第4回「千葉県子どもの人権懇話会」報告

 

日時:200712月2日(日)・13開場

会場:千葉市文化センター5階・セミナー室

 

<プログラム>

 

1310分〜1315分 主催者挨拶

    中村雪江・実行委員会委員(NPO子ども劇場千葉県センター理事)

2.1315分〜1520分 シンポジウム 

テーマ“千葉県社会において子どもの人権を守るために、今何が必要か”     

 

コーディネーター

半田勝久さん(東京成徳大学講師)

「全国自治体の子どもの人権施策の取り組み状況について」

 

シンポジスト

○千葉県健康福祉部健康福祉政策課人権室長 岡田光彦さん

「千葉県の人権指針と施策について」

 

○八千代市子ども部母子保健課・保健師 石橋雅子さん

「八千代市の親支援のシステムづくりについて−保育園と母子保健の連携−」

 

○埼玉県子どもの権利擁護委員会・調査専門委員 中谷茂一さん

(聖学院大学人間福祉学部准教授)

「第三者による相談、これだけある学校側のメリット

〜埼玉県条例による権利擁護委員会の活動から〜」

 

福嶋浩彦さん(中央学院大学客員教授・前我孫子市長)

「本当の自由を体験しなければ、本当の責任も学べない」

 

1520分〜1530分  休憩  

 

4.1530分〜1630分  討論(会場参加者との質疑応答) 

5.1630分〜1640分  まとめ 

         池口紀夫・実行委員会代表(NPO千葉こどもサポートネット理事長) 

《後援団体》

千葉県・千葉市・市川市・船橋市・習志野市・八千代市・浦安市・松戸市・野田市・柏市・流山市・我孫子市・鎌ヶ谷市・銚子市・成田市・佐倉市・旭市・四街道市(後援予定)・八街市・印西市・白井市・富里市・匝瑳市・香取市・酒々井町・印旛村・本埜村・栄町・神崎町・多古町・東庄町・茂原市・東金市・勝浦市・山武市・いすみ市・大網白里町・九十九里町・芝山町・横芝光町・一宮町・睦沢町・長生村・白子町・長柄町・長南町・大多喜町・御宿町・館山市・木更津市・市原市・鴨川市・君津市・富津市・袖ヶ浦市・南房総市・鋸南町・

千葉県教育委員会・千葉市教育委員会・市川市教育委員会・船橋市教育委員会・八千代市教育委員会・浦安市教育委員会・松戸市教育委員会・野田市教育委員会・我孫子市教育委員会・鎌ヶ谷市教育委員会・銚子市教育委員会・成田市教育委員会・佐倉市教育委員会・旭市教育委員会・四街道市教育委員会・八街市教育委員会・印西市教育委員会・白井市教育委員会・富里市教育委員会・匝瑳市教育委員会・香取市教育委員会・酒々井町教育委員会・印旛村教育委員会・本埜村教育委員会・栄町教育委員会・神崎町教育委員会・多古町教育委員会・東庄町教育委員会・茂原市教育委員会・東金市教育委員会・勝浦市教育委員会・山武市教育委員会・いすみ市教育委員会・大網白里町教育委員会・九十九里町教育委員会・芝山町教育委員会・横芝光町教育委員会・一宮町教育委員会・睦沢町教育委員会・長生村教育委員会・白子町教育委員会・長柄町教育委員会・長南町教育委員会・大多喜町教育委員会・御宿町教育委員会・館山市教育委員会・木更津市教育委員会・市原市教育委員会・鴨川市教育委員会・君津市教育委員会・富津市教育委員会・袖ヶ浦市教育委員会・鋸南町教育委員会                         1127日現在)

  

 

主催者・千葉県子どもの人権懇話会実行委員会

 

《実行委員会参加団体》

千葉県青少年団体連絡協議会、NPOちばMDエコネット、千葉「障害児・者」の高校進学を実現させる会、NPO千葉こどもサポートネットNPO子ども劇場千葉県センター、共に育つ教育を進める千葉県連絡会、NPOネモちば不登校・ひきこもりネットワーク、ほっとすぺーす、千葉・教育を考える親と市民の会、「千葉県子ども人権条例」を実現する会

 

 

千葉県子どもの人権懇話会実行委員会事務局

260-0813千葉市中央区生実町2149番地の2

     043-266-8419fax043-266-2359

NPO法人千葉こどもサポートネット

主催者挨拶

実行委員会委員・中村雪江(NPO子ども劇場千葉県センター専務理事)

 本日はお忙しい中、ご参加いただきありがとうございます。

この「千葉県子どもの人権懇話会」はこれまで3回開催して参りました。第1回目は「子どもの人権をどう整備していくか」、第2回目は「子どもの人権侵害をどう防止するか」、第3回目は「『千葉県における子どもの人権はどう実現しつつあるか』進捗状況を共有し、これからを展望する」という内容で開いてきました。人権に関心のある方々、実際に人権に関する活動をされている方から事例を聞きながら、広く市民に子どもの人権のことを知っていただいて、それを市民の共通課題にしたいという思いで行って参りました。

 本日は、千葉県社会において子どもの人権を守る為に今何が必要かというテーマで、課題は何かという事をしっかりと明らかにしてまいりたいと思います。

 4時40分位のちょっと長丁場でございますけれども、どうぞ皆さんたくさんご意見を出して頂きながら有意義な懇話会にしていきたいなと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

 

シンポジウム

《コーディネーター 半田勝久さん》

こんにちは、12月のお忙しい時期にこのような会合が開催できる事をとてもうれしく思っております。またこのような貴重な場にコーディネーターとして参加させていただいて、どうもありがとうございます。

 まず私の方から全国自治体の子ども人権施策の取組状況についてお話を簡単にさせていただいたのち、発表者の皆様からそれぞれ基調報告をしていただきます。フロアーを交えた議論に関しましては、パネルディスカッション形式をとった後休憩を挟んで皆様からのご質問、ご意見をお伺いするという形で、会を進めさせていただきたいと思います。それでは私のレジメをご覧ください。

 少しレジメを作るのが遅れてしまいまして、緑の冊子に入れる事が出来なかったのですが、A3のプリントが2枚ありますのでそちらの方をご覧いただければと思います。

 私の方からは、全国の自治体の子ども人権施策がどのように取り組まれているのかを概括していきたいと思います。周知の通り1989年に国連で子どもの権利条約が採択されまして、日本は1994年に批准したわけでありますが、その後福祉や教育の領域を中心に子どもの権利への意識が高まってきております。近年の取組としては、特に自治体レベルを中心としながら様々な子ども施策が展開されております。

 まず福祉領域の子ども・子育て支援という事でありますが、1994年のエンゼルプラン以降注目出来るのは、2003年7月に次世代育成支援対策推進法が出来ました。それでこれに基づきながら2005年4月から10年間の次世代育成支援行動計画を策定しています。

 この策定にあたっては、次世代育成支援対策に関しまして市町村に関しては市町村行動計画を策定、都道府県に於きましては都道府県の行動計画を策定するとなっております。そこにおける基本的な視点は、子どもの幸せを第一に考え子どもの利益が最大限に尊重されるよう配慮する事が必要であり、特に子育ては男女が協力して行うものだとの視点に立った取り組みが重要であると述べられております。

 例えば今日2番目にご報告頂きます八千代市は、『八千代市次世代育成支援行動計画 子どもの元気が見える街』というタイトルで平成17年3月にこのような黄色い冊子を出しております。

 そしてただいま2007年12月になりまして、もう2年後からは5年たったこの次世代育成支援行動計画の前半部分の評価と、そしてその評価を踏まえた上で後半部分の5年間の計画の見直しが始まろうとしております。こうした事は従来から地方自治体が推進してきた子育て環境の整備や子どもの人権確保について、全ての地方自治体が見直し、具体的に策定しかつ公表する事によって、またその公表したものを評価する事によって施策が展開していくと言うことを意味しているのではないでしょうか。

 また福祉領域に於きましては、近年児童虐待について充実した取り組みがなされようとしてきております。2000年に児童虐待防止に関する法律が出来まして、この間発生予防・早期発見・早期対応・保護治療再発防止と言うことに力を入れていこうと、児童虐待防止ネットワークがそれぞれの自治体で活動してきました。

 その児童虐待防止ネットワークや子どもの人権ネットワークというようなものも、いろいろなところで行われているわけでありますが、2004年の児童虐待防止法及び児童福祉法改正の中で市町村を児童相談に関する第一義的な機関として位置付け、児相の役割を専門性の高い困難な事例への対応、そして市町村の後方支援に役割を重点化してくる事になります。先程子どもの人権ネットワークや児童虐待防止ネットワークというものが地域の中に出来てきたというお話をしたのですが、こういったものからの移行をしているところもありますが、それぞれの街の中で要保護児童対策地域協議会というものを守秘義務を課して設置出来る事とし、市町村に於いて虐待予防活動や早期発見を促進するという事が法的に明示されてきております。

 しかし、この2004年当初は市町村の職員が、法改正によりかなりの電話対応や職務が増え混乱をしていたり、また関係機関とどのようにネットワークを作っていくか、市町村を中心としながら児童相談所との関係をどのように作っていくか、加えてその要保護児童対策地域協議会をどのように作っていくのかということがかなり議論されました。そうした状況を経て、近年様々な自治体の中でこの要保護児童対策地域協議会が出来て活動を開始しております。

 そして更には、2008年4月より児童虐待防止法が改正され、虐待の恐れのある家庭に対し知事が出頭を要求しドアの鍵を壊してでも入る事が出来るようにするということや、接近禁止命令を出せることとなり、その保護的な整備が進んできております。

 一方教育領域ですが、教育領域もいじめ対策や不登校対策でいろいろな事が出来ております。

例えば文部科学省は2005年にいじめを原因とする自殺問題が相次いで報告された事を踏まえて、2006年10月に「いじめの問題への取り組みの徹底について」という通知を出しました。

 いじめの早期発見・早期対応及びいじめを許さない学校作りが提起されまして、それを踏まえて今年の2月5日に「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」という通知が出されまして、教育委員会及び学校は問題行動が実際に起こった時には十分な教育的配慮の元、現行法制度化において取りうる措置である出席停止や懲戒などの措置を含め毅然とした対応を行うように通達しております。

 この通知の問題点という事も教育学領域の中で議論されているのですが、とにかくいじめに対しては厳罰を課すという事で加害者に対しての指導をしっかり行うというような方向で進められてきております。そして2007年の4月7日には、この通知等を踏まえまして文部科学省は全国どこからも24時間いつでもいじめなどの悩みを簡単に相談する事が出来るよう、全国統一の電話番号を設定しております。これは電話をある番号に掛けると、それぞれの教育委員会にかかるようになっておりまして教育委員会はそれぞれの実情に応じて児相との連携を図りながらこういうものに対応していこうというような事になっております。

 法務省の人権擁護局に於きましてもいじめの24時間電話相談を設置しました。さらに、SOSミニレターという子ども達にA3を折れるようなミニレターを、子ども達がどんな辛い事でも文章にして書いてそれをポストに入れると、それぞれの人権擁護局に届きましてそこから人権擁護委員の皆さんや法務省人権擁護局の職員がそれにお手紙を書いて戻すという事や、インターネットによるメール相談というような事も行われてきています。

 そして次に総合行政という事ですが、子どもの視点が優先的に考慮されるようにする為に恒久的体制を地方自治体の中で発展させていく流れにありまして、その全庁横断的な部局ないし調整機関というものを設ける事が進んでおります。

 例えば八千代市の場合は、八千代市子ども部元気子ども課といったものや札幌市に於きましては、札幌市子ども未来局子どもの育成部子ども権利推進課というような部課で、教育・福祉・保健などの部局を統合・再編した子ども部といったものを作るという動きも出ております。

 そして子どもに関する条例を様々な自治体でいろいろな形態で作ろうという事が出始めてきております。

 例えば2000年に川崎市で子どもの権利に関する条例が、総合条例としては初めて出来まして、そこから現在に至るまで総合条例としても10以上の自治体で総合条例が作られております。

 また今日も埼玉県の中谷先生の方から報告がありますが、子どもの人権擁護委員や子どもの人権オンブズパーソン条例というような形で第三者機関として子どもの人権を守ったり、モニタリングしていくというシステムを自治体の中で作っていこうという動きも出て来ております。

 それがまた下のほうに書いてあります子どもに関する相談・救済制度ということですが、先程ご説明いたしました文部科学省や法務省といった国レベルの取り組み、そして教育委員会といった自治体レベルでの取り組み、また公的第三者機関のオンブズ、また学校現場におけるスクールカウンセラーや、あまり聞き慣れないですが、スクールソーシャルワークというような取り組みも出て来ておりますし、さらには先程最初にお話がありましたようにチャイルドラインというような取り組みも民間で行われていたりしますし、日本弁護士連合会の人権相談やそれぞれ民間でいろいろな電話相談なども行われてきております。

 続いては、人権・権利教育という事ですが、人権教育啓発に関する基本計画というものが国連総会におきましてここに書いてある10年間を人権教育の為の国連10年とする決議が採択されまして、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律というものが出来ました。またここに関しましては、後ほど千葉県の岡田さんからお話をいただける事になっておりますので、こちらのほうは僕の報告からは省略させていただきます。この後の議論にも繋がってきますが、こういった様々なものをどのようにネットワーク化していくかというローカルネットワークの構築というものと子どもの生存権保障というような観点も含めましてセーフティーネットの構築ということが議論されてきております。

 先程の公的第三者機関や児童相談所などを中心に据えたり、子どもの人権ネットワークというものを中心としながら、行政と市民がいかに協働して虐待や子どもの権利侵害というものをネットワークの中で守っていくのかという事が、最近特に注目されている事です。

 行政と市民やまた大学との協働事業という事も注目されてきています。とにかく自治体は非常に厳しい財政状況ですので、いかに子ども施策を推進していくかという事でボランティアをうまく活用したり、地域の中にある大学・NGO・NPOとどう協働体制をとりながら子ども施策を展開していくのかが課題になっています。第1回目の人権懇話会の時に八千代市の大山さんのほうから、人権ネットワークの取り組みと、八千代市と東京成徳大学が協働しながら「おにいさん・おねえさん子ども電話相談」を開設しているという報告がありましたように、今全国の自治体の中で大学やNPOと行政が協働しながら施策を展開していくという事が注目されてきております。

 そして今回のシンポジウムでは、千葉県健康福祉部健康福祉政策課人権室長と埼玉県子ども権利擁護委員会の調査専門委員の先生がそれぞれ人権指針の施策や、子どもに関する相談・救済という事についてのお話をしていただきます。

 また自治体レベルで八千代市や我孫子市の取り組み、子育て支援ネットワークや子どもの人権理念と施策について、また権利教育という視点も含めまして、お話をしていただきます。

 これまでの人権懇話会については黄色い冊子をご覧いただければと思います。大変だったかと思いますが、この10月にテープ起こしをして用意していただきました。まさにこのような実績の結果、先程紹介もありましたように地方自治体の市長部局や教育委員会の9割以上から後援を得る事が出来ました。こうした地域における子どもの人権の取り組みの実践例を話し合いながら、それに理念と実践というものを兼ね合わせていった成果がここに現れているのではないでしょうか。

 本日はこうした全体像ということを含めまして、「千葉県社会において子どもの人権を守る為に今何が必要か」という事を考えるきっかけになればと考えております。それでは全体像を急いで概括してきましたが、続いてシンポジストのほうからお話をいただきたいと思います。

 最初に僕のお隣に座っておられます千葉県健康福祉部健康福祉政策課人権室長の岡田光彦さんの方から、千葉県の人権指針と施策についてお話をいただきたいと思います。

 

《千葉県健康福祉部健康福祉政策課人権室長 岡田光彦さん》

岡田でございます、どうぞよろしくお願い致します。

 それでは当日資料の3ページに簡単なレジメを書かせていただいておりますので、こちらに沿ってお話をさせていただきたいなと思います。

 まず千葉県の人権指針の施策について簡単に説明という事ですが、この指針につきましては人権施策の理念:施策の基本的なあり方を書いてございます。具体的な個別事業についてはそれぞれの担当部署がやっているところでございますが、千葉県として人権施策はどうあるべきかを記載しておるところでございます。策定の経緯、何故千葉県でこのような指針を作ったという事でございますが、おおまかに歴史を振り返って見ますと半田先生のほうからお話がございましたが、国際的な潮流としてはまず世界人権宣言になろうと思います。

昭和23年に宣言がなされて来年が節目の60年となるわけでございますけれども、この人権宣言を受けましてその後児童の権利に関する宣言だとか女子に対する差別撤廃に関する宣言であるとか、精神薄弱者の権利宣言、障害者の権利宣言、等々各種宣言がなされまして、これに関わる条約の採択:批准がなされてきたわけであります。以後平成6年に人権教育の為の国連10年が宣言されておりまして、此の中で平成7年から16年までを計画期間といたしまして諸政府が国連事務総長に対して行動計画を提案の上、各国において人権教育計画を遂行するように促されたという国際的な動きがございます。

 これを国内的に見てみますと、憲法に定める基本的人権の尊重の原則にのっとりまして世界人権宣言以降でございますけれども、各種国内法が整備されてきています。人権教育の為の国連10年宣言を受けたものといたしましては、平成7年12月に閣議決定がなされまして内閣に人権教育の為の国連10年推進本部というものが設置されまして、平成9年に人権教育の為の国連10年に関する国内行動計画が取りまとめられたという事でございます。これらに合わせまして平成9年に人権擁護施策推進法、これにつきましては5年間の時限立法でございますが、法律に基づきまして人権擁護推進審議会というものが設けられまして、この審議会で一つめとしては2年を目途に人権尊重の理念に関する教育及び啓発の基本的事項、5年を目途に人権侵害の場合の被害の救済施策の答申を得るというふうにされているところでございます。

 さらに平成11年になりまして、この審議会から人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深める為の教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項についての答申がなされています。これを受けまして平成12年に人権教育及び人権啓発の推進に関する法律が制定されたというところでございます。

 この法律の主な内容として一つめに基本理念が第3条に書かれておりまして、国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は人権尊重の理念に関する理解を深め、これが体得出来るように多様な機会の提供:効果的な手法の採用:国民の自主性の尊重及び実施機関の中立性の確保を旨として行わなければならない。

 また国の責務と致しまして、国は基本理念にのっとり人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し実施する責務を有するとされております。また私共地方公共団体の責務と致しまして、地方公共団体は基本理念にのっとり国との連携を図りつつ地域の実情を踏まえて人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、実施する責務を要する。

 また国民に関しましては、人権尊重の精神の涵養に努めると共に人権が尊重される社会の実現に寄与するようにつとめなければならないというふうになっております。

 そしてまた国は人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図る為、基本的な計画を策定しなければならないとされているところでございます。これを受けまして平成10年3月に閣議決定という事で、人権教育啓発に関する基本計画が決定されたという事でございますが、主な構成と致しましては第一章で人権教育・啓発推進法制定までの経緯と計画策定方針及び構成が書かれてございます。

 また第二章におきまして、人権教育・啓発の現状について記されております。

 また三章においては、人権教育・啓発の基本的な在り方、四章において人権教育:啓発の推進方策、五章において計画の推進において体制やフォローアップ等が記述されておるところでございます。

 これから先が県の関係になるわけでございますけれども、平成16年2月に県の人権施策基本指針が策定されました。策定以前の県の取り組みについては、只今申し上げました人権教育:啓発法や国の基本計画に基づいていろんな事業をやってきたところでございますけれども、いわれています分権型社会の構築でございますとか知事が申しております千葉主権の確立という事の中で、千葉県の人権課題や進むべく施策方向を明らかにするという事になりました。

 この為に平成14年10月に非差別部落出身者や在日韓国・朝鮮人またハンセン病元患者などの当事者の方々に委員として参画していただき千葉県人権問題懇話会というものを作ったわけです。以後様々な当事者の方々また支援者からご意見を聞きながら、この16年2月に従来の人権施策の手法や体制の枠組みを超えようという事で、人権に関する総合的・計画的な取り組みを推進する為の基本指針法を策定したということでございます。指針の内容と致しましては、まず基本的な考え方でございますが、一つめは人権施策の基本理念を県民一人ひとりが人間として尊重され安心して活き活きと暮らせる社会の創造としてございます。

 また基本的な視点として自尊感情を尊重する、自己決定を尊重する、自立精神を尊重する、共同参画を保障する、共生社会を目指す、という5本を基本的な視点としてございます。

 またこの基本指針の性格でございますが、県民一人ひとりがその人らしく安心して活き活きと暮らす事が出来る地域社会作りに向けて、今後の県政における人権施策推進の基本的な考え方を示すもので、多様かつ複雑な人権問題に対応する為、個別分野の枠組みを超えた総合的な人権施策の体系化を図ると共に、県民をはじめNPO・企業・市町村などに対して県の人権施策の方向性を示し、連携や共同のもとに人権が尊重される社会作りを進める為のものとしているという事でございます。

 次に施策全体の推進方法でございますけれども、一つめとしてあらゆる場における人権教育・啓発の推進を行う事といたしておりまして、従来の人権教育・啓発における知識習得型の学習から人権に関する知識が態度や行動に結びつくような体験的・実践的学習へと重点を移す事といたしまして、家庭・学校・地域社会・職場などあらゆる場や機会を捉えた新たなスタイルの人権教育:啓発を進める事といたしております。

 また人権擁護体制の充実を行う事としておりまして、相談支援体制の充実でございますが、これまで女性や子どもに関する相談をはじめ障害者の方でございますとか高齢者の方・外国人の為の相談など個別的な課題毎に相談機関を設置して対応してきものを、いろいろ複雑化してる人権問題に迅速に対処する為、核となる総合相談窓口の整備や民間を含めた各個別的相談機関のネットワークを進めるというふうにしてございます。

 また救済・保護対策の充実に関しましては、現在人権被害を受けた被害者の保護に関しましては、法務省の人権擁護機関、具体的には法務局とか人権擁護委員等々になろうかと思いますが、これらや最終的な解決手段としての裁判所、また地方公共団体などの行政機関や民間団体による被害者保護の取り組みがございますが、これも先程の支援体制と同じでございますが、人権に関わる問題に関しましては様々な要因が発生しているという事でございますので、これまでの個別の救済機関や保護機関の対応では不十分ではなかろうかと思っておりまして、そこで県民のあらゆる人権問題に対応出来るような権利擁護機関の設置に向けまして、擁護すべき人権基準や調査権限の明確化・具体的な救済の進め方・他機関との関係の在り方を検討するとなっております。

 またその他として、子どもさんや視覚障害者や聴覚障害のある人、知的障害のある人、視覚や聴覚が衰えた高齢者、外国人など様々な人々の権利の行使や具体的な生活支援にかかる情報提供の充実、人権問題の相談・支援・救済・保護に効果的に対処する為の人権擁護機関等のネットワークの構築を図ってまいりたいとしてございます。

続きまして分野別の施策の推進という事でございまして、基本理念の中に16の推進すべき個別の分野を設けてございます。そしてそれぞれの分野で現状や課題の把握、施策の基本方向を示し施策を推進する事としおります。また、レジュメに書いておりますように16の分野につきましては女性・子ども・高齢者・障害のある人・非差別部落出身者・外国人・ハンセン病元患者・HIV感染者・性同一性障害のある人・同性愛者・ホームレス・中国残留孤児・犯罪被害者とその家族・被拘禁者、刑を終えて出所した人、それから様々な分野の人権問題という事でございまて、先程申し上げました懇話会の中での議論で、国で定めております基本計画の個別分野の他にに2・3千葉県独自の分野として、例えばHIVなどを別途新たに加えているところでございます。

 子どもに関する部分におきまして少しだけ詳しくお話を申し上げますと、現状課題につきましては少子化・核家族化が進み、家庭の教育力の低下や地域社会との繋がりの希薄化など子どもが育まれる地域環境が大きく変化し、子どもを巡る問題も複雑化・多様化している。それから児童虐待:家庭内暴力や学校でのいじめ・体罰・少年非行・不登校・覚醒剤などの薬物乱用の低年齢化・援助交際や児童ポルノなど性の商品化等子どもの人権を巡る問題が深刻化しているという事で、これらに対応することが課題であるとされたところです。そこで施策の基本的方向といたしまして、子どもを保護の対象としてではなく権利の主体としてその人権尊重や権利擁護に向けた取り組みをしていくとされておりまして、人権を尊重する社会作りと教育啓発の推進、また児童虐待防止の取り組みの推進、子育て支援の充実、施設等の充実、子どもの人権問題に包括的に取り組む仕組み作り等を進めるというふうにしてございます。

 四つ目になりますが施策の総合的・効果的な推進という事でございますが、まず県の推進体制でございます。基本指針に基づきまして人権尊重を基本に据えた県政の推進と個別施策や個別人権の枠組みを超えた総合的な施策を推進する為に、知事を本部長といたしました庁内横断的な体制として平成16年6月に千葉県人権施策推進本部を設置したところです。また今一つは、国・市町村・NPO・民間団体の連携というところでございますが、県は人権に関する各部署が中心となりまして県の関係機関、地方法務局等の国の機関、市町村、または人権啓発センター、千葉県人権擁護委員連合会、千葉県弁護士会、NPO等の民間団体とのネットワークを構築しまして、情報の共有化・人材や施設の相互活用、今までの枠組みにとらわれない相談や支援:啓発等を推進するというふうにしてございます。

 また基本指針:施策の点検見直しについてございますが、この指針並びに人権施策の推進に関しましては社会情勢の変化等に的確に対応する為に、定期的ないしは継続的な点検や見直しをしようというふうになっていまして、この為人権施策の見直しや点検の他、推進効果を評価する機能や新たな人権問題に関する調査機能をもつものといたしまして、平成16年6月に人権施策推進本部の設置と併せまして、こちらの米田さんを始めとした有識者で構成する千葉県人権施策推進委員会を設けておるところでございます。

 また今一つといたしまして、人権宣言の制定・公表を考えてございます。

私達一人ひとりが人権尊重の社会作りに向けて県としての強い意思表示を示す、また県及び県民が一体となって人権尊重の社会作りに取り組む事を決意表明する為に、まだ仮称でありますけれど千葉県人権宣言の制定・公表について現在いろいろ検討しているところでございます。

 最後になりますが、平成19年度における県の各部局における実施事業の状況でございます。私共健康福祉政策課人権室におきましては、人権尊重思想の普及および高揚を図る為各種講演会の実施や講師の派遣、メディアを活用した広報・啓発、人権推進委員会や人権推進本部の運営を行っておりまして、各部局において個別的な事業を展開いたしております。この事業につきまして先程申し上げました人権施策推進委員会、10名の先生方がおるわけでございますけれども、毎年度各部局実施事業の点検:確認という作業をしておるところでございます。

 19年度を見てみますと、3つほど分け方がございまして一つは人権施策の推進方向に関わるものとしてあらゆる場における人権教育・啓発の推進にかかる関係の事業が163事業、人権擁護体制の充実関係で20事業、施策の総合的・効果的な推進関係の事業として25事業、合わせて208事業がございます。これが施策の推進方向に関わるものでございまして、次が先程申し上げました16の分野別ものに関わるものという事でございますが、一つ女性といたしましては67事業、子どもの関係だと54事業、高齢者で35事業、障害の関係で63事業、非差別部落出身の関係で22事業、外国人の関係で27事業、ハンセン病元患者の関係で23事業、HIVの関係で25事業、性同一性障害関係で17事業、同性愛関係で17事業、ホームレス関係で18事業、中国残留孤児で19事業、犯罪被害者とその家族に関しましては22事業、被拘禁者に関するものといたしましては18事業、刑を終えて出所した人については17事業、その他広範な人権問題に関する者に関して22事業、合わせますと466事業が実施されております。

 それから三つ目として人権の啓発:研修に関わるものとして280事業程ございまして全部合わせまして882事業になりまして、予算的な規模としては75億1800万円程で各部局においてそれぞれの個別事業を実施しているという事でございます。足早になりましたが、以上人権指針と施策、現状について簡単にご説明申し上げました。

 

《半田さん》

どうもありがとうございました。

 国際的な人権の流れを踏まえて国内的にはどのようにやっているか、またそれを踏まえて千葉県がどのような施策を展開しているのかについて詳細に概略を足早にまとめていただきました。また後ほど具体的にどのような事が行われているかは質問の中で共有していければと思います。

 それでは続きまして、「八千代市の親支援のシステム作りについて 保育園と母子保健の連携」というテーマで八千代市子ども部母子保健課の保健師の石橋さんのほうからよろしくお願いいたします。

《八千代市子ども部母子保険課・保健師 石橋雅子さん》

石橋です、よろしくお願いします。

今日は少し写真とか表とかをお見せしたほうがいいと思ってパワーポイントを用意してきたのですが、残念ながら映らないので、配付資料に沿ってご説明したいと思います。資料の4ページをご覧下さい。

今、半田先生が話してくださいましたが、保育園と母子保健が連携して今八千代市で親支援のシステムを作ろうとしておりますのでその実践報告をさせていただきます。

八千代市ですが、千葉市と隣接していてちょうど頭の上に乗っかっているような位置にあります。

人口は18万6650人で出生は1900をちょっと切るぐらいですね。この連携に至る経過ですが、平成17年の3月に次世代育成支援行動計画のほうが策定され、その中で、生活圏単位に応じた子育ての支援ネットワークを市民と行政の協働で促進しましょうという事ですとか、子どもに関する総合窓口を作るというような事が計画に盛り込まれました。

それを受けまして、子ども行政在り方検討委員会が作られまして、その中で具体的にどうやって進めていくのということが提案されました。八千代市は、行政区7圏域にわけられているんですが、そこに1ヶ所ずつ公立保育園を従来の保育園機能に加えて在宅の母子を支援する子育て支援センターとして位置づけ直そうという事になりました。保育園と地域子育て支援センターの二枚看板になりました。

何故、在宅子育て支援なのかということですが、0〜就学前の各年齢で、子ども達が保育園や幼稚園にどのくらい入園していて、在宅にどのくらいいるかという表がお見せできたらよかったのですが、要するに特に幼稚園に上がるまでの0・1・2・3歳の保育園に行っているお子さんが15%くらいいますが、それ以外、85%くらいのお子さんが家庭にいる。在宅で子育てをしている。そこのところの親支援を強化していこうということです。 私達はいろいろな事業をしていますが、それらの事業の一連を全てひっくるめまして地域子育て支援ネットワーク事業と名付けております。推進体制としましては、6頁に載せましたが、この上に書いてある事務局会議というのが母子保健とか子育て支援の課長や園長、保健師として私も入っていますが、ここが、いわゆる企画調整を担うところになっております。また、各地域子育て支援センターには地域担当保育士が配属になっており、全部で20名おります。

このように推進体制を整えて始めておりますが、その地域子育て支援ネットワーク事業の三本柱をご紹介します。資料でいうと4のところに入っていきます。

一本目が妊娠から出産:乳幼児期の切れ目のない支援の提供。

二本目が地域子育て支援センターでの遊びと交流の広場の提供。

三番目が安心して子育てできる地域作りの推進という事になります。

一つずつもうちょっと詳しく説明していきたいと思います。

一本目の妊娠から出産・乳幼児期の切れ目のない事業展開という事ですが、まず妊娠したら母子健康手帳を交付いたしますが、八千代市は、長年、戸籍住民課窓口で母子健康手帳を交付してまいりました。

平成18年度の6月にそこでの交付を終了して、子育て支援分野の課での交付とし、5つの地域子育て支援センターでの交付も開始しました。その後、平成19年5月10日に全ての地域子育て支援センターで交付開始したのですが、実は支所・連絡所の交付は住民の利便性を考え、継続していたのですが、なかなか地域子育て支援センターでの交付数が伸びないため、思い切って、今年の9月いっぱいで支所・連絡所を廃止しました。そうしましたら支所・連絡所のほうで全体の30%交付していた分が、一月のカウントですけどちょうど30%そのままが地域子育て支援センターにスライドしております。このように、何故窓口を変えたかというと、お母さん方にとっては母子健康手帳の交付を受けるときに、しっかりとした情報提供を受けるということ、それから、私達からすれば、あなたをこれからずっと妊娠から支援していきますよっていうメッセージを送る場であって、ハイリスクのご家庭がどうしてもありますので、妊娠時点からキャッチしていこうという事です。そういう形で母子健康手帳の交付も変わってきております。

次に、ご紹介するのが、地域子育て支援センターで19年度から実施しているマタニティー広場です。

実は今、子育て支援部門で母子健康手帳を全部発行しておりますと言いましたが、60%は市役所本庁の子育て支援課になります。全部が地域子育て支援センターだったらいいのですが、そこまでは、なかなか難しいところがあります。しかし、いわゆるそこを補完する形で、このマタニティ広場を地域子育て支援センターで実施し、妊娠期から支援センターを知ってもらうようにしています。本庁で一生懸命あなたを支援する拠点はこちらですよとご案内をしています。内容的には先輩ママとの交流会などです。今年は、年間43回・地域子育て支援センター8ヶ所で実施しております。

この事業は、形的には、単発の事業なんですが、こちらの企画や周知も母子保健分野の私達と一緒にやっております。

次に、4か月児赤ちゃん広場、こちらは先程次世代育成支援行動計画で八千代市の動きが始まりましたよとお話しましたが、実は現場ではもっとその前にいろいろ問題意識というか、こうあったらいいなという思いがありました。特に私共は赤ちゃん相談という事で長年、地区の集会所等をお借りしてやっていたんですが、例えば午前中に実施すると、午後にはその会場は、全く違う機能になってしまうんですね。お母さんがせっかく来てくれても、また再び来ることができる場所ではないのです。この事業が本当は保育園の場でやれたらいいのにという想いをずっと持っていました。

それでこのように、次世代プランの関係で、動きが大きくなる前の年に、いわゆる母子保健の分野から保育園にお願いをするという形で民間保育園さん4園にもご協力いただいて、16会場で年間128回の4か月赤ちゃん広場を実施することになりました。それまでの八千代市の母子保健のサービスは希望制が非常に多くて、実数だと約3割しかカバーしてなかったんですね。赤ちゃん広場にしてからは、全数呼び出し事業にしまして、対象の約7割が参加する事業となっています。

また、保育園に、場所を借りているだけではなく、地域子育て支援センターの保育士・栄養士・看護職達と一緒に運営を行っております。例えば保育園の場所でやりますので、栄養士さん達がニンジンを茹でたものを持ってきてくれたりおかゆを持ってきてくれたりして、調理器具で、つぶしかたなどの実演をしてくれるんです。こんな風に、保育園の機能を十分に生かした教育の工夫がされるようになってまいりました。

それから10か月児の赤ちゃん広場なんですが、実は4か月が充実してきて良かったのですけど、その後が1才半まで何も全数対象事業がなく、保健師も支援を継続していこうと思ってもなかなかやりづらい面がありました。それで子ども部になり、地域子育て支援ネットワーク事業が開始されてから、第1番目にこの事業をつくりました。120何回もの事業を、私達、母子保健の分野だけのマンパワーではなかなか出来ませんが、子ども部ができて、「子ども部で一緒にやるぞ」っていう流れの中で、今度は事業の企画から一緒にやっていきました。当日の司会もこちらは保育士さん達がやってくれています。

この10か月の赤ちゃん広場終了後に、保育士さん達とカンファレンスをしまして、事業に参加しない方々を家庭訪問するという事を今実施しております。その前の段階から継続的に私達が支援している方は保健師のほうで、その日に参加しなかった方なんかは地域子育て支援センターのPRという視点も含めて、保育士さん達に家庭訪問していただく。そのような形で実施して、欠席者も含めて全数把握に努めています。

急激に事業化してきましたけれども、ここまでが19年度までやってきたところで、妊娠から乳児期までの事業です。

また、平成20年度から幼児期の親学習支援の事業をもうちょっと充実させようという事で、母子保健と保育のいろんな職種で、3つのプロジェクトを作って今年度検討しております。

一つが子育てで大切な事を伝えるプロジェクトといいます。何を検討しているかと言いますと専門職として親に伝えていきたいことがありますよね。それを、どの時期にどういう内容でお母さんに受け入れやすい形で提供できるかを検討しているプロジェクトです。

それから二番目の食育ですけど、本市は、やちよ食育ネットと言って行政と市民の協働型の食育の組織があって、食育にはすごく力入れてるんですが、本当に食育って切り口は、一緒に食べる事でコミュニケーションを学べたりとか、生活力・生活習慣・健康作りについてなど、いろいろな事が学べるいい切り口なので、乳幼児期のところでも推進していきたいなという事でプロジェクトを作っております。

ここでは栄養学的なことを、栄養士さんが講義するというようなものでなく、実はこのプロジェクトに、やちよ食育ネットの市民の方2名にも入っていただいているんですが、おばあちゃんの知恵袋的な冷蔵庫にあるものだけで作れるとかそういう生活力を重視したようなものが提供出来ないかと検討しております。

それからワークショップ形式の参画型学習、私達が講義をしても、良いことを聞いたなで終わる事が多いですね。だから自分で話をして自分で考えて解決していくという、そういう学習が非常に大事じゃないかという事で検討しています。カナダのノーバディーズパーフェクトプログラムなどを、日本で広めているような方をお呼びしたりして、そういう事も学習しながら皆で進めております。

それから二本目の柱なんですが、親子で安心して遊べる場の提供。これは八千代は前から早めに進めてきたところです。お部屋を開放していつでも遊びに来ていいですよというものです。地域が広域だったり、人数が多い場所は、出前の広場も実施しております。

少し、利用者の声をお伝えします。例えば「ここに来る事によって1日の生活リズムが出来るようになってきた」っていう声です。すごく大事な機能なのかなって思ってます。悩みの種のトイレトレーニングなんかも、遊びの広場の遊びに来ることで、生活リズムが整いスムースにできていくような面もあるかと思います。それか「ら保育士さんだとかママ同士話が出来て私もリフレッシュ出来ます」という声。これもすごく大事ことかなって思います。

家の中に閉じこもって母子だけでいるよりも、本来子育てっていろんな人の中でいろんな人の価値観に触れてするものだと思いますし、その中でお母さん自身が癒されているこういう事ってすごく大事かなって思います。それから「私も子どもも成長していく大切な場所です」っていうような表現とかすごくすてきな表現だと思いました。実は私の地区のところでも事業評価のアンケートをしたらその紙面に「すてきです」っていう表現をしてくれているお母さんがいました。それから「雨の日でも遊べてうれしい」これも本当にそうだろうなと思います。

先程の赤ちゃん広場なんかの事業をするようになってから、地域開放の遊びの広場の利用が上がってきております。

特に赤ちゃん広場の影響だろうなとおもうんですが、0才児からの利用が高まってきております。

あと三番目の子育てしやすい地域作り活動ですね。

地域の住民の方とか民間の方とかいろんな組織の方と手を組んで、お母さんが八千代で子育てしてて本当にいいなってまさしくすてきな街になるようなそういうコーディネートも仕事かなって思ってます。

切り口としていくつか考えられると思うんですが、今までですと、子育て応援フェスタを地域ごとにやったりしてますが、フェスタだけではなくていろんな切り口で皆さんと一緒にやるっていう事が出来るかなって思っています。母子保健課の地区担当の保健師と拠点の保育士さんといろいろ考えながら市民の皆さんの考え方も聞かせていただきながら出来たらいいのかなと。

この事業の効果なんですけど地域の全ての家庭と言いましても、今のところは実際概ね3才ぐらいまでだと思っているんですが、その全ての家庭を視野に支援する事が出来る基盤がやっと整備されてきたかなという事です。

一つは養育支援の必要な家庭を早期に把握して支援する事が容易になりました。

発見するだけではなくて、節目で事業がありますので、そういう事業を使って支援する事が昔よりは容易になってきたかなと思います。それから積極的なサービス利用者層にもよりよい子育て支援を提供できるようになってきました。この積極的なサービス利用者層って実はなんて表現したらいいかわからなくてこういうふうにしたんですが、いわゆる普通のお母さんですね。ハイリスクではないお母さん達。でもそのお母さん達に、料理を作るのが苦痛だとかお母さん同士で交流するのがちょっと下手でそういう事にストレスを感じてしまうお母さんがいるんです。コミュニケーション能力が落ちてるのは子ども達ばかりではないと思うんです。ちょっとずつ親の力が弱くなってる所ってあるかなって思うんですね。そういうところをこういうふうな事業を利用していただく事で少しずつアップしていけるようにしたいなという事が徐々に出来るようになってきつつあるのかなというふうに思っています。

今後の課題ですが、ここに5本上げさせていただきました。

一つが養育支援が必要な家庭の支援の質の向上です。やっと支援が必要な方をキャッチ出来るような節目の事業が作られて来ましたが、今はどうしても個別支援が主になっております。保健師が家庭訪問するとか時々電話かけをするとか。もうちょっとそこの支援のところを強化できないかと思っています。例えば10代の若年妊婦の方のグループ支援を入れるとか、もうちょっと支援の方法に幅が考えられないか、質の向上が出来ないかなということを考えております。

それから二番目は幼児期に焦点を当てた親学習支援の事業整備です。これは、手を付け始めてますので、これをきちっと充実させていく事ですね。三番目は、社会教育分野や幼児教育分野との連携・役割分担です。

今まで市民の皆さんが地域で学習行動を起こそうと思うとその場というのが、公民館が主だったと思います。ある意味地域子育て支援センターが出来る事によって、新しい社会支援が生まれたわけです。ですから重複しなくて、お互いのよい面を活かしあえるようなことができたらいいかと思います。既存の公民館との連携・役割分担については、1月から話し合いをスタートする予定です。それからこれは全然手が付けられていないことですが、八千代市は、1つの幼稚園を抜かして全部民間の幼稚園さんになります。

保健師は、唯一、人の家庭に入っていける家庭訪問していい職種だっていわれてきたんですけれども、今この地域子育て支援センターの職員の方々は同じような活動が出来るような形になってきていると思うんですね。ですから今までは保育園に遊びにきてくれる人たちに何をするかっていう視点だったと思うんですが、もうちょっと広く考えると、例えば地域子育て支援センターの職員であれば、先程言った食育の講座をもしかしたら幼稚園に行って実施出来るかもしれない。そうすると就学前のお子さん達に支援が広がっていくという可能性もあるかなって考えてます。

それと四番目が子育てしやすいまちづくりの為のコーディネート機能の強化ですね。これは保健師がきちっと仕事としてやっていかなければいけない事かなと思ってるんですが、今この事を地域子育て支援センターに配属になった保育士さん達は求められております。一緒に手を組んでやっていかなきゃと・・・。保育士さん達はこのような視点は、教育課程の中では教わってきていないと思いますので、お互いのいいところを認め合って手を組んでやっていかなきゃいけないなというふうに思っているところであります。

五番目がまとめ的な感じですけど、すごい書き方してしまいましたが八千代市の子育て支援の真価が問われるのは親や地域の力をどれくらい引き出せる関わり合いが出来るかかなって正直思ってます。やってあげる的な支援で終わっていると、全く違った方向に行ってしまうから、それはすごく怖い話だなっていうふうに思っています。今、子ども部では、本当に研修に力あげてますし、日常の活動、これらの全てが、研修だなっていうふうに思ってやっております。

七番目がまとめとして子どもの人権を守るという視点から本事業を捉えてみるという事なんですが、お時間も来ましたし半田先生と打ち合わせをして、後で話しましょうって事になりましたので、紙面で一応見ていただいて後ほどという事で。ありがとうございました。

 

《半田さん》

どうもありがとうございます。

パワーポイントの写真をせっかく用意していただいたのに、拝見できなかったのがとても残念ですが、口頭ですごく伝わる内容のご発表だったと思います、どうもありがとうございました。

今までは千葉県と千葉県八千代市からのお話でしたが、続きまして子ども相談・子ども救済である、埼玉県子どもの権利擁護委員会からおいでいただきました調査専門委員の中谷茂一先生にお話をいただきます。この第三者機関である相談・救済制度とはいったいどういう制度であるのか、そして学校との連携を図っていくという意味において、学校側はこの制度をどのように見ているのかについて5年間の実績を踏まえお話いただければと思います。

よろしくお願いします。

 

《聖学院大学人間福祉学部准教授 中谷茂一さん》

お手元の資料の7ページからのところと、こちらのリーフレットの方を参照しながらご説明したいと思いますのでお手元に置いておいてください。今ご紹介いただきましたように埼玉県の事例という事で皆様にお話したいと思っております。私普段は大学で教えているんですけど、週に1回県から委嘱を受けましてその権利擁護委員会の調査専門委員というものをやっています。その調査専門委員というものはなんなのかっていうのは後ほどお話しますが、一番始めにご覧いただきたいんですがこのサービス・委員会の設置は2002年に県条例で設置されました。前の知事の時の時代になりますけれども、公設・県が設立した子どもの権利擁護機関。県がという県レベルの自治体でのこういった機関設置は、日本の中では初めての事例になります。市町村レベルでは兵庫県川西市などが市町村ですと一番最初にスタートいたしましたけれども、県レベルでは一番目という事になります。それからサービスが開始されたのが2002年12月1日から相談開始しておりますので、ちょうど5年たったんですね。

私開設当初から関わっておりますのでこの5年間を振り返ってみたい。

それから埼玉県でも設置するまでいろいろ県内の各部署でも喧々諤々(ケンケンガクガク)、議論があったというふうに聞いておりますし、一般論としても子どもの権利擁護というものを公的なお金を使ってやって、やる意味と効果があるのかとか、例えば学校の中での出来事にタッチしていく事になった場合、学校の現場がかき乱されるんじゃないかという危惧の声がよく聞かれます。そのあたり具体的にどういうふうな活動をしてきたのか、実際にやってみてどうだったのか、学校側にメリットはあるのか、どうかという事について絞ってお話していきたいと思います。まず皆さん意識の高い方達が今日お集まりかと思いますからご存じの方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、簡単にこの委員会の体制・仕組みをお話したいと思っております。

委員会の体制というところ、7ページをご覧いただきたいんですが組織といたしましては県の条例設置されていて、県条例では委員が3名配置されております。この委員が3人が権利侵害の救済の申し出を受けて、それに対してどういう調査をするか、または場合によっては勧告・意見表明という条例上の規定を使ってやるかどうかを審議する立場にあります。非常勤で3名月2回の委員会を開催しています。委員さんは月2回の定例の委員会に出席していただくという事になっております。

今現在委員長は弁護士の方、それから埼玉県で社会福祉行政の経験された方もご退職されておりますが、過去経験されていた方、大学の教授の方、今おつきの方は臨床心理の先生ですね、この3人の方が委嘱されております。過去今2廻り目、1回目任期がきたものですから委員の先生の方々変わったんですけども、過去も委員長さんは弁護士さんでした。別に弁護士じゃなきゃいけないって事はないんですけど、弁護士会のほうからご協力もいただきまして。

その下に調査専門委員というものがおりまして、権限があるのは委員さんなんですね。調査専門委員というのは権限自体はありません。

家庭裁判所の家裁の調査官のような感じでして、委員が審議する為の情報を相談者・相手方・まわりの方から情報を得てきて、それを委員会の時にお伝えすると。その調査専門委員から上がってきた情報を元に委員が審議すると、こういう形になっています。その面接・相談・調整を行うという事になるわけです。これまた3名おりまして非常勤です。原則週1回、なんで原則と書いたかというと忙しくなると週1回じゃなくて今私は週3回くらいどっか学校に行っているという感じになるんですが、一応面談日というのをあらかじめ1ヶ月・2ヶ月後くらい前から設定しておきまして、お電話掛かってきた時にそこに当てていくわけなので元々は原則週1回面談日を設定しております。実際の運用上は忙しい時にはもっと入ってくるという事になります。それが相談条件によって変動という事はそういう事なんですね。

現任者、私もそうですが偶然なんですけど大学教員じゃなきゃいけないという事ではなくて、日中フルタイム月から金まで働いている方に比べたら時間の使い方として、どこか空かせる事が出来るのが大学教員なのかなというところがありまして、暇なのかって思われるとちょっと困るんですけども時間のコントロールはしやすいのかもしれません、他の専門職の方に比べると。

そういう事で探してって週1回必ずどっか時間を入れてください、それは半日あけなきゃいけないんですね。何曜日の午前中とか午後とか、半日あけなきゃいけないものですから探していくと結果として、大学の教員になってしまっただけなんです。ただ過去社会福祉士の資格をお持ちになって、福祉の仕事を以前されていた方がおなりになった事もありましたし、弁護士さんの方がご自分の弁護士活動をやりながらまたこちらの仕事もやるという方もいました。だから大学教員じゃなきゃいけないっていう話ではない。ただ今現任者としては3人とも大学の教員になってしまっております。入り口が全て電話相談です。

リーフレットの後ろに大きく電話番号が048−822−7007と書いていますが、まずここにお電話をいただくという事になっております。午前9時から午後9時半までと、これ行政がやっている電話相談としては長い時間じゃないかなと思っております。それから祝日・年末年始を除いて土日含めて全部やってます。これまた非常勤ですけども8人の方がシフトを組んで、長時間365日に近い形で電話相談を受けている、これが入り口です。県が設置しておりますので委員会の事務局の職員は県の職員さんです。

部署からいきますと、埼玉県の福祉部の子ども安全課の職員さんが2人配置されていて、ほぼそこの委員会の業務に専念してます。ただそれだけではなくて、県の中の福祉部の中のお仕事としてこういう子どもの権利とか子育て支援とか子どもの安全とかに関わるお仕事もやりながらやっているので、100%専任ではないところが横から見てると結構忙しそうだなという事になってますね。この2人は県の職員ですから常勤です。

主に連絡や事務上のお仕事をしていただいているという事で、相談を受け付けたり助言をしたりという事は基本的にはしません。お話の中でずっとだまって座っているんじゃなくて、お話をする事もありますけども基本的には対応するのは調査専門委員でありまして事務局や職員の方は相談に立ち会いますけども、そういった側面的なサポートという事になります。相談状況につきましてご紹介いたします。なにしろ子どもさんと直接、子どもから直接お電話をいただきたいなという趣旨がありましてその為にどうすればいいかと。

市報に載っけたり、県の広報に載っけたりしただけでは子どもには届かないんだろうと。その為に毎年、ちょうどカードサイズの電話番号とこういうふうな委員会なんですという事を書いたちっちゃいカードを学校さんを通して毎年配布しております。皆さんにはお配り出来なかったんですが、こういうふうなものなんですね。

いじめや体罰・虐待などの相談を受けてますので悩みを聞かせてくださいっていうふうに、漢字にもふりがなをふった形で配っておりまして、これを学校を通して県下の小学校5年生・中学校2年生に毎年配っております。たった2学年なんですけども、毎年配る事によってその学齢期の中で該当の年次になると埼玉県内にいる限り手元にくるという事になる寸法なんですね。2006年度は小学校3年生にも試験的に配布しています。

その結果電話相談の受付件数というのは全体で1000件とか2000件と伸びてきてるんですが、その全部の相談件数のうち子ども自身から来た割合が2003年度は38%、それがどんどん伸びてきまして7割、一番最新では65%、下がりましたが7割前後まで伸びていると、これは非常にカードを直接配布しているという事の効果が出ているんではないかと思います。

相談はありとあらゆる相談内容が電話相談委員のところに入ってくるわけですけど、いじめ・体罰・教員の不適切な対応・不登校・処分、そういう学校に関係するものに絞りますと、400件から

1000件ぐらいの間で推移してきております。間違い電話・無言電話を除きます。実際の相談件数の約5・6割を学校を舞台とした相談という事になっています。その中にまた昨今いじめの問題が非常にクローズアップされてますので、いじめ問題に絞りますとどうなるかと言いますと、2004年度は65件で15・4%、2005年度は174件で8・1%、2006年度は312件で15・1%、15%とか8%と少ないように見えますが、いろんな内訳の中のひとつでありまして、分類した中では一番いじめが多いわけなんですね。

子どもさん本人からの相談では、お友達との関係で困ったとか不安を感じるとかいやだとかそういう気持ちを伝えてくる事が多いですが、8ページにいきまして親御さんからの相談っていうのはいじめそのものをっていうよりも、もちろんいじめられていてっていう相談来るわけですが、「いじめられて困ってます」というよりも「いじめられて学校に相談したんだけど、学校がこちらが思ってるほど対応してくれない」というふうな学校さんの対応に不満を感じているという種類の相談です。

他に児童養護施設での問題っていうのもこれまでいろいろ報道された事もあると思いますが、この委員会の電話相談の窓口では児童養護施設で生活しているではないか、または生活しているというふうに明らかにして相談してきた子どもさんっていうのは、全部把握しているわけではないですがほとんどいないですね。ほとんど入ってこないんですけど、子どもさんではないんですけど匿名という事で相談をお受けしまして調査をしたところ、事実いじめではなくて施設長さんの不適切ないろいろな対応だったんですが、これが明らかになりましてこれは新聞にも載ったものです。

明らかになってますから申し上げますと、新聞沙汰にもなりましたし最終的には埼玉県として指導して施設長:理事も全部入れ替えるというような私が担当したものでありました。それは本当5年間の中で1件とか2件・3件それぐらいなんですね。ですから情報として入ってこないんですが、隠されたなかなか表面上出てこない問題としては普通の一般ご家庭だけではなくて施設内での子どもさんの安全を図っていくという事ももしかしたら課題かもしれませんね。調査専門委員いうのは電話相談委員がお話をたくさんした後に、電話相談だけでは解決が図れない「ひどいケースだから調査専門委員と面談してもっと詳しく話しますか」とか相談者のほうから「調査専門委員と会ってお話をして調査をして欲しい」という訴えがあった場合に初めて調査専門委員が登場します。

ほぼ電話相談員さんが入ってきた2000件くらいの相談を全部丁寧にアドバイスしたり、他の機関を紹介したり、話を聞くだけで安心したり、納得したりして終わっていくというわけです。ですので、調査専門委員が実際に動くのは年間で大体19件20件とか20件前後です、これまでの5年間見てきますと。

割合に直しますとここに書いてますように、2003年は1・9%、2004年0・9%、1%2%なんですね。

3人で大体年間20件やっているという事になります。埼玉県人口もかなりいますし、土地も広いですが今のところ3人で回せない数ではない。ただもっと活発に相談、非常に重要なケースが入ってきた場合では3人だけとか非常勤の者が大学の教員が週1回だけやってるという形ではもしかして追いつかなくなってくるかもしれない。

例えば1人だけでも常勤の方を置かないと、即応対処がとれないという事になるかもしれませんけど、今のところは一応こなせてるかなというふうに思っています。相談者から見たらこなせてないという事になると思いますけれども。

4番目にいきまして8ページの4というところをご覧いただきたいんですが、活動に於ける基本方針という事を記しておきました。これはなにか委員会としてこういうものを打ち出しているという事ではなくて、日本で例がありませんでしたので手探りの中で試行錯誤しながらみんなで話し合いながら進めてきたわけですけど、その5年間の中で振り返ってみますとこういうポイントで委員の先生方もお考えになって審議し、また調査専門委員もそれを受けて調整をしてきたんではないかというふうにいろんな立場からまとめたものです。

県が打ち出したものではありません。

それをご理解いただきたいと思います。

1つめは保護者が相談に来るという事が多いんですけど、特に面談になるレベルになりますと。

もちろんお母さん・お父さんとお話をしますが、始めにお父さんとお母さんが来た場合に「次回はお子さんと一緒に来てください」という事でお子さんもやっぱり来ていただきます。そして始めは親御さんと一緒にお話聞いていますが、ある段階になりましたら親御さんは他の部屋で待っていただいて、子どもさんとだけで面談をする。

そして子どもさん自身のニーズを何をして欲しいのか、どういう事で困っているのかと子どもの声をしっかり聴取するという事を中心においております。かなりちっちゃい子でも小学校低学年でもそういうふうにしています。

もちろん無理強いするんではなくて、子どもに聞いて「お父さんお母さん他のところで待っててもらってもいいか」というふうに聞いて「うん」と言えばやる。「いや」って言ったらやりませんけど、今までの経験ではちゃんとお話をすると「いやだ」って言った子はあんまりいなかったですね。親御さんもそれは困りますなんて言った人は一人もいなかった。

2番目はそうしますと大人の声も聴取出来ますし、子どもの声も聴取出来る。そうすると場合によっては親子で微妙に言ってる事が違うとか、また大きく違うという場合があります。学校の先生に聞きに行ってもそうですけど、その時にはどうするか。いろんな状況が来るわけですけど当事者の子どもからの情報とニーズというものを最優先にしようという事が2番目のポイントですね。

3番目これはBは非常に議論のあるところではないかと思います。

また後でご意見いただきたいなと思ってるんですけども、少なくとも私共がこれまでやってきた事を振り返りますと権利侵害を行っている方・学校の先生だけに限りません。

大人ですけども相談を受けた時の相手方になりますけど、例えば子ども会の指導者っていうのもいましたし、塾の先生でもいましたし、学校の先生もいたし、地域の方っていうのもいました。いろんな方がいましたけど、権利侵害行ってきた方に対して責任追求型の活動は、基本的にはしてこなかったんですね。徹底的に調査して徹底的にその方の責任を追求するという、警察:裁判所型の弁護士さんの活動的なやり方は結果としてとってきませんでした。どういうふうにやってきたかというと、スタンスとしては相談者の声を相手方にこちらが第三者として代弁して説明して、徹底的に時間をかけて説明してって理解を促進していくと。

そして相手方の態度や考え方、そういうものを変容させていくというふうなアプローチを原則としてきました。

もちろん非常に重いというか、そんな悠長な事を言っていられないケースの場合はもう少しきちっとした事をお願いするって事もありますが、基本は今言ったようなやり方です。

4番目はこちらが受けた相談者の声だけを伝えるのではなくて、条例上中立公平な立場でという事になってますので、相手方の声・学校の先生であったり他の大人であったり、その人たちも言いたい事があるわけです。その人たちも、親子さんに理解して欲しいって事があるわけなのでそれも承ってきて、今度はその声もこちらが相談者の方にフィードバックしていくと。そのやりとりを何回かする事によって意思疎通をはかっていく、そういう事を並行してやってきたという事になります。

こういった4つのポイントを守りながら、実際の活動をしてきたんではないかなと思います。県条例でこの機関が設置されてるわけですが、県の条例で出来ているというところのメリットは、やはり活動に当たっての条例上の根拠があるという事ですね。これ非常に強いと思います。

いろいろな部局に関わるところや、いろんな立場の方とお話する時に今日お邪魔してお話を聞いていただくこのお時間をいただいているのは、「埼玉県の条例でこういう事やってるんですよ」って言えば誰も反論出来ないわけですよね。ご協力を促すのに意味があるわけです。

2番目は地方自治体・公的な設置主体であると、そうしますと県が設置してますから県と市町村の関係でいうと、外国との外交みたいな形なんですよ。あくまで市町村も自治体です。県も自治体だけど市町村も自治体。だけども一応公的な機関で県条例が出来てるという事なんで、外交するにあたっても説明:協力は求めやすい。

私立の学校は、初め「私立の学校といろいろやっていくのは難しいかもしれないね」っていう事を関係者の間では言ってたんですが、蓋を開いてみましたら非常に私立の学校さんも関わったところに限っていいますと、非常に協力をしていただきまして、むしろ公立の学校よりもすごく良く理解していただいたところもあったりしまして、複数のケースで私立の学校さんとも関係を持っております。相談事例はあります。もっと具体的にどういうふうな相談活動をしているのかっていうのはそこに書いておきました。本当の具体例は書けませんので、あくまでこれまで主に私が関わってきたケースの特徴的な事例を合わせてかき混ぜて要素を出して構成してモデル的な事例を書き上げてみると、こういう3つのタイプに分けられるんじゃないかと。Aタイプ、Bタイプ、Cタイプと書きましたが。Aタイプは、エンパワーメント型アプローチというふうに書きました。

社会福祉の世界ではエンパワーメントという考え方が、現代の社会福祉の援助の一つの大きな理念になっておりますが、子どもさんの持っている力を引き出してあげるという事ですね、簡単に言うと。例えばいじめられて相談に来た子どもさんがいたとします。良くあるんですけども、「親にも言わないで学校の先生にも言わないで欲しい」って言うんです。普通に考えると、親にも言えなくて学校の先生にも言えなかったら解決できないんじゃないかっていう事になっちゃうんですが、そうではなくてまずはそういった希望をそれはそれで受け止めます。親にも言わないで欲しい、学校の先生にも言わないで欲しい。そういう場合どうするか、例えば「放課後に君の帰ってくる通学路の図書館のところで待ち合わせてお話を聞きましょうか」という事で聞きまして、いろいろ話を聞いてみるとどうやら幸いにも担任の先生が力がありそう。いじめ解決に力がありそうな先生だとわかった場合には、「今は先生に言いたくない」って電話口では言ってたわけですけど、「これは一人では解決出来ないから担任の先生に勇気出して相談してみたらどうか」と。こちらが考えるに「その先生は力になってくれると思うよ。だから帰って学校の先生に相談してみよう」というふうに勇気づけて帰すわけですね。そうしますとそれでうまくいく場合もあるわけです。特に男の子の場合が多いんですが、「男だから誰かに相談するのは恥ずかしい」とか意気地無しだっていう意識を男児の場合持つことが多いですね。「そういうことないんだよ」と、大人に助けを求めたら恥ずかしい事じゃないと必要な事だというような事もお話すると。これがまさにエンパワーメント型アプローチだと思います。

2番目は代弁型、これが一番多いわけですけどもさっき申し上げましたように、直接言うと大体喧嘩になってるんですね。親御さんが学校に怒鳴り込んでいって先生とやりあっても、どっちも感情的になりますからうまくいかない。そこをこちらが仲立ちをいたしまして、仲介者になりまして子どもさんの声:親御さんの声を代弁して伝えていくというのがBタイプです。Cタイプにいきましては、調停型アプローチと書きましたが、これは数は少ないんですが非常に葛藤が強くなっているとか、明確に謝罪をしないと絶対に後に引かないぞとか、訴訟も辞さないみたいになってる場合があるんですが、そういう場合で且つ協力が得られる場合ですけど、学校の先生と相談者と元々訴えてきている方と我々と三者でテーブルを持つとか。あと非常に数が少ないですが1件だけありましたが、いじめたと言われているお子さんも出てきてもらって、その事についてお話し合いをするとか。そういうふうな調停的なテーブルを設定するという形でやる場合もあります。

一番おおいのはBタイプという事になります。最後の9ページの6に関しましては後ほど皆さんのご意見も聞きながらお話出来る時間があると思います。今ここにポイントは4つあるんではないかという事だけをお話して一度終えておきたいんですけども、学校側のメリットという事を4点書きましたように、学校関係者でもないし、相談者側でもない、中立的な立場の第三者が入る事によって、学校さんにとってもメリットがあるんではないかと私は考えております。考えているというか実際にそういうものを見てきました。先生方も1回目に面接に行った時には、非常になんか胡散臭い人が来たというそうは言いませんけど、そう思ってるんだと思うんですよ。良くわからない、いちゃもんつけに来たんではないかという感じだと思います、内心的には。皆さん非常に協力的でにこやかに迎えていただけるんですけど、本音はたぶんそうじゃないかなと。ただ学校の先生も非常に困ってるんですよね。大体うちに電話が来る場合は、すごい親御さんと喧嘩してる状態で親御さんが学校と喧嘩したけどうまくいかないからうちに電話くれた、大体そうですから学校の先生も非常に困っているわけなんです。

そこで冷静にお話が進むように第三者が入るって事は、最終的には感謝される事が多いわけなんですね。

半分はなんというか社交辞令でおっしゃっているのかもしれませんが、でも僕半分は本音じゃないかなと思ってまして「本当に助かります」とか「困ってたんです」っていう声も聞こえてきますので、やっぱりそうなんだなというふうに思っています。

管理職の方にBの管理職による教員の指導に第三者の見解を活用出来る。これは読んだだけではたぶんわからないと思うんですね。ここだけ最後ご説明いたしますと、校長先生・教頭先生が「この先生のやり方はよくないんじゃないかな」と内心思ってても、なかなか面と向かっても言えないみたいですよね。これどの組織でもそうだと思います。学校だけって事じゃないと思います。そういった場合に例えば権利擁護委員会がこういう見解を出しているぞと、だからあなた考え直したらどうみいたいな事を言えるわけですよね。そういう活用の仕方をしていただけるんじゃないかと思っております。あともう少し学校のメリットにつきまして後ほどご説明したいと思います。

ここでいったん終わりたいと思います、ありがとうございました。

 

《半田さん》

どうもありがとうございました。

埼玉の事例という事で皆さんも詳細が分からず、質問したい事が多いかと思いますが、また後ほどゆっくりお話を聞かせていただければと思います。

それでは報告者としましては最後になりますが、福嶋先生の方から「本当の自由を経験しなければ本当の責任も学べない」というテーマで、我孫子の事例と権利教育についてお話を伺えればと思います。これは、子どもの権利や責任、自由、義務というところの考え方に繋がってくると思います。

よろしくお願いします。

 

《中央学院大学客員教授・前我孫子市長 福嶋浩彦さん》

福嶋です、よろしくお願いします。

1月まで我孫子市長をやっていましたが、一人の人間が長く市長や知事をやるのは良くないとずっと言ってきましたので、三期12年で卒業をさせてもらったところです。今、いくつかの大学や研究所に席を置いていろんな事をやっていますけれども、今日、皆さんとこうしてお話し出来る機会を持てた事を本当にうれしく思っております。

子どもの人権という時、子どもの健やかな成長をちゃんと保障していくという事がベースだと思うんですね。ずっとパネリストの方がお話されていたいろんな局面、いろんな場面でそれが危うくなっている。それに対して大人がしっかり取り組んでいく必要性があると思います。それを通しながらやっぱり大事なのが、子どもの自立した育ちをちゃんと応援していこうという事だと思うんですね。自立した育ちというのは、子ども自身が自分の目で見て、自分の肌で感じて、自分の頭で考えて、自分の責任で判断をして行動していく。そういう人に成長していくって事だと思うんですね。これを応援するっていうのはとっても難しいと思うんですよ。なんでかと言うと、大人が出来ていないからですよ、全然。全然って言うと極端かもしれません。ここにおられる方は大丈夫かもしれませんが、全体として見ればなかなか出来ていない。

私は仕事として行政に携わり自治体経営をやってきましたけど、その中だって市民の人たち全体としてみれば、本当に地域の事を自分で考えて自分の責任でっていうよりは、何か不都合があれば行政に要求する。うまくいかなければ行政の批判さえしていればいいっていう、行政依存の傾向はものすごく強くあります。それではその依存された行政は自分の頭で考えてるかっていうと、長い間自治体は自分の頭で考えて仕事をしてきませんでした。国の指示に頼り、前例に頼り、周辺自治体と同じようにやることをモットーとしてきたわけですよね。だから私は、県の方がいらっしゃるからちょっと言いづらいんですけど、国と県の指示には従わないこと―国と県の指示や考え方は頭の片隅に置いておけばいい、従わなくていい。それから前例は変えること―前例は変える為にある。それから周辺の他の自治体と違った事をやること。この3つを基本的な姿勢にして、市民の為に何が必要なのか、地域の為に何が必要なのか、自分の頭で考えて行動しようと言ってきました。少しは変わったと思いますが、十分だとは我孫子だって言えないと思います。

教育界だって、千葉県の障害者の権利条例がずいぶん議論になりましたけど、県議会はちょっと別にして、いろんな県内各界の中で一番だめな対応をしたのが教育界だったと私は思っているんですね。特に就学指導が大きな問題となりました。就学指導― 障害児が普通学校の普通学級行くのか、特別支援学級に行くのか、あるいは特別支援学校に行くのかというような就学指導をやる時に、本人あるいは就学指導ですから保護者・親の意向を尊重するというふうに条例が書いたら、教育界が大反発したんですね。たしかに障害者団体から追及されたりして、各教育委員会が苦労している場面も良く知っています。だから、障害者団体のほうももうちょっと冷静にちゃんと話すべきではないかと思うこともあります。

ただ、教育界が条例に対して何て言ったかというと、「自分たちは親と教育委員会でちゃんと話し合って決めてるのに、話し合う前から親の意向を尊重するって決めたら、ちゃんとした話し合いが出来なくなっちゃう、教育現場が混乱する」って言ったんです。たしかに一般の人同士がお互いに話をする時、話す前からどっちかを尊重するって決めてたら、ちゃんとした話し合いにはなりません。でも就学指導は、一般の人が1対1で話すんではないんですよね。入学を許可する側で権力を持った教育委員会と、その許可をお願いする市民の側が話をするわけですよね。だから市民の側― 親の側の意向を尊重するって決めて、初めて対等な関係が出来る、対等な話し合いが出来るはずです。

こんなのは基本だと思うんですが、全くそういう事は無視して議論されていた。そもそも普段は、本人の意思を大切にする教育と言ってたじゃないですか。親や本人の意思を尊重すると混乱するような教育現場だったら、その教育現場の在り方自体をまず考え直したほうがいいんじゃないかって私はいろんなところで言ってたんです。そういうふうに、人権を言葉では言っていても本当に自分のものにはしていない教育現場。でも教育現場だけではないという現状があると思うんですね。だから、本当に自立した子育てを応援していくっていう事は、大人達― 自分自身が変わっていくっていう事だと思うんですね。それ抜きにいろんな制度を作ったって、いろんな計画を作ったってしょうがないだろうと私は思っています。

そういう考えも踏まえて、2004年には我孫子市子ども総合計画を作ったんですね。

これは、まさに行政全体、市役所の全ての課が子どもの問題に取り組もう、それをまとめて総合計画にして子ども行政を確立していこうという計画でした。これに伴って「子ども課」を我孫子市でも作りました。この子ども課というのは、子どもの施策をここが一手にやるっていう課ではないんですね。つまり考え方として、子どもの施策は、保育課だったり教育委員会だったり保健センターだったりが一番やるけれども、こうした直接子どもに関係する課だけがやるんではなくて、道路の担当の課も、商業活性化を進める課も、公園を担当している課も、みんなで子ども施策をやろうということなんです。だから、子ども課が子ども施策をやるんじゃなくて、市の全部の課が子ども施策をやる。そのネットワーク役を子ども課が果たす、という位置づけで子ども課を作ったわけです。

11ページ、最後のページのメモをちょっと見ていただければと思いますが、計画の理念としては、「子ども達の人間としての尊厳を守り、地域社会の全ての人が力を合わせ、自立する子どもの育ちを支援する」という基本理念を掲げました。

出来るだけ子どもの視点を踏まえ、いろいろ大人の視点で押しつけないようにしようということで、「青少年の健全育成」という言葉は一切使わない、「青少年の健全育成」という言葉は追放するという前提で計画作りを始めました。ただし、本当に子どもの視点で作りましたっていうのは嘘なんですよ、大人が作るんですから。もちろん子どもの参加も求めましたよ。求めましたけど、結局最後に作るのは大人なんですから、子どもの視点で作りましたっていうような嘘はつかないほうがいい。けっして子どもに媚びを売るのではなく、ちゃんと大人としての真剣なメッセージを子どもに伝えようという事を、もう一つ確認して計画を作ったんですね。

実際の計画の内容としては、出来るだけ具体的な生活体験・社会体験・自然体験を子ども達に提供出来る地域にしていこう、という事を重視しました。そうした体験を通して、子ども達はいろんな事を感じ、自分で考え、自分で判断していくようになる。自分で責任を持って行動していくことを学べるだろうと思います。また、子どもの権利条約を踏まえて、我孫子市における子どもの権利に関する条例を作ること、それからその中に子どもの権利のオンブズパーソン制度も入れていけるように研究していく事を、子ども総合計画の中に位置づけています。

子どもの権利に関する条例の議論を実際に始めているわけですが、その前段として、自治基本条例−我孫子市という自治体の運営の基本を定める自治基本条例の中で、子どもの権利というものを意識しました。しかし、自治基本条例は残念ながら、昨年9月に提案し12月の議会で否決されてしまいました。だからまだ我孫子市では出来ていません。

そういうことなので、否決された条例をあまり説明するのもどうかなと思いますが、ただ重要な視点として入れたつもりなので紹介だけしておきますと、第6条に子どもの権利を明記しました。実は市民の権利というところに、高齢者の権利も、障害者の権利も、全ての市民の権利を一回全部入れているんですね。ですけど、あえて子どもの権利だけ抜き出して6条でもう一度、子どもの権利を定めたんです。というのは、やっぱりただ子どもの権利と言うだけだと、どうしても保護される―それも大切な事だけれども、保護される権利としてだけ理解されやすいと。

子どもが子どもとしてちゃんと地域社会に参加をしていく、一人の人間として自治体の構成員としての権利を持つという事をちゃんと謳うためには、市民の権利でまとめるだけでは不十分だろうと思い、子どもの権利を具体的に明記しようと考えました。子どもが年齢に応じて、発達に応じてちゃんとまちづくりに参加しますよという事を定めました。

そうすると、28条の住民投票条例―我孫子市市民投票条例という正式な名前ですが、これとの関係も出てきました。住民投票条例はすでに我孫子市では制定されているんですね。常設型の住民投票条例で、投票資格者は18歳以上、永住外国人も入ります。有権者より拡大をしているので、有権者という表現ではなくて有資格者―投票資格者なんですが、投票資格者の1/8の請求があれば、その問題で必ず住民投票をやります、という制度なんですね。

これ本題から外れますからあまり触れませんけど、確かに市民は選挙で市長や議員を選んでますけど、全部白紙委任したわけではないですよね。主権者である市民の意思が議会や市長の意思と食い違っていると市民が感じた時は― 感じた時でいいわけですね、実際に食い違っているかどうかは投票してみないとわからないですから、そう感じた時は投票によって主権者である市民全体の意思をきちっと示せるっていうのはとても大切な制度だと思います。

自治基本条例の中にあらためてこの住民投票条例を位置づけると同時に、今の我孫子市の住民投票条例では投票資格は18歳以上になっていますが、子どもの参加の権利を踏まえて、投票テーマによっては更に年齢を下げ、子どもに投票資格を認めるという条文を入れたんです。ただし、繰り返しますが、否決になりました。

我孫子市の自治基本条例案は、子どもの分野だけではなくあらゆる分野で、けっこう過激な条例案でしたので、いろんなところで大議論になりました。否決になった最大の理由は、議会の定数は市民の意見を聞くという手続きをとってから決めなければいけないっていう条文があったんですね。議会の定数を何人にするかというのは、自治の制度でもっとも基本的なものの一つです。それを定数条例として議会が決めるんですね。つまり議員が自分の身分について自分で決めるわけですから、必ず市民の意見を聞いてから決めなければならない、その手続きを義務化するという条例だったんですね。そこは議会が最後まで認めませんでしたし、私もその点は譲りませんでした。それで否決になったんですけど、子どもの条文もまとめて否決になってしまって、それはちょっと残念だったんですが、条例の子どものところでも、いろんな角度から議論になりました。

中には男女共同参画条例の反対からはじまって全県的にそういう運動をしておられる皆さんが、我孫子市にやってきていろいろビラをまかれました。そのビラには、この自治基本条例を制定させてしまうと必ず次は子どもの権利条例がやってくる― それは正しいんですがね、そういうつもりでやっているんですから。そうすると子どもの権利が認められ、「子どもが野獣化する」って書いてありました。ここまで言うと読んだ市民の人たちも、ちょっと普通の人のビラじゃないなって思うんで、かえって分かりやすくて良かったんですが、そこまでの極端な主張は別として、「今、子どもの権利を言う時代ですか」「子どもに教えるべきはまず義務なんじゃないですか」っていう意見はよく出てきます。つまり、権利や自由があふれて子どもがおかしくなり、社会がおかしくなっているのだから、まず子どもには義務や責任を教えないといけない。今の時代に子どもの権利を強調するような条例はおかしいっていうことです。こういう意見は割と市民の中に「そうだね」っていうふうに入っていく議論でもあります。

でも私はそうは思わないって言ったんですね。確かに大人の中には、要求する前にもうちょっと自分の責任を考えてくれないかなって言いたくなる人もいます、むしろ大人の世界では。でも子どもの世界を考えたら、子どもが本当に自分の考えで何かを選択して、それに基づき自分で行動する機会は、学校の中はもちろん地域でも家庭でもすごく少ないんじゃないでしょうか、そういう機会って。本当に自分の考えで選ぶ機会があって、本当に自分で選ぶ自由があって選んだ時に初めて、自分が選んで行動した事に責任を持つ、ということを学べるんじゃないですかね。全然自由を経験したことのない子ども達へ「責任」を言ったって、言葉だけが頭の中を通り過ぎるだけなんじゃないでしょうか。本当に自分の考えで自由に選ぶという、自分の権利を行使してこそ、初めて責任や義務を本当に子どもが実感としてわかるんではないのかなと思っています。

これ余分な話ですけど、どこもあまり静かな成人式って少ないと思うんですね。我孫子市は前から新成年が自主運営でやっていますから、そんなにむちゃくちゃにはならないんですよ。でもシーンとはしてないですよね、私語は結構ある。そうすると、その新成人が小学生、中学生だった時の先生方を招待してるんですが、その先生方は愕然とするわけですよ、新成人の姿を見て。

中学校の時まではシーンとしていた、先生の話を行儀良く聞いてた子ども達が、何年かたったらここまで退化するのかって嘆いて。中には一喝する先生もいますよ、子ども達に「静かにしろ」って。気持ちは分かりますが、中学校までの教育は良かったのに高校や大学の教育がダメだったからおかしくなったのかというと、本当にそうですか? 中学校時代、静かにするってことを単に強制されて静かにしてただけなんじゃないですか? 本当に人を大切にする、自分も大切にして欲しいという関係の中で、人がしゃべってる時には相手を尊重して静かに聞こうという態度が身についていたら、それが分かって静かにしていたのなら、成人式だって静かにするんじゃないですか。

単に強制や規則だけで行動させられていたから、怒る人も強制する規則もなくなって、フリーの場にいくと、全然人を尊重する態度ではなくて、懐かしい友達が横に居たらいつだって勝手にしゃべっちゃうっていう事じゃないんですか。だから、決して責任や義務は強制したり上から教えて身につくものではないんだろうと思うんです。自由や権利を本当の意味で行使した時に本当に学ぶ事が出来るんではないか。それをちゃんと踏まえないといけないだろうと思っています。

時間ですので、また後の議論の中でお話しさせていただきます。

 

《半田さん》

どうもありがとうございました。

僕を含め5名の方のお話が続きましたので、お疲れかと思います。最後に権利教育や権利・義務・責任というお話がありました。「千葉県社会において子どもの人権を守るために、今何が必要か」という事がテーマになっておりましたので、この子どもの人権はどのように普及していくのかというところは一つ視点として出てきたかと思います。これは権利教育やそういった意識というものをどのように啓発・普及していくかということが課題になります。

またそれを学校現場の中でどのようにしていくか、広く捉えれば教育の中・福祉の中・生活の場で権利や責任という問題についてどのように考えていくのか、というような事も挙がってきました。他にその人権侵害への予防をどのようにして、その為の相談・救済システムをどのように作っていくのかというようなところも議論に出てきたかと思います。さらにそこの中で子どもが意見表明をしたり、参加したり、また相談・救済システムを利用する中こういった意見表明権を確保するという事もあるのですが、それ以外の場合でも意見表明を確保しながらそれをそのまちづくりにどのように生かしていくのかという視点も見え隠れしていたのではないでしょうか。

そして子育ち支援とか子育て支援というようなお話もありました。これを子どもの人権保障という事、また子どもの権利にたった視点から考えた時に、その街の行政としてはどのような役割を果たしていかなければいけないか。さらに、行政の役割もそうですが、せっかく前市長さんが来られているので、政策を作っていく時に、子ども施策というところに限らないかもしれませんが、市長のリーダーシップがどのように入っていて、またその行政との関係はどんな感じなのか、行政の役割はどんなところなのか、というところも、僕の個人的なその興味・関心として、お伺いしていきたいなとも思います。

このような視点がいくつか見えてきましたが、実際にお話しを伺う中で質問をしたいというような事もあったと思います。皆さんとの議論を始める前に、質疑応答から始めていきたいなと思います。最初に質問事項をお出しいただいて、答えられるものはすぐお答えして休憩を挟んでその後ディスカッションに入っていけたらなと思います。

 

《会場から 質問事項》

◇今日はありがとうございました、「CAPぽけっと」という市民活動をしている荒木と申します。

実は質問とか感想とかたくさんありすぎて、どこを話そうかなと、でも独り占めしてはいけないなということもあって今悩んでいますが、私は学校などに行きまして子ども達に直接授業を行っています。子どものいじめだとか連れ去りだとか性暴力・虐待などを防止する為にそれこそエンパワーメントの理念の下に、子どもがそういう危機状態に陥りそうになった時に、子ども自身の力で何が出来るかという事を、子どもの考え方・意見などを取り入れながらしている授業なんですが、そんな中でトークタイムという時間があります。そのプログラムが終わった後に話したくなった子どもと話をする時間を設けているんですが、そこでまたまれに虐待の発見というものがあるわけですね。その虐待の発見を子どもが初めて打ち明けてくれたという事に遭遇する事があります。そしてそれをそのままには出来ないので、先程のちょうど埼玉県のと同じように子どもにこの問題は「子どもだけでは解決出来ないと思うから誰に相談した方がいいかな」という事で子どもの意見を聞きながらつなげていくんですね。必ず学校からその市町村の窓口に通告してもらう事をつなげていく、私達の役割をしています。

そこなんですが、現状の課題と市町村の役割の中に現状の課題:市町村職員の専門性と、半田先生の書いてくださったレジメの2ページのところに真ん中辺りに、市町村職員の専門性というのがあります。それから八千代市の母子保健課の方がお話してくださった冊子の方の資料の5ページのところにも今後の課題の(5)番に職員の資質の向上というのがあります。そこのところについてお話を皆さんのご意見を伺いたいなというふうに痛切に思っております。学校が市町村や児童相談所の方に通告してくださいというふうに私共で申し上げた時に、学校がまずこういう学校が多いですね。児相への不信感を持っている、過去にも通告した事があるけどうまくいかなかった、何もしてくれなかったという声を多く聞く事がまず一つあります。

もう一つは、学校の方が「ちょっと通告ためらう」っていう事になると、だったら私の方からさせていただきますねっていう事で市町村の窓口に私の方が出向きましてお話させていただく事があるんですが、私は県内いろんな市に参りますので市によってずいぶん(こういう言い方はあまり良くないですかね)職員の専門性に差があります。ある地域などはかなり重い虐待の事を私共の方でお話させていただいても、「調査をする為に学校に出向く事は?」って拒否をされるくらいなそういう窓口もあった事は確かなんですね。それなので専門性って何だろうというところをどう捉えてるのかっていうところが一つあります。

私が今思っている事は、専門性の事について2つあるだろうと。

1つは基礎的な知識をしっかり持っている方々に窓口に立っていていただきたいという事、2つ目は実は基礎的な知識は十分にある児相などの例はいい事で、実は学校はそうやって不信感をもたれているけれども私が児相の方とお話させていただくととても良くやってくださっています。でもそれが学校に繋がっていかない。その信頼の回復ってなかなか重要じゃないかなと思っているので、基礎的な知識とか専門性を本当は持っているのにでもコミュニケーション能力というのかな、専門職の方々がそういったものを持つべきかなと。その専門性2つあるかなと思うんですが、それについてどのように捉えてどんなふうに課題として具体的な対策を考えられているのかなっていうのを特に岡田さんに聞きたいなと思っています。

 

◇質問のみにします。

私も「岡田(子ども劇場千葉県センター)」と申しますが、岡田さんに質問で聞き漏らしたのかもしれないんですけど、今後千葉県の人権宣言を策定の予定とありまして、これはどのような進捗の予定でどういう母体の元に計画なさっているか。実は子どもの権利参画の研究会でやらせていただいて、ずっと並行している事だと思いますので知りたいと思いました。

 

◇中谷先生にお聞きします。

権利擁護委員会ということなんですけど、浦安に住んでいる細井と申します。

浦安市にも権利擁護委員という方がいらっしゃるんですけど、その方との違いを教えていただきたいという事ですね。今まで扱った事例の中に、問題いろいろありますけど、裁判にまでなった事例といういのがありますかという事、出来たら差し障りのない程度でお話していただきたい。その時に子どもが被害にあった時に精神的な苦痛とか受けた場合には、そのフォローを学校に通ってる時にはどのように学校とどのように話をもってかれるかという事ですね。

 

◇千葉市の高村と申します。質問2点です。

八千代市の石橋様、障害のお子さんが赤ちゃんの場合ですけど、いろいろな遊びの交流の広場とか赤ちゃんの広場とかやってらっしゃるようですけど、障害のあるお子さんについても参加を断られたり、利用を制限されたりするって事はないかどうかという事をまず聞きたいと思ってるんです。というのは八千代市さんの方では保育所に障害のあるお子さんの場合は健常児と同じ時間に預けられなくて早く帰されているというような、そういう話も聞きますので、その辺のところどうなのかという事を教えていただきたいと思います。

それからもう1点は中谷先生、千葉でも教育の第三者機関を作るという事について検討を始めるという動きが出ております。

その時にやはり障害のある子どもについてなんですが、現実に養護学校に行くべきという子どもについて普通学級に入りたいって親が希望した時は親が付き添いなさい、特学に希望した場合も親が付き添いなさいのような事がありますけど、それは法律との関係で例えば学校教育法施行令との関係でそっちを優先してしまうのか、人権という事でそれを大事にしてくださるのかという事を教えてください。

 

◇佐藤と言います。八千代市で母子保健をしていたり、CAPぽけっとで活動をしています。

石橋さんに、もう少し詳しく言ったらいいなって、私も一緒に活動しているので思うんですが、いろんな施策を形にしていく時に、保健師さん達はとても家庭訪問とかしていく中だったり、赤ちゃん広場の集いの中でたくさんのおかあさん達の声だったり、そこで育児している子どもの何が必要かというものをたくさん感じ取って、それをどんなものがあったらいいねっていう事を形にしていく時の声をたくさん集めてくださったと思うんですね。それを、何をしていこうかという時に上から机の上で議論していく話ではなくて、そこから現場に行った実際のお母さん達本人やお子さんの声を引き上げて、それを形にしていったっていう話をもう少しピーアールして取り入れてちょっと説明増やして欲しいなと思います。決して計画とかいろんな中で起きた事ではなくて実際の顔が見えるところでの対象の方の意見を取り入れたというような形で子育て支援のところがとても形になっていってるなっていうふうに思っているのでそこももう少し教えてください。

それから福嶋さんにお聞きしたいんですけど、福嶋さんのお話はいつも元気がいただけるお話をいつも聞かせていただいてありがとうございます。権利・義務という話がありますが、子どもの権利条約というところの元にユニセフが目指して提言している子どもにやさしいまちという事での中で、地方自治体のモデルという事を下ろしてくださってると思いますが、そことの絡みでもう少し自治体で本来どういう事に取り組んでいくのがいいのかって事ですね。子どもが親の所有物でもないし、国の生産物でもないし、完成されていない人間でもないという事でそういうような事を少し絡めて教えていただきたいと思います。

 

〜休憩〜

 

《質問事項への応答》

《半田さん》

これから1時間くらいディスカッションの時間がとれると思いますので、よろしくお願いします。

まず「CAPぽけっとの荒木さん」からの質問がありました。市町村職員また併せて県の職員もそうだと思うのですが、職員の専門性というものをどのように捉えたらいいかという事と、それぞれの資質向上の為に研修も含めてどのようになっているのかという事について、荒木さんのほうからは基礎的な知識があるという事とコミュニケーション能力もというお話が出ました。まず岡田さんの方に質問がありましたのでよろしくお願いします。

 

《岡田さん》

地方自治体の経営について御見識のある福嶋先生のご発言があって非常に答えづらいところもありますが、ちょっと前置きになりますが此れまでの県の立場で申し上げますと、国の機関事務でありますとか一時的な受け皿という形で県が今までいろんな事をやったわけでございますけど、今はもう地方分権の時代でございますから、国の指示に全て従って物事を決めると言うようなところはございません。ただ福嶋先生から各市町村の首長さんっていうのは自治体の経営者という発言がありましたがそれぞれの各市町村でどういったところにウエイトを置くのか、ポイントとするのかというところで経営者としての自治体の進め方がございます。そうした中で、例えば県ですと児童福祉については必須規則みたいなものがございまして、専門職員を置くようになってますけれども、市町村では首長さんの自治体経営の考え方により例えば農林水産業等産業振興に重きを置くところなど、社会福祉等の専門職の確保まで手が届かない実情があると認識しています。

このような状況の中で県はどうするということで例として話すと、昨年各自治体における人権施策の実施状況の調査をやらしてもらいましたが、比較的千葉・東葛方面についてはたくさんの人権施策に取り組んでおりますけれど、南の地域のほうはともするとちょっと少ないというような状況にございます。そこで県としての対応ですが、私共は広域的な自治体でございますので特に人権問題に関してはあまり市町村間でバラツキがあっては望ましくないと思っており、そうした中で総合調整であるとか市町村のコーディネートの役が私共の役割ではないかなと思っております。

また具体的には市町村の課長さん方を集めて、意志形成の向上を図る課長会議とか、毎年9月頃に人権擁護に関わる指導者の養成講座というのを5日間連続でやっております。対象者は企業の方々とか自治体の方々、地域で活躍している方が集まっていただいていますが、こういったものを通じて市町村さんの職員の方々の窓口レベルの質を上げてもらうというふうな事も実施しています。更に身近では松戸市さんが人権に極めて熱心でございまして、各部局に人権の責任者を置いて市の中で仕事を進めておるという事で、松戸市が座長になって26ほどの市町村の職員の方々が人権の研究会を作っておりておりますけど、県としてみれば56ほどの市町村が県内にありますのですべからく参画していただいて、庁内的に資質向上を図るよう促しているところです。

 

《半田さん》

市町村の立場から福嶋先生お願いします。

 

《福嶋さん》

今言われたように市町村によってどこに重点を置くのか、どういう姿勢で取り組むのかで全く違ってくるんですね。それは市町村の首長の姿勢でもあり、また市民全体の世論でもあると思うんです。我孫子市は東葛地域あるいは全県で見ても、児童虐待の通報件数はものすごくダントツで多いと思いますよ。それは別に我孫子市民が特別に虐待しているってわけじゃないですよ。市の通報・相談体制を徹底して整えましたから、その結果がそういう数字に出てると思うんですね。

実は我孫子市も児童虐待で幼児が一人亡くなったんです、何年か前ですけど。同じ時期に東葛地域のもっと大きな市でも亡くなりました。我孫子市はその時に児童相談所の対応に大きな問題を感じた。児相の一人ひとりの職員は一生懸命やっておられるわけですが、どうしてもあの体制だと無理です。だから県の児童相談所の権限を我孫子市に委譲して欲しいと、我孫子市も児相と同じ権限で対応出来るようにして欲しいっていう要望を出したんですね。でも、もう一つの大きな市は、当時はまだ法改正の前でしたから、児童虐待は県と警察の問題で市の担当ではありませんって言ったんです。

やっぱりそれぞれの市の姿勢をきちっとさせないといけないだろうと思うんですよ。国を簡単に私達が変えるということは出来ないですし、県も県民からすると、何か本当に県民が動いて県を変えようたってそう簡単にいかないし、県民が県を動かすということになかなかリアリティーを持てないと思うんですね。でも、市町村は本当に市民が動けば変えられると思います。市民が市を変えていく、市役所を変えていくという事がとても大切だと思いますね。

専門性という事で言えば、確かに我孫子市も大きな市じゃありませんからいろいろ苦労しています。児童虐待担当は専門家を集めていますけども、なかなか専任とはいかなくて、非常勤の専門家をズラッと揃えてるっていう体制なんですよね。それでもものすごく一生懸命やってもらっていますから、それなりには機能していると思うんですが、専門性を確保する時に一つは市民や民間との連携っていうのがとても大切だと思っています。

例えば児童虐待の分野ではないんですが、ママパパ教室―赤ちゃんが出来たお母さんお父さんに向けた出産と育児の教室を保健センターの保健師がずっとやってたんですね。だけど我孫子市は提案型公共サービス民営化制度というのを始めまして、助産師さんの会にお願いすることにしました。今まで市が民間委託に出すとか指定管理者に出すっていうと、市の行政の都合で― 行政側の都合でというのはほとんどコスト削減でしたが、そういう行政側の都合で行政側が出したいものを民間に出しているわけですよね。提案型公共サービス民営化制度はそうではなくて、民間から見て「この仕事は市民の為に私達のほうが市役所よりずっといいサービスが出来るので是非やりたい」と、民間のほうからやりたいものを提案してもらって検討しよう。行政が出したいものではなくて民間がやりたいものをちゃんと検討しようという制度です。その中で、地域の助産師さんの会が、「出産・育児の教室の全部、企画から実行まで私達がやります」っていう提案を出してくれて、もう今年からやってもらってるんですよ。

今までも結構いい教室をやってきたと思っていますが、やっぱりずっと良くなりました。保健センターの保健師も専門家なんですが、出産・育児っていう事になると助産師さんの方がはるかに臨床経験を持っているし、スペシャリストなんですね。下手すると産婦人科の医師よりも助産師さんのほうが出産を丸ごと全部抱えていますから、一番のスペシャリストって言えるんですよね。後で話を聞くと、元々助産師さんの会は我孫子市のママパパ教室を見て、昔から自分たちがやったらずっといい教室にするのになあって思ってたらしんですよ。そんなところに我孫子市が提案型制度を作りましたので、これは願ってもない制度だということで、いの一番で提案してくれたんです。

そういう専門家をちゃんと全部市の職員で抱えるっていうのは限界があって、民間・市民と連携していくというのが有効な方法だと思いますね。

 

《半田さん》

ありがとうございます。

確かに東京成徳大学と八千代市が連携しながら、「おにいさん・おねえさん子ども電話相談」という事業をやっているのですが、そこにおける学生相談員の研修にも助産師さんに来ていただいて性に関する教育を丁寧に詳しくやっていただいて我々はいつも感銘しております。このような機会ですので、八千代市子ども部の職員として研修体制はどのようになっているのかという事をお聴かせいただけないでしょうか。

 

《石橋さん》

研修体制というかお金がない中なので子ども部内でそれぞれの課のお金を持ち寄って有効に活用しようとしています。民間保育園の職員の方とかもお呼びしたり、次世代育成支援行動計画策定委員とか人権ネットワークの市民の方々もお呼びしています。中身についてなんですが、今言われたような、専門職としての能力みたいなところを上げる事が一つ、あとコミュニケーション能力って言いましたけど、仕事としての能力に言い換えれば、例えばそれはよく言われるファシリテーター役とか企画調整能力みたいなことかと思うのですが、それは本当に自治体職員にとって、必要かなというふうに思ってます。

やっぱり今残されている課題は、多機関が問題解決に関わっていかなければ解決しないような問題が多いです。例えば食育なんかも農政とか保健とか教育分野でどこがやるのと思うようなことです。いろんな部署をまたいでいるような課題をですね。やっぱりコーディネートしていくような能力が必要です。だからそういう意味では、コミュニケーション能力を持った職員がきちんと企画調整し、ファシリテートしていく、それはとても大事な事で、それはどこの部門にいってもそうなのかなって思います。あとはこの間思春期の性教育の先進自治体を視察したから余計思うのですが、やっぱり‘やる気’が大事ですね。そのやる気ってどこから出てくるのかなと思うと、やっぱり物事の仕組みがわかるというか、例えばこれは行政がやる必要のある仕事であるというようなことが、自分の中にストンと落ちているというのかな?そういうことがよくわからないとやっぱり主体的には出来ないですから、そんな物事の本質をみる力も必要かと思います。あらためて問われると本当にたくさんの必要な能力がありますね。まとめますと、先ほどのご発言のところは、私もすごく大事な能力と思っております。

 

《半田さん》

ありがとうございます。

私も八千代市の子ども部の研修に参加させていただいております。そこでは子どもの人権と子ども施策の関係というようなお話をさせていただいています。しかし、私のアプローチだと理念的な話になってしまうのでそれをどう実践と結びつけていくのかが問われるのではないでしょうか。今後どのようにそれぞれの自治体の研修システムを作っていくかは大きな課題となります。先程お話に出ましたファシリテーター(子どもの権利ファシリテーター)を育成し子どもの参加をどのように促していくのかという事で、ファシリテーター養成講座を積極的に開いている自治体もありますので、そういったところといろいろ情報を交流していければと思います。

次に千葉県の人権宣言がどうなっていくのかというお話がありましたが、進捗状況と母体がどのようになっているのかという事について、岡田さんよろしくお願いします。

 

《岡田さん》

大まかなタイムスケジュールをお話しますと、今他県の実施例でございますとか現状分析を事務方で行なっています。そして此の作業が終了次第おおまかな骨子骨格を固めることとなると思います。その後まだはっきり決まっておりませんけど、県民からの意見公募などの手順を踏みまして本年12月の中旬頃、先程申し上げました世界人権宣言の60周年記念という時期に合わせて、この時期に発表したいと思っております。

なお宣言につきましては、今回初めて県としての人権擁護にかかる強い意思表示でございますとか、決意を県民の皆様に表明して改めて人権啓発推進の契機とするものです。

また宣言の内容につきまして、児童家庭課がやってます「子どもの権利・参画のための研究会」との関連では内容の摺り合わせとかタイムスケジュールの調整というものは特にしておりません。申し上げましたように人権宣言は人権全体に係る意思表示・決意表明でございますので、大きな括りの中で別途に検討がなされています。

進め方については具体的な取りまとめを先ほど申し上げました千葉県人権施策推進委員会の学識・実際の当事者を含めた10名の先生方が行なっています。それぞれ身体とか知的障害、犯罪の関係、女性の関係、外国人の関係の有識者で、先程も言いましたが米田先生も子どもの人権の立場でお入りいただいているところです。なお宣言案策定にかかっては私共行政側が具体的なものをお示しするものではなくて、まさに知事が言っていますように健康福祉千葉方式という事でこの中で私共が何かを提示するのではなくて各分野の当事者の話を委員が聞きながら委員の意見を集約して人権宣言文を策定するというような格好で進めておるところでございます。

 

《半田さん》

来年は、1948年の世界人権宣言60周年記念という事で、千葉県も人権条例、もとい、人権宣言をと、今条例とふと言ってしまったのですけども、条例と宣言とはどのように違うのかとか、そういった法的拘束力の問題についてもまたおさえておかなければなりません。宣言というのは国際法的には法的拘束力がなく、1966年に出来た国際人権規約は法的拘束力があります。子どもに関しても1959年に出ている子どもの権利宣言は法的拘束力がなく、1989年の子どもの権利条約は法的拘束力をもってきます。先程お話がありましたように、それぞれの自治体において、子どもに関しても条例で作っているところと宣言で作っているところなど、また宣言とか条例ではなくそれぞれの規則や要綱設置というところもありますので、それぞれの自治体の特徴に応じながらどのような物を作っていくのか、という事にも我々は注目していく必要があると思いました。

次に中谷先生の質問で、浦安の細井さんから、浦安にも権利擁護委員があるというお話ですが、子どもの人権専門委員という事ですか。それとも人権擁護委員というシステムなのでしょうか。

 

《質問者・細井さん》

よくわからなくてお聞きしたんですけども。名前からすると私素人なので同じかなという感じがしたんですね。ただ問題が発生した場合に、人権擁護委員っていう事であるならば、相談に行って話に乗ってどのように対処してくれるのかなと、普通そこまで考えるんですけどでも、ちょっと違うような感じがしたものでその辺をお聞きしたい。

 

《半田さん》

私のほうから最初に簡単に人権擁護委員という制度をお話させていただきますが、法務省には人権擁護局がありまして、そこは、国民の基本的人権を擁護する為に人権侵犯事件の調査や処理とか人権相談など行っているところです。地方の実施機関としましては法務局に人権擁護部というのがあって地方法務局に人権擁護課が置かれております。全国の市区町村には法務大臣から委嘱された民間の人権擁護委員という先生方がおりまして、それぞれ市町村の地域住民の中から人格見識に優れ人権擁護に理解のある人を市町村が推薦し、それを法務大臣が委嘱するという民間のボランティアです。現在1万4000名ほどが各市町村に配置されております。

子どもの人権擁護の為には1994年の子どもの権利条約を批准した時、人権擁護委員の中から子どもの人権専門委員が選任されております。

子どもの人権専門委員というのは1994年当時、子どもの人権オンブズマンという愛称で法務省が積極的に広報を始め、当初のポスターには子どもの人権オンブズマンと書いてあったのですが、国連の勧告などを受けて人権オンブズマンとしては独立性の問題などオンブズマンという名称を使うのは問題ではないかという指摘を受けるなどして、その後は子どもの人権オンブズマンという愛称を使用しなくなりました。そして子どもの人権相談委員は、今年の2月から24時間の電話相談(子どもの人権110番)というシステムを作りまして、子ども専用の相談窓口を設置しております。相談は子どもの人権専門委員が受けたり、全国の法務局の人権擁護事務担当職員が電話に出ております。先程少しお話しましたが、同時に今年の2月からSOSミニレターというものを全国の小中学校を通じて1100万部配布し、子どもがミニレターに書いてポストに投函すると、人権擁護委員の方がそれについてのコメントを書いて子どもに返信していただくというような事業が、文部科学省の2月の電話相談と同時期に展開しました。この時期にいじめへの自死に対しての強化策という事でインターネットで受ける人権相談事業も法務省で開催されました。基本的に、子どもの人権専門委員は民間のボランティアの方で退職した校長先生がやられていたり、地域の中で人権活動を一生懸命やってくださっている人がおられます。例えば八千代市の子ども人権ネットワークの会長は、校長を退職され子どもの人権専門委員として活動されています。

よって、そことの関連でいうと、ボランティアのところと第三者機関である埼玉県の子どもの権利擁護委員とはかなり違う性質のもので、それ以降の詳しい説明は中谷先生のほうからお願いします。

 

《中谷さん》

非常に詳しいご説明いただきまして私二言三言で終わらそうと思ってたものですから、私も勉強になりました。

今ご説明いただいた通りなんですね。民生委員さんの法務版というか権利擁護版みたいな感じなんですので、本来やるべき仕事っていうか、もしかしたら動き方はせーのでやったら同じ事をやる事になるかもしれませんけど、今までのところ一緒に連携しあったという事例は埼玉県ではないです。たぶん一生懸命やってる方はすごい一生懸命やってると思うんですよ。組織としては委員会があって会議があってそこでみんなで合議ではなくて、一人ひとりが活動なさるというのが地域に密着した理念でしょうから一人でやるというのは結構大変かなという気がありまして、私もなんとか5年間やってこれたのは委員の先生からのアドバイスとかみんなでどうしようかと考えてみたり、という事でバックアップを受けて学校に出かけていったりするわけなんですね。

だからそのあたりもちろん人権擁護委員さん達の間でもチームを組んでやるっているのはあると思うんですけど、その仕組みが違うと思うんです体制が。それからあくまでボランティアであるという事ですので、私が関わっているケースでも一番多いのは今記録更新してるんですが学校とのやりとりが7回に及んだというのがあるんですね。それを埼玉県の端から端へ行ったとしたらすごいお金かかっちゃうわけですよね。それでボランティアで活動費も委員さんの方で出てると聞いた事ありますけど、それだけ時間と交通費というのをボランティアさんという立場でお願いしていいのかというところも出てくると思うんですね。そのあたりの体制の違いってあると思います。

それからもう一つ大きなのは先程先生からあったように校長先生の退職されてなっている方っていうのはまあまあいらっしゃるんですね。元校長さんが出来ない事じゃないけど中立性とかっていう事でいくとどうかっていうところがたぶんオンブズマンって書けないんじゃないのっていうところではないかなと思います。私何人か存じ上げてますけど非常に精力的におやりになってる方もいますから、人によるという事になると思いますがそういう仕組みの違いですよね。私個人的な見解といたしましては、いろんな方が地域にいらっしゃればいいと思ってます。法務局の人権擁護委員さんに相談してうまくいくケースもあるし、そっちの方でやったほうがいいのもあるでしょうし、埼玉県の場合には権利擁護委員会とかいうようにメニューがいくつかあって、県民の方がそれを選んでいただければいいと思うんですね。そういうふうに考えております。

ほかの自治体の話でいうと例えば去年すごくいじめ問題がニュースで取り上げられて自殺までしちゃったケースでは人権擁護委員さんが調査をして調査結果というものを出してましたよね。ちゃんと改善命令というか勧告というのを出せるというふうになっておりますから、そういうふうな仕組みが似ているところもあれば違うところもあるという事だと。

 

《質問者・細井さん》

市民にとってどういうふうに使い勝手が悪いというか、変な言い方してごめんなさい。次の質問で裁判になったようなケースがございますか、とお聞きしたと思うんですけど、そういうふうになった時にも話を聞いて、ここなら人権擁護委員がアドバイスが出来ますでしょうとかそういうところに入ってくださるとすごくありがたいなと思うんですけど、なんとか委員なんとか委員がいっぱいあってもその辺が、上の方からはわかるでしょうけど、私達使う側としてはみんな一緒なんですよ。ただここは違いますよとか割り振られている。福嶋さんがおっしゃったように全体で取り組むっていう部分がなくてたらい回しなのかなって、ちょっと不信感があるんですね。

 

《中谷さん》

縦割り的なところありますけど、埼玉県は権利擁護委員会があるから並立してしまいますが他のところないところは人権問題についての救済は人権擁護委員さんだとおもうんですよ。広報の問題だと思うんですね、今おっしゃられたようにきちっと複数であるならば我が県ではどういうふうな役割分担になってるかだとか、どういうふうな窓口なのか、どう使っていただくのかとうのはきちっと県と法務局の方で連携して広報するべき問題だと思いますよね。次のご質問裁判になった事例があるかという事で、今のところ把握している限りこの5年間で調査専門委員が出張っていくケースで、我々が関わった後に裁判になったのはこの先どうかわかりませんが今まではありませんでした。裁判じゃないですが1件あったのは、それぞれの県の弁護士会ってありますよね。そこでいろんな権利侵害があった時に弁護士会として審議して弁護士会なりの見解を社会に出していくっていう仕組みがあるんです、弁護士会で。それにのっけて弁護士会が一定の見解を出した後に1年くらいしてからですかね、私共のサービスがスタートいたしましたんでこっちに相談が来たという事はあります。

同じ方の3つめの質問の精神的なケアってどうしているのかというところなんですが、ここは私はいつもやっていて非常に悩むというかもっときちっとやりたいなと思っているところなんですが、権利擁護委員会の目的としましては条文をみてもそうなんですが権利侵害の救済機関であるという事で、言葉変えると危機介入であり何か起きてる時の救済を目的として設立されてるわけですね。その後のケアだとか継続的なフォローと致しましては、設置上機関的な限界があると思っています。だから切り捨てるという話ではなくて、ある程度状況が改善されたとしても、じゃ2学期中だけもうちょっと定期的にお話聞きましょうとか、この学年が変わるまでは見ていきましょうかという形でアフターフォローみたいな時間は設定しています。もうこのいじめなくなったからってこの先生の行いが終わったからって「はい、おしまい」というふうにはしていないんですね。その後の時間を置いてます。その時間を置いた中でどのくらい精神的なケアに繋がるサポート出来てるかっていうと、私共は私も含めその精神的なケアについての専門家が必ずしも配置されてるわけではありませんので、もちろんお話を聞く中で勇気づけていったりって事ありますけど、専門的な意味での精神的ケアというところでいけば機関上の限界があるかなって思ってます。

具体的に実際にやってく場面でいえば学校の中学校だったら相談員さん埼玉県の名称で言うとさわやか相談員さんという事になります。

そこは心理を勉強した方をなるべく配置されるという事になってると思いますから、学校と連携という事でいえば相談室のほうでそのあとの手当をしてもらうとか。前扱った事例では、ある権利侵害事例が発生してそれを改善してもらった上で「この子ども達は心に傷を負ってるはずだから教育委員会としてアフターケアをしてくださいと」いう事を言って終わった事例がございます。ただ我々の役目としてはそこまでなんですよ、基本的には。

お願いする、何が問題で、何が必要かという事を提案してあとはそれぞれの責任ある部署がきちっとやってもらうという事になると思うんですね。だからその境目のところでちょっと試み的にやってみたのがありまして、これ不登校の事例よく相談入ってきます。学校でちょっといろいろいじめがあったり、先生のやり方が悪くて結果として不登校になっちゃった。「もう1回復帰したいんですけどそのあたりのいきなりクラスに連れていっちゃうとか、なかなか子どもの気持ちを学校の先生は理解してくれないので困ってます」という事の相談結構多いんですね。ある事例ではそれは先生にどういう気持なのかをお伝えして配慮するべき点をお伝えしたんですけど、なかなか学校に再開出来ませんでした。

不適応の児童の指導教室には通ってもいいかなとその子も言ったんで通ってみたらって言ったんですが、そこのお家の事情でなかなか送り迎えが出来ない。送り迎えしてくださいって言われちゃうんですよ。だけどそんな共働きだったら出来ないじゃないですか。それで永らく不登校状態になっていたので、どこかに行く癖をつけないと本当に不登校というか引きこもりになっちゃいますので、ちょっとはみ出しだったんですがそこに行くバスに一緒に乗ってそこまで行くっていうのをやった事があります。結果そのバス停ではその子降りれなかったんですけど、やっぱり。それでグルッとまわって帰ってきたんですけど。そういうふうな事もやってはみましたけど、「これやりたいんですけど」って委員さんに言ったらやりすぎっていうか本来の機関の趣旨からいうとはみ出てるという事をはっきり言われまして、まあそうなんだろうと思います。ただ出来る範囲の中でやってます。その時はその他の相談があまりなかったので、私の時間のある範囲で行いましたけど難しいのは複数体制をとってまして、どういう事かというと調査専門員と県の職員さんと2人セットで必ず行動するようにしています。というのは後で言ったとか言わないとかという事になる、今までそんな事ありませんがそういう危険性もあるので2人でやると。そういう半ば私が自発的またはボランティア的な動きをした事に県の職員さんをつきあわせなきゃいけないんですよ。

県の職員会からいったらそれは業務外的な動きになってしまいますんで、あと時間外についてもそうですね。

夜にしか会えない親御さんとか、大丈夫だっていう時に一人で訪問した事ありますけど今振り返ってみると危ないといえば危ないなっていうのがありまして、そういう夜間の訪問とかに関してもかなり注意をはらってやってるんですけどね。そのあたりが県が設置してるってところの限界があります。

これが完全な民間の方だったら夜中の12時でもなんでもお会いすればいいんでしょうけど、そういういろんな制約がある中でなるだけ利用者の方のニーズに合うような形でやっておりますけど。一応一人目の方の3つの質問についてはこれでお答えさせていただいてたんですけど。

 

《半田さん》

法務省で人権擁護委員制度があったり、福祉の領域だと民生委員法に基づいて民生委員制度があったり、児童福祉法におきまして民生委員と児童委員を兼ねるというような条文があって、その児童委員の中から主任児童委員を選ぶというような文言があります。それぞれの地域の中でボランティア的に活動を行われているところと、他に教育委員会の相談部局として教育センターのようなところがあったり、最近は児童虐待との絡みで市町村に子ども総合窓口を置いたり、それぞれの地域によって相談・救済システムというのは違うのですね。

埼玉県の場合は、教育委員会ではなくて市長部局に完全に独立した相談・救済機能としておかれている公的第三者機関で、条例上に基づきながらの個別救済をしたり、その中でさらに問題があれば意見表明をしたり、勧告をしたり、制度改善を要請したり、制度提言していきます。そうした意味において公的第三者制度が今とても注目されていて、埼玉県の中には全国に先駆け、そういった第三者機関があるのですね。

他の自治体では、例えば川西市においては子ども人権オンブズパーソン制度があったり、川崎市にも人権オンブズパーソン制度あったり、全国でこのような制度は10程度くらいしかありません。そういった公的第三者機関はまだ設置途上の状況ですね。

千葉県にも置かれていないのですが、先日この実行委員会の会議でお話があったところによると、次世代育成支援施策に関わる事業関係で、千葉県子どもと親のサポートセンター内の千葉県子どもと親のサポートセンター協議会で、将来において子ども教育における第三者機関の設置を事業化していく検討がなされているという話を伺いました。千葉県の中でも少しずつそういう話題が出ていますし、先程福嶋さんからのお話の中でも子どものオンブズパーソン制度を作っていく計画があったというような話が出ておりました。相談・救済システムというのはそれぞれの自治体に応じて違いますから、多チャンネル化されているところが良いというように捉えることもできるのですが、それぞれにおけるメリット・デメリットもあるのではないでしょうか。

次に障害のある子どもの参加とかそのような状況を八千代市の今の支援システムにおいてどのようになっているかというご質問がありましたが石橋さんよろしくお願いいたします。

 

《石橋さん》

今、去年まで保育園の課長職だった園長先生がいたので確認してきたんですけど、日中の保育に関しては加配もされてるし普通にもちろんやっているんですけど、5時以降にそういう事が過去にあったという事は事実ですという事でした。でも今は改善されてきていると思いますというふうなお話でした。

佐藤さんのほうから、もうちょっと住民が参加している様子とかを伝えたらという事で、お話しさせていただきます。私は子どもの人権の専門家ではないので、本当はこういう場で話すのは正直多少の戸惑いがあります。しかし、逆に私のしている仕事を子どもの人権の観点で捉えるとどうなんだろうという学習はでき、まとめる作業が非常に勉強にはなりました。その結果、そう外れていないといいますか、かなり関係のある仕事をしていると思います。しかし、本当は、計画策定や推進等をどう市民の方との協働で実施していくか、そういうことの方が、話せるかなとは思います。次世代育成支援行動計画は事務局には入っていましたが、自分が主たる企画者ではなかったため、自分のところの八千代市版の健康増進計画の策定時のお話しをします。策定の時に今日一緒に策定に関わってくれた市民の方もいますけれども、その市民委員さん達と「どういう街だったら八千代の子ども達が生き生きしてるかな」という目標部分を、具体的な場面設定をして一番始めにおいて、その為にはどんな事ができるのかなという事を模造紙に9枚くらい書いて本当にしっかり作っていきました。

そういうプロセスを踏む事によって、委員さんから「計画は計画で終わってはいけない。具体的なアクションにつなげよう」と、委員さんが言ってくれて、計画策定中から食育の推進をするグループが出来たというような感じです。策定のプロセスで市民の方と、時間をかけて、一緒にやるっていうことが大事で、そこをやらないと、次のアクションは起きてこないですから、そこはすごい大事だなって思ってます。地域のエンパーメントですよね。

あと、最後に、割愛した最後のまとめのところですが、言葉で補足しないと紙面だけでは理解が難しいかもしれないのでお話ししますと、例えば親の無関心、ひどい時はネグレクトで子どもを殺してしまう。そういう虐待って無関心で起きてくると思うんですが、もう一つ問題なのが、その逆、過干渉・過保護だと思うんですね。ある会議で小学校5年生の先生が「先生今の子ども達に一番何が問題だと思います?」って聞いたら「とにかく自分の頭で考えない。親が答え出してくれるっていう感じで育ってきちゃってるからでしょうかね」って言うんです。

具体的に言うと、お母さん同士がぶつかりたくないから、こどもが喧嘩する前に止めちゃうとか、そういう事っていっぱいあるかと思うんですね。本当は子ども自信が、自分で解決していく力を付けていかなければいけないのに、親が先取りして解決をしてしまう。子どもに体験させないって事は、本来子どもが学んでいかなきゃいけない事を親が搾取しちゃっている状態ですよね。ある意味、子どもの学習機会を奪っている、人権侵害っていうふうに捉えられるんだなって、最近そんな風にも思っています。ですから、自分達の仕事の中で、母親達に、こどもの力を信じて待ってあげることを伝えることや母のコミュニケーション力をサポートするような事業展開や関わりは、まさしく子どもの人権を守ることに繋がるという風に思います。ただしそんな母親に対して、批判的に接すのではなくて、お母さん達に「いい子育てしてるね」ってお母さん達をエンパーメントさせるような声掛けをしながら子どもさん達の育ちをお母さん達と共にアップさせていけるような視点でやっていきたいなというふうに思っております。

 

《半田さん》

ありがとうございます。

少し後でお話していただこうと思った子ども施策に子どもの人権という視点をどのように取り入れているのかというようなところとの絡みも含め八千代市の石橋さんから佐藤さんの質問に答えるという形でお答えしていただきました。あとご質問が2つ出ております。中谷先生へのご質問で就学指導との絡みのお話も出ていましたが、よろしくお願いします。

 

《中谷さん》

この問題一つでシンポジウム出来てしまうと思うんで、この問題について私は必ずしも専門家ではありませんのでちょっとそういう視点でお話するのは非常に難しいです、大変申し訳ないです。うちの委員会で何か障害を持ってるお子さん達の相談を受けたかというところでお話しますと、養護学校に通ってらっしゃるお子さんをお持ちのお母さんからのご相談で「自分が所属しているクラスがやっている教育内容が自分の子どもに合ってないんじゃないか」または「もっと最先端の障害児教育のプログラムを取り入れて欲しい」というのが主訴でうちに来た事あります。非常に難しいところでありまして、それぞれの学校で一教員が日々展開している教育内容にまで踏み込んでこちら第三者がいうっていうのは非常に微妙な問題というか大きな問題をはらんでいます。基本的に先生の細かい指導内容について言うのはよっぽどの事がない限り差し控えようというのが基本的なうちのスタンスです。だからそれでいいって事ではなくて、ご要望がありますっていう事はきちっと伝えます。その上でどういうところに親御さんが不満を持っているかとか、どこが合わないと感じているのかという事をお伝えしたんですね。その時も親御さん文句言うわけですから学校の先生も非常に感情的になっていてもう話が進まなかった状況、そこで学校の先生には親御さんの気持ちを理解していただいて、親御さんには「学校の先生もこういうふうに工夫してやってるみたいですよ」とか「夏休みも遅くまで教材研究やってるみたいですよ」みたいな事を伝えていくわけですよね。

そういう中で相互の理解が進んだという事はありました。教育内容そのものをについて何が権利侵害でっていうスタンスはとっておりません。どこを変えて欲しいと思ってるかというのをお伝えする、それで変えるべきところは変えていただき学校として出来ないところは何故出来ないのかという事をちゃんと説明責任を果たしてもらうという事のお手伝いをしたというのが事例としてはありました。すみません、それ以上私も専門外なものですから申し訳ございません。

 

《半田さん》

あと、オンブズと裁判との関係の先ほどの質問についてお答えし忘れた事があります。基本的に公的第三者機関は、そこに申し立てていた事案を裁判にするというような手続きを申立人がとった場合には、その問題は扱えないというような事があったり、他機関に救済を申し立てた場合にはそれは扱えないというような条例上の決まりを持っているところが多いという事を付け加えさせていただきます。

もう一つ、ユニセフが進める子どもにやさしいまちづくり(チャイルドフレンドリーシティ)との関係で自治体がどう役割を果たしていくのかについて福嶋先生へのご質問があります。事前の情報として、私のレジメのまとめというところを見ていただければと思います。あまり詳しく書いておかなかったのですが、ユニセフの子どもにやさしいまちづくりというのは9つの枠組みに基づきながら進めておりまして、その9つの枠組みは第一に子ども参加、第二に子どもにやさしい法的枠組み、第三にまち全体の子どもの権利戦略、第四に子どもの権利部局または調整の仕組み、第五に事前事後の子ども影響とか施策に対する評価、第六に子ども予算というものをちゃんとしているのか、第七に定期的な自治体における子ども白書みたいな形で子どもの権利に関する様々な情報などを公開しているのか、第八に子どもの権利というものに対して自治体が教育機関など様々なものを通じて教育啓発しているのかと、九点目が先程からお話している独立した子どもの相談救済機関というものを設置するという9つの枠組みに基づきながら、それぞれの自治体が子どもの権利条約に書かれている権利というものを実現していけるような地域社会を作っていこうとユニセフが進めている方針であります。

こうした枠組みに基づきながら子どもの権利をまちづくりの中で自治体がどういう役割を果たしていくのかというご質問だったと解釈しております。合わせて私からの質問も付け加えさせていただきたいのですが、先程少しお話させていきましたように政策を作っていく際の市長のリーダーシップとの関連も含めて福嶋さんよりお話いただければと思います。

 

《福嶋さん》

ユニセフの子どもに優しいまちづくりの視点ですが、基本的には我孫子市の子ども総合計画の視点になっているというふうに思っています。正にこういう問題意識を持って取り組もうとしています。取り組んでいるとまではまだ言えませんけれど。

普通学級に入った時にちゃんと支援する人がいないといけないですよね。前は介助員と呼んでいましたが、我孫子市は途中から学級支援員という名前に変えました。介助ってなんか物理的な介助だけして教育の一員というイメージにならないものですから。この学級支援員は必要があったら必ず配置します、というふうにしているんですね。保護者の方から要求があったら必ずつけるというとこまではいきませんが、そこまでは困難ですが、教育委員会や学校が必要だと判断した学級支援員については必ず予算をつけるので、くれぐれも教育委員会は予算がないから学級支援員を置けませんなんてことを絶対に保護者に言わないようにと、教育委員会には強く言っていたんですね。予算編成権は市長ですから、それは首長のリーダーシップなんですね。

これはものすごく大きいです。一般的に大きいというだけではなくて私が12年市長をやって思うのは、その自治体にとっていくつかの選択肢・いくつかの道がある時、市民の為には一番困難な道を選択しなければいけないという場合、首長の役割は本当にちゃんと一番困難な道を選択出来るようにすることだと思っています。職員の人の判断だとやっぱり問題があまり起こらないほう、やりやすいほうにどうしても選択がいってしまうんですね。

職員がダメだとか職員が怠けてるという意味では決してないんです。例えば、本当に市民にとって必要な道を選択すると国と全面対決になるかもしれないっていう時に、市長が何を考えてるかわからないのに職員がその道を選択できませんよね。あるいは子どもの権利条例を議会に出すと議会の半分からは強力な反対を食うかもしれないっていう時、市長がどう考えているかわからないのに子ども課の担当者だけでそんな条例案を作ろうという決断はできないわけですよ。市民に対してだって本当に困っている人をなんとか救済しないといけない時、より多くの市民には我慢してもらわなきゃいけないって事もあるわけです。我慢してもらう市民の中には、大きな声で反対って言う人がいる場合もある。市民からすごい抗議が来るかもしれないのに、市長が何考えてるんだか分からないんじゃその道を選択出来ないんですね。そういう選択をちゃんとしていく、一番困難な道でも必要ならばあえて選んで進んでいく。そのために首長はいるように思います。

ちょっと個別の話になりますがもう1つだけ付け加えますと、私は虐待で非常に危険なケースは、前もってちゃんと市長に直接詳しい説明をしておくように求めていました。なんでかというと、いざという時、つまり本当に命が危険だっていう時に、法律で権限があるかないかなんて言ってられませんから、その時は市長の判断で、やらないといけない事はやらないといけないでしょう。その危ないっていう時になって、市長が一からこの子はどういう子で親はこうでなんて説明受けていたら間に合わなくなる。だから、そういう危険性があるケースは全部市長に前もって説明しておく。そして、もし本当に命が危ないといった時は、ちょっと公の場では表現が難しいんですけど、法律を超えてでも踏み込まなきゃいけない時は踏み込まなきゃいけない。その時は担当者と一緒に市長も踏み込もう。責任とって最後市長がやめないといけないんだったらやめりゃいいだろう。そのくらいのつもりでやっていく必要があると思うんですよね。そういう役割は首長がやらなければいけない、首長しかやれない役割だなと思っていました。

 

《半田さん》

非常に貴重なお話を伺えて幸いです。僕個人の興味・関心からするとそれを受けて行政の岡田さんにお話を伺いたいという気持ちもあるのですが、お聴かせいただいてよろしいですか。

 

《岡田さん》

質問から少しズレますが、機会があったなら福嶋先生のような首長に仕えてみたかったなという気がしております。確かに自治体の経営者・社長さんが経営の意図や方向性を示していただくと私共としては非常にやりやすいという事でございます。予算の例で話しますと、三位一体改革で国からの補助金が交付金に替わりましたが率が50パーセントから45パーセントに引き下がるなどと共にいまだに制約が多く、地方自治体の長が独自にやり繰り出来る予算は総予算の1割とか2割といわれているのが現実でございます。そういった中で首長さんから経営の方向性・目標を的確に示してもらうと、私共事業のボトムアップする側からすると一層知恵を絞らなくてはならないと感じ入るところです。適切な答えではないかもしれませんけど今のお話を伺っての感想でございます。

 

《福嶋さん》

基礎自治体の市町村と県とは、やっぱり自治体という一つの枠ではくくれないですよね。県はおっしゃった通りだと思うんです。でも市町村の予算編成は、もっと首長がかかわる場面が多いでしょう。市も規模が大きくなるほど県に近づく傾向はありますけど。だから、合併は今日のテーマと関係ありませんが、市町村はあまり大きくなるのがいい事ではないと私は思っているんです。

 

《半田さん》

時間があと僅かになってきました。それぞれの先生から最後にお話をいただきたいのですが、今のお話を受けて先程質問が出来なかった方でこのまま帰ってしまうとストレスがたまってどうしても聴いておきたいというお話があると思います。それに関して質問を出していただいた上で最後に先生方からコメントをいただいて終わろうと思いますがいかがでしょうか。

 

《会場から 問題提起》

ちょっとピントが外れているかもわかりませんけど、私はこういう会に出てくるのは初めてでございます。10年間サラリーマン生活しておりまして昨年頃から何をしようかなという事でいろいろと考えてましたんですけど、たまたま家ではダウン症の長女が障害児で今浦安に住んでいるんですが、この子と普通の健常者の子どもで、これから日本を背負っていく子ども達の為に我々年寄りが何か出来る事はないかという事で少し考えまして、今日はいろいろ皆さん方の話を聞きまして本当に勉強になりました。子どもに対する法律なんとかいうのも私一切そんな事わかっていませんので、大変な勉強をさせていただきました。

その中でいろいろインターネットやなんかで資料を見ておる中でワイセツ行為を子どもがされて裁判になったと。それで刑事裁判では負けちゃったというのがあったんですね。インターネットなんかを見ておりまして。それの時にほとんどかなり限りなくその教師は黒に近いと、だけど法律上は疑わしきは罰せずという事と、子どもさんがいわゆるされた場所であるとか日にちであるとかそういう事がわからないと、それが特定されないと刑事裁判では有罪にもっていかれないという事なんですね。我が子を見た時に、ダウン症でもABCの段階がございまして、家の子どもは一番重たいダウン症なんですね。今は35歳になったんですけど、今福祉センターに行ってますけど、昔からそうなんですけど帰ってきて今日はこういう事があったよという事はいうわけです。ちゃんと報告している。今日は誰々君とあって今日はこういう歌を歌ったよ、実際に片言で歌なんかを歌ってくれるわけです。それでダウン症の子ばっかりじゃないでしょうけれども、障害者っていうのは嘘をつくって事を知らないんですね。みんな正直だと思うんです。普通の子どもは嘘をつく事ありますけど、障害者は私絶対に嘘をつかないと思うんですね。

そういった時に質問なんですけど、障害者の人権というのはその時にどこにあるのかなと。どこで守られてるのかなと、今日子どもの人権を守る為に今何が必要かってあるんですけどその前に障害者に人権はあるのかと。それで憲法に定められてる3つで基本的人権がある。戦争放棄・国民主権この3つがあるんだけど基本的人権は健常者の為にあるのかというような疑問がちょっと沸いてきまして、そこのところはどうもよくわからないんですよ、頭の中で。それ人権っていうのは障害者の人権とはどこにあるんだろうかと、その裁判を見ていると本当に人権がそれだったら裁判官はどこでそういう判断をしたのかというところですね。

今中谷さんの第三者機関みたいなものがあって、それがないからやむを得ず裁判にいろいろなったと思うんですけど、そこのところがなんかよくわからないんですよね。勉強してないからわからないのかもしれませんが、この障害者の人権というにははたしてどうなのかなという疑問がちょっとわいたものですから、それを問題提起するなりお聞きするなりして今日は帰りたいと思います。

 

《半田さん》

どうもありがとうございます。

あと1・2名もしよろしければご発言いただければと思います。よろしいですか。

それでは今の障害者の人権について岡田さんの方からよろしいでしょうか。

 

《岡田さん》

ちょっと回りくどくなりますが、私共は人権の教育啓発が中心で障害のある方に関する事業とか法律に関して細部を把握しているわけではございませんけど、私ども人権の立場で申し上げればそれぞれ当事者の方々の意志に耳を傾けまして、例えば障害のある方がした自己決定を人権として尊重することが、一番大切ではないかと理解しております。県の人権施策基本方針においても誰もが自分のことは自分で決定して生きてゆける社会作りを目指していまして、人権は人が自分の行き方を自分で選び取る権利であり誰もが持ち合わせている権利だとしています。従ってあるゆる人があらゆる場面において自己決定をしたものをお互いが素直に尊重することが必要だと思われるところです。

また御質問の趣旨の直接の回答ではございませんけど、この3月に私どもが千葉県内の入所型施設に暮らす方々に対する人権上の基本的な指針をつくり、此の中で入所者が周囲の制約をなくした自己決定が全ての出発点であると施設の管理者:職員:家族に呼びかけたもので、このことが人権にかかる考え方と思っているところです。

 

《福島さん》

ある意味、子どもの人権と障害者の方の人権って共通しているところがあると思うんですね。もちろん、障害を持つ人にも同じように人権があるのは言うまでもなく当たり前の事だと思いますが、先ほどの不完全な人の人権は制限されるという考えは、子どもに対して人権を制限しようとする考え方と一緒だと思うんですね。子どもは大人と比較して不完全なものだから、人権も半分だったり 1/3だったりするという考え方とすごく共通しているので、同じ視点で取り組んでいかなければと思います。現実に法律上、裁判ではいろんな難しいケースがあるでしょうけれども、市町村のレベルだとオンブズパーソン制度もあります。我孫子くらいの規模で行政全体のオンブズパーソン制度を設計するっていうのは重たすぎるんですけど、そういう障害を持つ人や福祉の受け手である人に対してのオンブズパーソン制度と、子どもに関するオンブズパーソン制度の2つは必要だと思っているんですね。我孫子市では福祉分野のオンブズパーソン制度は一応制度として作ってあるんです。子どもに関してまだ無いんで、これから課題にしていこうというところです。法律上や裁判についての明確なお答えはありませんけど、視点としてはそういう事かなと思います。

 

《岡田さん》

ちょっと狭い意味でのお答えになるかもしれませんけど、インターネット上の権利侵害の関係でお答えすると、司法の場でも色々な分野で各種のネット上の権利侵害が出ておりますので多くの議論がなされていますが、現行の県の対応としては県から法務省を通じてプロバイダへ削除要請をする方法しかなく、日々沢山の人権侵害にかかる書き込みがあるわけでございますから、何とか効果的な対応策がないのかと常日頃から苦慮してきたところです。そこで新たな試みとして人権施策に取り組む全国の各県などで構成する全国人権同和行政促進協議会というものが組織されておりまして、ここで協議の上会員全員の合意が得られた場合に協議会会長名でプロバイダに削除要請ができるようにいたしました。ネット上の人権侵害はまるでイタチごっこみたいにいろんな問題が起こっていますので、なかなか対応が難しい面がありますが一つの方策として取り入れたもので一歩一歩積み重ねていかなければならないと思っています。

 

《半田さん》

国際条約として子どもの権利に関しては、子どもの権利条約というものが国連で採択されました。障害者の権利に関する条約も最近(平成181213日)国連で採択されておりまして、日本も(今年の928日に)署名しました。そういったところも法的枠組みとして見ていければと思います。

あと5分程度で会を閉めなければいけないのですが、それぞれのシンポジストの皆様から一言づつコメントをいただいて終われたらと思います。

《岡田さん》

人権にかかる教育とか啓発についてのお話を中心としましたが、いずれにしろ只今伺った障害の関係のお話も含めまして冒頭に申し上げました人権施策基本指針において16の施策の分野を掲げておりますので、今日実際に皆様に伺ったお話を生かしながら直近の課題としてある来年の千葉県の人権宣言をはじめとした各種の人権施策に取り組んでいきたいと思います。また今後機会があれば県ににおいでいただき御意見を伺えればと思っております。

 

《中谷さん》

表題が学校側にこれだけあるメリットと書いたので最後にそれをまとめてお話申し上げますが、かけるコストに見合う実利があるんじゃないかと思っています。法務省の権利擁護委員会のボランティアじゃなくてちゃんと、まあまあの報酬が支払われるんですね、謝金が支払われています。で活動きちっとやっているわけですけど、予算が必要になってくるわけですが長い目で見た場合に地域のお子さんの声をちゃんと出してもらえる仕組みを作って出てきたそれを大人がきちっと受け止めるというシステムは長い目で見た時に社会の安定化に繋がるんではないかと思っているんですね。自分の言いたい事いえなかったとかそれを押しつぶされた経験をした人が大人になって、例えば自分自身に自信がなくて自殺する人になるとか外側に向かうと非常に犯罪に走るとかそういう事もあるのかなと個人的には思ってまして、社会の安心安定そういった安全に寄与するスタビライザーになりうるんじゃないかなと考えています。短期的な即効的な効果というのは権利救済・いじめをなくすという事になると思いますが、長期的にみた場合我々の社会次の社会を作っていく為に非常に意味があるんではないかと考えております。

 

《福嶋さん》

先程も申し上げた事ですが、国はなかなか市民の動きで変えると言ってもリアリティーを持てないところがあるんですが、市町村は本当に市民が動けば変わると思うんです。だから子どもをちゃんと真ん中においた自治体が少しでも増えるように、それぞれの自治体が少しでも子どもを真ん中に近いところにおくように、一緒に頑張っていけたらなと思っています。

 

《石橋さん》

本当にまだ八千代市始まったばかりなのですが、こういうところで、発表させていただいてるので、引き続きちゃんとやっていかなきゃいけないなというふうに思っています。2年前にも、食育の活動を人権の視点で発表してくれと言われ、その時も困っちゃたんですが、まとめる中でその時も学びがありました。

本当にいろいろな会議に参加させていただいている中で、最近、勝手に自分ながら考えたことなのですが、自己肯定感とか人権とか愛とかというものは、かなり近い位置にあって、一つの線の上に乗っかってるなというのを感じています。今まで、人権とかそういう言葉ってすごく遠く感じてたんですけど、ものすごい自分の仕事に近いところ・もしかしたらコアとなるようなところなんだなっていうのを今更ながら感じております。

勉強させていただきまして、どうもありがとうございました。

 

《福嶋さん》

一つだけ言い忘れました、せっかく県の方がいらっしゃっているので。市民が本当に変えられるのは市町村だと思うんですが、県が国の立場にたって国の方針を市町村に押しつけようとするのか、それとも市町村と同じスタンスにたって国にものを言うのか、それによって全く市町村にとってのやりやすさが違うんですよ。市町村の立場に立って千葉県はやっていただいていると思いますので、是非よろしくお願いします。

 

《半田さん》

長い間どうもありがとうございました。私の方からのまとめと致しましては、私のレジメの後半部分に書いてありますので、そちらの方もご参照いただきたいと思います。要するに何故子どもに特別に焦点をあて子どもの権利を基盤にしながらまちづくりというものを考えていく必要があるのかという事を最後にお話させていただきたかったのでこちらのほうを参考にしていただければと思います。

最後になりましたが、この実行委員会の代表であります千葉こどもサポートネットの理事長の池口さんのほうからまとめをしていただけるという事なので、よろしくお願いいたします。

 

まとめ

《実行委員会代表 池口紀夫》

良い土には栄養豊かな良い作物がとれ、豊かな森林を育み、人のみならず様々な作物を守り育てます。近海の魚の成長にも大きな影響を与えます。子どもたちの成長にとって何よりも「良い土」は「社会の子どもに対するまなざしであり、責任感」です。その中でも最も土台となるのが国連子どもの権利委員会が再三にわたって提唱している「権利基盤型アプローチ」でしょう。子ども、保護、教育、医療全ての施策の基礎に「子どもの人権を守り実現」を据えるということです。我が国における子どもの人権施策の現状については、コーディネーターの半田先生が簡潔にまとめて紹介していただき、本日の議論に共通のテーブルを整えていただきました。改めて御礼申し上げます。

子どもの人権施策の中でも基礎となるのが、子どもの人権に関する「理念」の明確化です。元我孫子市長の福嶋氏は、我孫子市長時代の子どもの人権施策の取り組みを通して、重要なポイントを提言していただきました。

第一点は、尊重すべき権利は関係性によって異なるということ。特に行政事業者と住民(子どもを含む)において考えられなければならないこと。

第二点は、子育てを支援するということは大人自身が変わっていくということ。

第三点は、子ども施策においては子どもの視点を重視し大人の視点を押し付けないということ。

第四点は、「子どもに権利や自由を与えると子どもが無責任でおかしくなる」という議論について、今考えなければならないことは、子どもが本当に自分で何かを選択して自分で行動する機会が少ないということ。自分で選んで行動する、自分で自由を行使して始めて責任や権利が実感し、学ぶことができるということ。責任や義務ということは強制で身につくものではないということ。

以上のポイントを実例を通して提言していただきました。これらのことは、子どもの人権施策を構成する上で骨格となる重要なポイントだと思います。

八千代市の石橋氏からは、市の母子保健と保育園が連携して実施しておられる地域子育て支援ネットワーク事業の実践を報告していただきました。

柱は、1.妊娠から出産・乳幼児期の切れ目のない支援の提供。

    2.遊びと交流の広場の提供。

    3.安心して子育てができる地域づくりの推進ということでした。

 この取り組みについては、子どもの人権施策と関連でとても重要な取り組みではないかと思います 。今日、子どもの人権施策の中でも、緊急に取り組まなければならない課題として、「子どもへの虐待の防止、救済」があります。その中でも重要な課題は「ネグレクトの状況」を「危険な虐待状況」へ落下させないことです。そのためには、困難な子育て状況にある子どもと親からのサインを早期に受け止め、継続して支援の手を差し伸べることが重要です。その意味で、この八千代市の取り組みは「虐待の防止」すなわち「子どもの人権の侵害の防止」に大きな役割を果たしていると思います。

 千葉県の人権室長の岡田さんからは、県の人権に関する基本指針及び人権宣言の取り組みついて、ご報告をいただきました。今、子どもたちは様々なリスクを負って、“理不尽な苦しみ”に襲われて生きています。“虐待、体罰、性被害、いじめ、自殺、非行等々”これらの子どもの“苦しみ”を社会がどう見るのか、この基準が明確でなければ、子ども施策と取り組みは混乱と対立を生み、実効性を挙げることが出来ず、社会と子どもとの共生は成立しません。人権施策としての人権教育の推進、啓発活動、人権被害に対する救済とそのための機関の設置を定め、さらに今回人権を尊重する千葉県社会を目指すという強い意志を「人権宣言」を通して県民に示すこととされていることはとても心強いことです。子どもの人権の歴史が示すように「宣言」を具体化するシステム作りが必要となるでしょう。

 埼玉県子どもの権利擁護委員会調査専門委員の中谷さんからは、埼玉県の権利擁護委員会の取り組みについて報告していただきました。注目すべきことは、この場では子どものニーズがしっかり聞かれ、受け止められているということです。子どもの意見表明が可能になっているということです。権利侵害相談については、加害者になる側に対して責任追及型のアプローチよりも、第三者として相談者の声を代弁し、理解を進めることによって相手側の態度や考え方を変容させていく、というあり方を中心的にしていることです。相互の意思疎通も図ることで、相互から感謝されているという報告もありました。とても意味のある活動であり、何よりも子どもたちの安心を保障するという人権擁護の機能が見事に根付いていることが示され、今後の施策の方向性に大きな示唆を与えられました。

 

質問と協議の中でとても重要な問題提起がありました。「障害者には憲法に定められた基本的人権があるのか」という発言です。様々な障害があることによって、「人としての権利が制約を受けたり、軽視されているのではないか」という現実からの発言でした。県の岡田氏からは「自己決定」を尊重すること、福嶋氏からは「不完全」であるからということで人権が制限されることがあってはならない、という確認がなされました。

人権の施策の柱は、人権の基準の明確化、人権を守るシステムづくり、人権を守るための実践、啓発活動、人権教育です。これらが平行して推進されて始めて機能します。そして、千葉県、市町村と市民が協働してこのことを推進する時に、千葉県は「人権尊重社会」になっていくことが出来ると思います。子どもの権利条約に基づいた子どもを守り育てるネットワークを築いていきましょう。 

 

本日は本当にありがとうございした。

 

 

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【当日のアンケートから】

 

「子どもの人権問題」についての意見

・子どもであれ、障害者であれ、外国人であれ、人権は同じ。

・障がいのある子どもへの人権侵害・軽度発達障がいのある子ども(含)・市町村職員(窓口)の専門性の向上・その他、地域格差について・自由の権利―義務・いじめ加害児への対応 etc.・・取り組まなければならない課題は多いが、あきらめずに行っていきたい。

・子どもにやさしいまちづくりを実現するには行政も含めた地域のネットワーク作りが必要。

・地域に住む一般の人二とっては、「子どもの人権?それなに?」と言った感じではないか。

 大人自身が人権ということばと無縁に育っている中、自分自身も含め、人権が生活の中で当たり前の空気のようになることが課題。

・子どもの人権について考えることは、こんなにも広く深いものなのだと気付かされた。いろいろな場面で様々な取り組みがなされていることを知り、日頃から意識すべきだと反省。

・格差社会が進行する中で、当たり前とされてきた教育の機会均等が崩れ、安定した家庭環境が難しくなったりと、子どもたちの育ちに大きな歪みが生じている。すべての子どもたちの人権が脅かされていると言うって過言ではない。

 子どもたちが安心して未来に希望を持って成長していける社会をめざして、変わる可能性の高い地域社会を変えていく活動を地道にしていきたい。

・埼玉県条例で設置している第3者機関を全国でも検証しながら進めて欲しい。現状においても、何らかの形で権利擁護の機関はあるように思ったが、何かと規制があることが弊害。

 人権擁護委員への相談ごとが、複数の相談機関に相談している場合はできないということだったが、むしろ複数の機関と相談するという発想転換を。何か問題があった時に、訴えた人の立場で話を聞けるかどうか。行政の立場でものを言うから話が複雑化する。

・「子どもの人権問題」を誰が聞いても分かりやすい言葉で説明・周知していただければよい。

・「子どもの人権」の切り口で語り、学びあう会で、その内容も深く、懇話会の存在をはじめて知った。大人の意識を変えていくこと、千葉の保守性の強い中で懇話会の意味は大きいと感じた。このような企画のPRの工夫をしていただきたい。終了時間は守って欲しい。

・色々な切り口があり、色々な現場での問題・取り組みがされているが、1つの「子どもの人権問題」としてコーディネートできればよいと思う。

 

「子どもの人権懇話会」に参加して

・中身の濃い懇話会だった。中谷さん・福嶋さんの話がすばらしかった。

 コーディネーターの方の話がとても勉強になり、事前の準備がすばらしかった。

・浦安の方の「障害者の権利はどこにあるのか?」という発言を受け止めたい。

・毎回出席できず残念。埼玉県の取り組みはすばらしい。特に@子どものニーズを一番に優

先するA権利侵害を行っている側への責任追及型ではない、ということ。千葉県でも、県レベルであったらよい。

 福嶋氏の意見は同感。自由―義務について、議論してもなかなか理解されにくい。自由のとらえ方が違うのが原因。

・子どもの権利と言っても、参加者の立場が違っていて、抱えている問題も違うので難しい。

・よい活動事例を聞けてよかった。特に八千代の保健師さんの話は参考になった。

・初めて参加したが、学ぶことが多く、たいへんよかった。

・子どもの人権や子育て環境づくりのため地道に活動している方々の報告を伺えてよかった。

・前半の話を聴いた後で、参加者をいくつかのグループ分けにして、話をした中から質問を出すと言うのもよい。率直な意見が出やすいと思う。

・八千代市・埼玉県における発表は、現場に即した活動がよく見えて参考になった。

 千葉県における子どもの人権に関する具体的な政策を伺えればよかった。

 福嶋さんの話は元気の出る話で、子ども自身が自ら考え行動し、義務・権利も学べる体制作りや教育も必要。元首長の考えを直に聞けて参考になった。

・それぞれの立場からの発言はとても勉強になった。参加者からの質問と,それについての話から学ぶことが多かった。

・福嶋さんの話はとてもパワーをいただいた。これだけ色々な立場・現場から具体的な話があり、このような場に市町村の関係者がいて聴くだけでも参考になるだろう。

 

懇話会の活動について

・シンポジストの人数を23人にして、参加者がグループ討議していくスタイルが望ましい。

質問者対シンポジストのニ方向の意見交換になってしまうので、もったいない。

・いつも精力的な活動に感謝。これからもできるところで一緒に取り組んでいきたい。

・今後もまた参加したい。

・行政側からの人プラス市民の意見を聞くという、シンポジストの人選も必要では?

・日曜の開催は参加者も少なく残念。3時間半は長い。平日に行えば、行政関係者も積極的参加・意見交換がしやすいのでは。

・教育分野の参加もキーワードのように思う。今後の活躍を期待する。

・継続すること、ずっと同じ課題を追っていくことは意義があると思う。期待している。