第2回「子どもの人権懇話会」報告 2005年11月1日(火)午後1時半から、千葉市生涯学習センター・大研修室で、第2回子どもの人権懇話会が開催されました。「子どもへの人権侵害をどう防止するか」をテーマに54名の参加をえて、4人の発言者からの提案、会場参加者との質疑応答・話し合いを行いました。 司会 中村雪江さん(子ども劇場千葉県センター) 1.
代表の挨拶と趣旨説明 実行委員会代表・池口紀夫 1月に第1回を行い、子どもの人権について先進的・今日的取り組みを、県内の各自治体( 第2点として、子どもの人権の確立に向けた全国的な動きが促進されつつある。 @子どもの権利に関する総合条例・・ A子どもの権利救済に関する条例・・兵庫県川西市・岐阜県岐南町・川崎市・埼玉県・・・ B子ども条例・・・大阪府箕面市・東京都世田谷区・岡山県新庄村・・・その他、子どもの権利条例制定に向けた動きが全国各地の府県市区町で展開されている。県内でも八千代市・船橋市・我孫子市でも検討されており、千葉県でも次世代育成行動計画に子ども人権条例制定について検討することが明記され、作業部会が始まっている。 また、子どもの人権救済について、官民協働の取り組みの動きが出てきている。県の事業として中核地域生活支援センターが人権相談・救済活動を行っているが、民間の諸団体と連携しながら力を合わせて相談に対して解決することが始まっている。 虐待防止の取り組みについても、児童福祉法・児童虐待防止法の改正により、虐待は子どもの人権侵害であると明記され、虐待問題・要保護児童に 地域を単位として官民が協働で取り組み、子どもの権利実現に向けて状況は進んでいるが、今日を契機に、また一歩進むことを願っている。 2.提案 @「教職員への人権意識をどう高めるか、また、子どもたちへの人権意識をどう高めるか、その取り組みと課題」 発言者・江邨一男さん(千葉県教育委員会指導課人権教育室指導主事) 資料の表紙の月面クレーターの写真を見て変だなと思わなかったか?くぼみの写真が出っ張って見え、逆さまにするとへこんで見えないか?1枚の写真が見方を変えると違って見える。ここに人権教育の推進に関わる重大なヒントがある。 人間も見方を変えると違って見えることがある。子どもたちを見るとき一面的で固定的な見方でなく多方面から多角的に見ることでいつもと違った一面が見える。問題が発生した時に「またお前か」「あいつに違いない」と決め付けるのではなく、子どもの置かれた状況を十分把握した上で必要なら指導し、子どもを励ましていくことが必要。人権教育の合言葉で「みんなちがって、みんないい」という金子みすゞさんの詩の中のことばがあるが、人それぞれの個性を尊重するということで、違いを認めない一方的な見方からは、差別が生まれる。国が策定した「人権教育啓発に関する基本計画」には、人権問題が生じる背景の一つとして、同質性・均一性を重視しがちな性向が示されている。 ◇ 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律 ◇ 人権教育・啓発に関する基本計画 ◇ 千葉県人権施策基本指針 ◇ 人権教育の指導方法等の在り方について 以上4点が人権教育を進める上でのよりどころになっている。 千葉県教育委員会では、「平成17年度人権教育の推進目標及び重点項目」を定め、【推進目標】学校教育では、児童生徒の発達段階と地域の実情に即し、各教科の特質に応じた人権教育を教育活動全体を通じて計画的に推進する―として、具体的に3つ、体験と交流活動を通して人権感覚の醸成に努めること、人権意識を高めるための指導方法を創意工夫し指導者の人権に関する理解と認識を深めること、指導力と資質向上を図る研修を計画的に実施することを掲げている。これに沿って、人権教育に関する事業計画を立て、実践している。県内全ての公立学校と学校人権教育に関わる教育行政機関の担当者を網羅してさまざまな対象者に研修を行っている。合わせて、学校人権教育のための指導資料をつくっている。 実際の学校現場ではどのような人権教育が行われているか。千葉県内で一番多く使われている中学校の社会科の公民教科書(東京書籍)では、教科書の6分の1は人権に関する学習を行うページで33ページある。「ちがいのちがい」というカードを使った授業は、「女性は16歳で結婚できるが、男性は18歳にならなければ結婚できない」等、「あってよいちがい」か「あってはいけないちがい」か、グループごとにカードを使って別ける授業で、子どもたちの考えを深め、子どもたちは、初めは必ずしも考えは一致しないが、自分とは違う意見もあるんだと気づき、「あってよいちがい」は個性とか社会のルールなんだ、「あってはいけないちがい」は差別なんだと考えることが期待される。別の授業では、資料で「わたしが言いたいことは」というタイトルで載っているが、お互いの人間関係を深めるために、相手を尊重した上で自分の気持ちを表現することの大切さに気づくための授業で、文章を読み「宿題を写させて・・」というハナ子に対するヨウ子の言い分を受身・攻撃的・主体的な3通りの言い方で表してみましょう―とうことで、その子なりの態度と表現力を使って主体的に表現するワークシート。また、子どもの権利条約の条文に関することを学ぶプログラムも紹介している。 最後に、各学校の先生方の子どもに対する人権意識を高め、子どもの人権を侵害しないように、「あなたはどう思いますか?」と日常の指導の中でありそうな場面を想定し、「忘れ物をした子どもの名前や番号を黒板に書くことがある・・」など点検表を配って日々の指導を振り返ってもらうなど、学校によって実情は異なるが、それぞれ取り組んでいる。 A「教職員への人権意識をどう高めるか、また、子どもたちへの人権意識をどう高めるか、その取り組みと課題」 発言者・遠藤基治さん( 教育センター室で相談業務を担当している。学校へ行けなくなった子どものことや児童虐待に関することで年間1000件を超える相談があり、年々増加傾向にある。背景に家での教育・学校での教育に関して困っている人が増えているということがある。最近思うのは子どもたちの人間関係のつくり方が難しくなっていて、傷つきやすい子が多い、そこを支援していきたい。 白井市における人権教育の内容。子どもたちはどういう機会に人権を学んでいるか。子どもの発達段階に応じて、各教科・道徳・特別活動・総合的学習の時間などで取り組んでいるが、例えば6年生の日本国憲法を学ぶ授業では、基本的人権の尊重というところで、市役所に見学に来て福祉とか人権についてはどのように行っているかを調べて、帰って学校で発表したりしている。 また、中学校の公民では、家庭生活の内容から始まって、国際社会のところまで人権についてずっとたどっていき、基本的人権の保障、個人の尊重、子どもの人権を子どもの権利条約を用いて学び、自分たちの生活にどう関わっているかを中心に話を進めている。3年生で年間の授業時数の85時間のうち17時間をそういうものに費やしている。道徳の授業は心の教育の中心を成すもので、人間尊重の精神が中心で、生命に対する畏敬の念、命を大切にしましょうということで授業を行っている。特別活動では人間関係ということがらが中心で、「いじめ」の直接的問題を扱ったり、ボランティア・福祉の関係の話をしたりで、人権の関わりがあるんだとか、命は大切なものであるとかいうことを学んでいる。 「いのちを大切にするキャンペーン」は、各小中学校で1学期中に実施してもらっているが、保護者・地域住民・児童生徒連携の上で、「命について考えましょう」ということで取り組み、自分と他者の命を大切にする心をはぐくむことを目的に行っている。いじめや暴力行為(児童虐待やDVも含まれる)、人権侵害は許されないということを考えていきましょうということでやっている。主な活動としては3点。1点目は、命の大切さやいじめ・暴力行為についてクラス・学年・学校全体での話し合い・意見発表を行っている。2点目は、ボランティア活動・体験活動を通じて思いやりの心を育てること。3点目は、命の大切さ・思いやりの心に関する感動体験、いじめ・暴力行為に関する決意表明(作文等)をやっている。 子どもたちが教職員に意見を述べる機会があるかどうかということだが、1学期に1回、教育相談を行っている。いじめや孤立していることなど話し合いの題材になっている。話したい先生を指名し、形式的にならないように子どもが実質困っていること、おかしいなと思っていることを話せるように配慮している。スクールカウンセラーを配置、週1〜2回子どもたちの話を聞いている。日常的には学級担任が日記・生活ノート・班ノートを書かせ、その中から、指導することを取り上げ対応している。多くの学校では意見箱も設置。子どもたちの気づいたこと感じたことを書き、職員室で話し合って対応。セクシュアルハラスメントの相談窓口を必ず置き保護者にも周知させている。 社会が守るべき子どもの人権についての教職員の研修としては、アサーショントレーニングで、子どもたちへの具体的対応について先生方に実際にやってもらっている。教育相談基礎講座で全員受けてもらえるように年次計画で実施。子どもたちへの接し方、見方、対応の仕方、相談機関はこういうとこにあることなど知らせている。「非暴力的危機介入法」といって、トラブルが起こったときに、感情がコントロールできるような研修、「心の教育」の研修、また、具体的問題への対応、長欠サポート研修など直接担当者が出向いて当たっている。さらに、特別支援教育の子どもたちへの対応、周りの子どもたちへの対応など、学校の実情に合わせて個々の生徒に対応できるよう取り組んでいる。他人の人権を侵害することのないように、個々の人間関係のトラブルが大きくならないように、介助員・補助教員・学校部活動サポーターなど、たくさんのいろいろな目が子どもたちに注がれるようにしている。子どもたちにアンケートをとる調査研究を、指定校を指定して行っている。 その他、家庭等における暴力対策ネットワーク会議を児童相談所・警察・市の中の相談機関を含めて児童虐待対策として開いている。子どもたちと先生の間柄は信頼関係がないとどうにも成り立たない、良い話をしても通じないので、何とか信頼関係を構築できるよう進めている。 B「虐待防止の取り組み、進捗状況とその課題」 発言者・浅野由美子さん(千葉県児童家庭課虐待防止対策室副主幹) 虐待防止に向け虐待防止対策室ができ、昨年から本格的に総合的な施策の推進・啓発活動が始まっている。市町村ネットワークのマニュアルも作った。昨年・今年と、児童福祉が大きくポイントを切り替えた年で、きちんと進んで行けるように、子どもたちの安全と人権擁護に向けたレールをきちんと敷いて電車を動かしていきたい。 「千葉県の児童虐待の現状について」という資料について、千葉県には5箇所の児童相談所があり、今年茂原に支所ができ、別に政令市の 児童福祉法の改正で、市町村が虐待対応窓口になり、福祉事務所だけでなく市町村が全庁的に取り組む体制作りが求められている。市町村でかなりの相談を受けている現状で、児童相談所への送致・援助依頼は比較的少なく、市町村がかなり頑張って独自に虐待対応をしている。関係機関・地域のネットワーク型の支援が必要。3月に「市町村子ども虐待防止ネットワーク対応マニュアル」を作成・配布。市の体制・ネットワークのあり方など示したが、よく活用されている様子。会議ではなく実際に機能するネットワークにしてほしいとお願いしている。 また、死亡事例の検証委員会を発足させた。2つの死亡事例を取り上げ、検証した。1件は、関係者会議を長期間開いてかなり関わっていたにも関わらず起きた。不適切な養育とは見なされていたが、命に関わるとは考えられていなかった。また、3歳の子の死亡事例、更に死亡事例ではないが、野田市の子どもたちが逃げた事件・・。この子は誰の子?どこが住まいなの?と本当にわからないということが起きている。虐待事例を見ると、就学前の子が半数を占め、死亡事例では3歳未満の子が4割を占めているが、子どもの情報把握が難しくなっている。家族全体の問題を把握しないと、個人個人の問題も解決できない。見えたところだけでは対応できない。学校がなかなか家族の中に入っていけない状況で、地域の中で誰がどう動くか、親の権利・プライバシーの問題もあり、どこまで行政が動くことができるか、地域の中でコンセンサスが必要。個人情報保護法ができたが、ネットワークの中で情報共有されないと積極的な対応ができない。機能するネットワークを地域の中につくることが必要で民間の方々の力が求められる。母子保健・福祉の分野でも視点の共有が必要。 C「虐待防止の取り組み、進捗状況とその課題」 発言者・村田章子さん( 保健師として長年地域で市民の健康づくりに取り組んできたが、保健行政から移動し、この4月から児童家庭課で専門的に児童虐待を防止する活動に取り組んでいる。トータル的に保健と福祉がどうやって接点を持ったらいいか考える中で、虐待を防止することは保健師の活動がネットの基本になければいけないと考えている。 佐倉市は17年3月末人口が176,833人で近年減少傾向にある。16年出生数1,317人、合計特殊出生率1.05で県内ワースト1。 16年の児童福祉法・児童虐待防止法の改正により、 子ども相談班と手当班に分かれ、相談班は、副主幹・保健師と非常勤の家庭児童相談員の3名で対応。今年度の目標は児童虐待防止の体制づくりとあらゆる機会を利用した虐待防止の啓発活動を実施。あらゆる場所に出かけて言って 16年9月に「 ・無認可施設の5分野で開催。民生児童委員・主任児童委員の関係では定期的に入り込んでマニュアルを使ってケースについて情報交換や意見交換を行っている。 児童の安全を確保していくために、「児童虐待対応フローチャート」を作成。進め方として、 @虐待の疑いがある場合は児童家庭課へ連絡通報、A命の危険があるなど緊急性のある場合は児童相談所や警察へ相談・通告、B児童家庭課が情報を一元的に管理し中心となって受理会議を開催、C把握した情報をもとにケース検討会議、役割の明確化、D関係機関相互の連携によるネットワーク援助、E継続してケース検討・支援援助方法を評価し、方針に基づき進める。終結は、18歳〜20歳までは見ていく必要があるとうことでだんだん担当するケースが増えている。関係機関が情報を交換しながら児童家庭課が情報を一元管理して行っている。 課が設置されこの半年で、緊急受理会議62回、内部検討会議44回、外部関係機関会議18回開催。連携状況は、保健関係60件・学校関係40件・福祉施設40件・民生児童委員関係60件と重複しているが、いろいろ開催してきている。 平成17年度の家庭児童相談室実績の表にあるように、4月以降109件の新規相談があり、そのうち35,8%が児童虐待の相談だった。年齢別では小学生が38.6%を占め、次いで3〜就学前が27.5%。相談経路は家族・親戚からが最も多かった。 評価と課題について、 1.相談通告の窓口が一義的に市町村に変わり、情報が一元化され、担当窓口が決められたことで児童虐待などの相談に迅速に対応できるようになり、支援方針が組織的に決定できるようになった。 2、フローチャートに示すように、ケース検討会議・実務者会議の開催により、関係機関との情報交換が行われ、役割分担によって、ケースによりよい対応ができるようになった。 3、相談が急増し、困難ケースの対応に追われる日々で、対応に迷うことがしばしはあり、児童相談所に頻繁に相談しているが、適切に対応できるようにスーパーバイザーの助言が求められる。職員の資質の向上のために研修の機会を増やし学習していく必要がある。今後さらに保健・福祉・教育の各行政機関や関係団体相互の連携を深めることによって、子育て支援セーフティーネット構築のために努力していく必要がある。 D「相談事例に見る子どもの人権侵害と救済及び防止への課題」発言者・米田修さん(NPO法人千葉こどもサポートネット副理事長) 13年ほど前から不登校の親の会や障害児の親の会相互の情報交換・情報発信の活動をメインに行ってきたが、活動内容が変わってきて、昨年NPO法人化し、子どもの人権擁護に関する相談を受け、解決に向けて取り組む活動を行っている。 相談事例を踏まえ課題を提案したい。相談を受けていて、どこへ相談していいのか分からないと言う声を聞く。特に学校の問題について相談する先がない。学校に相談してもダメで適切な対応がなされないままこう着状態でぐるぐる回ってサポートネットにくる。孤立感を高めて相談に来る人が多い。どう回復していったらいいか、相談する相手を作ることが必要。地域のネットワーク化が言われているが、なかなか学校教育関係ではない、相談できる第三者機関があればいい。千葉県の中核地域生活支援センターが昨年14箇所作られ、日頃から連携しながら活動している。中核地域生活支援センターは福祉の関係が多いので、子どもの問題ということで相談がくる。 昨年から研修を行って地域の普通の方に子どもサポーターになっていただいている。55名の方が今いっしょに活動している。地域の中で同じような立場から支援していただく。チームを組みながら相談に応じている。相談機関としていろいろなところの連携が必要。千葉県にも県弁護士会の子どもの権利委員会があるが敷居が高い。東京の子どもの権利委員会に相談が行ったりしている。どこが相談に応じ権利擁護として適切に対応してくれるのか情報すらない。情報源と地域のコーディネーターが調整・整理して支援につなげていくことが必要。中核地域生活支援センターが整理していっしょに援助していただいている。虐待問題でも、問題の発見・通報にも関わっていけるのではないかと考えている。多様性のある相談機関が必要。 相談者の孤立感・疎外感の問題。学校の存在が大きくて、物申すことになると、こう着状態になり、地域から有形無形の圧力を受けることもあり、子どもの人権が擁護できないことがある。私的な立場でNPO法人化しながら援助していこうとしているが、公的な学校との間で事実確認にさえ多くの時間を費やしてしまう現状で、当事者があきらめて取り下げてしまうことも起きている。最終的に権利の擁護ができるように結び付けていきたいと思っているが難しい。 公的な客観性を持たせる第3者機関ができて間に入って調整活動を行うことが必要。 大阪府が昨年始めた学校における児童・生徒を権利侵害事象から守る「児童生徒のための被害者救済システム」では、第三者の機関にも相談機能を持たせている。社団法人子ども情報研究センターは子どもの立場に立った子ども専門の相談機関で、子ども・親・教師の相談先としてそれぞれ分かれた既存の相談窓口を持ちながら、それとは別の機関でも相談に応じている。外部評価委員会も持ち機能しているかどうか検証も行っている。学校が弁護士・カウンセラー等の個別事象対応チームに応援を求めるシステムもある。民間人が学校と相談していく時、事実確認だけで対立して先に進まないことが多いが、第三者の外部機関に調整していただく意味は大きい。大阪府も子ども条例を検討していていずれ条例化されると思うが、一つのテストケースとして紹介。 子どもの権利基盤を整理するということでは、外部の第三者機関が必要だと思う。札幌市体罰事故調査委員会が昨年でき、委員を選任して個別に調査して調整する。公平性を求め、学校の信頼を回復するためにやっている。法令順守を高めていくということで、静岡県では教職員コンプライアンス委員会を作って透明性・公平性を高めている。行政内部も外部の批判に耐えるように、最終的な目的は子どもの人権擁護なので、どうやって実現するか努力が必要。 子ども条例・子どもの権利条例作りが全国で行われている。子どもの権利をきちんと確保するために、地方自治の中での法律としてつくっていくことが全国的流れになっている。 4.質疑応答・協議 池口 「権利のカード」について説明してください。 江邨 熱気球に乗っていて、権利を一つずつ捨てないと墜落してしまう状況で、何から捨てていくかグループで話し合い、違った考え・価値観に気づく中で権利について考えるというもの。 池口 虐待防止対策室の今後の取り組みで具体的な展開が決まっていたら、また、親の虐待だけでなく子どもの人権侵害に全体としてどう取り組むか。 浅野 死亡事例研究会の報告書をまとめ公表できるようにする。社会保障審議会の中で死亡事例検証委員会・社会的資源のあり方検討委員会・虐待の調査研究委員会・家族再統合委員会の4つの委員会を立ち上げ、総合的に虐待防止と虐待ゼロを目指した取り組みを進めていく。また、出てきた課題に来年度中どう取り組むか。実践的なマニュアルもつくっていきたい。専門機関同士の言葉の認識の違いを確認することも必要。虐待対策室は親からの虐待を対象としているが、保護者からの虐待だけ考えたのでは子どもの人権は守れないというのは承知している。育成班の次世代育成支援行動計画推進作業部会で子ども人権について考えている。 行政は、指導は得意だが調整が苦手。ネットワークの中で得意分野を生かすことが必要。 池口 佐倉市の地域担当者会議等が有効に機能していくために注意してきたことは? 村田 法律改正によって市が何をやらなければならなくなったか、厚い冊子を作りあらゆる関係機関に説明して理解を得るようにした。民生児童委員、保健師、保育園・幼稚園の園長、学校の校長先生に会って説明を行い、理解を深めた。実際のケースでは、学校と民生児童委員、保健師等も連携して具体的に動いてきた。 <会場参加者との質疑・応答> 市民ネット・中井 江邨さんに、野田では、学校教育において迷惑をかけない・いじめをしないということには熱心だが、子ども自身の人権については、子どもにあまり権利を教えると権利ばかり主張して困るということであまり熱心ではない、学校教育の中で、熱気球の権利のカードのような例は県から指導として各市に向けてしているのか。現実に行われているのか。 遠藤さんへは、子どもが学校への批判・教師への批判を班ノートの中とかで主張した場合、子どもにはどのような対応をしているのか。 浅野さんに、 米田さんの話の中で第三者機関が必要ということで、保育所の先生の虐待問題があり、親以外の虐待については第三者の機関が特に必要。 江邨 子どもたちに人権を考えさせることはいけないということは無い。指導資料は全部の学校・市町村に配布。どのように使うか、人権教育をどのようにやるかは、その学校の判断で。その学校独自の課題に取り組み、いじめの問題を他の差別の問題に広げることなどを紹介している。 遠藤 生活ノートとか日記とかに具体的な声が出てきた時に、単なる批判とはとらえずに、その声の裏にあるその考えが出てきた背景など広くとらえて解明するようにしている。 浅野 虐待問題における警察の役割、普段どのような情報のやりとりをするか、ネットワークの状況によって違う。子どもや家族の情報をむやみに警察に渡すのが良いかどうか、人権上難しい問題がある。立ち入り調査については児童相談所もできる。野田のケースなど子どもの所在も確認できない状況で、警察公権力のいきなりの立ち入りはできない。子どもの安全を守るためにどこまでやるか、地域のコンセンサスが必要。近隣の方からの情報を得やすい環境をつくり、民生児童委員さんとか行政の確認とか、誰が何をできたのか、ネットワークの中で事例を検証して欲しい。 佐倉市の高品 茂原・佐原・館山・南房総ではどのように虐待のネットワークができているか。 浅野 市民ネット・桑田 子どもへの人権侵害防止のうまくいった例を教えて欲しい。 米田 障害児の通学のことで学校側と話し合い、バス路線の変更等うまくいった。障害児が普通学級に行きたいという相談でも学校側・市との話し合いも含めうまくいった。高校進級についての相談で結局退学となったが通信制高校に入り卒業、専門学校へ進むということで、学校長との交渉など親も地域の人たちも自分のためにやってくれたことが子どもにとってよかったと感謝された。 CAPぽけっと・荒木 学校の校長先生にどのような人権教育をしているのか。授業時間を使って学校で子どもたちに虐待防止プログラムをやっているが、身近な親や先生に言えない人権侵害について子どもから話を聞く。加害者が先生である体罰やセクハラなどの相談を受けた時、校長先生や教頭先生に話しにいくが、人権意識がないとうやむやにされたり、CAPを入れるんじゃなかったと言われたりする。組織が子どもの安全を阻害し、学校が敵になってしまう。 CAPは、学校や幼稚園など依頼を受けたところに行く。東京・神奈川などでは行政の委託事業としてやっているが、千葉県内にはその様なところはない。県内5つのグループで、昨年1年間で大人201回、子ども383回。クラス単位に日常生活の中で暴力・人権について学ぶ。「安心・自信・自由」の権利とそれが得られないことが暴力の被害にあった時だということをロールプレイで学ぶ。トークタイムで一人ずつから話を聞く時、いじめ・体罰・セクハラ等の相談を受け、必要なら学校から通告してもらう。校長先生など管理者の理解が少ないと入り込むことも難しい。 江邨 昨年までいた学校では、子ども・親のワークショップで校長がやろうということで昨年PTA活動で行った。管理職に対する人権教育は、学校人権教育研究協議会の地区別協議会の研修で管理職と人権教育担当者に1年交替で行っている。 工藤 障害を持つ子どもや若者を支援する活動をしているが、「みんなちがって、みんないい」に「みんなちがって、みんないっしょ」とつなげている。学校の中でトレーニングは必要だが、前提となるところが学校の中で保障されているか疑問。どんなに問題行動があってもどんな不適切な自己主張しかできない子どもでも、大事にされるようなクラスがつくられなければいけない。 虐待問題に学校で出会うが、どう対応するか学校の管理職の姿勢が大きく関わる。家族総体に関わること、児童相談所とも連携して家庭に入っていくことが必要になることがある。 江邨 誰もが大切にされる体制作りが必要なことには同感。子どもの置かれている状況を十分把握した上での働きかけが必要。千葉県では各中学校にスクールカウンセラーを配置して対応している。 池口 スクールソーシャルワーカー的な機能が必要だと受け止めて欲しい。 遠藤 アサーショントレーニングなど、研修する前置きにそういう話をする。不適切な言動の背景を考えた上で対応を考えるよう指導している。エンカウンターの中で分かり合えるようにしている。「非暴力的介入法」等、その人が幸福で安心で安全であるようなケアを考えましょうとやっている。虐待については、いろいろな人が知恵を出し合って組んでいく。スクールソーシャルワーカーの配置は難しい状況で、やっと配置されたスクールカウンセラーが機能するように相談を持ちかけ、必要なケアについて共に考え、福祉の関係につなげることもやっている。 佐藤 CAPぽけっと・子どもの権利参画の研究会に入っている。教職員の人権意識をどう高めるかもっと聞きたい。相談のところで、セクシャルハラスメントの相談窓口について児童や保護者にも周知するとしているが、実際にどのようにやっているか。 児童虐待について18歳以上についてはどこまで拡大して考えているか。 遠藤 セクハラへの対応は女性教職員が担当している。県の研修を受けている人が担当し、一人で抱え込まないよう相談を共有するよう指導していて、教育委員会で相談を受ける体制もあるが、ほとんど自分のところで解決しているのではないか。 浅野 児童相談所の関わりは18歳までだが、地域での支援は年齢に関わらず必要な人に広げていくということで、ネットワークの役割が重要になる。性的な虐待が表に出てくるのが18歳前後で、児童相談所のアドバイスを受けながらどんな援助が必要か探っていく。 村田 代表者会議は年1〜2回、実務者会議は民生児童委員・主任児童委員で3回、学校関係・幼稚園関係はケースごと、児童福祉施設は年3〜4回程度、保健医療関係は4半期に1回または随時、NPO・無認可施設は必要に応じて。スーパーバイザーについては、困難事例のケース検討会議で、保健師・家庭児童相談員・中央児童相談所の児童福祉司さんでやっている。来年度から臨床心理士によるスーパーバイザーもお願いする。 5.まとめ 池口 3年前、 |