成長っていうご意見もありましたけど、そのような形でアプローチしていくのが、これから行政のほうも市民活動の中でも重要になってくるのではないのかなと感じました。

 

◇ありがとうございました。それでは池口さんのほうからまとめをお願いします。

 

まとめ 池口紀夫

 千葉県次世代育成支援行動計画評価・策定作業部会の中に設置されております「子どもの権利・参画のための研究会」が実施しました「千葉県子どもの実態・意識調査」の結果を見ますと、子どもの権利とは何かという基準を定めた国際条約である「子どもの権利条約」を知っている中学生は(「聞いたことがある」も含めて)44%であり、高校生で64%になっています。大人の場合は3分の1が知らないと答えています。世界で、子どもの現状を踏まえ、知恵を集めて長い間かかって作られた条約(法律)も、まだまだ日本では知られてない現状が示されています。

 どんなに良い法律でも、知らなければ使えません。その意味で、ユニセフの普及活動は本当に貴重で、子どもたちに良きプレゼントを配っているサンタさんのような役割を果たしておられ、私たちも大いに支援していきたいと思いました。

 千葉県障害福祉課の横山さんは、現実に起きている紛争の解決の仕方として、訴訟による決着の仕方から、「相談・調整」を重視したオンブズパーソン活動による権利救済のあり方が登場し定着しつつあること、そういう社会の流れの中で千葉県が制定した「障害者の差別をなくすための条例(障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例)」を位置づけ、分かりやすく解説していただきました。

また、相互の理解を進めていくことによって、問題の解決を目指すと同時に、そういった「相談・調整」から浮かび上がってきた課題を、子どもの環境の改善や政策の実現に結びつけていくことの重要性を指摘され、とても重要な視点を提起していただきました。更に、現実に起きている紛争の解決を通して、子どもたちの置かれた人権に関する環境について、市民が参加して改善していけるような活動の重要性を指摘されました。

そして、柴田さんの報告は、子どもの権利の実現という視点で、子どもたちの創造的で自由な遊び活動を支援している実践活動の報告・提案でした。重要なポイントは、遊び活動の企画の段階から子どもが参加し、子どもたちが中心となってつくっていったこと。遊び活動のプログラムを大人が決めないこと、禁止事項は極力なしにするというあり方でした。そして、子どもの思い・権利を受け止めることが、地域づくりや政策づくりにとって最も重要であると、訴えられました。

4人目の荒木さんからは、子どもの権利を侵害する暴力防止のワークショップを行っておられますが、大事な姿勢として、「恐怖を強調する」より、子どもたちが近づきやすい形で共に考えること、学校や施設だけでなく、地域全体でこのテーマに取り組むことの重要性を指摘されています。

まだまだ大人や社会の方に、バリアーがあることが活動を通して実感されていますが、CAPは、それでも子どもの人権の視点に立って、「あきらめない」という決意を語られたことは、感動的でした。共有したい!と思いました。

フロアからの質問や意見も含めて、本日この場で共有したいことを確認したいと思います。

第一に、子どもの権利条約の存在と内容を大人と子どもすべての人に伝える努力をしたいと思います。特に、教育や福祉の機関には、期待したいと思います。みんなが子どもの権利を知っている地域をつくりましょう。

第二に、子どもの権利に関わる日常の「困りごと」や子どもの思い、そして大人の教育や子育ての悩みをみんなで受け止められる地域をつくりましょう。

第三に、「困りごと」や「権利が侵害された事柄」について相談・調整をし、理解を深めたり、具体的な支援をすることによって解決できるような地域をつくりましょう。

第四に、子どもの人権に関わる相談や話し合いから出てきた課題について、地域の市民が共に考えられる機会としくみをつくっていきましょう。

第五に、子どもの人権を「特殊な問題」に閉じ込めないで、子どもや子育てや教育の日常的な場面で起きてくる事柄として、みんなで考えられる地域になっていきましょう。

第六に、それぞれの地域・自治体において、地域の「子どもの人権指針」をつくっていきましょう。

これらの課題に熱心に取り組んでおられる方の実践を共有し、支援をしながら、県内の各地で、「子どもが大切にされるまちづくり」をあきらめずに取り組んでいきましょう。