千葉県教育委員会 御中 教育長 内藤敏也 様 「子どもたちが安全に安心して通える学校を求める請願書」 〜子どもが教職員等から暴力(体罰・わいせつ行為・暴言等「学校内虐待」)を受けないために〜 請願の趣旨 1、 請願人は、千葉県教育委員会(以下「県教委」という)に対し、「子どもの人権擁護・児童福祉の視点」から、公立小・中・高等学校の児童生徒への教職員等(校長を含む)の「体罰」「わいせつ行為」「暴言」等の不法行為は、「虐待」(以下「学校内虐待」という)として、これを予防し、早期発見し、その他の虐待の防止に関する県教委の責務を定め、虐待の被害を受けた児童生徒の権利を速やかに救済する対応策を策定し、県教育委員会の規則として制定するように求めます(後記の注記@・A・B・C参照)。 2、 県教委は、前項の対応策を策定するに当たり、次の5項の対応基準を踏まえ、知事部局(健康福祉部児童家庭課・総務部行政改革推進課特別監査室等関係部局)と共同して、これまでの教職員等の虐待事件を検証し、対応策を検討の上、これを県教委規則として実行するように求めます。 @ 児童生徒に対する教職員等の虐待を禁止すること。 A 虐待の防止に関する県教育委員会の責務を明確化すること。 B 教職員等による虐待に関する予防・防止・相談・救済体制{@児童生徒の意見表明権・聴聞権等の適正手続きを保障する学校・教育委員会・児童相談所等による相談体制、A被害児童生徒へ救済体制の整備(「子どもの権利擁護委員会」等の中立な第三者機関の整備を含む)}の整備をすること。 C 県教委は、虐待事件を児童相談所等県児童福祉部局に報告し、これを協同して検証し再発防止策を検討し、その内容(虐待事例の検討結果、児童生徒への救済措置・教職員等への処分結果を含む)を県民に公表すること。 D 策定した規則(教職員等による児童生徒への虐待を予防・防止・相談・救済する対応基準)を周知徹底するために必要な児童生徒・保護者への学習及び教職員等への研修を実施すること。 3、 請願人は、教育委員会の会議において本請願の趣旨・理由を説明するために意見陳述を求めます。 注記@「虐待の内容」・1身体的虐待・2性的虐待・3ネグレクト・4心理的虐待(児童虐待の防止等に関する法律第2条、児童福祉法第33条の10等参照) 注記A・「児童に対する虐待の禁止」何人も、児童に対して、虐待をしてはならない(児童虐待の防止等に関する法律第3条参照) 注記B・「教育委員会規則の制定等」地方教育行政の組織及び運営に関する法律第15条参照、 注記C・「教育委員会への請願」千葉県教育委員会会議規則第28条参照 請願の理由 1、 昨年、県教委は、男性教員による児童生徒に対する「わいせつ行為(不法行為)」だけでも6件の懲戒免職処分を行いました。県教育長は、危機的状況として教員の給与明細にも「児童生徒に対するわいせつ行為は、必ず根絶しなければならない」とし「根絶する最大の鍵は、教職員一人一人の心の中に、揺るぎない遵法精神の砦を築くこと」を記載し呼び掛けています(7月20日付県教育長の呼び掛け文「教職員の皆さんへ」・8月発行のリーフレット「不祥事根絶に向けた教育長のメッセージ」参照)が、過去何度も同じ呼び掛けをした結果であることを受け止めるべきです(別紙「新聞記事」@毎日新聞2017.11.15、A朝日新聞2017.8.21、B千葉日報2017.10.19、C同8.3、D同7.20、E同5.25、F千葉日報2014.11・20参照)。 (1) 根本的に、教職員は職員になるとき、地方公務員法第31条等により、服務の宣誓(千葉県・職員の服務の宣誓に関する条例・宣誓書「私は、日本国憲法を尊重し、擁護するとともに、公務を民主的かつ能率的に運営するべき責務を自覚し、県民の奉仕者として誠実かつ公正に職務に従することを誓います」)を行っているのであり、その教職員に対し改めて「法令遵守」を求めること自体、自己矛盾の極みです。 (2) 既に「千葉県コンプライアンス基本指針(1頁・基本指針制定の趣旨)」においても、県職員の不祥事の背景として、「県職員に、本来公務員として備わっているべきコンプライアンス(法令等の遵守)の意識が欠如していること」の指摘がされており、「コンプライアンスは、法令やルールを機械的に遵守すれば良いといった硬直的な概念ではなく、組織の本来的な使命や社会的な信用失墜行為が生じるリスクを念頭に置き、法令やルールにない部分をどのように処理することが適切なのか、現状の事務処理が前例踏襲に陥ることにより不適切なものとなっていないか、業務に改善の余地がないか等について、常に意識し、柔軟に対応していくことが求められるものである」としていることを喚起すべきです。 2、 そもそも、子どもたちが憲法で保障された教育を受ける権利(生存権・主権者教育権・学習権)を実現するために、地方行政(県・市町村と各教育委員会)はそれぞれ役割分担しながら、公教育を整備(学校教育法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律等)し実施する義務を負っています。その基本は憲法の精神にのっとり制定された教育基本法で定めています(「世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願う理想を実現するために、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を学び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期し、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する(教育の基本・前文の要旨)」)。 この社会的使命を負った公教育を実現(教育基本法、第1条・教育の目的、第2条・教育の目標等)するために、教育行政(教育委員会)・学校と教職員には、その性質上、高い人権意識と高い教育の専門性が求められております。特に教員は、その使命と職責の重要性を踏まえた責務が、教育基本法第9条で定められていることを自覚すべきです(1項:法律で定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない)。 3、 児童福祉の立場から全ての子どもたちは、『児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びに自立が図られることその他福祉を等しく保障される権利を有する(児童福祉法第1条)』と定めており、学校においても、この子どもの権利を保障しなければなりません。 言い換えると、このように学校教育においては「教育の視点」のみならず、「子どもの権利擁護・児童福祉の視点」からも、子どもたちは『良好な学習環境(学校環境)で、子どもの意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されること(児童福祉法第2条)』を保障されており、これを実現するように教育行政に求めています。 そもそも県教委は、本来的に学校を子どもたちが安全に安心して学べるように運営する責任(学校・教師の民法上の安全配慮義務・注意義務、学校保健安全法第26条等)を負っています。 4、 しかしながらこれまで県教委は、「学校からセクハラをなくすために」「体罰防止」等その対策(主なものは)として、平成11年「職場におけるセクシャルハラスメント防止に関する要綱」・「セクシャルハラスメント相談マニュアル」・「教職員と幼児・児童・生徒、保護者との間におけるセクシャルハラスメント防止についての指針」、平成16年「信頼される教職員−不祥事防止にために」通知・リーフレット、平成17年「セクシャルハラスメント及び体罰に関する実態調査」、平成26年「生徒用リーフレット・なくそう!セクハラ4」、平成26年1月「信頼される教職員のために・不祥事根絶パンフレット」、平成27年「教職員向けリーフレット・わいせつ・セクハラ防止リーフレット」等を何度も作成し実施して来ましたが、加害教職員等の心には届かず、今回の教育長のメッセージを出さなければならない事態に陥っている事実を踏まえ、事ここに至っては自らの存在意義そのものが問われていることを真摯に受け止めるべきです。 5、 即ち、教職員等による児童生徒への体罰・わいせつ行為・暴言等の「学校内虐待」の対策として、当該教職員個人の責任追及と全教職員への綱紀粛正の呼びかけで終わるものではなく、上記に述べたような県教委自身が県民から負っている「公教育の責任(学校教育の社会的使命)」を果たすためには「教職員の不祥事(教育行政組織にとって好ましくない事件)」と理解し位置づけるのではなく、「被害者の子どもの権利擁護・児童福祉の立場」から「子どもの人権への重大な侵害行為・虐待行為」(別紙G・厚生労働省発表リーフレット「子どもを健やかに育むために〜愛の鞭ゼロ作戦〜」参照)であると理解し、その対策として「事実の解明・原因究明・是正措置・背景にある構造的問題」まで踏み込んで検証し検討することが求められています。 言い換えると、児童生徒に対する教職員等の体罰・わいせつ行為・暴言等の「学校内虐待」は、学校本来の教育活動(生徒指導の意義「一人ひとりの子どもの人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動」・「文部科学省・生徒指導提要」1頁参照)を全く逸脱する不法行為であり、その関係性から子どもに対する教職員の優越的な立場(教職員等が子どもを支配し従属させる関係性)を利用して、子どもの人格を一方的に否定し、子どもの発達に深刻な影響を及ぼす言動です。 その結果、被害を受けて後遺症で苦しむ子どもたちを県内でも多く発生させている事実を踏まえ、教育行政内部の「教職員の不祥事」として対応するのではなく、一人でも被害を発生させない、万が一起こした場合は、「子どもの人権擁護・児童福祉の問題」として、責任をもって救済する義務が県教委にはあります。また犯罪となるものであれば、地方公務員法上の懲戒処分のみならず、刑事訴訟法上(第239条2項)の告発義務を県教委自身が負っていることも自覚すべきです。 6、 よって、請願人は、請願の趣旨のとおり、県教委が担っている公教育の実施責任を果たすためには、「子どもの人権擁護・児童福祉の立場」から、学校における子どもの権利を守り、救済する等の制度を策定する責任があり、これを実行するには県教育委員会規則として定めることが必要であると考えて、本請願に賛同する県民等(別紙「賛同人名簿」参照)といっしょに本書を提出するものです。県民に対する県教委の説明責任(結果責任)を果たすことを求めます。 「付記」・県教委のみならず千葉県知事には、「公教育の責任(学校教育の社会的使命)」に基づき、「子どもたちが安全に安心して通える学校」を管理運営する共同責任があり、これを県教委と連携して実現する責務を負っているので、本書を千葉県知事(担当・健康福祉部児童家庭課長)に提出し、検討の上、実行するように求めます。 2018年(平成30年)2月13日 〒260-0803千葉市中央区花輪町74番地6 (043−266-8419・fax043−266-2359) E-mail: chiba-saponet@lake.ocn.ne.jp NPO法人千葉こどもサポートネット 理事長 米田 修 (元・千葉県人権施策推進委員会委員) 添付書類 @新聞記事1・2・3・4 A愛の鞭ゼロ作戦リーフレット1・2 千葉県知事への「申し入れ書」 添付書類 @「子どもを大切にする千葉県をつくるための指針」概要版 A子どもを大切にする千葉県をつくるための指針 B「子どもを大切にする千葉県をつくるための指針」ができるまで C埼玉県子どもの権利擁護委員会条例 |